花じいの「山と花の小話」          

人はただ生きていくだけで、辛くて、苦しくて、精一杯のときもあります。
自分自身や大切な人の病、そして永遠の別れなどなど。本当に苦しくて生きていることが辛くてならない時もあります。

そんな時、山に行って自然や植物と、そして山の友人たちとの心の触れ合いが、
ほんの少しかもしれませんが、心の安らぎと生きる力を与えてくれます。

そして、このありがたい山旅の中で、ちょっと面白い笑いが隠れて居ることがあります。

生きることに疲れたときは、この小話で笑って、また明日から生きて参りましょう!

なお、お話は「一部」フィクションが含まれておりまする。あまり気にしないで読んでね!

また、ここに登場していると、ご自身で思われる方々に対して。

他意はありません。他意は。ただただ
敬愛のあらわれとご理解くださいませませ。。。


(下から話が始まっています。) 

74 善人の島 あれは、小笠原へ行った時のことだった。富山を出発した時は小雪が舞っていたが、竹芝埠頭から乗った船の暖房がいつしか冷房に変わって、25時間の船旅の果てに父島に着いた。そしてさらに小型船で2時間半乗り継いでやっとの思いで母島に着いたのだった。その日は海岸や宿の周りを散策したあと、長い船旅を乗り越えた自分たちに祝杯をあげた!そして、次の日は乳房山というおっぱいのような形の山、平たく言えばちょっとなだらかな双耳峰に登った。それはそれは目の保養であった。これがマルハチ、ホルトノキ、、アカテツ、ワダンノキ、アカギ、ムニンネズミモチ、ハハジマノボタンなどなど、「ああ、ここまで来て良かったなあ。できればもう少しいたいなあ」などと思っているうちに、乳房山を下り母島を出発する時刻になる。

 ところが、なかなか添乗員の方が乗船の案内をせず、宿の方に戻ったり、ザックの中をのぞいたりしている。どうしたのだろう、と思っているところへ「もし、もし。立山会の方ですね」と肩を軽くたたく人がいる。ここには知り合いはいないはずだけど、と思いつつ振り返ると、なんとお巡りさんではありませんか!

花じい「(私たち、少なくとも私はなにもしていませんけど・・・と思いつつも)はい、そうですが」
お巡りさん「添乗員の方はどちらにいらっしゃいますか?」
花じい「ああ、それなら、あそこでザックの中をひっくり返している人ですけど・・・」」
お巡りさん「はい、はい、そうでしょうねえ、はい。」とちょっと笑みを含みつつ添乗員さんの方へ向かっていく。なんだろうと私も一緒にいくと。

お巡りさん「立山会の添乗員の方ですね。」
添乗員さん「は、はい、そうですけど」
お巡りさん「免許証などをお持ちなら拝見できますか」といったやり取りの後、
お巡りさん「はい、今日の母島からの船のチケットと、あと父島からのチケット、現金・・万円が、落とし物として届けられていましたよ。」
添乗員さん「(涙を出さんばかりに)おおっ〜〜!あ、ありがとうございますぅ・・・
花じい「おっと、我々はこの船に乗れないところだったんだぁ。ああ、もうちょっと見つけるのが遅かったら、あと1週間居られたのにぃ〜〜〜。
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いやあ、小笠原には悪い人はいないのですね。残念ながら、いや、おかげ様で、無事予定通り富山に帰ってまいりました。吹雪でした。。。ああ、小笠原は最低18℃、最高22℃だったのにぃ・・・
73 タンサン

れは、立山会の山の下見に花ばあと一緒に行ってきた帰りのコンビニでのことであった
レジにはまだ20歳くらいの若い女性がいて、そこに70代後半と思われるおじいさんがやってっきた。


じいさん「ねえちゃん、タンサンはどこにあんがけ?」
い女性店員「タンサン(炭酸水)なら、奥の冷蔵庫の中にありますが」
じいさん「なんでタンサンが冷蔵庫にあるがよ。乾いたところにおいてあろうがよ」
い女性店員「あっ、タンサン(単三)なら、2つ手前の棚にあると思いますが。」
じいさん「おお、そうか。ありがとよ」それからしばらくたって
じいさん「おいおい、あこにゃ、電池しかおいてなかったぞぉ〜。どこに置いてあんがよ?」
い女性店員「え〜っと・・・タンサンと言われますと、どんなもんなんでしょうか?」
じいさん「タンサンもわからんがかよ。サンサイ(山菜)で使うあれよ」
い女性店員「サンサイ(三歳)がおつかいになるのですか?すいません、うちの店では、お子さま用のものはほとんど扱っていないのですが・・・。」

じいさん「なんで子供用ながかわからんけど、おいてないがやな。。。しょうがないな・・。」


花じい・花ばあ「か、帰ろうか。。(笑いをこらえながら)」

72 笑ってよ〜僕のために〜 あれは、梅雨時の晴れた夜、ホタルの鑑賞会に参加したときのことだった。

花じい「久しぶりにホタルを見たなあ。でも昔に比べるとホタルも少なくなったねぇ。」
元お嬢様Sさん「そうね、人は多いのにね。でも、これがヘイケボタルね。やっと分かったわ。それじゃ、ここで一句詠んでみて」
花じい「おっと、今日はそっちですか。では、『夜は更けて 池の人波 ホタルささやく』」
Sさん「まあまあね。もっと
すいこうしなくっちゃね」
花じい「う〜〜ん。。『夜の池 寄せる人波 ホタルかそけく』まだだめかい?そういえば、すいこうって漢字かけるかい?」
Sさん「推理の推に、原稿の稿かしら」
花じい「おうっと、思うとおりに間違ってくれたね!」
Sさん「あらま。じゃ、何なのよ」
花じい「これは中国の故事にあるんだよ。ある詩人が、詩を作っていて迷ってたそうなんだ。それがね『僧は推す月下の門』 か 『僧は敲く(たたく)月下の門』 かで悩んだことから、文章を作るときに十分に考えて練ることを推敲というようになったんだよ」
Sさん「へえ〜。花じい、溢れる教養ね!」
花じい「えへっ、そうかな(照れながら)」
Sさん「そうよ。溢れるばかりの教養だわ。もっとも、溢れるのは入れ物の容量が小さいからかもしれないけど。。ははは・・・。花じい、これ、面白い!アハハハ・・・」
と自分で言って、大うけのようだ。。 
花じい「はいはい、私の頭の容量が小さくてすいませんね!」
Sさん「あらら、すねないでね。溢れるのは容量が小さいからとは限らないから。入れるものが多すぎただけかもしれないじゃない。アハハ、これ川柳よりも面白い!アハハハハ!(一人で大爆笑)」
花じい『あんたは、俳句じゃなくて、BJ(ブラックジョーク)かよ。』

71 どこが一番・・・? 夫婦山に上ったとき、「花じいさん、どこの山小屋のご飯が一番おいしかったですか」と聞かれた。
花じい「山小屋らしい中でということで あえて言うと、朝日小屋が一番かな」
Zさん「やっぱりそうですか。そう言う人が多いですね。」
花じい「まあ、北アルプスは皆さん頑張ってるし、おいしい小屋は本当に多いんだけど、私の個人的見解としては朝日小屋が一番おいしいね!」

Zさん「それじゃ、どこが一番まずかったですか?」
花じい「お値段の割にということで言うと、Sアルプスの○○小屋かな。ここのご飯は臭かったなあ!臭い飯っていうけど、塀の中にも負けないくらいじゃない?入ったことはないけど。。」
Zさん「へえ〜。そんなもんですか」

〜回想〜
それは、夕飯の前におやつを全部食べ、カレーライスをお代わりできず、腹が減って寝られない一夜を過ごしたあとの、○○小屋の朝ごはんのときだった。
勢いよくご飯を食べていると、横の東京の元お嬢様が、目を丸くしておっしゃった。
「あなた、富山の人なんでしょう?富山ってお米のおいしいところよねえ。それなのに、こんなまずいご飯、よく3杯もお代わりができるわねえ!!!」
花じい「は、はい。背に腹はかえられないので・・・・」
東京の元お嬢様「それにしたってねえ。私は、朝もカレーにして欲しいと思ったわ。夕べは、またカレーかって思ったのに!!!」

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おおっ!「カレーにして欲しい」と思ったのは、私も同じですよ。きっとカレーなら、もう一杯食べられたでしょう!
70 面倒なお客たち 山から帰ってきてからのビールは本当に美味しい。しかしお酒が飲めなくなってからしばらく山帰りにビールを買うこともなかったが、最近はノンアルコールビールも進化して大変美味しくなった。その日は、ほんとに久しぶりに山帰りにコンビニに入って、一本のノンアルコールビールをレジに差し出した。
店員さん「はあい、ビールですので、画面をタッチしてください」
花じい「えっ?ノンアルコールビールなんですけど??」
店員さん「はあい、ノンアルコールもビールと同じなのでお願いします」
ま、しょうがないか、、、と画面を覗いてみると、『20歳以上です 確認』と出ている。
花じい「えっ?20歳未満に見えますか?」
店員さん「皆さんにお願いしていますので、押してください」
そりゃまあ、いいですよ。画面にタッチするぐらい。

と、そのとき、もう一つのレジでも同じようなことをやっている若い女性客がいた。
店員さん「はあい、たばこですので画面をタッチしてください」
お客さんA「ちゃんと押すけど、20歳以上か確かめなくていいの?」
店員さん「はあい、大丈夫で〜す」
お客さんA「ねえ、わたしそんな婆さんに見える?ちょっとは確かめようと思わない?」
店員さん「いえいえ、でも、大丈夫ですから」
お客さんA「だからさあ、免許証ぐらい見てよね。私20歳になったばかりなんだからあ」

花じい『気持は分からんでもないけど、いつから吸ってんだよ・・』
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元お嬢様Kさん「その気持ち、良く分かるわ。私ね60歳になったばかりの時に、映画館に行ったのよ。そしたら60歳以上って安いのよね。で、『60歳1枚お願いします』って言って入場券を買おうとしたら、お店の人ったら、何の疑問もなく『60歳以上ですね。はい、どうぞ』って60歳以上のチケットをくれるのよ。失礼だと思わない?『ちょっと、私そんな婆さんに見える?昨日60歳になったばかりなんだから、免許証ぐらい調べてよ!』って、もう少しで口から出るところだったわ!」

女心は、やはり複雑である。。。(いや、この場合分かりやすいか・・・)
69 みごとな観察眼 6月にもなると夜の水辺に神秘的な光を放ちながら、いつの間にか消えて行く「ホタル」という生き物がいる。昔は、うじゃうじゃにいたものだが、最近はいろんなところでその生育のための取組みが行われているようだ。

そう、それは梅雨明けもまだ先の7月初旬の頃だった。

元お嬢様Sさん「花じい、花じい!私、大発見しちゃった!」
花じい「なになに、どんな大発見?」
Sさん「私ね、今年ホタルを何度か見ていたんだけど、
ホタルって成長すると小さくなるんだよ!知ってた?花じい!」
花じい「そ、それは、大変な発見ですね。
Sさん「そうでしょう。私何度もいろんなところで見ていて、やっと気付いたのよ!なんでもきちんと見てると、いろんなことが分かるものなのね!観察って大切だって良く分かったわ。花じいも頑張ってね」」
花じい「あ、はい、が、頑張ります。。。」
とても喜んでいるSさんを見ていると、何も言えなくなった花じいであった。
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いやあ、楽しい大発見でしたね。観察って大切ですね。もう少し観察するとゲンジボタルと、ヘイケボタル だってことがわかったんだけど、もう分かったよね。おいおい、まだ他の人にも言っているのかぁ
〜?
68探鳥会(バードヒアリング)で 山にも春はやってくる。そして、熊も目覚めて歩きまわる。「熊に注意!」との看板が目に入るが、どう注意すればよいのだろうか。熊鈴が良いという人もいて、ときおり数人が「チリーン、チリーン」と和音となったり、不協和音となったりする。
その日も鳥のさえずりも楽しみにしていたのだが、熊鈴の高い音が大きすぎて良く聞こえない。
花じい「すいません、鳥の声を聞きたいので、鈴を仕舞ってくださ〜い」とお願いした。
しかし、元お嬢様方はおしゃべりに夢中で、聞こえていないようだ。
もう一度、ちょっと大きな声で「熊鈴、仕舞ってくださ〜い」とお願いすることになった。
元お嬢様Oさん「あ、は〜い。邪魔だった〜?でも、花じいは熊対策はどうしているの?」
花じい『それは、もちろん、おしゃべりが大好きなあなたがたです』
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もう少しで、声に出るところだったが、何とか止めることができた。まあここに書くから一緒かな。
でも直接言うのよりはいいかなって思って。
そうそう、花じいの死んだばあちゃんは、山菜とりには9時〜3時だけ一人で山に入っていたと言ってました。
67 (北陸新幹線開業記念)
   黒部峡谷 露天風呂
   湯けむり○○事件
あれは、黒部峡谷へシダとお花の観察に行った時のことだった。時間が少しあるし、せっかく来たのだから鐘釣温泉で黒部川(床)露天風呂(当然混浴)に入ろうということになった。これまで学んだ露天風呂の法則を思い出しながらも、タオル一枚で前を隠しながら、どこかの魔法使いのように、オズオズと入っていった。「黒部峡谷よいところ〜〜ふんふん・・」と花うたをうたっていると、折から、関東方面のある会社のご一行(女性陣も一緒!水着着てたけどね)の先客が山の話をしている。たぶんその一番偉いお方なのだろう。山登りが好きとのことで山旅の想い出話に盛り上がってしまった。そしてお別れという段になって、記念写真を撮ることになり、お互いのカメラで露天風呂集合写真を撮り、メルアドも交換してお別れしたのであった。
さて、その日家に帰ってから、たくさん撮ったシダの写真を整理していると、例の写真が目にとまった。
「おっ、露天風呂の写真だな。どれどれ・・・」
しかしその瞬間、花じいの眼が、口が、心が、凍りついてしまった。
そ、そこには例の山好きのお偉いお方の「おち○ち○」がど真ん中に鎮座ましましていたのである〜!
「そ、そんな〜。ちゃんと顔の方を撮ったつもりなのに〜〜〜〜〜」
黒部峡谷の露天温泉はあまりにも清く、屈折率も半端ではなかったのだ。

メルアドの交換もしたのに、送れるしろものではない。メールでは『すいません、カメラの腕前が悪くって、ピンボケのボケボケでしたので送れません』と謝って、写真は廃棄させていただいたのだった。

数日後、先方の幹事さんからお返事メールが届いた。
『こちらも、カメラの調子が悪くって、花じいさんがしっかりと写っているので、写真はお送りしないことにさせていただきます。すいません。』
え?ひょっとして、俺のも・・・?
『その写真、絶対に完全廃棄しておいてください!』とすぐにメールしたのはいうまでもない。
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花じい「しかし、えらい気持ちの悪いもんを見てしまったよ。。。」
M2元お嬢様「それは向こうの人も一緒でしょうが。でも『○○事件』って、『殺人事件』でもおきたのかと思ったわ。」
花じい「殺人事件なんてそうは起こらないの。それは2時間ドラマの中だけ。ま、『屈折事件』にしようかなと思っていたんですけどネ」
M2元お嬢様「えっ〜、それなら『イ○棒事件』の方がぴったりでしょう!」
花じい「こ、こらっ、なんてことを!一応女の子なんだから。一応は。」
M2元お嬢様「ん?一応とは何よ、一応とは!」
花じい『いかん、また口が滑った』
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あっ!今はカメラ持ち込み禁止ですからね。ちょっとだけ昔のお話です。
66 帰り道 (下から続く) 
それから年が明けた春、岐阜県の“お花見”からの帰りのことだった。カーナビが搭載された元お嬢様Hさんの車が、またまた花じいの車のやや後ろについてきていた。
 そして、集合場所のKインターまであと数十分という頃、後ろを走っていたH車が一台だけ高速から下りてしまったのである!
慌てて携帯電話を取り出し、「お〜いどこにいくの???集合場所は、まだだよ〜」
Hさん「え〜〜っ?ちゃんとカーナビの言う通りに運転しているんだけど〜〜〜!」
花じい「・・・。ねえ、カーナビの行き先は、どこにセットしたの?」
Hさん「もちろん、自宅よ!帰り道だもの!
花じい「だ、だからぁ・・・・。一緒に乗っている人たちは、今晩Hさんちにお泊りするの〜?
Hさん「はっ!・・・・」(どうやら、気がついたらしい。)
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このあと、高速に乗り直して、やや遅れて集合場所に着いたH車の皆さん、ご苦労様でした。
ん?Hさんちでご馳走になりたかったって?それなら、花じいもまぜてくれ〜い。
ちなみに、携帯電話は助手席の人にかけてもらい、耳に当ててもらっています。たぶんHさんも。
65 旅は道連れ?
あれは、戸隠に秋の花を見に行った時のことだった。車は4台。先頭は花じいの赤いホンダ車である。何台か連れだって出かけるときには、この赤い車が良く目立つので結構良い目印となっている。
その日の出発前に、運転をしてくれる4人との打ち合わせの際、地図を渡したところ、
元お嬢様Hさん「地図みても分からないから、花じいの車についていくわ!」
「女性は地図を読めない人が多い」と言う人もいるが、少なくともHさんについてはまさしくあたはまるようである。
さて、高速道路を出てしばらくは無事だったが、戸隠へ折れる道を少し行ったところで、後ろに車が2台しかいなくなっているではないか!!!「ど、どうしたんだろう??」
慌ててHさんに携帯電話で「今どこにいるの?ちゃんとついてこなくちゃだめだよ!」
Hさん「えっ?ちゃんと花じいの『赤いホンダ車』の後ろについて走っているけど、何かあったの〜?」
ど、どうやら、同じ型の赤いホンダ車について行ってしまったようだ!
花じい「で、今どっちに向かって走ってるの?」
Hさん「そ、そんなこと、前の車に聞いてよ〜!

元お嬢様Hさんの車に、カーナビが搭載されたのは、それから1週間後のことだった。。。
64 北アルプス放送局 あれは、風吹大池へ三つ○山の会の下見に行ったときのことだった。この会は、視覚障がいの方と晴眼者が互いに仲間としてハイキングや登山を楽しむ会である。視覚障がいの方も山に行くの?なんて思う人もいるかもしれないが、今回のパーティの一員である全盲のTさんをはじめ皆さん毎日鍛えておられ、そんじょそこらの人には負けない脚力と強い意志を持った気の優しいアルピニストたちなのである。

さて、風吹大池とのピストンを終了した我々一行は、蓮華温泉の露天風呂を楽しむことにした。この露天風呂はまさに山の一角にいくつもの湯船を配した山岳情緒豊かな温泉である。
「ああ、いい湯だなあ〜」Tさんはもうご機嫌である。「ええ、山に登って、温泉に入って、もう極楽ですねえ。」じいもいつものように鼻歌を歌いながら湯船に浸かっていた。と、そこへ、登山帰りの夫婦が近づいてきて、なんと私たちが浸かっている露天風呂に入ってくるようだ。
花じい(小声で)「ご夫婦2人が、こちらに入ってくるようですよ。どうしましょう、Tさん。」
Tさん(やっぱり小声で)「そんなこと言ったって、私にゃ見えないんだから、どうもしませんよ。あ、そうだ、皆さんだけで見てないで、脱いでるところでも実況中継してくださいよ。」
花じい「えっ〜。実況中継するんですか。じゃ、ちょっとやってみましょうかね。」
というわけで、花じいは、だ、脱衣風景を実況中継することになったのだった。

「歳の頃なら、40前でしょうか?まずは、靴を脱ぎ始めました。あっ、今度は靴下です。片足で立ちながら、反対の足を膝から後ろにまげて、厚手の靴下を右手で引っ張るように脱いでいきます。ちょっとバランスを崩したのか、反対側の靴下は座って脱ぐようです。さて、次はどちらにいくのでしょう。あ、髪を掻き分けたあと、シャツを脱ぎ始めました。ちょっともどかしそうに、ボタンをひとつずつはずしていきます。おっ、シャツの下は何もつけていないようです。均整のとれた胸に山の涼しい風が当たり心地よさそうです。」
Tさん「いいね、花じいさん。その調子で頼むよ。」
花じい「さて、いよいよ下の方に取り掛かります。」
Tさん「お、よしよし!」
花じい「腰のベルトに手をかけてズボンを脱ぎ始めるようです。あっ、ベルトを緩めたかと思うと、まるでジョーゼットのドレスを降ろすように、すう〜っとズボンを落としました。一瞬のうちでした!本当に早業です!そして一気にステテコも脱ぎ捨てましたぁ〜!」
Tさん「な、なんだあ!そりゃ、男の方じゃないのかぁ?!」
花じい「そうですけど。だめでしたぁ?」
Tさん「だ、だれが、男の方の実況中継をしてくれって言ったよ<`〜´>

そうこうしているうちにすっかり真っ裸になった奥様とだんな様(だと思うのだけど)が、湯船に近づいて来た。二人とも手ぬぐいを肩にかけて悠然と、それぞれにその持ち物を『ぷらぷら』と揺らしながら。

花じい「ザァ〜〜〜・・・・・・」
Tさん「ねえ、ねえ、どうしたの?花じい?ちゃんと実況中継してよ。」
花じい「こちらは北アルプス放送局です。本日の放送は終了いたしました。良い子の皆さんはお休みになる時間です。(真昼間だけど)」
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混浴露天風呂の第3法則発見!?
それは、堂々としている方が優勢となる。当り前か(笑)
63 僕のチェックリスト 山に行く前の日の夕方、「さあ、明日は何持っていけばいいかなあ・・」と悩むことはないだろうか?そんなふうに悩まないために、四季にあわせた「持ち物チェックリスト」を作っておくと便利である。

Aさんはいつも沈着冷静。荷物に漏れもなく万事きちんとしており、やはりチェックリストを作って持ち物を用意しているとのことである。
 その日も防寒具、手袋、帽子、両ストックなど万全な装備で参加されているようだ。しかし、どうも今日は様子が変である。「おはようございます!」と挨拶をしても、ちょっと手を上に上げるだけで、みんなとの話にも参加しようとされないのである。ちょっと具合が悪いのかな?と思ったが、まあ、標高も低いし大丈夫だろう、ということで出発したのであった。

 春とはいえまだ3月である。いくら里山といっても登るにつれて雪が出てきて、頂上はもう一面が銀世界であった。「さあ、ついたぞ!お昼にしよう!」山で食べるお昼ご飯はおいしい。皆でお話ししながらの弁当はさらにおいしいものだ。ところがAさんは、お弁当も食べずに一人離れて、静かにあたりの景色を眺めている。いくら寡黙な人と言ってもちょっと変である。
花じい「Aさん、ここでご一緒しませんか?」と誘ってみた。
すると、Aさん、ザックからごそごそと弁当を出して食べるのかなと思ったら、おいしそうな中身を私たちの方に「んっ!」と差し出すではないか?
花じい「食べないんですか。おなかでも痛いのですか?」心配になって聞いてみるが、やはり「んっ!」と差し出すだけである。
花じい「やっぱり今日はちょっと変ですよ。どうかされました?」
Aさん「いりぇびゃ、わしゅりぇたにょ・・。いいひゃら、たびぇて(入れ歯、忘れたの・・。いいから、食べて)」

Aさんのチェックリストに「入れ歯」が加わったのは、それから間もなくのことだった。
62 リーダーの条件その2 あれは、年末の大雪の日。ねいの里での研修会を終えて、隣の宿泊施設で忘年会をしたときのことだった。乾杯も滞りなく終わり、くつろいだ気分を盛り上げようと、幹事の一人がクイズをやり始めた。「では皆さん!『鳥の名前のついた花の名前』を言ってください!」
皆さん「は〜い!は〜い!」
幹事さん「では、誰にしましょうねぇ。」その時、K会長が「は〜い!、は〜い!」と手を上げた。
幹事さん「「それでは、K会長さん、お願いします。」
K会長「はい、カワセミ!!」
幹事さん「えっ〜と、そうじゃなくって、鳥の名前が入っているお花の名前ですよ〜。他の方どうですか〜?」
Aさん「白花カモメヅル」
Bさん「サギソウ」
Cさん「スズメノテッポウ」
幹事さん「そうですね。他にありませんか?」
そこでK会長、名誉挽回とばかりに手を上げた。「は〜い!今度こそ!は〜い!」
幹事さん「では、K会長、今度は大丈夫ですね。どうぞ!」
K会長「は〜い。オオバノトンボソウ!!」
幹事さん「だからぁ〜〜。。そうじゃなくって・・・」

そう、リーダーとは命にかかわること以外はどうでもいいぐらいで無いとやっていけないのである。
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いやあ、K会長さん、絶好調でしたね。どうしても空飛ぶ昆虫をくっつけたかったのでしょうね。
でも、この怪鳥(いや会長)さん、じいはとっても大好きなんです。ホントですよ。
61 リーダーの条件その1 「リーダーに必要な資質」とはいったい何なのだろう。時折考える事があるがなかなかその答は分からないものである。。

あれは三○○山の会の個人山行として、雪が降りしきる○○山に行ったときのことだった。ラッセルが終わりようやくのことで頂上についた一行は、吹雪を避けて避難小屋にてすき焼きをすることになった。「さ〜て」と、じいがガスコンロを取り出すと、
F会長「いや、今日はいいものを持ってきたんだ。これだと火力が強いから早く料理もできるんだよ!」と、買ったばかりのガソリンコンロを取り出した。

ごそごそとコンロにガソリンを入れ、いよいよ点火となったのだが、なかなかうまくいかないようである。「おかしいなぁ。。」何人かが顔を突き合わせながら悩んでいると、F会長は「なあに、火をつけてみりゃいいにかよ」といいながらライターを近づけてきた。その瞬間、ライターの火が「ふわ〜ッ」とガソリンに引火し、垂れていたガソリンをつたってコンロと燃料タンク全体に火が広がっていった!!「爆発するぞ!」折りしも同じ避難小屋で昼食をとっていたご夫婦が大声を上げた。『なんとかしなくっちゃ!!』じいは慌ててコンロと燃料タンクを持ち上げて外に放り出した。『ジュッ!』燃え上がる炎は一瞬のうちに雪の中にかき消えていった。
そのあと、じいはなんとか説明書を読みながらコンロを準備しなおして、すき焼きも無事終わったのであった。そしてその帰り道のこと、F会長はその日のことをしみじみと思い出しながらのたまわった。「いやあ、今日はわしが慌ててコンロを放り投げたから良かったけど、危なかったよなあ・・。今度から気をつけようなぁ、みんな!」
花じい『ん?コンロ・・?誰が投げたってぇ〜〜??』

リーダーの条件。そう、それは小さいことにこだわってはいけないのである。。。
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いやあ、会長のおっしゃるとおり、今度から全員で気をつけることが一番大事なんですね。
Kさん談「いやあ、危なかったっすねえ。ところで、雪の中から拾ってきて、説明書読みながら料理をしたのは、僕だったんですけど。。。」
花じい「ん?今日の教訓忘れたのかい。小さなことにこだわっちゃだめなんだってば!」
60 やくそう、アイフル? センニンソウという植物がある。白い十文字の花が美しいキンポウゲ科のつる性半低木である。実はこれが薬草であるとのことである。
M夫人「そうなのよ!これで私は随分助かったの。今日取ってきたからこれからやってみようと思っているの。これで10年は元気に頑張れるわ。」
じい「へぇ〜!薬にもなるんですか。よし、私も試してみるかな。で、どうするんですか?」
M夫人「まず、葉っぱを1枚よく揉んで、手首に貼り付けるの。それも左手なのよ。左。」
じい「どれどれ、こんな感じですか?」
M夫人「そうよ。それで、サランラップで手首を巻いて、20〜30分おいておくの」
じい「じゃあ、サランラップ貸してください。こんな感じでいいんですか。」
好奇心一杯のじいであったが、葉っぱを貼り付けたところが、痒くなり、そのうちだんだんと痛み出すと「あれっ〜、痛くなってきたよ。こ、これで良いんだよね??」と不安がもたげてきた。
M夫人「そう、これがだんだん赤くなってきて、次の日には大きな水ぶくれになるのよ。」
じい「え〜?そんなに大きな水ぶくれになるんですか?でも、それって、そんなに、痛くはないよね。。。薬になるんだもんね。。。」
M夫人「結構痛いんよねこれが!!
花じい「そうか、良薬口に苦し、手にも痛し・・ってところか。まあ、10年効き目がある強壮剤だから、しょうがないか。。。」
M夫人「いつ、そんなこと言ったねよ!これは、扁桃腺の薬!!これで10年は扁桃腺が腫れないのよ!
花じい『・・・え〜〜っ?そ、そんなぁ。。・・・・ご、ご利用は計画的に・・ってか・・・。』
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センニンソウは、かぶれたりする毒草として知られておりまする。。(じいはそれまで知らなかったけど。)皆さん真似はしないほうが良いみたい・・・ですね。しかし、扁桃腺に効くというのも、すごい話ですね。私も聞いたことありませんでした。でも、民間療法を紹介した信州の本には、扁桃腺に効くとはっきり書いてありましたヨ。
59 うるわしき師弟愛

あれは初秋の風が吹き始めた頃、富山でも最も花が美しい山の一つ「朝日岳」へ行ったときのことだった。その日はあいにくの曇り空。『こりゃ、雨が降ってくるかもしれないな』誰もがそんな不安を胸に抱きながら、高みに向かって歩いていた。雨が落ちないうちにと早めの昼食を終えて、さあ出発という頃、ついに大粒の雨が落ち始めた。雨に耐えながら五輪の森を抜け、吹上げのコルにつくと、その名に負けぬとばかりに強風までが吹き上げてきた。『雨が痛い!風が寒い!』皆、早くこの場を切り抜けようと早足で歩きはじめたのだが、一人H先生だけは、カッパをきちんと着ていなかったのだろう、強風にあおられて体中が濡れてしまい体が冷えきっているようだ。そして『早く着替えたい』と焦るとなお手間取るという悪循環に陥っていた。その時、H先生の苦難を見つけた元教え子の2人は、『私たちの先生が大変だわ!何とかしなくっちゃ!』と先生のもとに駆けつけた。元お嬢様たちは雨と風から先生を守り、体を拭って着替えを手伝った。そして無事カッパを着込んだH先生は、やれやれという表情で歩き始めたのだった。

 朝日小屋に着いてからも、びしょ濡れのズボンにかわりに替えのズボンを貸したり、「先生、暖かいコーヒーをどうぞ」などと誠にかいがいしく世話をする元教え子たちに、H先生は「持つべきものは、良き教え子であることよ!!」と感極まった口調で、そして少し誇らしげにのたまわった。そしてその日の疲れが出てきたのであろう。しばらくして布団の中ではH先生の寝息がすやすやと聞こえてきた。

「さあ、先生も寝ちゃったし、ザックの中を片付けようか」元教え子の2人は、雨に濡れたザックの中を整理し始めた。「ねえ、グレープフルーツ3個持ってきたんだけど、あしたの帰り道で食べればいいわよね。」「でも重いから、1つは今食べて残りは先生のザックに入れておいたら。」「そうね。ついでに、この漬物リンゴも持っていってもらおうかしら。」「じゃあ、私もこのゴミをお願いしようかな。」な、なんと、元教え子の2人はH先生のザックにあれもこれもと積み込み始めたではないかぁ!

じい「おい、おい、先生だいじょうかぁ?」
教え子Oさん「大丈夫よ!下りは先生強いもの。それにまだまだ若いもの、ねえ!」
教え子Nさん「そうよ。まだ70前だがいね。まだまだ体、鍛えんにゃぁ!

次の日、るんるんと歩く元教え子2人の後ろを、息を切らしながら一人の男が歩いていた。。。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやあ、H先生。うらやましい限りです。学校を卒業後○十年経って、こうして師弟で山歩きができるというのは、なかなかありませんよ!
でも、先生が元気な秘密分かりましたよ。自分も知らないうちに訓練してたのね。。。(H先生談「そんなもん、ちゃんと分かっとるのよ。。。先生は、教え子のためなら何でもできるんじゃよ。ははは・・・・(汗)」)

58 友達の友達は・・・ あれは、花じいも会員になっているある会の農作業に行ったときのことだった。のどかな農村の風景の中、午前中の作業をほぼ終え、午後からはいよいよヤーコンを植えるために畑の整備をすることになった。
その前に、畑に野積みにされ湯気を上げている「たい肥」をこの広い畑に満遍なく撒かなければならない。
花じい『しかし、こ、これは、どうやって撒くのだろう??』ちょっと心配になったが、しばらくしてブルドーザーとたい肥を撒く作業車がやってきた。『ああ、助かった。。』と皆が安心したところで、まずは腹ごしらえをしようと言うことになった。
「さあ、急いで食べてしまおう」皆弁当を広げて食べ始めたのだが、横でごう音とともにたい肥を撒いている作業車の動きには、一抹の不安を感じていた。そ、そして、ついにその時が近づいてきた!!!
「いや、大丈夫だろう!いくらなんでも、ここまでは飛んでこないと思うから!」そんな声にすがるように弁当を食べ続けたのだったが、作業車が我々に最も接近した瞬間、「ゴッオーーーー」というごう音とともに、我々の頭に、顔に、弁当に、たい肥は容赦なく降り注いできたのだった!!!
『ギャーーーーッ』と声が出そうになったが、ここでうろたえては男がすたるというもんだ。ここはジョークの一つでも言わねばなるまい。
花じい「いやあ、皆さん、これでまさしくフンけい(刎頚)の友になりましたねぇ・・・」
Aさん「うまい、花じいさん!でも、文字通り鶏糞(けいふん)の友の方がピッタリかもしれない。。。ハハハ・・・」
Bさん「ん、うまいネ、それ!」と文字どおりやけくその会話を続けていると、作業車のおいちゃんは、いみじくものたまわった。
「やあ、皆さんの友情に水をさすわけじゃないけどこのたい肥は牛糞なんじゃよなあ!!」
一同「・・・・・・・・。そ、そうでしたか・・・。」
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Cさん「しかし、ものが牛糞だけに、皆「ぎゃふん(ぎゅうふん)。。」だったのネ」
花じい「Cさんの座布団、全部取り上げてください。。。」
57 Self‐Confidence キノコの季節がやってくるたびに、残念ながら中毒騒ぎがある。そんなニュースを聞きながら、花ばあが、「ねえ、虫が入っているキノコなら大丈夫とか、なすびと一緒に煮れば大丈夫って聞いたけどそれって本当なの?」と聞いてきた。
花じい「よく、そういうことを聞くけれど、そんなのは、み〜んな迷信だよ!大切なのは、分からないものは食べないこと。自信がないものはやめたほうが無難だね。」
花ばあ「ふ〜ん。やっぱり迷信なのね。。」

そんな会話からしばらく経ったころ、それは、夏の里山に植物観察に行ったときのことだった。暑い時期に里山に行くのはつらいものもある。しかし、やぶ蚊対策さえきちんとすれば、それはそれで、あまり見る機会のない、植物や昆虫の夏のたたずまいを勉強する絶好の機会ではある。
その日も、ミソハギ、ホツツジ、ハルゼミにハッチョウトンボなどを堪能しながら歩いていた。
花ばあ「ねえ、ねえ!!あれ、なあにぃ??」
急に大きな声を出すので、指差す方を見てみると、真っ赤なかさがまだ開ききっていない、タマゴダケがあった。
花ばあ「わあ〜。毒々しいわね。これはどう見ても、毒キノコね!」
花じい「いや、テングダケの仲間ではあるけど、これは食べられるんだよ。それも結構おいしいらしいよ。そうだ、いい機会だから、採って家で食べてみようよ!!」
花ばあ「え〜っ?こんなの食べるのぉ?」
花じい「大丈夫!絶対、大丈夫だからっ!」

家に帰ってから、早速料理に取り掛かった。調理方法は迷ったが、とりあえず、だし汁としょうゆで煮ることにした。すると、毒々しく真っ赤なキノコから、これまた毒々しい黄色の液体が出てくるではないか。
『初めてタマゴダケを食べた人は勇気が要っただろうなあ。。』
妙に感心しながら味見をしてみると、これが結構いけるではないか!!!

花じい「ねえ、おいしいよ、これ!ちょっと食べてごらんよ!」と、いいながら鍋ごと花ばあに差し出した。
花ばあ「ええ〜っ。。こんな気味の悪いの食べて大丈夫?」
花じい「大丈夫だって!私が保証するから!!」
花じいにせかされて、花ばあはしかたなく鍋の中のキノコを箸にとった。
花ばあ「で、でも、本当はあんたも、自信がないんじゃないの?
花じい「ん?どうして?」
花ばあ「だって、このキノコ、なすびと一緒に煮てあるんだもの。。。」

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いやあ、すっかり見透かされてしまいました。でも本当に不安だったんだもん。。
いくら本には大丈夫と書いてあっても、あの色を見ると、迷信でもなんでもいいからすがりたくなるのは、分かるでしょう!あなたも。。ところで、この小話にはまだ別のお話もあって、このタマゴダケ君、山で採って袋の中に入れておいたら、家に帰るまでにさらに大きくなっていたのだ。いやあ、これにはビックリしました。
56 50歩70歩 なんだかんだ言ってももう歳である。春ごろから肩に違和感を感じていたが、夏にはもう痛くて、腕が上にも上がらず、後ろにも廻らなくなって、ザックを担ぐ動作が痛くてならず、仕方なく知り合いの医者に行くことになった。

花じい「先生、四十肩ですかね。」
先生A「いや、立派な五十肩ですよ。」
花じい「で、でも、まだ50前ですよ。。」
先生A「そんな細かいことには拘らないの。病名は五十肩なんだから」
花じい「は、はあ、そうなんですか。。で、いつになったら治るんでしょうか?」
先生A「まあ、五十までには治るでしょうね。」
花じい「そ、そんなぁ。。。まだ2年半もあるんですよぉ。。。」

痛い肩にそれこそ痛くてたまらない痛み止めの注射をしてもらい、打ちひしがれた心を癒すため翌日山に向うことにした。
花を愛で、景色を眺めて少しは気も晴れ、途中で出会った男性と頂上で親しくお話をさせていただき、やっと立ち直ったじいであったが、肩をかばう動作がおかしいと思われたのだろう。話はいつしか、その方向に向かっていった。。。
男性B「やあ、五十肩なのか。。うふふ・・わしも70歳にして肩が痛くて医者に行ったんじゃが、やっぱり五十肩だと言われたんじゃよ。ワハハハ・・・!」
そのじいさんの目は、嬉しくて嬉しくて、輝いて見えたのは、じいの気のせいだったのだろうか。。
じいがおもいっきり落ち込んだのは、言うまでもない。。。

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Iさん談「そうか70歳でも五十肩か!そりゃ、なんとなく嬉しいかもしれないな。」
花じい「でも、40歳台でも五十肩ですって。。。」
Iさん「そうか、そりゃ、ショックだったね。で治ったのもう?」
花じい「だいぶ治ったんだけど、まだまだだね。本当に50歳までかかるのかもしれないと思うと、毎日が暗くってねぇ。。。」
それから、ぶら下がり健康機に叫ぶくらいの痛さを我慢してぶら下がったら、3週間ほどで治りました。。荒療治だと医者からは叱られましたけど。。。
55 キンカン塗って、また塗って・・・ 30数年ぶりの北信5岳「黒姫山」は、往路で車が2台行方不明になるというハプニングもあったが、晴天にも恵まれ、周囲の山々の景色も十分に味わって楽しい1日を過ごすことができた。心地よい疲れに山の余韻を感じながら帰る途中の道すがら、ご近所の農家の方々が秋の稔の野菜や果物を並べて売り出していた。
元お嬢様M2さん「ちょ、ちょっと止めて!お野菜を買ってこなくっちゃ!」
野菜や果物を見たとたんに、いつもの主婦に戻っているM2さんにつられて一緒に降りたのだが、その活きの良い野菜に惚れて、花じいも大きなピーマンを2袋も買ったのだった。「5個入りで150円だなんて、儲け、儲け!」ご満悦で帰ってから、早速ピーマンと豚肉の炒め物を作って家族で食べたのだが、これがどういうわけか、すごく辛かったのである!
じい「こりゃ、唐辛子なみの辛さだね!安いのも無理はないなあ!」
といいつつも、お皿の上のピーマンをすべて平らげた花じいであった。
さて、お食事の後はお風呂である。そして、風呂上がりにゆったりとテレビを見ながらくつろいでいると、なぜか知らないが、顔と目がヒリヒリとするではないか!そ、それだけではない。なんときん○○ヒリヒリ痛くてならないではないか!まるで虫刺され用のキンカンを塗ったあとのように!
じい「こりゃ、どうしたんだ?何がどうしてこんなにヒリヒリ痛むのだろう!?」
すぐには何がおこったのか分からない花じいであったが、そのうちやっとその原因に思いが至った。そう!あのピーマンだ!あの激辛ピーマンを調理した手で、お風呂で念入りに洗ったからだ!

「大変だわねぇ。。。でも、私でなくって良かった!」花ばあは人ごとのようにつぶやいて、もう1袋残っているピーマンを見つめながら、さらにのたまわった。「まあ、毎週、毎週山に行ってるから罰があたったのね。罰が!あとの1袋もお料理頼むわね!」
花じい「は、はい。。。わ、分かりました。。。」

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(いやあ、これはヒリヒリと痛かったです。次の日になっても顔とキン○○がヒリヒリしてたんですよ。皆さんも気をつけてくださいね。
Kさん談「しかし、キンカンを股に塗ったことがあるんかいな?」
花じい「いやあ、大学時代のクラブ合宿で、悪友たちと一緒に、寝ている友人のキン○○にそおっと塗ったんだけど、かなり痛かったみたいだよ。」
Kさん「悪い奴らだなあ。ところで、もう一袋残ったピーマンはどうしたの?」
じい「もちろん食べましたよ、ちゃんと。ただし、今度はゴム手袋をしてお料理しましたけどね。。。」)
54 杞憂

あれは、朝日町の里山へいろいろなお花を楽しみに行った時のことだった。久しぶりに昔からの会員も多く、昔話に花が咲いた。
元お嬢様Mさん「立山会に入ったばかりの頃はいろんな失敗があったわよね。私が初めて参加したとき、花じいが『スパッツ持ってきて』っていうから、ズボンの下に履くスパッツ持って行ったのよ、私。でも、山の中で『はい、ここでスパッツを付けてください』と言われたとき、ズボンを下ろさなくて良かったわ。ほんと大恥かくところだった。。。」(ちなみにスパッツとは、雨などで道が水浸しのときなどに登山靴の上に付けるものです)
元お嬢様Uさん「あはは。良かったわネェ。私も今だから言うけど、五色ケ原に行ったときザラ峠で『ねえ、花じい。山の解説書にザラ峠で石車に乗って降りていくって書いてあるんだけど、どこから車が出てるの?』って聞いたら、花じいが笑い転げて動けなくなってしまったのよね。」
花じい「いやあ、皆さん、いろんな勘違いがありましたねぇ。今となったら懐かしいくらいですねぇ。。。」
そこへ、横で話を聞いていた比較的新しい会員の元お嬢様M2さんが話に入ってきた。「ははは。皆さん、面白い人ばかりなのねえついていけるかしら、私?あっ!ねえ、花じい。このお花はなんて名前なのぉ?」
花じい「ミツバツチグリ(三葉土栗)だね。バラ科のキジムシロの仲間だよ。」
元お嬢様M2さん「えっ?うふふ、エッチなお名前ね。(照れながら)」
花じい「ん?どうして?」
元お嬢様M2「だって、『ミツバチチクリ(三葉乳繰り)』って言うんでしょ、これ。」
花じい『心配ご無用!!!あんたが一番だよ!私が保証するよ。。。』(笑って苦しくって、とても言葉にならないのだった。)
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(いやあ、これはもう、久々のヒットでしたね。帰りの車の中でまで笑い転げていましたよ。。これは座布団5枚ぐらいですかね。
ところでスパッツのMさん。その時少しでもズボンを下ろしてくれれば、単独でこの小話に登場できたのにねぇ。いやあ残念。。)

53 発車オーライ

そう、あれは千石城山に春を満喫しに行った日のことだった。
頂上では、剱岳をはじめ大日岳などがその大いなる姿をあらわして我々を出迎えてくれた。素晴らしい山々をひとしきり眺めたあとは、思い思いに昼食となる。
じいが小さい缶ビールを飲みながら、ラーメンを作っていると、「ポン!」とコルク栓を抜く音が山々に木霊した。
A
さん「いいワインが手に入ったんですが、どうですか?」とじいたちに勧めてくれるではないか。
じい「『しかし、運転もあるしなあ・・・。』誰か、飲まない人いる?」
Bさん「あっ、俺、飲まないから。。。」
Aさん「そうですか、じゃあ、せっかくだから3人でいただくことにしますか。」
じい「じゃあ、乾杯! おおっ!これは上等なワインですね。」
A
さん「おっ!わかりますか!もっとやってくださいナ!」
ついつい調子に乗ってじいたち3人は、ほろ酔いどころか、他にもあった焼酎までもいただいて、しっかり出来上がってしまった。飲んでしまえばもうこっちのもんだ。じいは山に向かって大声で歌を歌い、いい気分で山頂を後にしたのであった。
下りはほぼ1時間。当然酔いが醒めるわけもない。
じい「Bさん、じゃ、運転お願いしますね!」と車のキーを差し出した。
Bさん「えっ?何それ?」
じい「だって、飲んでいないのBさんだけですもん。」
B
さん「えっ〜〜。そりゃあ、飲まないとは言ったけど、いつ運転するゆうたよ??だって、俺、運転免許もってないもんなあ!」
一同「えっ〜〜〜!?」(そして、しばしの沈黙・・・)
花じい「『ピポパピ・・・』もしもし、上市川第2ダムのもう少し上の方にいるんですが、運転代行1台お願いできませんか。。。。
早乙女湖はあくまでも青く輝き、花じいたち4人の心の内を知るよしもなかった。。。
(いや張本人の1人は違うでしょうね、きっと。。。)

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花じい「しかし、運転しない人は、そんなこと気づかないんですね。」
Kさん「いや、俺も免許持ってないけど、そんなことぐらいはちゃんと分かるぞ!」
花じい「そうか、やっぱりBさんらしいや。。」
Kさん「そんなことぐらい、ちゃんと自分たちで確かめんかい!」
花じい「は〜〜い」

52 おおいなる勘違い
あれは老若男女8人が朝日岳から日本海を目指したときのことだった。
お世話になった朝日小屋をあとにして、我々は犬ケ岳北部の栂海山荘に向かっていった。
この小屋は栂海新道を作った皆さんが建てた無人小屋でとてもすばらしい小屋である。
しかし水はなく、当然手前で水を確保して利用することになる。

最後の水場で、我々はちょっと多目だが、当夜の食事と飲用、翌朝食、そして次の水場までの飲み水、さらには今夜の水割用も含めて、約30リットルの水を確保することとした。結構あるなあと思ったが、すかさず黒部のSさんが8リットルを持ってくれた。じいは1歳年上なので7リットルとした。「あとの15リットルは6人で頼むよ!」とお願いして、暑い日ざしの中を再び登り始めた。
しかし、というか、やはり辛い。ここまで十分疲れており、その上にこれまでの荷物に急に7、8Kgも増えたのだから当然だが、さすがのSさんも苦しそうであった。
『ああ、なんでこんな辛い思いまでして、山に来ているのだろう?』心の中に山の悪魔がささやいた。『下にいたら冷たいビールが手元にあるのに・・・』
そんなじいの心を見透かしたようにMさんが言った。
勘違いしたら、あかんぞ!今、この瞬間のために山に来とるがやぞ。いまが一番楽しいがやぞっ!!
『ああ、そうであった!俺は勘違いするところだった。今こそが試練のときなのだ。この瞬間を楽しいと思うようでなければ、真の山びとではないのだ!!!』
と思いなおして「そうだったね、Mさん!もう少しで勘違いするところだったよ!」
氏の名言に感動したじいは思わず振り返った。するとそこには、残りの15リットルのうち1リットルだけを持って、しかもごくごくと飲みながら登ってくるMさんの姿があった。。。
じいとSさんの2人が勘違いしまくったのは言うまでもない。。。
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(いやぁ、名言でしたねぇ〜、あれは。実に感動ものでしたよ。まあ、年の差もあるので1リットルはしょうがないでしょう。30リットルには栂海山荘までの飲み水も入っているのですから、飲んでいいのですよ。でも、ホントに疲れてしまったんだよなあ、あれは。。。)
51 穂高よさらば あれはまだ紅葉には早いころ、西穂高を目指したときのことだった。
新穂高からロープウエイを乗り継いで、さらに登ること1時間、我々は○○山荘についた。このあと、独標、西穂高を目指すのだが、時間は十分過ぎるくらいにあるので、モーニングコーヒーをいただくことにして、山荘に入っていった。
じいたち「すみません。コーヒーください。」
お兄さん「はあい。」気のやさしそうなお兄さんである。我々にコーヒーを出してくれて、どこのご出身?などと話をしていたところへ電話がかかってきた。
お兄さん「はい。○○山荘です。宿泊のご予約ですか。はい、こちらでどうぞ。」
どうやら、紅葉の時期の予約のようである。
お兄さん「はい、では、10月○日。8人さんですね。お待ちしてます。えっ?駐車場はどれぐらいあるかですって?そりゃあ、その気にさえなれば、10台ぐらいは停めれますけど、問題はそういうことではなくって、、あっ、まだ切っちゃだめ!!!あ、切れちゃった。。。」

こ、これは、いったいどうするのだろう?
するとお兄さん、少しも騒がず、「♪来れるもんなら、来てよねぇ〜ふふん♪」
鼻歌を歌いながら、今受けたばかりの予約を消しゴムで消し始めた。。。電話の主がその後どうなったか、知る由もない。。。
50 山上のコンビニ

あれは、Kさんをリーダーに大日岳に行ったときのことだった。折りしもその日は、子供たちとその母親の団体が、富士登山に向けた訓練に登ってきていた。こう いう団体には、普段山に登ったこともないのに、「富士山?わあ〜。私も行きたい、行きたい!」と言ってついてくるおっちょこちょいが混じっていることがある。それでも、登山経験のある指導者に頼んで事前訓練にくるというのは、しっかりしたリーダーだと思う。しかし、やっぱりと言うか、案の定、猿ガ馬場まで きたところで、数人の母子が根をあげた。
子供達「もう歩けないよう〜」
母親A「登山ちゃ、こんなに辛いがけ???もう、だめぇぇ・・・」
と始まってしまった。
そこでわれらがKさん「あんたら、上に行ったら、コンビニがあるさかい、頑張らんかい!」
子供達「本当?アイスクリームもあるぅ?」
Kさん「ああ、アイスクリームでもアイスキャンデーでも、なんでもあるさかいに、がんばらんにゃ!」
お母様A「あれぇ、そんながけ。なら、私、化粧品と油取り紙買ってこようっと!」
お母様B「へえ〜!今で、ほんとにどこでもあるがやねえ。で、どこのコビンニ?サークルK?センブンイレブン?」
Kさん「さあ、どこのやったかのう。たしか、この上は、ローソンだったよなあ、みんな!
花じい「おう!そうや。ローソンやった!」
急に元気になった子供と母親たちは、勇んで遥かな高みを目指して行った。
山の神様、うそつきの私たちをお許しください。

49 特注アイゼン!?
鳥海山2

あれは、4半世紀ぶりに鳥海山を訪れたときのことだった。1日目の晴天が嘘のような天気の中、立山会の25名は小雪渓、大雪渓を降りていくこととなった。この年は雪が多く2つの雪渓は1つとなり大大雪渓となっており、我々は用意してきたアイゼン(氷雪の上を歩くときに滑らないように登山靴につける「爪のついた山の小道具」)を着用することとしたが、初めてアイゼンをつける人も多く、じいが着けた後もたくさんの人々が悪戦苦闘していた。元お嬢様のKさんもその一人である。
Kさん「ねえ、じい。これでいいんでしょう?」
左足に右側のアイゼンを着けて得意そうに問い掛けるKさんには申し訳なかったが、間違えたまま覚えてもいけないと思い、
花じい「それは、左右が反対ですね。金具と紐の余ったのが外側にくるのが正しいんですよ。」
Kさん「ああ、そうかあ。私この間買ってきたばかりだから分かんなくって。。。」
花じい「まあ、よくある間違いですから。。。いい練習になって良かったですね。(できれば付ける練習してきてね。。)」
ところが、準備が終わった人々がだんだん増えてきて、Kさんはあせってきたようだった。ピカピカの8本爪アイゼンをガチャガチャとやっているがうまくいかないようだ。
Kさん「ねえ、やっぱりこのアイゼンおかしくない?どう見ても紐が変だわ!」
花じい「それは前後が逆なだけですね。まあ、たまにはある間違いですから、落ち着いてネ。」
Kさん「あはは、私ったらそそっかしいから・・・」
Kさんは、あせって弁解しながら、今度はそのアイゼンを前後にくるりと裏返して、その上に左足を“どん”と置いた。
Kさん「あれっ?このアイゼン、リバーシブルだわ!上の方にもツメが出てるぅ!」
花じい「そ、それは、究極の間違え方ですね。。。

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花じい談「
久方ぶりに立山会会員による小話ネタでしたね。ご協力ありがとうございます。しかし、Kさん。3通りの間違いを一気にやっちゃうなんて、さすがですね。裏返しに履くというのは、花じいも予想してませんでしたよ。。。座布団3枚もらってくださいネ。あっ!あとでご本人から聞きましたが、アイゼンをつける練習はちゃんとしてきたのだそうです。『練習ではうまくいったのにぃ・・・』ってことは良くある話ですから元気だしてね。。。」

48 初体験・・・
鳥海山1

あれは、花じいがまだ若かい、大学生の頃だった。鳥海山登山にM先輩と2人で夕方の早めに出かけるはずが、いつものように先輩の実験が失敗に終わり、出発はあたりが真っ暗になってからになってしまった。先輩のミニカは2人分の荷物と我々2人でいっぱいでかなり窮屈だったが、文句は言えない。それなりに快調に飛ばして、山形県に入りだいぶたった頃、今日はどこに泊まるのだろうと心配になり聞いてみた。
M先輩「えっ?この車に決まっているだろぉ。」
若かりし花じい「えっ?いやですよぉ。こんな窮屈な車でなんて。ちゃんと寝ないと山に登れませんから、私。」そう。その頃のじいは、十分我が儘で、贅沢で、軟弱であったのだ。
M先輩「しかたのない奴だなあ。じゃあ、そこらで泊まることにしよう。」
だが、こんな遅くに、どこに泊まるつもりなんだろう?少々不安にはなったが、これ以上は先輩に逆らうこともできずに黙っていると、カラフルなネオンサインのついたラブホテルの前で、その車は急にハンドルを切った。
若かりしじい「え〜っ!こんなところで泊まるんですかぁ?」
M先輩「贅沢言うんじゃない!ここしかないの!」
若かりしじい「そりゃまあ、全部先輩持ちですから、贅沢は言いませんけど。。。もっとましなところはないんですかぁ。」
M先輩「馬鹿言え。宿泊代は割り勘だ!」
若かりし花じい「えっ?そうなんですかぁ。じゃあ、よく見学してこないと。後学のために。。。」
しかたなく(興味津々?)中に入ったじいは、部屋の中をいろいろと見て回った。『ふ〜ん。なるほど、こうなっているのか。ふむふむ。。。
見学がひととおり終わって、風呂に入り(もちろん別々だよ!別々!)、寝ようと思ったら、そこには、まあるい大きなベッドが一つあるだけだ。上を見ると大きな鏡まではってあるではないか!なんなんだ、このベッドは。。。
若かりしじい「こ、このベッドで2人で寝るんですかぁ?」
M先輩「ああ。2人で回転しながらな。ムフフ・・・」
花じいが眠れなかったのは、言うまでも無い。。。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(いやあ、ラブホテルに入ったのも、回転ベッドで回りながら寝たのも初めての経験でした。もちろん、なあにもありませんでしたよ!何も!目が回った以外は。。
Nさん談「何も回転までさせなくてもよかったんじゃないの?でも、安く上がって良かったね。」
花じい「いや、結構高かったんですよ。これが。」
元お嬢様IさんMさん談「そうなのよ。泊まると結構取られるのよねえ!」
おい、おい、なんで知っているんだぁ。。。まっ、いいか。。。)

47 翼を下さい あれはNさんの自宅に幼鳥が迷い込んだ日のことだった。窓ガラスにぶつかって脳震盪を起こした幼鳥2羽を段ボールに入れて、NさんはYさんの実家へ慌てて飛んで行った。
「ばあちゃん、Yはどこにいる?」「ああ、今日もステーションや」
ステーションとは、婦中の山の中にある「渡り鳥観測ステーション」のことである。Nさんは、またもや慌てて車を飛ばし、段ボールを抱えて山道を登って行った。
Nさん「おい、Yよ。このトンビの幼鳥、何とかしてやってくれよ。なんか飛べないみたいなんだ。
Yさん「えっ?でも、これ・・・」
Nさん「とにかく、頼んだからな。じゃあな!」
Yさん「おい、ちょっ、ちょっと待てよ!」とまで言い終わらないうちに、わが道を行くNさんはもう山道を降り始めていた。
どうしたものかと迷ったYさんだったが、とにかく今日の作業の後片付けをしてしまおう、と幼鳥を箱に入れたまま外へ出て行った。

そこへ、他のボランティアのみんなが帰ってきた。
「おい、何だこれ?ひょっとして差し入れか。」とOさんが覗いたとたん、幼鳥はOさんの顔を突っついた!「この〜っ!鍋にして食っちまうぞ!」
Mさん「おいおい、落ち着けよ。でも、なんでまた、こんなもんこんな山まで持って来たんだぁ?」
皆「さあ〜?」

皆が首をひねっているころ、Nさんの隣の家のじいさんは、一所懸命ご近所を歩き回っていた。「誰か、うちのニワトリの若いの、どこ行ったか知らんけぇ〜」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(Y氏「いくら何でも、トンビとニワトリと間違えるかぁ〜。普通」
じい「でも山の中まで段ボール抱えて運んできたんだから、そのあたりは立派ですよネ。で、あの後、ニワトリはどうなったんですか?」
Y氏「別に何とも無かったよ。ニワトリだから飛べないのは当たり前だからね。Nの家に持って行って隣の家に届けたら、じいさん喜んでたなあ。」)
46 触らぬ神に祟り無し
(ばれちゃったので後悔、ではなく公開します。)
そう、それはほんの不注意が招いたことであった。
その日の田中(たんなか)高原はお花はもう少しあとのようで、ちょっと寂しかったが、初夏の陽光を浴びて楽しく歩いて頂上に着いた。お弁当を食べて皆と楽しいひと時を過ごし、「さて出発!」と立ち上がった時、お尻がなんとなく湿っぽいではないか?おかしいなと思い下を見てみると、な、なんと、そこには押しつぶされたツタウルシの幼樹がたくさんあるではないか!
『いかん!し、尻がかぶれてしまう!』思わずズボンを触ろうとしたが、手で触ったら手までかぶれてしまう。しかたがない。これはそおっとしておくに限る。ということで、冷たさとかぶれる恐怖に耐えながら下山し、家路についたのであった。
家に帰り、慌ててお風呂を沸かし、そおっとズボンを脱ぎ、ステテコを脱ぎ、最後の一枚を脱いで、お湯を張った洗面器にお尻を浸して、プルプルと洗ってから、鏡で見てみたが(見たくはないのだが)、どうやら何もなっていないようだ。
『ああ、よかった!これでお尻が真っ赤になったら本当の「お猿さん」になってしまうところだったよ。』と、ほおっと胸をなでおろしたのだった。
さて、このズボンたち、すぐに洗おうかとも思ったが、かぶれる危険性が高い。ここは、乾くのを待ってゴム手袋をして洗うのが万全だと思い、洗濯機の前に置いておいたのだが、山歩きの心地よい疲れにそのうち忘れてしまい、結局そのまま寝てしまったのであった。

翌朝、花ばあが何か言っているので目がさめた。
花ばあ「ねえ、なんか私、顔とか首とか痒いのよ。何かなってなぁい?」
見てみると、顔や首が赤く腫れ上がっているではないか。あれだ!あのズボンをさわったんだ。それしかない。。。

花ばあ「どうしたのかしらねぇ?昨日草むしりしてて何かにかぶれたのかしら?洗濯したあと何かかゆいのよ」」
花じい「き、きっとそうだよ。。。うん。。。」(怖くてとても本当のことが言えない。)
(触らぬ「山の神」にも祟り無しじゃぁ。。。しばらく、いや、ず〜っと、黙っておこう。)
・・・・・・・・・・・・・・・・
(黙っていたのに、どうしてばれたんだろう???)
45 愛しの「まゆみちゃん」 ある日の朝、ご飯を食べていると、どうも花ばあの様子がおかしい。。
何かじいを睨んでいるように見えるではないか。。。どうしたのだろうと思っていると、
花ばあ「「まゆみ」って誰よっ?!」と、ぼそりと、しかし強い口調で言うではないか!
花じい「はっ???」
花ばあ「隠したってだめよ!寝言で言ってたんだから!」
花じい「そんなこと言ったって、何のことか分からないじゃないか。」
花ばあ「うそばっかり!」
花じい「もう、知らん!」
花ばあ「もう、勘当よ、勘当!」(ちょっと言葉づかいがおかしくないかぁ?)

朝の喧嘩は、一日のお仕事にもひびく。その日はなんとなく気分が乗らない一日であった。
しかし、いったい何事が起きたのだろうか。そりゃ、お山ばかり、お花ばかりの日々を送ってはいるが、自慢じゃないが浮気はしたこともなければ、する相手もいない。。。
家に帰っても、無言の喧嘩が続く中、HPを更新するのに図鑑を開いたところで、やっとその原因が判明した!

ニシキギ科ニシキギ属 マユミ(落葉小高木)

これが、今回の騒動の張本人であったのだ!
実は、以前からマユミの雌雄異株性について疑問を持っていたのだが、最近、いわゆる雌株と雄株が分かっている個体のそれぞれの花をゆっくりと見る機会があり、マユミはヘテロスタイリーなのか、単なる雌雄異株なのかと考えていた。ヘテロスタイリとの学説もあり、一方の稔性が著しく低いか、稔性を失ったものなのではないか、と考えているようだ。しかし、稔性を失っている場合、機能的には雌雄異株とどう違うのだとの意見にどう答えたらいいかなど考えていたのであったが、どうやら夢の中でも考えていたようだ。
そして、その話を花ばあにしたところ、やっと、何とか、納得してくれた。。。

花じい「だいたい、俺が浮気なんかすると思った?」
花ばあ「毎週ほっつき廻っているから、勘違いするのよ!」
花じい「ハハハ!あんただけでも十分過ぎるくらい十分なのに、これ以上やっかいな状況を作るわけがないじゃん!」
花ばあ「どういう意味よ、それっ!」
花じい『いかん!口が滑った!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(いや、とんだことで、疑いをかけられてしまったが、寝ていても、起きていても、口は災いの元である。。。気をつけようね、皆さんも。。。)
44 イケナイ理由

鍬崎山は、富山のマッターホルンと呼ぶ人もいるとおり、富山市内から見ると美しい三角形が天を突いた、2,090mながら気高い山である。
その日は朝から快晴で、絶好の山日和であった。一仕事終わったこともあって久しぶりに休暇をとり、3度目の鍬崎山へ登ることにした。一人っきりのお山かなと思っていたが、他に2人が鍬崎山を目指しており、誰が言うともなく3人のパーティが成立した。大品山を越え、鞍部を過ぎ、時折吹く秋風に吹かれながら、3人はようやく「富山のマッターホルン」に到着した。さっそく缶ビールを飲み、昼食をとり、お山の話が弾んでいるところへ「じゃじゃじゃ、じゃぁ〜ん」突然携帯電話が鳴った。“運命”のメロディーは会社からである。しぶしぶ電話に出ると、どうやら急な案件が出てきたとのことであり、至急出て来いとのことであった。出て来いって言われたってここは「富山のマッターホルン」だ。そんな簡単に出て行けるわけもない。そういえば朝の電話で『風邪気味だから大事をとって休ませてほしい』とウソをついたのであった。『しょうがない、ウソの上塗りでもするか』
じい「すみません、ちょっと熱が高くなったもんで・・。勘弁してください。」と、ここまで言ったところで、気を利かせて離れていた同行者2人が薬師岳に向かって「ヤッホーーー!」と大きな声で叫んでくれたではないか!!!
電話の主「何だ、今のは?ほほっ〜、山にいるのかぁ。ふふふ、高いのは熱じゃなくって標高なんだなぁ!」(あ、あとはご想像ください・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
花じい「いやあ〜、いっぺんに信用が無くなっちゃいましたよ。しかし、あの2人には参りますよねぇ。気を利かせるのなら、最後まで気を利かせてほしいですよねぇ。」
花ばあ「まあ、自業自得ね。でも、最近よくお葬式が入ってるけど、誤解されてるんじゃなあい?」
じい「そ、そんな、釣りバカの浜ちゃんじゃあるまいし!」
花ばあ「ふん!花じいも浜ちゃんも良く似たもんよ!家のことはほっぱらかしで、海と山の違いぐらいじゃない!」
じい「は、はぁぁぁ〜・・・(ひれ伏して)」

43 はい、チーズ2
(下の「はい、チーズ」を読んでからにしてね!)
そう、それはほんのでき心であった。黒部川源流の稜線歩きから1年を経過した夏の日、じいはお花を見に雪倉岳へ登っていた。雪倉岳の南斜面にある、このあたりの特産種(雑種起源といわれてるけどね)ユキクラトウウチソウの観察のためだ。着いてみるとあたりはお目当ての花が満開、中開き、いろいろである。やったぁ!これはかなり楽しめるぞ!いそいそと観察場所を決めてから、ちょっと頂上にもあいさつしてこようと思い、荷物を置いて登っていくと、頂上では朝日岳から白馬岳に向かう登山者が記念撮影をしていた。
見知らぬ元お嬢様「すいませんけど、皆でいるところの写真、お願いできますか?」
じい「ほいほい。私でよければどれだけでも」
と撮ろうとしたとき、じいの頭の中に黒部川源流での、あの「はいチーズ」の場面が横切った。『よし、ちょっとこの人たちを笑わせてやるか。ムフフフ。。。』
じい「じゃあ、いきますよ!はい、チーズ!」
そして、あの時のあの人と同じようにくるっと廻って向こうの山を写した。「カシャ!」
花じい「ハハハ。びっくりしたぁ?」と言い終わらないうちに、手元のカメラが『ジィ〜ィ〜ィ〜ィ〜・・・・』と音を出し始めたではないか!!!
見知らぬ元お嬢様「あ〜ん!それが最後の1枚だったのにぃ〜
じい『そ、そんなあぁ〜』
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(と、まあ、こんなこともあるのかと思うぐらいのグッド(いやバッド)タイミングでした。笑わせるつもりが泣かせてしまった。。。平謝りに謝って、お花とお山の解説で勘弁していただきました。。。というわけで、皆さんあまり真似はしないほうがいいみたい。。。)
42 ホワイトアウト
あれは奥志賀高原へ1泊2日で仲間10人とテレマークスキーを楽しみに行ったときのことだった。1日目はときおり吹雪になりつつも何とかスキーツアーを楽しんだ。しかし、その夕方から日本列島全体は10年ぶりという強い冬型の気圧配置に覆われ、志賀高原一体でも大雪警報が発令された。猛烈な雪だ。平地の大雪警報とは違い、深山の大雪警報は並の雪ではない。朝起きてみると、宿も車ももうすっぽりと胸までの新雪に覆われていた。
「これはいけない。早めに帰ったほうがいい!」リーダーのMさんは素早く、そしてきっぱりと決断した。そうと決まればまず車を掘り出さねばならない。掘り出すのに、10人がかりで1時間もかかった。しかし車1台はバッテリーが上がっていた。そしてもう一台は燃料(軽油)が無くなっていた。
Mさん「いったい、どうしたんだ???着いたときは十分あったのに?」皆、顔を見合わせていると、後ろの方でNさんがばつが悪そうに「昨日は体調がよくなかったから、スキーに行かずに車の中でラジオを聞いていたんだ。。暖房かけて、一杯飲みながら。。。」と白状した。Nさんを責めても問題は解決しない。
「燃料調達部隊を出そう。」またしてもリーダーのMさんは素早く判断した。そして4人の決死隊を募ることになった。「よし。おれが隊長になって行くよ。」責任を感じたNさんはすかさず申し出た。「おい、酒の1升パックが2つとジュースのペットボトルが4、5本あったよな。それに入れて来よう。」やる気満々のNさんの気転のきいた判断のもと、決死隊4人は雪の中を果敢に出発した。そう、それは午前9時前のことだった。
しかし完全装備の荷物を背負っての深い雪中のスキー行軍である。だんだんそのお酒とジュースが重くてならなくなってきた。
「おい、これ飲んでからにしないか。。。」Nさんはぼそりと言った。降りしきる雪の中、4人は荷物の軽量化のためにしかたなく飲み始めた。と、ところが。。。
O
さん「寒いから熱燗にしませんか。」とコンロを取り出す。
Nさん「おっ!それならいいつまみがあるぞ!」と、干しフグ、かまぼこ、チャーシュー、サラミ、チーズにお饅頭(?)まで取り出しいやあ、きのう車の中で飲んで、残しておいてホント良かったよ!
こうしてとうとう大宴会になってしまった。。。そして2升の酒がなくなる頃には、とっくにお昼をすぎてしまっていた。。。
「おい、いくらなんでももう出発しなきゃやばいんじゃないか。」後ろめたさも手伝ってその後だけは必死に歩いた4人だったが、千鳥足のスキーではなかなか前に進まない。待ちくたびれた残留組と合流し、富山に向かって出発したのは、あたりが薄暗くなった5時過ぎだった。豪雪と大渋滞の中、じいたちが次の日遅刻してしまったのは、言うまでもない。。。
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Y
氏:じいは、決死隊?それとも残留組?
花じい:それは内緒。

A氏なんで、中味を捨てなかったの?やはり山の環境のため?
花じい:えっ?そりゃあ、もったいないからに決まってるでしょう。(あっ!ばれちゃったよぉ。。。)
A氏:でも、空のペットボトル持ってきゃいかったんじゃないかぁ。。。(ごもっとも。。。そういえば部屋の中に転がっていたような。。。)
41 バラ食う虫も好きずき あれは、常願寺川をさかのぼって行った日のことだった。じいとAさんは、川原にあったノイバラからバラ一般へと話が弾んでいった。いろいろなバラの見分け方の話となった。
「しかし、バラ属ってむずかしいよねえ〜」と、じいが言うと、
元お嬢様B「なになに。どうしたって?」と2人の話に割り込んできた。いつもは花の話には興味を示さないのに、今日は妙に積極的だ。知りたいのであれば「バラ属のむずかしさ」を説明しなくっちゃあなるまい!
じい「そうだねえ。バラ属は花より葉や托葉が大きなポイントなんだ。托葉が枝に離生するか、着生するか。鋸歯はどうかで、かなりの種は同定できるんだ。でも、バラ属の同定は見慣れないと難しいんだよ。例えばね・・・」とここまで説明したところでBさんはすう〜っといなくなってしまった。
花じい『これからが面白いのに、どうして行っちゃうの〜?』と、追いかけて説明の続きをしようとしたところで、Aさんに止められた。
Aさん「いいのよ・・・じい。あの人は別のバラ族と勘違いしただけだから・・・」
花じい『んっ?何のこっちゃ?』

(Y氏談「普通、追いかけてまで説明するかあ?」じい談「でもホントにこれからが面白いんだよぉ〜」)
40 試食会 あれは山にたくさんのキノコもでており、大変いい季節のことだった。
いつものように、我らが誰かさんと一緒に山を歩いていると、傍らに真っ赤な毒々しいキノコが生えていた。
じい「このキノコは何ですか?食べられますか?」
誰かさん「ああ、これはドクベニタケといってちょっと辛いけど、水にさらせば食べられるよ。俺はなべに入れたり、そのまま焼いたりして食べたこともあるよ。」
そうか、それなら試してみよう。ということで、しっかり採っていって家でなべものに使ってみた。「さあ、食べよう。」とじいは一杯飲みながらつついた。
花ばあ「このキノコなんてキノコ?」
花じい「ドクベニタケだよ」
花ばあ「えっ〜!こんなのたべるのぉ???」
花じい「大丈夫だよ。ドクってついてるけど毒キノコじゃないそうだよ。ちゃんと水にもさらしたし、まあ、そんなに美味くもないけど、強めの味付けにしたからまあまあの味だよ!」
と言いながら、頬張って食べていると、花ばあが親切にもキノコ図鑑を持ってきて調べてくれた。「こ、このキノコ、毒キノコって書いてある!!!」
花じい「えっ?。。。(箸のうごきが止まったまま。。。)」
花ちび「ぼ、僕、食べたくない。。。」
花ばあ「そうよね。。。明日になってお父さんが生きてたらにしましょうね。。。
花じい『ぜ、是非、そうしなさい。。。
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(そのあと、どうなったかですって?もちろん生きてますよ。でも結局花ばあも花ちびもたべませんでした。皆さんも食べないほうがいいですよ。誰かさんのお腹は特別製なんだから。えっ?じいもですって?じいはそれほどでもないですよ。「猿の惑星」ではお腹をこわしましたもの。。。後日、誰かさんに聞いたら、食べたのはたった1つだけだそうだ。5つも食べたじいをどうしてくれるぅ。。。どうもしないか、生きてるもんネ。)
39 願望達成能力 明日は妙高山へ登るという晩、天気を心配しながら一杯やっていると、元お嬢様のYさんから電話がかかってきた。
Yさん「じい、明日は晴れるかしら?」
花じい「大丈夫!晴れます!(きっぱり)」
Yさん「あら、困ったわねぇ。明日晴れたら稲刈りなのよ。雨でも降らないかしらねぇ。」
花じい「そ、それは困りましたねぇ。。。」

翌朝5時少し前。我々21人は、今にも雨が降りそうな空を見上げながら、一応Yさんがくるのを待っていた。す、するとやって来たではありませんか。Yさんが!
Yさん「家の前はもう土砂降り!今日の稲刈りは中止よ!これで皆と一緒に行けるわぁ!!!ああ、よかった。」
一抹の不安を抱えながらも出発した我々22人(いや1人は心配なんてしてないか)だったが、バケツの底が抜けたような大雨に襲われたのは、それから10分後のことだった。妙高山登山が中止になったのは、言うまでもない。。。
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(いやあ!ひどい雨でした。上越地方に「大雨、洪水、雷警報」が急遽発令されましたよ。
でも、せっかくだからどこかへ行こうということになって、結局、戸隠高原の散策に変更しました。皆でお花や木々を見て、お蕎麦を食べて帰ってきました。しかし、Yさんの願望達成能力には、残りの21人が束になってもかなわなかったです。はい。。。)
38 愛情一粒
(栂海新道1)
「いざというときのために、ウエストポーチに「キャンディー」でも持っていたら?」と花ばあがレモン風味ビタミンC入りのキャンディーを買ってきてくれた。4月27日の一件に懲りた花ばあの「傾向と対策」の1つのようだ。
じいは「ありがとネ」と心から感謝してウエストポーチにしっかりと入れて、朝日岳、栂海新道への2泊3日の山旅へと向った。
この栂海新道は北アルプスと日本海を結ぶ長い長い稜線の登山道で、小野健先生ら「さわがに山岳会」の皆さんが開き、維持している道である。さすがに3日目ともなるとじいもだんだんバテてきて、歩きに力が入らなくなってくる。アルファ米の朝食が少なかったこともあり、しゃりバテ気味のようだ。
『こういうときは、甘いものを口に入れると元気になるんだよね』と愛情のこもったキャンディを2粒口に入れた。しかしなかなか元気が回復しない。。。『ならばあと4粒』と頬張ったがやはり元気が出てこない。『おかしいなあ?やはりじいももう歳か。。。』と思いながらしみじみとキャンディの箱を眺めていると、な、なんとそこには『無糖:ノンカロリー食品』と書いてあるではないか!!!

(家に帰ってから)
花じい「このキャンディ、ノンカロリーだったよ。。。」
花ばあ「あら、ほんと。太らなくっていいわね。でも、いざというときには役に立たないじゃない。ははは、あんたちゃ、そそっかしいねえ!!!」
花じい『おいおい、誰が買ってくれたんだっけ???』
37 律儀な山男 あれは、雷鳥沢からさらに称名川の源流を訪ねたときだった。
久しぶりの家族ハイキングである。
雷鳥沢からまだまだ上に行くことにしたが、それでもお昼ご飯は雷鳥沢に戻ってからにしようと思い、ザックの中のビール(発泡酒)を2本、雪解け冷たい川の中に冷やしていくことにした。そのまま冷やしたのでは流されてしまう。そこでミカンが入っていたネットに入れて、石の間に見えないように隠して行く事にした。コバイケイソウ、コシジバイケイソウ、シナノキンバイ、オオバタケシマランなど背の高いお花たちを楽しんで、雷鳥沢で楽しい昼食の時間となった。
『さてさて、もうすっかり冷えているだろう。』と思ってビールを探したが、おかしい。見当たらない。。。ちょっと真顔になって探したら、ミカンのネットが見えました。『ああ、あった、あった。』とネットを持ち上げてみると、な、なんとそこにはビールの代わりに五百円玉が2個入っているではないか!!!

花ばあ「まあ、なんて律儀な人ぉ!!」
花じい「こんなの律儀とは言わない!せめて1本は残して置くべきだ!」
花ちび「1本130円が500円になったんだから、740円の儲けだよ。良かったねお父さん!」
花じい『よく計算できました。。。』
36 勘違い平行棒 あれは会津磐梯山に行ったときのことだった。
H君とその同級生の姫と花の話をしながら登ることになった。

姫「これってなあに?」
花じい「ゴゼンタチバナ(御前橘)だよ」
姫「へえぇ。午前立花ですか。そしたら午後には座っちゃうんですか?
H君「うまい!座布団1枚!
姫「えっ?そうじゃないのぉ?午後に萎れちゃうから午前立花なんじゃないのぉ?」
花じい『ほほお〜。そうきたか』

また、しばらく歩いていると・・・
姫「今度は何ぃ?」
花じい「グンナイ(郡内)フウロだよ」
姫「Good-nightフウロですか。日本の花にも英語がつくことがあるんですね!おやすみね、フウロちゃん!
H君「ハハハ!今度は座布団3枚!
姫「ええっー?違うんですかぁ??じゃあ、グンナイってなんのことぉ?」
花じい『あ、あのですねぇ。。。』

歩きながらグンナイフウロの説明をしていると、さて今度は・・・
姫「このへんてこな花は何ですか?」
花じい「オオバノ(大葉の)ヨツバ(四葉)ムグラ(葎)だよ」
姫「えっ?大歯の四歯モスラ??モスラって歯があったっけ?
H君「アハハハ!問題はモスラに歯があるかではなくって・・・」
花じい『もう、座布団、全部取り上げなさい。。。』

いやあ、この勘違い平行棒に楽しく笑いながらの苦しい山登りでした。これが無意識に出てきたダジャレであればよほどの大物ですよ。姫!
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(現在この姫が闘病中とのことです。
早く元気な顔をじいたちに見せてください。そして、あの勘違い平行棒を聞かせてください。お願いだから!)
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(花じいは、今泣いています。。勘違い平行棒の姫が闘病かなわず、他界されました。。どうしてなんだよぉぉぉ〜〜〜)
35 かわいい博士 あまり下ネタに近いことばかり書いていると、「どこが山と花の小話か?」と言われそうだから、たまにはお花にまつわる小話を。。。
あれはじいが立山会に入ったばかりの年の6月末だった。立山室堂までバスで行って称名滝まで降りてくる計画であった。
室堂から天狗平にさしかかったとき、白いセリ科の花がたくさん咲いていた。『シラネニンジンだな。これは。』と思いながらチーフと話しながら歩いていると、4、5歳の女の子がその白い花を指差しながら、「わあ!きれい」とじいの近くにやってきた。あんまりかわいいので、
花じい「かわいいね、お嬢ちゃん。この花は何か分かるかなぁ?」
もちろん分からないだろうから教えてあげようと思ったら、、、
お嬢ちゃん「ハクサンボウフウ!」
花じい「えっ?シラネニンジンじゃないのぉ?(目をまん丸にして)」
チーフ「へえ、お嬢ちゃん。よく知ってるね!偉いなあ!(頭を手で撫でながら)」
お嬢ちゃん「おじちゃん、知らなかったのぉ?(かわいく小首を傾げて)」
花じい「うん。知らねえニンジン。。。(阿呆のように小首を傾げて)」
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(いやあ、幼子に教えられましたです。ハクサンボウフウは総ホウがほとんどないので、シラネニンジンとはすぐ区別ができるのですね。その日に勉強しましたです。まあ、慣れれば葉を見るだけで分かるのですけど、その子は葉を見ただけで分かったようでした。ムムム、おぬしできるな!)
34 混浴の法則(その2) (下から続く)
第1法則発見からほぼ26年が経過したこの日は、白馬3山を廻って白馬鑓温泉にゆったりとつかろうという計画だった。二日酔いのじいは重い足取りでようやく鑓温泉に到着した。ここから登山口までまだ4〜5時間は歩かねばならないが、まずは昼飯をくって、おじさんたち5名は早速お風呂に入ることにした。汗を流して、『さあ、風呂に入るか』と思ったときだった。なんと2人の女子大生が入ってくるではないか。大きなバスタオルに身をくるんで。そして湯船の前でそのバスタオルをハラリと落としたではないか!
「あっ!」と手で目を覆ったが隙間だらけのその手の向こうには水着の女の子2名がVサインをしているではないか。。。しかし、その水着というのはなかなかにきわどいビキニであった。(そんなもん持ってくるかぁ、ふつう?)当の女子大生2名はきゃっきゃと騒ぎながら我々にもいろいろと話かけてくるが、うぶなおじさん達は目のやり場に困り、もじもじしてお風呂にゆったりと浸かっていることもできない。結局温泉もそこそこに、前を隠しながらいそいそと退散することになったのであった。

混浴大浴場の第2法則:混浴では性別人数比にかかわらず、水着を着けている方が優位となる。
33 混浴の法則(その1)
あれは八甲田山に行ったときのことだった。大岳周辺を廻ってから降りた若かりし花じい(まだ未成年でした)は酸ケ湯温泉に入ることにした。いそいそと着ているものを脱いで大きな大きなお風呂に入っていった。するとそこは、な、なんと混浴大浴場であった。花じいがもぞもぞしていると、大きな湯船から「あんちゃん。こっち来てビールでも飲まれんか!(何故か富山弁に翻訳されている。以下同じ)」と呼んでいる団体があった。メガネを拭いて見てみると、湯船の中には元お嬢様方が20人は入ってらっしゃる。『困ったなぁ』と躊躇していると「何恥ずかしがっとんがいね、前なんか隠くさんと「ふり○○」で来られんか」とお誘いになる。そこまで言われりゃ、とにかく行かずばなるまい。もちろんしっかりとタオルで前を隠しながら湯船に入っていくと、20数名の元お嬢様たちは、じいの廻りをぐるりと囲んでいろいろと話をしてくるのだ。もう、ここまできたら男は度胸だ!元お嬢様を相手にビールをあおりながら、最近の山の様子などを話をしていた。さて、しばらくたって、ビールを飲みすぎたものだからトイレに行きたくなった。しかし、先ほどまで前を隠していたタオルがなくなっているではないか。酔っ払って、タオルが流れてしまったのに気がつかなかったようだ。これは恥ずかしくて出られない。。。しかしトイレには行きたい。。。でも恥ずかしい。。。もじもじしながら元お嬢様が全部出て行くまでじっと我慢のあと、一目散にトイレに駆け込んだじいであった。。。

混浴大浴場の第1法則:混浴では男女にかかわらず性別人数の多い方が優位となる
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(「いくら若くたって、そんなもん、なんで出て行けないの?」とのY氏からのお尋ねに。
だからぁ、若かったから!)
32 遠き山に日は落ちて

あれは何年前のことだったろう。。。9月の3連休の初日であった。天気予報は快晴。こりゃ山に行かずばなるまい。。。てなわけで「奥穂高へ行ってきます。今日中には帰ります。」と書置きして、真っ暗な道を車ですっ飛ばして行った。
新穂高から歩き始め白出沢から奥穂高を目指す。この登りはなかなかにつらいものがある。特に最後の斜面は砂利だらけで登っては沈むという感じで、もうバテバテになってしまった。穂高岳山荘の前で早めの昼食をとり、頂上へ向かう。しばらく展望を楽しんだ後、吊り尾根を前穂高へ。キミコ平からピストンで前穂高に行き、重太郎新道を下り岳沢ヒュッテ前を通過しようとした。。。しかし、のどがもうカラカラだった。本能的に登山道を逸れて、『生ビールあります』の張り紙に吸い寄せられるように受付に向かって行った。
おにいさん「お泊りですか?」
花じい「いえ、今日中に上高地に降りて帰ります。生ビールください。」
ゴクゴクゴク・・・と一気にいった。
花じい「おかわり下さい
おにいさん「いいですけど、大丈夫ですかぁ?
花じい「大丈夫、大丈夫。上高地までほんの1時間少々だから」
またゴクゴクゴク・・・と飲んでしまった。。。飲むと今度は眠くなった。まあ1時間は寝ても大丈夫だな、と横になった。ところが。。。
寒さで目がさめると「し、しまったぁ!真っ暗だぁ!!

花じい「すみません。。。泊めてもらえますか。。。」
おにいさん「だから言ったでしょう。他の皆さんはもう夕食を食べているんですよ。もう。」
花じい「そこを何とか・・・」
叱られはしたが、やさしいおにいさんの計らいで泊めていただき夕食も食べさせて頂いた。花ばあが心配するといけないので、良く聞こえない電話でとにかく泊まってくることだけは伝え、その晩は同室の方々と酒盛りをしながら、山と花のお話で文字どおり花ざかりであった。
次の日、ゆっくりと朝ご飯をたべ、明神池、大正池と散策して、バスを乗り継いで駐車場まで行き、温泉にゆったり浸かり、夕日が山々にとっぷりと暮れたころ家に帰った。。。
花ばあ「あんたの日帰りちゃ、次の日の夜に帰ってくることながけ!あしたの引越し、どうすんがけよぉっ!
じい『引越し???そっかぁ・・・あしたは我が家のお引越しだっけ。。。』


(M氏談「もう一日泊まってたら、間違いなく「勘当」だったね。よかったネ!花じい」)

31 持つべきものは友達 遭難の記録は4月27日の件で読んでいただくとして、ほんとに死にそうであった・・・。1度目は川からなかなか出て来れなくて。2度目はびしょぬれのビバークで凍えて。何か食べないと凍え死んでしまうと思い、コゴミゼンマイに蟻をまぶして食べていた・・・。あの状況では結構食べられたが、できれば2度と食べたくはないと思っている。遭難からだいぶ経って、友人たちがじいの無事(でもないが)生還を祝って、ささやかながら励ましの会を開いてくださった。再び生きて会えたことを喜び合って一杯飲んでいると、O氏が「今日は、じいの大好物をわざわざ持ってきたぞ!」とおっしゃるではないか。じいの大好物はウドである。『持つべきものは友達だなぁ・・・。ところでなんだろな?ウドの胡麻和えかな、それとも味噌漬かな?』と、期待と感謝の思いを胸に「パッカ〜ン」とタッパのふたを開けた・・・。す、するとそこには、「真っ黒な大粒のゴマ」を振りかけたコゴミゼンマイが入っていた・・・。花じいが食べられなかったのは言うまでもない・・・。
30 炭火焼:焼魚定食 あれは水須山へ行ったときのことだった。
一人ラッセルをやっと終え、頂上に着いたじいは、ご膳の上にあった「炭火焼き:焼魚定食」なる缶詰を持ってきたので、早速「パッカ〜ン」とあけて食べ始めた。『う〜ん。いくらじいでも、しょぶないなあ(塩っけがない)』とは思いながらもほとんどたいらげ、缶の隅に残ったマグロを箸で取ろうとしたときだった。缶詰の向こう側の面に何か妙なものが描いてあるような気がした。『錯覚だろうなあ・・・』と思いつつ、缶詰を180度回転したみた。。。す、すると、なんと、そこには我が家のお猫様と同じ顔が描いてあるではないか!!!『と、と、いうことは・・・もしかして、ひょっとして、キャットフードかぁ、これぇ?』

目をまん丸にして缶詰をよく見ると、そこには「一般食キャットフード」とも「マルハのオリゴ糖配合により、おなかの調子を整えてアンモニア等の気になるにおいを軽減します。」とも書いてあった・・・。
それにしても、家に帰ってから我が家のお猫様が『私のお食事盗んだのだあれ?』と横目でにらんでいるように見えたのは、気のせいだよね?
29 蹴飛ばされた命の恩人 あれは細蔵山に行ったときのことだった。
その日は、しまった雪の上に新雪が20〜30Cmほど積もり、カンジキのツメがほとんど効かず、急坂では新雪と一緒にずるずると落ちてきてしまうのだ。
1,330m峰を過ぎ、鞍部から一気に300m登る。この坂はかなり急である。しかも横には深い谷が大きな口をあけている。
「下りは気をつけねば!」(といいつつ、上で一杯やっている・・・)
頂上でしばし山の雄姿を楽しんだあと、じいは細心の注意を払いながらおりていった。しかしあまりに急な下り坂に、じいはついすべってしまった。「いけない!」と思い指を雪に差し込むが歯がたたない(手がたたない・・・か)それどころか、方向転換してしまい、谷の方に向かって落ちていくではないか。「こりゃ、やばい!!!」一生懸命止めようとするがなかなか止まらない。
「あぁ〜〜〜!!!」と落ちていくと、開いた両足の間に痩せたブナの幹が入り、キン○○にぶつかった「ぎゃあぁぁぁ・・・・」
ブナのおかげで助かったにもかかわらず、命の恩人(木?)に八つ当たりして蹴っ飛ばしてしまったじいを、お許しください。樹木の神様。
(先日、このブナの木へのお礼参りを兼ねて細蔵山へ行ってきた・・・。が、どの木だったかなんてもう分からなかった。あたりまえか・・・)
28 猿の惑星 冬の山の中では獣たちは、何を食べているのだろう。実もなくなった真冬に。
それは木の芽(花芽、葉芽)や木の皮などを食べて飢えをしのいでいる。
タカンボウ山にカンジキハイキングに行ったとき、じいは獣の身になって、いろいろな冬芽を歩きながら食べてみた。
元お嬢様「そんなもの食べて大丈夫なの?」
花じい「大丈夫、大丈夫。毒のあるものはちゃんと分かるから。誰だと思っているん?!」
元お嬢様相手に豪語して、おまけにお昼のラーメンに「ヤドリギの実」まで入れて「うまい、うまい」と言いながら食べたのであった。
・・・しかし・・・
というか、案の定、家に帰る途中からおなかが痛くなって、家に帰るなり、苦しくてトイレから出られなくなってしまった。
花ばあ「大丈夫?」
花じい「大丈夫・・・じゃない・・・」
というわけで、やっとの思いで近くの知り合いの病院に運んでもらったのだった。

お医者様A「花じいさん。また何か変なもの食べられましたあ?」
花じい「いいえ・・・。ホウノキ、クロモジ、トチノキ、タカノツメ、ブナ、マンサク、ガマズミ、フサザクラ、ムラサキシキブ、キタゴヨウマツ、ヨグソミネバリなどの芽、ヤドリギの実と、あといくつかぐらいしか食べてませんけど・・・」
お医者様A「あのねぇ、花じいさん。ここは人間の病院なの、人間の!(きっぱり)そんな猿しか食わんようなもん食う人は、隣の獣医さんに廻しちゃうからね!!
花じい「そ、そんなぁ・・・。猿みたいですけど人間ですから診てください・・・

(もちろん、お医者様はしかっりと診てくださいました。看護婦さんもあきれてましたけど、やさしくしてくださいました。ありがとうございました。でもホントに隣に獣医があるのでマジかと思っちゃいました・・・)
27 高天原温泉の風景

高天原温泉に入りたい一心の8人は、雨の中長い長い山道を歩いていった。雲の平を経由してようやく2日目のお昼に高天原の小屋についた。雨は止まないどころかだんだん強くなってくる。せっかくきたのだからと、意を決して歩いて露天風呂まで行くことにする。登山靴を履いて、カッパを着て、傘をさしての約10分歩いて、やっと露天風呂に着いた。である。こんな日に温泉に入っている物好きは居まいと思ったが、先客がお1人いらっしゃる。松○さんとじいと先客1人の3名は降りしきる雨の中、傘をさしながらお風呂の中でビール、酎ハイをのんで盛り上がり、先客の方に写真をとってもらうことにした。
松○さん「傘さしての露天風呂。今度うちの作品展にだせば、うけること間違いなしだね!」
花じい「そりゃあ、もちろんでしょう!いや愉快愉快!!(もうやけくそです。)」
その頃、女風呂ではMさんとOさんの2人が桶を頭にかぶりながら、やはり写真をとってもらっていた。乳白色のお湯の中に楽しそうに浸かっている2人は、おっぱいがしっかりと写っていることを知るよしもなかった・・・。

後日、立山会の作品展(県民会館ギャラリーにて)にMさんがその写真を出された。MさんとOさんの温泉風景写真が大好評だったのは言うまでもない・・・・。
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花じい「黒のマジックで塗りつぶそうかとも思ったのですが、何か卑猥になりそうなのでそのまま飾ったんですよ。」
元お嬢様Mさん「でも、おっぱいが写っていたんなら、ちゃんと言ってよね。」
花じい「だ、だって、Mさんご本人が持って来たんじゃないですか。当然分かってのことだと思うじゃありませんか。」
Mさん「もう、最近、老眼が進んでるもんだから・・・」
花じい「でも、あの写真、2日目の朝にはもうなくなっていましたよね。」
Mさん「ええっ〜〜!」
花じい「えっ?Mさんが持っていったんじゃなかったんですか??あんなもん、誰が持っていくの?」
M&Oさん「ちょっと、あんなもんとは何よ!あんなもんとは!!」
花じい『いかん、口が滑った。。。』
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で、その写真はどうなったのか、不安に思われた方に。実はOさんが、こっそり持っていったのだそうです。『だって、恥ずかしかったんだもん』とのことでした。

26 夢遊病者2
利尻岳2
(下から続く)
絶好の登山日和。鴛泊コースから利尻岳を目指す。しかし、花じいは眠い眠いと目をこすりながらの歩きである。前には酒くさい誰かさんがため息をつきつつ歩いている。後ろにはあくびを連発しながらの釣り人Aさんが登っていく。それでも何とか頂上にたどり着き、沓形に向かって降りていく。この下りはつらいものがあった。特にその日はよい天気すぎて水がなくては歩けないのだ。ところが、花じいは誰かさんに水をほとんど飲まれて飲み水ゼロ。ふらふらしながら『水をくれえ〜!もう歩きたくないよお〜』と心の中で愚痴っていると、釣り人Aさんがふうっといなくなるではないか!!『こんな山ではもう釣りはできまいに。おしっこかな?』待つこと5分、なかなか降りてこない。どうしたのだろう???だんだん心配になって様子を見に上に戻ってみると、Aさんが倒れこんでいるではないか!!『大変だ!!どうしよう?こんなときは何をすればよかったんだっけ。ええっと!まず気道を確保して・・・』眠気も吹っ飛んで慌てふためいていると、Aさんから安らかな寝息と寝言が聞こえてきた。。「た、大漁だあぁぁ・・・。」・・・利尻岳のカムイ様、この釣り人をお許し下さい・・・。

(早朝(?)の釣果はどうだったの?と気にかかる方へ。ほんと大漁だったのですって!どんどん釣れるんで眠れなかったのだそうです。(自業自得でしょう・・・)何が釣れたかって?もう3年も前のことですよ。忘れましたよ、花じいは。)
25 夢遊病者1
利尻岳1
あれは利尻岳へ登る前の午前1時のことだった。
我らが誰かさんは、例によって寝酒のはずがぐでんぐでんに酔っ払ってしまい、Y瀬さんとふたりでやっとの思いで運んだ。熊なみの重さだった。「やっと眠れるぞ!」と布団にもぐりこんだのだが、誰かさんのいびきが激しくて眠れぬ時間を過ごしていた。
と、横で寝ていたはずのAさん、むっくりと起き上がって部屋から出て行った。トイレかな、と思ったが、おかしいな?どうやら外へ出て行ったようだ。この宿のすぐ横は『』である。岸壁から落ちては大変なことになる・・・。じいは不安にかられて外へ様子を見に行った。
いたいた!どうやら海に向かっていくようだ。これは危ないぞっ!
ところがAさん、岸壁に着くと座り込んで何かモソモソやってらっしゃる。そして急に「えいっ!」と小さな掛け声をかけて長い棒を振り回したではないか。
な、なんと、釣りをお始めになったのだ
。この真夜中に。しかもあと数時間であの利尻岳に登るというのに!!!
こんなのに付き合っていては体が持たない。部屋で少しでも寝ようと帰ってみると、誰かさんは花じいの布団もAさんの布団もくしゃくしゃに占領して高らかにいびきを演奏していた・・・。花じいが眠れなかったのは、言うまでもない・・・。

(「しかし、暗闇で後ろからAさんを覗いている「花じい」の姿を想像するとあまりにも滑稽である」とのご意見あり。そりゃあ、そうだよなあ!)
24 忘れ物2 あれは、暑い暑い夏の日のことだった。12時30分という中途半端な時刻に富山駅北口に集合した。これから木曾駒ケ岳、御岳へと向かうのである。いつも早めに集合するじいであったがぎりぎりになってしまった。今日は宿で飲むだけだから、しっかりとビールを冷やしていたら遅くなったのである。
「いやあ、皆さんごめん、ごめん。」
ビールをぎっしり詰めたバック2個を両手に下げ、背中にザックという姿でサンダルをぱたぱたさせて走り着き、先生の用意した車に乗り込んだ。
じいが最後だったので即出発だ。発車後しばらくしてから、
先生「いやあ〜!そのビールのつまみに、と思って作っておいた漬物を忘れたよ!いかんなあ、歳を取ると、ははは・・・」
花じい「あははは、先生もですか。私もビールを2つも下げてきたら、登山靴を忘れてきてしまいましたよ。はははは・・・・
隣では元お嬢様方の冷たい視線が『あなたはいったい何しにいくの?』と、じいを見つめていた。。。いや、面目ない。。

(花じい「もちろん飲みにいくんだよお!」)
(それで結局どうしたの?とのお問い合わせに・・・。実は、じいの家まで寄ってもらったのです。それから、高速道路にのり、ビールを飲む時刻が遅くなりました。皆さん、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。。)
23 天まで届け
あれは春まだ浅い大辻山へ行ったときのことだった。
我々一行は頂上で楽しい昼食のひとときを過ごし、中尾根ルートから下ることにした。ここはあまり整備されていない登山道で、時折木々が行く手をふさいでいる。そんな中、直径10cm以上の横たわったマンサクの木が、雪の重みからようやく解放されようとしていた。ちょっと危ない感じだったので、じいはその木を踏んで皆が跨いで通るのを待った。そして最後の元お嬢様が通ったとき木に躓いた。その瞬間、その木を大地に留めていた雪の塊がはずれ、花じいの体重をものともせずにマンサクの木は空に向かって跳ね上がった。まるで天まで届くかのように。そして次の瞬間、じいの「きん○○」に激突した。
「ぎゃぁっ〜〜〜!」花じいの叫び声はまさしく天まで届いた。。。あとは書きたくない・・・。
22 忘れ物1 小佐波御前山の山頂でのくつろいだ昼食のひとときも終わり、誰かが「記念写真とってくれる?」と言う。お任せ!とばかりにじいはデジカメを取り出した。折から頂上には宴会中のグループがいたので、その方々に撮影をお願いした。「おう!俺が撮ってやるちゃ」どなたかと思ったら、元上司のAさんではありませんか!「じゃあ、お願いします。」とデジカメを渡した。ところが「おい、動かんぞこれ!」どうしたのかと思ったら電池が入っていない。これはこれは、といそいそと予備の電池を装填し、改めて「じゃあ、お願いします」と手渡した。・・・ところが「やっぱり、動かんぞ、このカメラ」えっ〜、そんなはずは・・・「ありゃ、フラッシュメモリー入れてくるの忘れてた〜!うちのパソコンの中だあ〜!」うちのグループどころか別のグループの人たちにまで笑われて、しかも、元上司にまで・・・
じいがしょぼんとしていると、元お嬢様のCさんは追い打ちをかけるようにのたまわった。
「花じい」返上で、ボケじいネ!HPの名前も変えなくっちゃ!
『そ、そこまで、言わなくても・・・。』
(と言うわけで、しばらくだけどおっしゃるとおり「ボケじいのHP」にしたからね・・・)
21 ウルトラの星 剣岳のふもとの中山へ登ったときのこと。
初級ということもあって、珍しい山ではないのだがたくさんの人々が参加された。ところが元お嬢様のAさん、歩き出して5分も経たないうちに「私もう歩けません。」とおっしゃる!挙句の果てに地面に座り込んで「もうだめよ!私もう死にそう!」とのたまわる。みんなで介抱したり、おだてたりしながら、600mの標高差を3時間かかってやっと頂上にたどりついた。
元お嬢様B「やればできるじゃない!」
元お嬢様A「そうお〜?」
元お嬢様C「そうよ、Aさん。あなたってプチ・ウルトラウーマンよ!
元お嬢様A「えっ〜?でも、そうよね!私頑張ったものね!!
花じい『そうじゃなくって、3分ちょっとで胸がピコピコいったからでしょう・・・(とても声に出しては言えない・・・)』
(元お嬢様のCさん、座布団3枚でございます!しかし人間歩き慣れてくればだんだん強くなるです。じいだって、昔は肺活量がなくって、そんなことでは歌は歌えないってことでお山に連れて行ってもらったんだからネ。本当のウルトラおばさんになるまで頑張ろうね。)
20 はい、チーズ!
黒部川源流稜線2
(下から続く)
稜線を歩き、いくつかのピークを越えていく。時折降る雨で漬物の臭いを洗い流しながら、じいは歩いていた。昨日ほどでもない雨なので、すれ違う人に記念写真を撮ってもらうことにした。
「お願いしま〜す。」
見知らぬ男「じゃ、いいですか。はい、チーズ!」
と、その男は何を思ったのか、急に後ろを向いて、我らの前方の山々を写すではないか
見知らぬ男「びっくりした?おもしろいでしょう?ははは・・・。じゃ、本番いきますよ。はい、チーズ!」
現像してみると、山々の写真の次に、顔がひきつった男女8人の写真があった。
19 臭う男
黒部川源流稜線1
黒部川源流稜線の3泊4日の山旅。台風が来るというのに、8人の極楽トンボは、意気揚揚と2日めの縦走についた。今日は薬師岳の下の太郎小屋から三俣蓮華小屋まで9〜10時間は歩かねばならい一番辛い日だ。ところが、1人、初日の夜に盛り上がってしまい、1時間も歩かないうちにダウン。
昨日元気印「もう、置いていってください。」
今日も元気なじい「そういうわけにもいかないの。少し荷物持つから渡しなさいな。」
昨日元気印「じゃあ、これ持ってくれる
なにか知らないが、かなり重い。3、4Kgは十分あると思われる物体をいただいた。
急に重くなったバックを担いで、台風の強い雨・風の中10時間少々かかって、やっと三俣蓮華の小屋についた。小屋に入ると満員である。荷物の整理をしていると、隣の人々が「何か臭くないか?」と言う。どうやら、花じいのバックが臭っているようだ。おそるおそるバックの中を覗いてみると・・・例の正体不明の物体から、漬物の汁がこぼれているではないか!!!。そして・・・下の方まで・・・・・
次の日、漬物臭い一人の男が山を歩いていた・・・。
18 窓を開ければ・・・
立山道2
(下から続く)
痛恨の思いで、バックの中から、替えの下着を取り出そうとした。と、ところが、どれだけ探してもパンツが無いではないか。ステテコも。えっ?ズボンも無い。『今日は厄日かあ〜』思わず涙がでそうになった。
しかたがないので、カッパズボン一枚を直接はいて降りていくことにした。ふり○○だけど、さっきよりは暖かい。『おっ!これなら大丈夫だな。どうせ傍から分かるわけでもないし・・・』と意気揚揚と歩き出した。八郎坂の急坂も過ぎ、今日の歩きもそろそろ終わりである。下に着いた皆は着替えをしている。しかし、じいはもちろん脱ぐわけにはいかない。出発を待つ間にさすがに体が冷えたのだろう、トイレに行きたくなった。そして、用を足してチャックを上げたとたん・・・「痛てっ!」 (あとは書きたくない・・・)
17 窓の外は雨・・・
立山道1
あれは、6月に室堂から称名滝へおりたときのことだった。はじめはいい天気で、皆るんるん気分で歩いていたのだが、山の天気は変わりやすいもので冷たい冷たい雨が降ってきた。みな慌ててカッパを着る。じいは上はウインドブレーカーだけをはおって、下は面倒なので穿かなかった。これがいけなかった。しばらく経つとパンツの中までびしょびしょになって体がみるみる冷えてきた。このままでは風邪をひいてしまう。『着替えなければ・・・』
隊列の最後尾に廻って、バス道路の脇に入り、いそいそと脱ぎ始めた。登山靴を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、ステテコを脱ぎ、最後の一枚を脱いだところで、一陣の風が通り過ぎていくではないか!!!顔をあげると登山バスの車窓に目をまん丸にした人々の顔があった・・・。
16未知との遭遇 黒姫山は、暑いのぼりの途中から急転直下冷たい雨となった。頂上は大変寒く昼食を早々に切り上げて降りることにした。降りはじめて少しして人数確認。1、2、3、4・・・・皆いるかなと思ったら4人足りない。まさか・・・と思って頂上に戻ってみると、いました。な、なんと、まだゆっくりとお食事を楽しんでいらっしゃるではないか!この人たちは寒さを感じないのだろうか。
もうすぐだからというので、風を避けて少し下で待つことにした。待つこと10分。
「あら、じい。待っててくれたの?」
花じい「そりゃあ、サブとはいえリーダーですから・・・(少しむくれて)」
「ありがとネ。ところで、じい。私の車、パンクしちゃったのよ。それでね、今4人で話してたんだけど、4人ともタイヤ交換したことがないって気がついたのよ!後はお願いね、花じい。」
花じい『そ、それは、いいことに気が付かれましたね・・・
15 運動のエネルギー タカンボー山のカンジキハイキングは、頂上でブナの美しさを味わって、皆心地よい疲れを感じながら下っていた。
かなり急斜面なところで、『これは、危ないな』ということで、滑った人を下で確保することにした。
A夫妻が降りてきた。まずは夫。こちらは大丈夫だろうと思ったが、ちょっとしたはずみで転び、じい目がけて滑り落ちてきた。スピードはあったが難なく確保に成功した。次は妻の番である。
「アハハハ・・。何やっとんがいね!」
こんな人ほど要注意である。予想通り転んでじいにぶつかってきた。『グギッ!』確保成功!
妻A「でも、うちのだんなほどスピードはなかったから大丈夫よねぇ、じい!」
花じい『運動のエネルギーは質量×速さ・・・なんだけどね。』
14 筋肉痛ってなあに? 白馬連邦の縦走のときだった(と思う)。
一日目が終わって皆ほっとしながらも、明日に備えてストレッチをしている。ところがY夫人だけは「のほほん」とお茶を飲んでいる。
花じい「あした、筋肉痛になるよぉ〜」
Y夫人「私は大丈夫なの」
花じい「明日は大丈夫でも、あさってだってあるんだから・・・」
Y夫人「私、縦走は3日や4日くらい平気なのよ
花じい「へえ〜。すごいね!」
Y夫人「そうよ。私、筋肉痛なんて、いつも1週間経ってからなのよ」
花じい『お、お見それいたしました・・・』
13 美人コンテスト
奥大日岳3
(下から続く)
新室堂乗越から奥大日岳を登り、中大日横の七福園、大日岳も終わり、一気に1,500mの標高差を下っていく。このころから元お嬢様方のペースがだんだん遅くなりはじめる。称名滝から立山駅への最終バスは17時(?)。このままでは、間に合わない。じいだけ早く降りようかとも思ったが、後を任せるだけのサブもいない。しょうがないので一緒に下っていくことにした。称名滝登山口に降りてから、「誰か、称名滝見物のお客さんの車に乗せてもらって、ここまで迎えに来てもらえないかな。」と、じいが言った。
元お嬢様A「え〜っ。誰がいくのよ」
元お嬢様B「やっぱり美人で男を捕まえるのがうまい人ね
元お嬢様C「それなら、私ね!
『決断の早さは頼もしいんだけど・・・』
(ここで問題です。下の「走れメロス」で、花じいがディオニス様と心の中で呼んだのは、A、B、Cどの元お嬢様でしょう。はい、皆さん。今思った人が正解です。
12 走れメロス
奥大日岳2
(下から続く)
花じいは走った。元お嬢様たちとの約束を守るために。地獄谷の噴煙が上がる中を。雷鳥沢にかかる細い細い橋の上を。昨夜の雨に濡れた岩の上を・・・重い荷物を背負って、命の限り走りつづけた。ただ、ただ、元お嬢様たちとの約束を守るために・・・そして、やっとの思いで、新室堂乗越で元お嬢様たちに追いついた・・・
「遅かったわねぇ、花じい。さ、早く行くわよ!!」
『(ぜい、ぜい、ぜい)ディ、ディオニス様。お情けを・・・。少しくらい休憩させてくださいまし・・・』
11 カタバミになった「花じい」!
(意味が分からない人は2つ下の「かわいそうなカタバミ」を読んでね)
奥大日岳1
あれは、私と元お嬢様3人とで奥大日岳、大日岳、称名滝の縦走をしたときのことだった。もちろん花じいがリーダーである。集合は「立山駅7時発のケーブルに間に合うように」と決めたのだが、面目ないことに花じいはお寝坊してしまった。車を猛スピードで走らせ、切符を買ってケーブルに乗ろうと思ったら、「ピーッ!」と出発の笛が聞こえる。ケーブルの中では3人の元お嬢様が手を振っている。「おたっしゃでぇ〜」・・・おい、おい、それはじいのセリフだろう・・・。
まあ、美女平でバスの待ち時間もあるし、上で一緒になれるからいいか・・・。と20分後のケーブルで美女平に向かった。と、ところが、臨時便のバスが出て、元お嬢様3人組はまたもやバスの中から手を振っているではないか。「先にいっとるからねぇ〜」・・・次のバスは「20分後」である。
いくらなんでも室堂では待っているだろうと思って探しまくったが、元お嬢様たちはどこにもいない。な、なんと、初めての山へ、リーダーを置き去りにして出発してしまったのだ!!!
10 出会い あれは、立山会に入るきっかけとなった山歩きでのことだった。2月11日の建国記念日は夕べまでの雪がやみ、晴れ渡っていた。ちょっと出遅れたかなとは思ったが、とんがり山なら大丈夫だろうと出かけることにした。林道入り口までいくとカンジキをはいても膝上10Cmの雪が行く手をふさいでいる。しかし、そこには一条のラッセルあとがあるではないか!!!なんと!物好きもいるものだ。こんな雪の中を!おかげで少しは楽にいけるぞ。ということで歩き始めた。林道歩きが終わったところで、男性1女性2の3人組に追いつく。この男性が立山会の代表で、女性2人をカンジキの練習に連れにきているとのことであった。「いやあ〜、いい人が来てくれたよ。ここからが登りでラッセルも大変なんだよなあ」
そうなのである。ほんと大変なのだ。のぼりになると膝上の雪が腰上までになってしまうのだ。しかし、やさしいじい(すけべなじい)はそれをものともせずに歩きはじめた。しばらくして『どうです、歩きやすいでしょう!』とばかりに後ろを振り向くと、黄色い声で「あ〜ん。歩幅がおおきすぎるう〜。」
じい『山の神様、この元お嬢様をお許しください。』
かわいそうなカタバミ ○子さんが昼食の帰りに園芸店でカタバミを買ったと喜んでいた。うすい赤紫色の品のいいものだ。しかし○子さんにこんな趣味があったとはしらなかった。「いえ、今日からはじめるのです。」明るいその笑顔とは裏腹に、じいは何とはなしにいやな予感がしたのだった。
明朝、いい天気なのに○子さんはひとり寂しそうな顔をしている。「どうしたの」と聞いてみると、「電車の中でカタバミを忘れてしまったの」という。ああ!やっぱり。忘れ物の常習犯が、これから園芸を始めるなら何もカタバミにしなくてよかったのだ。カタバミ(Oxalis)にしたばっかりに、電車の中にオキザリにしてきてしまったなんてしゃれにもならないでしょうが!!!。(おそまつ)
(追録:意味が分からないと言う人がいるので・・・「Oxalis」はオキザリスと読みます)
8 私たちは晴れ女!
朝日岳へ上る途中。空模様が怪しくなってきた。「心配だな」とつぶやくと「何言っているのよ、じい!誰が登ってると思ってるのよ、私たちよ!晴れ女のわ・た・し・た・ち!」しかし、力強いそのお言葉とは反対に最悪の雷雨となった。「ピカッ!」「ズドーン!」かなり近い!体を低くしていそいそと山小屋へ急ぐ。「神様すみません。私たちが悪うございました」「もうえらそうに威張ったりしません」と先ほどの晴れ女の皆様はほうほうのていであった。その日はやっとのことで山小屋についた。ザックの中までびしょびしょだ。乾かすのに大変である。特に晴れ女の皆様は雨の対策がいま一であるので大変なようだ。
次の日、白馬へ向かう。昨日の雷雨がうそのようにいい天気だ。「いやあ〜!なんとか昨日の懺悔が神様に届いたようだね」と言いながら後ろを振り向くと「だれが登っていると思っているのよ!私たちよ!晴れ女のわ・た・し・た・ち!!」と元気な皆様がつづいてきていた。『お許しください、お天気の神様』
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晴れ女、晴れ男、と自称される方々に共通点があることが、最近分かったような気がする。それは、「天気の悪い日には山へ行かない」ということである。。。
7 オー、フロイデ!
(下の廊下3)
(下から続く)
晩飯を食ったことも忘れていたリーダーと、重い頭を抱えてさらに欅平まで歩く。出発の前、ご主人に「このあとを油断して昨日も一人死んでるんですからね。」と親切にご忠告いただいた。気をつけなくちゃね。と思いながら水平道を私がトップで歩いていた。下の廊下は本川に支流が流れ込むところで道は支流の奥まで回り込むので、すぐ前に道が見えてもずっと遠廻りしなければならず結構大変である。ある支流の直前、熊が前の道を駆けて来るではないか!!!このままではあと数十秒で『遭遇』してしまうぞ!!思わず私は叫んだ。「熊だ!!何でもいいから大きな声で歌を歌え!!」するとY嬢、大きな声で歌いだした。「ある日!!森の中!!熊さんに!!出会った!!・・・」そのおかげなのか幸いにも熊はそのまま山の中へ逃げて行ってくれ、『遭遇』せずにすんだのであった。しかし、落ち着いてから思ったのだが、歌うなら他にもあっただろうに、なんでまたそんな歌を歌ったものやら。Y嬢に聞いてみた。すると「花じいも、花じいやちゃ!熊に出会って第九(喜びの歌)歌うなんておかしいちゃあ!」 
花じい「えっ?そんなの歌ってましたぁ?」
6 幻の晩餐会
(下の廊下2)
(下から続く)
誰のこととは言わなくとも、分かる人には分かる。これも下の阿曽原の小屋、同日のこと。誰かさんも私と同じように酔っ払ってしまっていた。寝る前に止めときゃいいのにまた飲みなおしてから寝たようであった。翌朝、起きると頭が痛い。誰かさんもおなじだろうなあと、横を振り向くと「いやあ〜。花じいさんよおっ!久しぶりに思いっきり飲んだなあ!晩飯も食わずに飲んどったよ〜」・・・・・二日酔いのボケた頭だったが昨夜のことがはっきりと思い出されてきた。『あなただけでしょう・・・・カツカレーをおかわりまでしたのは・・・・』夕食を作って下さったご主人、おかみさんお許し下さい。
5 パンツ・ぱんつ・ツンパ
(下の廊下1)
下の廊下を歩いたときのことだった。十字峡などを堪能して阿曽原の小屋に泊まる。ここの露天風呂は大変すばらしく、前回来たとき「次はお酒を飲みながら入ろう」と決めていた。ビールに日本酒。たっぷり持って入っていたらどんどん時間が経っていき、ご主人がわざわざ来られて「お客さん!あとあなたたちだけですよ!ご飯を食べてないのは!」と叱られてしまった。これはいけないと、急いで上がる。ところがもうすっかり出来上がっている上に真っ暗になっているわで、どこで一式脱いだのか分からない。どこかの石の上に置いたはずなのだが・・・。「おっ!これだな、俺のパンツは」とばかりに左足を入れ右足も入れたとたん・・・「お、お客さん、そ、それは私の「ぱんつ」です!」・・・「えっ?じゃあ俺のパンツはどこ?」、「そ、そんなこと、知りませんよ!」、「そうですよね。すみません・・・」やっとの思いで探してはいたパンツ。前後逆なことが分かったのは、それからだいぶたったトイレの中でだった・・・。(『でてこないよ〜。このツンパ・・・』)
ちょっとまじめな小話
4 野にでるなら図鑑を持って!
じいがまだ花じいを名乗る前のお話。
あれは4月はじめに大山町岡田部落の裏山を歩いたときでした。可憐なたたずまいのお花が咲いていた。それは以前花ばあと2人で歩いていたときに花ばあに聞かれて、「なんだろね」と2人で言っていた花だった。そこで指差しながら、「大○さん、あれは何ていう花ですか?」と聞いた。「ああ、あれはコチャルメルソウですよ。」ふう〜ん、そうであったか。
さてさて、家に帰ってから早速花ばあを呼び、得意満面に「エッヘン!あの花の名前分かったぞ!」とい言いながら図鑑を広げてみせた。が・・・そこには花とも思えない変てこな植物が写っていた。も、もちろんコチャルメルソウです。「どこに?ぜんぜん違ってるじゃないの!」花ばあの少し軽蔑する目・・・。
しょうがないので、図鑑を1ぺージずつめくって探した。ありました!!ショウジョウバカマでした・・・。

1週間後、もう一度図鑑を持って岡田の裏山を訪れ、花を確認しました。ハイ。ありました。じいが指差したショウジョウバカマの横に目立たないコチャルメルソウが。どうやら、まさかショウジョウバカマぐらいは分かっているだろうと思われて、目立たない方の花の名前を教えてくださったようです。
教訓1 人に植物名をたずねるときは、色や大きさその他特徴、場所などをはっきりと!
教訓2 図鑑は家におかず、持ち歩くべし!
以来、じいは立山会の図鑑係となったのです。
3 ランプの宿
越後駒ケ岳2
(下から続く)

1時間以上かけた朝食と朝のお化粧がようやく終わり、お寝坊チーフを花じいの車に乗せて、Nインターから高速に入った。そこで新潟方面の車線へ行こうとしたら、「どこ行くの!金沢方面は反対よ!」 とA嬢。「えっ?何のこと」と花じいが聞く。「だって、ランプの宿に泊るんでしょう」「そうだけど。」「だったら能登のランプの宿でしょう。夕べ、ネットで調べたんだからあ!」
そ、そりゃあ、ランプの宿というのは能登にもあるけれど、今日行くのは新潟魚沼のランプの宿である。
そこでお寝坊チーフ「だって、Aさんよ!越後駒ケ岳へ行くって言ってあったでしょう。それでどうして能登のランプの宿で泊まるがけえ!おかしいと思わんだがけよぉ。」
A嬢「そ、そう言われてみれば、おかしいわねぇ・・・」
お寝坊チーフ「あははは、ほんとあんたちゃ、ゆったりしとるわねぇ!」
花じい『あなただけには、言われたくなかったりして・・・』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ここまで書いたところで、M夫人からTELがあった。あまりにもタイミングが良すぎて電話口で笑ってしまった。来週はおりしもM夫人がチーフの行事である。その打ち合わせであった。昨年のありがたい経験から、朝7時30分にMさんの自宅に集合・・・となっている・・・。)

2 目覚まし時計?
越後駒ケ岳1

あれは、夫人がチーフの越後駒ケ岳のときのことだった。朝の7時にさんの自宅に集合となっていた。Mさんのお宅の前には参加者が皆集まっているようだが、肝心のM夫人のお姿が見当たらない。どうしたのかなと思っていると、家の中から眠い顔 をした夫人がネグリジェ姿で歯磨きしながら出てくる。「モゴ、モゴ。もう少し待ってね。モゴ。」そりゃ待ちますよ。歯磨きの間くらい。大事なチーフ様ですから。と、ところが15分たっても出てこない。そおっと覗いてみると家の中からは楽しそうな団欒の声が聞こえるではないか。どうやら朝食のお時間のようだ!!!な、なんと、朝7時集合とは、自分がおきる時間だったのか???
花じい「ひょっとして、我々は『目覚まし時計がわり』だったわけ?」
夫人「いやあね。そんなわけないちゃよ。今日は朝が早かったからお寝坊しただけよ。」
花じい「まあ、朝ゆっくり寝れるってのは、まだ若いってことだしね(しょうがないのでちょっとお世辞でも言っとくか・・・)
M夫人「そうなの!ありがとう、花じい!
花じい『・・・・・』

(
蛇足:山へいくのに集合が4時や5時は当たり前です。)

1 噴射エネルギー 書こうと思ったが、噴射元の元お嬢様が80歳になるまでは止めておこう。でないと、何がおきるか怖いもんなあ。。どんな話か皆さんご想像ください・・・。