2005年新入生歓迎号(336号)4月8日発行

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一面

10月再編統合でどうなる富大
皆さんこそ新大学の主人公だ

■法人化と再編統合
■国家の責任放棄
■やはり学費の値上げに
■学長独裁体制
■大学の主人公は学生

もう一つ、新たなスタート

サークル紹介のコーナー
 クラシックギター研究会
 フォークダンスクラブ
 書道部

空中線

二面

改憲論議が大沸騰!
どうなるどうする第9条

不二越第二次訴訟について考えてみよう
〜真の韓日関係に向けて〜

映評〜コーラス〜

書評〜戦争の作り方〜

皆さんの入学を歓迎します

10月再編統合でどうなる富大
皆さんこそ新大学の主人公だ

新入生の皆さん、ご入学おめでとう。私たち新聞会編集部員・委員一同皆さんの入学を歓迎します。これから4年間よろしくお願いします。
県外から来た人には、富山県の醍醐味はこれから身を以て実感していただけることでしょう。富山県は海や山と自然に恵まれており、雪も降れば、梅雨は長いし、夏は暑いし、湿度は高いし…太平洋側から来た人などからすると別世界だと思うはず。また海産物は豊かで、春先のホタルイカに白エビ、夏の岩ガキ、秋から冬にかけて豊富な海の幸がみんなを迎えてくれます。冬は特に寒ブリに舌鼓を打つのも良し。秋にはコシヒカリやてんたかくなどお米も美味しいですよ。それに夏は海水浴にキャンプ、冬はスキーとレクレーションにも事欠きません。せっかくですから、勉強だけでなく大いに羽を伸ばしてください。沢山の経験をして、思い出を沢山作ってくださいね。
さて私たち富山大学新聞会は、全員加盟制の民主団体として、学生の立場に立った、学内唯一のマスメディアとして新聞発行や企画などを行い情報発信をしています。今後皆さんに良い情報を提供できるように努力していく次第です。
私たちの発行する新聞は、学内外の社会問題欄、映画や書評などの文化欄、サークル活動などの学生生活欄、そして地域紹介欄などに力を入れて紙面作りをしています。ぜひ興味のある人は編集部員になってくださいね。投稿・寄稿も募集しています。では、今回はせっかく入った富山大学ですから、富山大学が今直面している問題について見てみます。

さて、皆さんが入学した富山大学の紹介をしてみよう。
今年10月に富山医科薬科大学、国立高岡短期大学と再編・ 統合する事は承知の通りだろう。既に全国の国立大学は独立行政法人化され、戦後大学の大きな節目がついたといわれている。では何がどう変わったのか。この点をはっきりさせてみる。
■法人化と再編統合
昨年始まった法人化と今回の再編統合の経過を改めてふりかえってみると、そのきっかけは01年6月に文部科学省が打ち出した「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)を受け、三大学による協議が始まったことによる。「構造改革」は小泉政権が打ち出している大規模な国家的リストラのこと。国や政府にとって「無駄」と思われる社会総体のあらゆる部署を廃止したり、公営・ 国営施設を民間委託したりすること。したがって、老人介護施設や「障害者」施設の改廃や医療保険制度の改悪など社会保障制度が解体され、民衆の生活に直接影響が出るなどしている。また労働者の合理化も推進し、総体として労働条件の悪化も進行させる。今国会の郵政民営化法は、こうした小泉「構造改革」の柱に位置づけられている。
今回、こうした「構造改革」が大学に対して持ち込まれたという訳だ。大学には競争原理にもとづく生き残りが科せられた。学部や学科ばかりか大学までも改廃の対象とするのが、国立大学の「構造改革」(=再編・統合や法人化)なのだ。
具体的には「遠山プラン」では、大きく三つの方針が出され、@国立大学の再編・ 統合を大胆に進める、A国立大学に民間的発想の経営手法を導入する、B大学に第三者評価による競争原理を導入すると明記されている。特筆すべきは、Bで大学をトップ30大学に絞り込むために大学の研究内容に文部科学省が踏み込んでくるということ。ここでは露骨にも「評価結果に応じて資金を重点配分」「国公私を通じた競争的資金を拡充」するといい、大学予算をエサに、各大学に国家や企業のためになる研究をするしか生き残る道は無いのだと暗に言ってさえいる。
したがって、法人化や三大学の再編統合とは国家による大学のリストラという動機から始まっているのだ。ではなぜ、国家=政府は、法人化や再編統合をしなければならない状況になったのか。
■国家の責任放棄
前提として、国が国民に最低限の文化的生活を送れるように教育、医療、福祉等の面で支える責任がある。この点に異論は無いだろう。そうであればこそ、大学で学び社会に出て貢献したいと思うのではないか。あるいはそのためにも私達の両親、兄弟などは税金を納め、社会に労働などで貢献してきた。
しかし、バブル経済で銀行など大資本が「濡れ手に粟」で莫大に儲けた一方で、バブル崩壊後のツケは私たちの血税が銀行などに注ぎ込まれた。あるいは80年代の国鉄の分割民営化に始まり、今日に至る「構造改革」は一貫して「強きを守り、弱気を挫く」政治ではなかったか。大体、政府の放漫な財政運営のツケが教育、医療、福祉などの切り捨てに向かうなんて間違っていないだろうか。
■やはり学費の値上げに
話を本論に戻そう。国立大学の法人化の場合、国家の教育費の削減=学費の値上がりとして目に見える影響が既に出ている。富山大学も再編統合後には授業料を一万五千円値上げすることを決めた。法人後の大学は、国からの予算が削減される。その不足分を学生からの学費で割り当てるなど、自己調達しなければならないというのだ。しかも国からの予算=運営交付金は、国に「研究計画」を立て、さらにその「研究成果」を報告し、評価してもらうことではじめて下りてくる事になる。要は研究費や人件費など、必要に応じて予算を国に請求する制度から、国が大学の研究成果を評価し、その度合いに応じて交付金を配布するという支配関係が発生した。これは大学に民間企業の競争原理を導入させ、お互いを競い合わせることで効率化を狙うという。しかし、大学の異なる研究分野を計る共通の物差しなどあるのだろうか?結局、国が推進する研究成果が評価され、基礎研究や人文系の研究は軽視されるであろう。
既に、富山大学でも人文学部の非常勤講師の削減や文化構造論コースの廃止が去年決定している。
■学長独裁体制
大学運営の点でも大きな変化が生まれた。従来、大学の最高意志決定機関は学長や各学部長からなる評議会であった。これは全て教授など大学の構成員からなっていたということだ。評議会の下に各学部教授会が成り立ち、教授会が教育・ 研究全般について審議、執行権を持っていた。学部長の選定も教授会が行うなどの人事権を持ち、学外からの介入を認めてこなかった。これらは教授会自治と呼ばれた。
しかし、法人化後は大学の最高意志決定機関は学長と副学長らから成る「役員会」(学外者などが半数を占める)という機関に移った。ここで大学の中期目標や年度計画、予算などを審議し決定することになる。これは学長の権限を圧倒的に強化するためだという。さらに、役員会に経営方針をおろす「経営協議会」なる機関が設置され、大学の方針や予算を審議し、さらには教育、研究などの教学分野や、人事、学則などの審議権を握っている。
ちなみに富大の「経営評議会」は山田圭蔵北陸経済連会長や中尾哲雄インテック元社長などが名を連ねている。他大学ではトヨタ自動車副社長や伊藤忠商事社長、JR東日本社長などが就任し、大学が実質的に企業の研究室へと変貌しつつあることがわかる。富大の「役員会」でも人員削減=教職員のリストラについて論議しているが、ここは一般企業ではなく大学であることを忘れてはいないか。
さて文部科学省と大学との関係について付言しておこう。文部科学大臣は大学の監査を行い、各大学に中期計画・ 中期目標を定めさせ、その実現度合いにおいて運営交付金を配分することになる。さらに文部科学大臣は小泉首相が議長となる総合科学技術会議に従うという。
つまり、要約すれば法人化とは政府ー文科省ー大学というトップダウン形式を貫徹する大学化であり、企業や資本家の意向に添った大学研究が推進されるということだ。
果たしてこれで「真理探究の場」としての大学の教育水準が確保されるのだろうか?
■大学の主人公は学生
大学の法人化の場合、単なる博物館や図書館の法人化とは異なる面がある。それは学生いう生き、かつ学ぶ主体を抜きにしては語れないからだ。
大学は学生が主人公である。だが、この間の法人化などの動きは、学生の存在を無視して進んでいる。学生は企業や資本家に送り出される部品や製品ではない。主体的に学び、遊び、スポーツをし、アルバイトなどで社会を学んでいくものだ。大学祭や文化祭、芸交祭などを通じて、仲間を作っていく。そういうことが大学生活であり、真の学生自治ではないか。
しかし、今の大学の向かっている道は、それとは逆ではないか。新入生の皆さんの自己解放的な力に、大いに期待する。


もう一つ、新たなスタート〜おばちゃん、お疲れ様でした〜
学生会館のおばちゃんこと、木地紀子さんが3月末で13年間務めた学生会館の仕事に別れを告げた。
この日、MMS、クラギ、現代史研などのサークル員が集まり、おばちゃんに写真や花束、色紙などを渡し、ねぎらいの声をかけた。
おばちゃんは「はじめ学生会館に来た時は、便所掃除から始めたんだよ。ここまで元気に勤め上げられたのは若い人たちのおかげ。幸せだった。どんなに大変でも学生会館を使う学生が入口で会釈をしていく姿に支えられた。邦楽部の琴や尺八の音を聴きながら事務所に詰めていたことや、茶道のお茶やお菓子をいただいたことは忘れられない」と想い出深くを語られた。
いつも笑顔をありがとうございました。本当にお疲れさまでした。お元気で。

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サークル紹介のコーナー
クラシックギター研究会
クラッシクギター研究会(略してクラギ、ギタ研)でのインタビューに答えてくれたのは、人文学部3年生で部長の登美(とみ)さん。
クラギの活動日は週二回、水曜と土曜日に午後1時半〜午後4時半まで部室で行っている。現在部員は総勢20人だそうだ。
クラギとしての定期演奏会は12月にあり、他に7月にはギターマンドリンクラブと一緒にプレクトラム演奏会を行っているという。
サークルの魅力について登美さんはこう語ってくれた。「クラギは手軽にできて、一生できる楽器。クラシックから最近の曲まで弾けるのがクラギの魅力。サークルを通じて、知り合いや友人が増えるし、人間関係が豊かになる。大学生活で夢中になれることができる」と。その上で「部室を尋ねてもらって、やる気があれば是非」「みんな(部員)いい人だし、初心者が多いので、楽器がやりたいけどどこから手をつけて良いかわからない人は是非来てください。楽しくてやりがいがありますよ」と新入生へのメッセージをくれた。


フォークダンスクラブ
フォークダンスクラブ(略してFDC)では理学部生物学科の2年生小山さんとお話ができた。
FDCでは毎週水曜(共通棟326番教室)と土曜(同8番教室)に曲に合わせて踊る練習=例会をしており、不定期に第2体育館でも練習をするそうだ。先輩から後輩に曲と振り付けを教えることをコールと呼び、先輩と後輩のつながりの強さと歴史を感じた。
主な活動についてだが、大学祭での発表から、6月北陸地区イベント、8月全国のFDCとの交流イベント、11月FDC創立記念パーティー、12月中旬でのクリスマスパーティーの間はOGやOBとの踊り、年が明けて1月には一年生が始めて踊りの披露を行うと、かなり活発に活動している。
そんなFDCに入部してよかったことを小山さんは「人付き合いの輪が広がるし、みんなで踊るということが単純に楽しい」「生活に張りが出るし、『ああ今日は例会や』と考えると日々の生活に楽しみが一つ増える」そうだ。またダンス以外にも海に行ったり花見をしたりとイベントが盛りだくさんだそうだ。
現在部員は11人で、早速入学式の日の午後6時頃から花見をするとのこと。興味のある人は、コンタクトをとってみよう。
最後に新入生にむけて「大学生活は一人暮らしで、授業のコマ数が多いから、ダンスはいい運動になるはず。それに新しいものが見つかる。FDCの固定概念がこわれる。新しいものを見つけたいという人は是非来てください」とおっしゃっていた。


書道部
 書道部では経済学部経済学科3年の田村さんがお相手してくれた。
書道部は学生会館を練習場所に、週3回、月、水、金といずれも午後2時から練習を行っている。展覧会などは主に大学祭、卒展、芸交祭などだそうだ。
書道部の魅力を田村さんは「字が上手くなるし、集中力がつきます。それに書道連盟の昇級に毎月応募するので、資格も取れるんです」と教えてくれた。またサークルとしての魅力についても、「人と触れ合うことができるし、書道を通じて大学生活が楽しくなってくる」と語ってくれた。
現在書道部は部員25人。入部希望の新入生は活動日に学生会館か部室に足を運んでもらうか、メインストリートのサークル立て看板にある電話番号に電話してほしいとのこと。新入生対象には、4月20日に学生会館でお茶会を催すそうだ。
最後に田村さんは「書道部にはいると楽しい大学生活が送れます。友達もたくさんできます」と新入生へのメッセージをいただいた。



現在、富山大学には文化サークル連合に所属する文化系サークルは31サークルと1準備加盟サークルがある。加盟サークルの中には休部中の写真部も含まれているため、写真部に入部したい場合、及び文化系サークルに関するお問い合わせは文サ連事務局にご連絡下さい。
また体育会系クラブは37クラブ5準クラブにのぼる。詳しくは学生会館2階体育会事務局まで。
なお、新歓期には宗教団体などの勧誘も強まります。くれぐれもご注意下さい。被害に逢った場合は新聞会など学生自治団体にご連絡を。

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空中線
大学生になったら最低限身につけることは何だろうか。多分生活習慣の中に「お酒」が組み込まれると言うことだろうか。資格らしい資格ならやはり自動車の免許だろう
今回はお酒について、一言。富山に来たら是非富山の地酒を飲んでほしい。最近は日本酒が敬遠される傾向にあるという。しかしそれは大手酒造メーカーが大量生産した酒にしか出会う機会が無かったからだと思う。よかったね〜富山には本物の日本酒があります
富山の日本酒は全国的に見ても辛口だという。だが本当に良い酒は、辛口とかでは表現できない香りと深みを秘めている。はっきり言って日本酒とはひとくくりに表現できない奥の深いものなのだ
日本酒の選び方の基本はやはり純米酒だろう。純米吟醸、純米大吟醸ならより良いが値が張る。最低基準は糖類や調味料を加えていないものを選ぶこと。醸造用アルコールが入っていないものも基準だが、酒の切れを出すために極少量加える場合もあるので、必ずしも醸造用アルコールの入ったものが悪いとは言えない。ただ大手日本酒会社が大量生産で、だわだわ入れる場合が多いので気をつけよう
時期も大事だ。富山では1月〜3月にかけて生酒という火を通してない新酒が店頭に並ぶ。これは日本酒が生きていることを、しみじみ感じさせてくれる酒だ。そう日本酒には、他にない繊細さがある
夏はどうしてもビールという人には、地ビールをお勧めする。富山には氷見のいきいきビール、城端ビール、銀盤酒造などが地ビールを作っている。宇奈月には地ビール麦酒館がある
ともあれ、自分で気に入った酒を見つけるのも楽しみの一つ。そのためにも良いお店を探すこともカギかな。4月は歓迎コンパが続くから飲み過ぎにはくれぐれ注意してもらいたい。あと飲酒運転は絶対タブーだぞ。

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情勢をズバリ斬る〜これからの4年間〜

改憲論議が大沸騰! どうなるどうする第9条
  05年は、時代の大きな節目の年になりそうだ。今年入学した新入生が卒業する09年までに予想される国内外の動きで注目すべき問題について焦点を当てて検証してみる。
【イラク戦争と米軍再編】
 国際情勢では、やはり米国動向に大きく規定されるであろう。09年までといえば、今年1月に二期目に入ったブッシュ政権の任期と重なる時期である。したがって、ブッシュ大統領の基本政策を検証してみることにする。
 ブッシュ大統領は1月20日に大統領就任演説、2月2日に一般教書演説を行いイラク戦争の継続激化とその世界への拡大を打ち出した。また2月19日には日米安全保障協議委員会(2プラス2)でブッシュ政策を日本と共同して進めていくことを日米の「共通戦略目標」と定めた。
 二期目のブッシュ大統領は「自由の拡大=圧政の打破」をスローガンにしている。しかもこれを「神からの召命」とさえ呼ぶ。またライス国務長官の上院外交委員会発言では、キューバ、ミャンマー、北朝鮮、イラン、ベラルーシ、ジンバブエを「圧政の拠点」と名指ししている。これらから言えることは、「大量破壊兵器」も「アルカイダとの関係」もでっち上げだったけれども、理由はともかく「圧政国」を打ち倒したのだから、イラク戦争は正しかったのであり、今後も続けますよ、と言っているに他ならないのではないか。しかもイランや北朝鮮を「テロ支援国家」と規定し、北朝鮮に体制転覆の圧力を突きつけている。そして最大の戦略目標として中国を対象化している。「圧政の拠点」=(outpost of tyranny)前哨=中心拠点は別にある)」の字義通りに解釈すれば、北朝鮮にしてもミャンマーにしても中国の両端に位置している点で「圧政の拠点」の中心拠点と暗に明示しているようだ。
 しかし、こうした米国の動向は米国経済の破算に裏打ちされているものであって、強さから来るものではないと考えられる。背後に貿易収支や経常収支と財政赤字の巨大化と大不況的重圧の中で強まるドル大暴落と世界大恐慌の危機があるからだ。
【日米枢軸体制】
 では、次に2月19日に発表された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で確認されたこととは何か。それは一言でいえば日米同盟を日英同盟のような完全な軍事同盟にするということであろう。
 2プラス2の「共同発表」は第一に、「日米安保体制を中核とする日米同盟」の重要性を再確認し、世界規模での協力関係の拡大を確認した。そして「共同発表」は第二に、「日米の共通戦略目標」として「新たな脅威がアジア太平洋地域で発生しつつある」「地域の軍事力の近代化(中国を指す)にも注意を払う必要がある」などという日米共通の世界認識を確認し、北朝鮮と中国に対する戦争政策を「地域の戦略目標」に掲げている。
 北朝鮮に対しては、「6カ国協議に速やかに無条件で復帰し、検証のもと、透明性のある形ですべての核計画の完全な廃棄に応じるよう強く要求する」とし、北朝鮮が要求する金正日体制延命の保障(=米帝の北朝鮮敵視政策の撤回)を百パーセント拒否し核政策の完全放棄と米日両国へのいわば完全屈服を要求している。
 「共同発表」は、中国に対して、「台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促す」とし、「中台問題」を日米安保体制に基づいて対処すべき課題として初めて明記した。「中台問題」に関して、日米が軍事的に一線を越えて踏み込んでいくということであり、中国へイラク型の戦争をするかの勢いだ。
 中国政府はこれに対し、「中国の国家主権と領土保全、国家安全保障にかかわる台湾問題を(日米安保の)枠内に加えたことに対し、断固として反対する」と強く批判した。  また「共同発表」は、「中国が軍事分野での透明性を高めるように促す」「中国が地域および世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる」と述べて、中国が米日両国に屈服するよう働きかける方針を打ち出した。01年QDRのいわゆる「思いとどまらせる戦略」である。
 米国の対北朝鮮・対中国戦略の当面の政策は、北朝鮮を支える中国に「特別な責任」(ライス)を負わせる形で6カ国協議を進め、中国の屈服を取り付けて北朝鮮の体制転覆を図っていくというものではないだろうか。これに対抗して北朝鮮は2月10日に外相声明を発表し、無期限の6カ国協議への参加中断と、核兵器保有を宣言している。
 これを受け、中国に北朝鮮の6カ国協議への復帰の働きかけを促す思惑から、「共同発表」では露骨な中国脅威論の表現は控えられたようだ。しかし「共同発表」には、中国侵略戦争体制を構築し、その軍事的圧力で中国を屈服させ、北朝鮮と中国の体制転覆を図っていく路線が貫かれている。
 日本政府はこうした状況に乗じて、東「シナ」海では中国領である釣魚島、日本海では韓国領である独島の領土・資源の領有宣言をおこなった。政府は中国の領土である釣魚台に右翼団体が建設した灯台の所有権を国に移し、公然と釣魚台の領有ともいえる決断に踏み切った。島根県議会は2月22日を「竹島の日」と宣言し、日清・日露戦争時の朝鮮侵略を開き直ってまでいる。石原都知事などは「尖閣諸島(=釣魚台)に自衛隊基地をつくれ」と言い、また政府は自らが一方的に主張している排他的経済水域(EEZ)のラインに沿って05年度中にも海底資源の試掘に着手し、資源の獲得まで既成事実化しようとしている。
 さらに、防衛庁は1月2日、「離島防衛」と称し、日米の共同輸送拠点を先島諸島に設置し共同訓練を実施するなどして、陸自と米軍の共同対処を強化する方針を固めた。下地島空港(伊良部島、下地島)を日米の「共同輸送拠点」とし、弾薬や食料、燃料を備蓄する「事前集積拠点」を宮古島に設置する案が出ている。新防衛計画大綱でも「(中国による)島しょ部に対する侵略」を「新たな脅威」の主要なものの一つと指定した。防衛庁が「南西諸島有事」に5万5千人の陸上自衛隊と特殊部隊を投入する計画を立てていることも明らかになっている。  「共同宣言」は第三に、「日米特別行動委員会(SACO)の最終報告の着実な実施が重要」として、名護新基地建設案を含めた沖縄基地の再編、強化方針を打ち出した。「沖縄を含む地元の負担軽減」などペテンなのだ。昨年来の辺野古を始めとする沖縄の人々の基地反対の取り組みは、こうした日米両政府に真っ向から立ちはだかっている。
 「共同発表」は第四に、「世界の戦略目標」として、「基本的人権、民主主義、法の支配といった基本的な価値を推進する。国際協力活動や開発支援での日米パートナーシップをさらに強化する」などと述べて、「自由の拡大=圧制の打破」を掲げた米国の戦争政策と植民地化の攻撃に日本がどんどん加わっていくことを明らかにした。
 日本政府は、陸自の第5次イラク派遣隊の活動を「イラク復興の第2段階」(大野防衛庁長官)と位置づけている。宿営地内での「給水支援」をゼロ化し、今後は「公共施設の補修」のために宿営地外に出ていくとして戦闘要員を大幅に増やした。
 米日両政府は、2プラス2における戦略合意を踏まえ、8月にも96年の「日米安保共同宣言」を改定し、新たな日米安保ガイドライン制定さえ進めようとしている。この中で日本政府は、集団的自衛権行使や9条破棄の改憲(と教育基本法改悪)を押し通して世界戦争の推進主体になろうとする動きを強めている。
【憲法改定問題】
 改憲の動きは既に始まっている。その前哨戦として教育の憲法である教育基本法改定の動きが始まっており、教育勅語の復活の動きが強まっている。また、教育の改編といえば大学においても「大学改革」として始まっており、これは既に一面で述べたとおりだ。
 憲法問題といえば、今年1月18日に日本経団連(奥田碩会長・トヨタ自動車会長)が打ち出した「我が国の基本問題を考えるーこれからの日本を展望して」(以下、「奥田提言」)が重要だ。ここで日本経団連は9条改悪と集団的自衛権の行使を明記している。日本最大の発言力と影響をもつ財界が経済の問題ではなく政治の問題に大胆に踏み込んで発言していること自体はじめてと言っていい重大事態だ。「奥田提言」の中でも、第V章で自衛隊の役割を主張し、「国際安全保障への積極的協力」という言い回しで自衛隊の主任務を海外活動に重点を置くとしている。それを受けて第W章「憲法について」が核心部分である。そこでは「ほころびが目立つ現行憲法」と言い、改憲の必要性を強調している。そして「第9条にみられる規定と現実の乖離」「国際平和に向けた主体的活動への制約」「機能していない違憲立法審査権」「厳格的すぎる改正条項」と指摘する。そして「自衛隊の役割の明確化」を押しだし、自衛隊の国際活動に関し「国際社会の平和・安定の実現に向けた協力・貢献の観点からも…強化していくべき機能である」と戦争に軍事介入するともとれる要求をしている。
 そして9条改定の具体案として9条2項の戦力不保持の条項を「現状から乖離している」と言った上で「国際貢献・協力活動を進める上での大きな制約になっている」と自衛隊の国際活動=海外派兵の自由を要求している。さらには「集団的自衛権が行使できないということは我が国として同盟国への支援活動が否定されていることになり、国際社会から信頼・尊敬される国家の実現に向けた足かせになっている」と集団的自衛権の行使を主張している。
 さらに「奥田提言」では「第9条と第96条の改正に限定せよ」という。第96条で改正要件の緩和をすることで、あとはどんどん改憲を繰り返していけるようにしようということだ。今国会で国民投票法が上程されようとしており、「奥田提言」の「憲法改正を具体的に実現可能なものとして議論する前提として、まずは憲法改正のための国民投票法の早期成立が不可欠である」を受けて政治が回り始めている。
 改憲問題については、既に1月には中曽根元首相なども独自の改憲案を打ち出している。何より、小泉首相を本部長とする「自民党新憲法制定推進本部」が、今月中にも自民党改憲草案を発表する。民主党も今月「憲法提言」なるものをだし、改憲に合唱するという状態だ。

 さてここまで検証してきたが、いかがだったろう。こうしてみてくるとこれからの4年間は決して平坦に進むほど甘くはないようだ。意見は色々あるだろうが、これからの大学生活に遠いようで近い問題だと感じてもらえたらうれしい。紙面の都合で書き足りない面もあるが、私たち新聞会はこうした憲法改定の動きに大変強い危機感を感じており、今後一層紙面で問題提起していきたいと考えている。ぜひ感想や意見を聞かせてほしい。

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不二越第二次訴訟について考えてみよう〜真の韓日関係に向けて〜

 皆さんが入学された富山大学のキャンパスは、かつて、1945年8月までは、陸軍が駐屯していたところです。私たちと同年代の若者が、アジア諸国に派兵される前に、軍事訓練をしていたところです。戦後、陸軍駐屯地を解体して、学問・研究の府を建設したことは、当時の人々が侵略戦争を反省し、ふたたび戦争の銃を持たないことを誓う具体的な行動の一つだったと思います。
 大学から東に向かって、数キロメートル先に、現在は産業用ロボットやベアリング等を生産している不二越という大きな工場があります。もともとこの工場は軍需工場で、様々な軍需製品(機関銃の部品、電波兵器など)を製造していました。
 日中戦争から、アメリカ開戦へと、戦線が拡大した時代、日本から20歳代、30歳代の青年労働者や学生が兵士として次々と徴兵されて、アジア諸国に送り出されました。炭鉱や軍需工場から青年達の姿が消えていく一方で、石炭や武器弾薬の増産も指示され、政府は当時の高校生や中学生を軍需工場に動員して、生産を続行しました。
 それでも足りなくなって、政府は中国や朝鮮から70万人以上の農民や労働者を強制的に連行して、日本の炭鉱、鉱山、港湾、兵器工場で働かせました。不二越でも、1944年春から朝鮮の小学校を卒業したばかりの少女達(12〜14歳)を1090人、青年男子を540人も強制連行して、強制労働させました。
 この不二越が行った強制連行・強制労働の事実は社史にも記されています。しかも強制連行・強制労働をさせただけでなく、一切賃金を支払わなかったという事実も明らかになっています。この強制連行・強制労働の事実を認め、謝罪し、未払い賃金の支払いを求めた裁判が「不二越訴訟」と呼ばれるものです。
 現在、第二次訴訟の段階に入っており、93年に提訴された第一次訴訟では7年間裁判所で争った後に、原告側に勝利和解が勝ちとられました。
 今回は、02年に第二次提訴で立ち上がった23人の原告からの聞き取りから、朝鮮女子勤労挺身隊の強制連行・強制労働の一端を紹介します。

 被害者のほとんどは、勧誘を受けた当時は、国民学校(現在の小学校)六年生か卒業直後、あるいは国民学校の高等科一年生に在学中でした。年齢は12〜14歳です。
 被害者たちは、ちょうど上級学校への進学や就職について考える時期であり、「上級学校で勉強できる」とか、「お金が稼げる」と勧誘されました。しかし、不二越では勉強もできず、賃金も支払われませんでした。また、一旦被害者らが承諾すると、両親がどんなに反対しても、無視するか、強引な説得で押さえ込みました。
 不二越に来てから、被害者らの多くは、数日から一か月前後の期間、厳しい軍隊式の訓練を受けました。訓練中に指導に従わないと厳しくしかりつけられました。
 被害者らが暮らしていた寮の入口には「監視所」があり、常時監視の者がいて人の出入りをチェックしていたため、被害者らは外出することができませんでした。また工場の門の前にも監視の者がいました。病院に通うなど特別の事情がない限り、外出することは許されず、無断外出が発覚すると、厳しい叱責や罰を受けました。
 家族への手紙も検閲を受けなければ、出すことができませんでした。面会も、寮の面会室で、日本人の監視付きでなければ許されないという、囚人並みの扱いでした。

 このように被害者らは、誘拐・拉致にも等しい悪質な方法によって、不二越に連れてこられ、不二越に来てからは、厳しい監視と処罰を伴う強制の下で、毎日長時間の重労働に従事させられていました。
 今、改憲、教育基本法改悪、そして「作る会教科書」の採択の問題がクローズアップされています。「新しい教科書を作る会」は、「強制連行はなかった」というウソを書きならべた歴史教科書をつくり、子どもたちを教育しようとしています。戦前の皇民化教育のように、真実に基づかない教育は洗脳以外の何ものでもありません。法廷では、強制連行された韓国人のおばあさんたちが体験に基づいて真実を証言し、「作る会教科書」のウソを公然と明らかにします。
 4月13日、午後1時から、富山地方裁判所で、第6回口頭弁論がおこなわれます。新入生の皆さんに裁判の傍聴を訴えます。

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映評〜コーラス〜

 世界的指揮者のピエールは公演先のアメリカで母の訃報を知り、葬儀のために故郷のフランスへと戻ってくる。そんなとき、昔の同級生ペピノが彼の元に訪れる。とある先生、自分の人生を大きく変えた音楽教師の当時の日記を持って。およそ50年前、1949年フランスの田舎町のお話。“池の底”という名前の付いた、カギがしっかりかけられ2メートルはゆうにある門にとざされた寄宿学校。このものがたりの舞台はここである。
 この映画の主演、ピエール役を演じるのは、フランスの国民的プロデューサーでもある、ジャック・ペラン。彼の有名な主演作品として、「ニュー・シネマ・パラダイス」(大人のサルヴァトーレ役)がある。この作品では、主演だけでなく、制作も行った。そして、彼の甥がこの映画の監督クリストフ・バラティエであるというからおもしろい。
 映画の舞台となる学校には、親をなくした子供や、素行に問題があり親元を離れた子供たちが集団生活していた。暗い瞳をした子供たちに、校長は厳格な教育方針を貫く。ここでは、校長の命令は絶対。ここで生活している子供達は、校長に言わせるといわば「問題児」ばかり。いたずらをすれば校長に大目玉を食らい、反省室と言われる牢屋のような場所に入れられ、1ヶ月ほど奉仕活動の罰を与えられる。時には、ビンタのような体罰も…。特に、問題児は「天使のような顔」を持つピエールだった。
 こんな学校にある日、一人の先生がやってくる。彼を迎え入れるのは、両親が戦争で亡くなったにもかかわらず、両親が迎えに来ることを毎日門の前で待っているペピノだった。親が亡くなったことを理解するのも難しい小さな子どもだった。そしてこの教師の名がマチュー。音楽家として作曲を手がけてきたが、成功した例はないらしい。自分で手がけた楽譜を捨てるに捨てられず、自分の部屋にカギをかけて封印し、学校生活を送ろうとする。しかし、この学校の実態が明らかになる中で、マチューは一つの実験を開始する。「合唱隊」を作るという実験だ。音楽家としての自分をもう一度引き出しから開け放し、合唱のための作曲を始める。合唱を通じて生徒達の心を開いて見せようと、彼は決意を決める。
 合唱隊の中でソロを披露するピエール役は、世界的に有名なリオンの「サン・マルク少年少女合唱団」ソリストのジャン=バスティスト・モニエ、13歳。彼の歌声は本当に美しい。表現のしようがないほどだ。そんな彼の声も入っているサントラは、フランスだけでも3ヶ月連続アルバムチャート1位。なんと売上げ枚数は、150万枚を突破した。そして、フランスでは「ダイヤモンド・ディスク」を獲得、「プラチナム・ヨーロピアン・アウォード」も受賞した。
 映画の中で、学校一の問題児、ピエールは、この合唱とふれることで純粋な姿を現し出していく。そして、合唱隊のうわさは校外にも広まり、お偉いさんを呼んでの公演も行われる。無事公演をおえたそんなとき…、音楽教師との別れの原因となる事件がおこる。
 この子供達の成長と歌声に、拍手と涙が止まらなくなる、そんな作品です。フランスでは、7人に一人が観覧、「アメリ」の動員記録も塗り替えて、興行成績を1位とした。アカデミー賞2部門、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞、セザール賞8部門にそれぞれノミネートされている。フランスでは、政府が子供達の心の教育のため、授業の必須科目に「コーラス」の追加を検討するという、社会現象をも巻き起こした。日本でも、文部科学省特別選定を受けた作品である。
 大人達が忘れかけていた「子供時代」というかけがえのない宝物の存在に気づかせてくれる魅力のある作品。「ニュー・シネマ・パラダイス」や「リトル・ダンサー」など、少年のひたむきな姿を描いた名作に続き、21世紀の新たなる名作としてこの「コーラス」が映画史に残ることは間違いないだろう。あなたも映画館で一度、涙してみたら?

4月9日公開に先駆けて、試写会にてコーラスをファボーレ東宝で観覧してきました。満員の会場の中、聞こえてきたのはオーケストラの音。どんな展開でストーリーが進んでいくのか、ドキドキしながら見ていました。かっこいい〜!かわいい〜!と思ったのはやっぱり少年時代のピエール。そして、もう一人印象深かったのはマチュー先生。小堺一機さんに似てるんだもん。そんな、容姿だけでも虜にされてしまう映画でした。中盤から練習や公演で流れる子供たちの歌声は、まさに天使そのもの。合唱やオーケストラを聞きにいくような方にもお奨めな映画ですね。とってもきれいなハーモニーなんです。そして、気がついたら、そのキレイな歌声に涙が…。会場にいた多くの方が帰り際に、目や鼻を押さえていましたよ。マチュー先生のちょっとドジな、笑いの部分もあり、ほんとほのぼのさせられました。この作品で癒されちゃってください!私は、絶対このサントラとDVDを購入します!先生を目指してるあなたも必見! 

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書評〜戦争の作り方〜

 この本は絵本という体裁と中身でありながら、大人にこそ読んでもらいたい内容を兼ね備えている。
 当初この本は自費出版という形で、冊子として発行された。2004年6月1日のことだった。折しも「有事関連7法案・関連3法案」の審議と採決の渦中であった。
 制作に携わった「りぼん・ぷろじぇくと」の方々が、思い立って一ヶ月にも満たないわずかな時間で完成した。そしてこの冊子は有事法案審議中の国会議員全員に配られ、衆議院議員会館の会議室で絵本の朗読とスライドショーまで行われた。そして、この小さな冊子はわずか二ヶ月で3万3千部も売れ、その後正式なハードカバーの本として出版されるに至った。もともと正式な本として出版するために作った冊子ではなかったが、りぼん・ぷろじぇくとのメンバーの皆さんの苦労のかいがあってハードカバー版として世に送り出された。この絵本の正式出版には「世界がもし100人の村だったら」の再話で知られる池田香代子さんが携わっている。
 30ページばかりのストーリーは5分もあれば十分読み切れる内容だ。だが、子どもに優しく語りかける口調で、とても重大な問題提起をしている。特に大人の私たちにとって強く胸に迫る何かがある。
「ここに書いてあることが
 ひとつでもおこっていると気づいたら、
 おとなたちに、『たいへんだよ、なんとかしようよ』と
 言ってください。
 おとなは『いそがしい』とか言って、
 こういうことになかなか気づこうとしませんから。」
 本に描かれている挿絵は、富山大学出身の井上ヤスミチさんが描いたものだ。彼は大学祭の時などに、通りゆく人のリクエストに応えながらストリートで段ボールに絵を描いていたからなじみのある人も多いだろう。彼は人間の内面を暖かく描き出す独特のタッチで表情豊かに絵を描きだす。それが今回、戦争というテーマを問題にしたことで、戦争が遠い過去の話ではなく、今生き、今まさに日常の中で生活する人間の手によってなされる愚行であると絵がリアルに訴える。戦争に向かう世相に、まどう子どもの表情が印象的だ。
 マガジンハウスから定価六〇〇円で発売中。

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