100万円 IC−7800を斬る 

                                       2004-1-27 14:39:00 更新

    
 2004年1月25日(日)

 今日は待ちに待ったIC−7800が自宅に届きました。
JA9DPV 作田さんには感謝感謝です。 本当にこんな高級機をありがとう
ございます。さて、本日は受信を中心にお話をしようと思いましたが、あいにくの
雪のため送信を中心にお話をさせていただきます。

 

<驚きは始まった>
 
 冗談でしょ、この機械。 送信をモニターしてみると明らかに送信音が違います。
これは、IC-756PRO2 を使っている私が確実な違いとしてまず耳に飛び込みました。
100Hz〜250Hzあたりのもたつきが全くありません。
また、PRO2では無かった中音域から高音域の抜けがまるで違います。
皆さんにも音を聞いていただけたと思いますが、城市さんもおっしゃいましたが、
「TS-950と遜色、何も変わらないといった感じだね」とのお言葉。

その通り、ずばりそこが驚きなんです。

 今まではこもっていた音も全く問題なく抜けます。
中高音だけ? とんでもない。 全域にかけてフルフラットの感じがあります。
ということは、どういうことでしょうか?

 私はこの考え方にはモッパラ否定説を唱えてきました。

「どれだけオーディオ域の最高の特性を持つマイクを使用しても、送信帯域をどれだけ
広げてみて、おー最高の音だ!と思っても、相手の受信機側の帯域があるため、上下の
最高の部分は取り除かれてしまいます。つまり、無線機を通して電波を出す限りマイク
アンプの特性がフラットで無い限り、マイクをどれだけ変えてみても変わらない」

 私は雅楽の録音をするときにマイクをつないで大きなホールで演奏しますが、一度
酒を飲んで歌をアカペラで歌いました。そのときの歌は「メロディー by 玉置浩二」
 まあ、関係の無いことかもしれませんが。最高!!です。
何が最高かって、音の低音から高音までの伸びかたです。
無線機で使っているにはもったいないと思うぐらいのものです。
 
 それが、IC-7800では、入力のマイクアンプ帯域は、100Hz〜2900Hzまでです。
それがIC-78OOの最高の音質を作り上げている武器ではないでしょうか?

 インピーダンス 10kΩ 、入力 100mV。
奥村さんの大好きな、「お尻からぶちこんでやる」
ここに入力をすることによって、100Hz〜2900Hz フルフラットが確立されます。
ということはどういうことか、もうお判りですね。

 「マイクの特性がそのままになってOUTになるということなんです。」
たぶん、私なりにイコライザーを使って周波数帯域を測定してみたところ、マイク
入力帯域が一番狭いのは、Y社、次がI社、そして広いのがK社と考えたいのですが
K社とI社は変わりません。
なぜ、TS-870を使うと広がるのかというと・・・・・したから。
これに尽きるんです。
 もし、メーカー純正の買ったばかりでオペレートしたなら、「なんか、音コモって
るよー。それに硬いなあ」といわれるのが落ちです。
でも綺麗な電波を出すためには、音は犠牲にしなければと思ってきたはずです。

 Y社に関しては、コリンズのフィルターと言ってますがそれには異議はありません。
ただし、あのノーマルで使っても土管の中で叫ぶような音だけは勘弁ですね。
 

 上記の写真が設定項目であります。
右の写真の SSB TBWが1つのポイントで新しく追加された項目です。
また、右の SSB TX TONE が低音、高音とありますが、IC-756PRO2とは
完全なる別物といっても過言ではありません。
今まで何かすっきりしないんだよなあーと思っていた私ですが最高のハーモニクスを
演出してくれる立役者であります。

 先ほど奥村さんからレポートを貰いましたが、
 「PSNとDSPの中間のような音」とのレポートでした。

 私なりにみて、聞いてオーディオ域での改善が随所に見られ送信は100点満点
ではないでしょうか。
KENWOODの音をこよなく愛してきた私ですが、初めて送信音で浮気をして
しまいました。 それほどにこの音の臨場感は巣晴らしいハーモニクスを作り上げて
くれたのです。



 さて、本日2回目の登場であります。
親父の許可を得て、スペアナにて送信IMD特性を写真に収めました。
あー・・・・・・・・・・・・・・・・・
見てはいけないものを、怖いもの見たさで見たような気がします。
なんなんでしょうかね。

<JA9PG 専用測定器>
 コイツガ凄いやつなんですよ

<200w出力のIMD>          <**w出力のIMD>
 

 何なんでしょうね、この結果は?
右の写真なんて、2トーンの発信機のノイズのほうがひどいじゃないですか。
ICOMさん、恐ろしい機械を作りましたね。

 左は YAESU MARK-V の200w AB級より、3db良いです。
150wAB級と同じですよ。 流石ですね。

右の写真、僕が押してるPOWERですよ〜。
これ、3rdで55db取れてると思うんですが、なにより5次、7次が無いぞ!!
素晴らしいものですね。
 あまり送信については触れられていなかったのですが、ここにもこだわりを
見つけましたよ。

 ちなみに入力のツートーンは、WDXCで測定するセパレーションで行いました。

 はーい、そんなわけで今日の時点で評価は、 
満点 です。


  2004年1月26日(月)
 お待たせいたしました。 本日より受信系を斬って行きます。
私の感覚でお解かりになるかなるかわかりませんが、一生懸命書きますので
よろしくお願いします。
随時、質問はお待ちしております。

(1) 受信のフィーリング

 聞いてみて最初に実験したことは、738KhzのAMをSSBで復調して
みました。もちろんスピーカーを鳴らして。
えっ! これラジオだよねえ、と思うぐらいもう一度画面をみましたが、LSB
USB、どちらに切り替えても・・・・・最高の音質を提供してくれます。
 よっしゃ、これは実験するしかないと、TS−870、IC−756PRO2、
FT-1021、TS-950SDX、MARK-Vの5台を並べ聞いてみることに。
(お貸しいただいた皆様、ご協力ありがとうございました。)

 IC-7800 > KENWOOD > IC-756PRO2 > ・・・・・の順でした

 特にPRO2ではでは音がひずんでしまい使い物にならないという感じです。

 そのあと、7Mhz SSBの受信を行いました。
1つ1つ挙げていきますね。
 ・PRO2と7800では、全く別物の受信機が存在する感覚です。 音の明瞭度が
全く違うのです。 今までにお使いになった方であればおわかりになりますが
例えば、
ATTを入れると基本信号でなく、周りのノイズに膜が掛かり始め
音の鮮明さが落ちるのに対し、3db ごとに 21dBまで設定できるATT
ですが、音質の帯域が狭くなりません。
 周りの環境の騒音だけに、ATTを掛けていっているといった感覚です。
上記のように書くと、7800があたかも素晴らしいように感じるでしょ。

 ちょっと、待ったー!
このATTと同等に戦っている機械があるんですよ。
恐るべし、TS-870。 全く同じレベルのお話であります。。
極めて、IC-756PRO2がそういう面においては全く付いて来られません。

・次に
プリアンプのお話です。
PRO2はプリアンプをいれると、ダイナミックレンジの良い(1)であっても
バックグランドノイズが上がってきて、騒がしくなりますね。
しかし、IC-7800はここにこだわったという感じがあからさまに見えます。
 ボタンをピっと押すと、あれっ!これ効いてるのか壊れてるのか?と思う
程の感じでしかありません。
しかし、蚊の鳴くようなDXを信号を見つけて、ポンとONにすると目的の
信号だけが浮き上がり始めます。
深海さん、まじですか? と聞かれるでしょうね。 
マジなんですよ。
 恐るべし、ダイナミックレンジと言った感じでしょうかね。
でも私自身、ダイナミックレンジなんて全くわかりません!
私のレポートは7Mhzの実際の運用レポートですから。

ルーフィングフィルター


 
上の写真はルーフィングフィルターの設定画面です。
6Khz と 15Khzの選択が出来ます。
これはとても微妙な感覚ではあるのですが、良く聞き入ると違いが
判るような気がしますが、決定的なものを感じませんでした。
ルーフィングフィルターといえば、1stIFの通過帯域を変えているので
ICOMでは、「近接の強力な局からの影響を軽減する」 という能書きに
なっています。
 確かにONでそんな感じは微妙に見受けられますがあまり変化は7Mhz
というバンドではありません。
しかし、バンド帯域外のジャミングが軽減されていき、目的信号が生きて
くるという現象は、実に微妙ながら感じられるのは確かです。
 ですから付いていなければならない、付いているから聞こえるといった物
では決して無いと判断します。
 
 その横にIFフィルターの切り替え SHARP・SOFTがついてい
ますが、IC-756PRO2と全く変わりありません。
SHARPの方がSSBには良いと感じております。
 PRO2の持っている性能と同等と判断します。



 
1月27日(火)  3回目のレポート

 今朝のワッチは AM 3:40スタートしました。
昨日までのレポートで、追加点もありますので書いていきます。

 
<ATTについて>

 内容的には変わりはないのですが、細かいことも書いておきます。
IC-7800のATTですが、12dBまでは目的信号、および目的信号の
オーディオ帯域を減衰することはありません。
 それがどうしたの?
と聞かれたら、静かな中でピックアップが出来ることに尽きます。
比較としてみれば、IC-756PRO2では、6dBのATTからオーディオ帯域が
狭まってしまうのです。

 そのあと、何度も何度も切り替えを行いました。
そして、最終報告となりそうですね。

 
<トータル的な感想>

 昨日、城市さんもあれだけのレポートで十分だよとおっしゃっておられ
私もせっかく貸していただいたので、実際にオペレートしようと思うので
このくらいにさせていただきます。

 私の知りたかったことは、ほとんど知ることが出来ました。
第1に、聞こえない信号が聞こえてくる! というものでは決してありま
せんでした。 逆に通過するものが多すぎて、PRO2の方がシングルコン
バージョンの受信機のように、ノーマルで聞きやすかったりもします。
 しかし、極めてフロアーノイズという面では静かです。
静寂性をもっていることは確かです。

 車に例えるなら、コロナで140キロ出して東京まで走るのと、クラウンで
同じ速度で走るぐらいの違いは、決してありません。
私の中では、静寂性という面で(乗り心地ではなく)、マークUとクラウン
ぐらいの差にしか感じませんでした。




 
<プリセレクター、フロンドエンドBPFについて>

   
焦ってはいけない、まずは落ち着いていこう!

 これをスローガンにいきましょうね。 財布の紐をギュット締めて。

 今私たちが一番注目をしている点が、フロントエンドの問題です。
城市さんのクリスタルのオンパレードをみて、唖然としたことは確かです。
では、実際にどれだけの効果が得られるのか? ということですよね。

 IC-7800のプリセレクターはAUTOが基本です。
しかし、微妙に(解説本にも、微妙にと書いてあります。)変化させる事が
出来ます。それが下の写真です。




 
DEGI-SEL と書かれているのがその機能を果たすVRです。
では、実際にどれだけの効果があるのでしょうか?
下の写真はICOMが発表している、特性です。

 

 
これは14Mhzでの帯域特性図であります。
実際にDEGI-SELをDXの信号を聞きながら変化させて見ました。
しかし、Doctor−dot? が消えるわけでもなく、弱くなるわけでも
ありません。
だって、上の帯域のスパンみてくださいよ。
300Khzのスパンなんですよ。 これを拡大していけばどうなるのか?
というと右のようになってしまいます。
帯域を狭くしてやればやるほど、それだけロスも大きくなるのです。

 ICOMもロスは、-8.8dB 、右は私がこの実験のために製作して
いるBPFですが、ロスが -12dBもあるんです。
ではロスが大きいから、フロントが急峻に切れるのか? というと


 
これがJH9TYT製作のBPFで、FMB−8700と言います。
FMB=FUKAーMACーBPF の略です。 (関係ないですね。)
ICOMさんは、30Mhzの幅、私のは 5Mhzですから如何に切れている
かが、お解りいただけたことと思います。

 しかし、実際はどうでしょうか?
測定器上でー12dB、たいしたことないなあ、AIPとかIPOと一緒の
レベルじゃないか、そんなもんぐらいなんとも無いよと思い実際にレシーブ
に入ってみると、BANDは静かで信号は浮き上がってくると思っていましたが
ATTがひどく掛かりすぎた感じで、小さな信号は全く聞こえなくなります。
 あ〜難しいものなんだなあと自作してみて初めて思いました。
しかし、そんなもんで挫けていられません。
新たに、400Khzの前の4倍で製作をしてみました。

 

 このスパンは、10Mhzにしました。ですからICOMの30Mhz
にするとスカート特性は悪いものの、BAND内では同じくらいでしょう。
それよりも、ロスが3dBに抑えることが出来ました。
これは実際に聞いてみて、ICOM7800となんら遜色かわりません。
うそだろ〜って思うでしょ。 実際このくらいまでにしか出来ないんです
よ、それ以上は怖くて!

 じゃあ、IC−7800は何がいいのか? 何が違うのか?

何度も言いますが、聞こえは一緒! 7800=756=780 です。
ですから、私が思うフロントエンドフィルターの最高峰は・・・・・・

    
アンテナ  ではないでしょうかね。
 これがしっかりとしていれば、受信機云々はあまり問題では無いと
私は判断します。

 
<他との違いを述べよと言われれば>

 あえて違いを探しなさいと言われれば、値段が高いこと!
そんなことではなく、私は送信系統(オーディオ)ではないでしょうか?
実はこの機械、ICOMさんには大変失礼ですが、次のように名前付けま
した。

     別名  
ICOM製  TS−960SDX

このネーミングしか、考えられませんでした。

 IC−7800で送信をして、TS−870のアンテナを外して受信
しながら、上下3Khzを聞いてみると、スパっと切れるのが解ります。
しかし、KENWOODは下にドカドカ、上にもドカドカ出ます。
YAESUは上にドカドカでます。 
 例えお尻が最高であっても、リニアが悪いともっとドカドカと上下に
出てくるんですよ。
 じゃあ、IC−7800が良いのか?
と申しますれば、YAESUと一緒です。 上にドカドカと出ます。

 それを回避するためには、DSPの送信帯域を 100-2900Hz から
300-2900Hzにしなくてはいけません。
こうすることにより、スパっと切れます。
しかし、リスクはありますよね。 
送信音質です。
どうしても低域が切られるため、硬いキンキンとした・・・・・・さんのような
音になってしまいます。
でも、上が 2900Hzまで出していてもスパっと切れるのは素晴らしいと
思うんですが。

 本当は100-300の間に、150とか200の設定が出来ればBESTかなあ。
その点、YAESUはその点GOODですね。 150-300ありますからね。
(注意)
 ICOMさんは昨年?ファームアップで送信のDSPが、200Hzとういう
設定が出来るようになったそうであります。
現在は、私の手元には在りませんのでお間違いの無いようにお願いします。


 平成17年3月 現在

       平成16年度に JA9DPV 作田さんのご好意により
       お貸しいただきましてレポートさせていただきました。
       1年経って、私のようなものがレポートさせていただいても
       大丈夫だろうと判断し、WEB上のUPをいたします。