| 会話・コミュニケーション | 私のこころ | Kのこころ(一部・奥さん・お嬢さん) |
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◎ 大学図書館にて K「勉強か?」 (低い声で) 私「ちょっと調べものがあるのだ」 K「一緒に散歩をしないか」 (低い調子で) 私「少し待っていればしてもいい」 K「待っている」・・・「もう済んだのか」 (落ち着き払って) 私「どうでもいいのだ」 |
Q 「どうでもいいのだ」は私のどんな気持ちを反映しているのか。又何故そんな気持ちになったか |
Q Kは何について私の批評を求めているか。 Q Kが「公平な批評」を私に求めるのは私がお嬢さんのことを好きなことに気付いているのだろうか。又、どんな答えを私に期待しているのか。 |
| 2 | ◎ 上野公園にて K「( について) どう思う?」 私「この際なんで私の批評が必要なのか」 K「自分の弱い人間であるのが実際恥ずかしい・・・迷っている・・・自分で自分が分からなくなってしまった・・・公平な批評を求めるより他に仕方がない。」(悄然と) 私「迷う?」 K「進んでいいか退いていいか、それに迷うのだ。」 私「退こうと思えば退けるのか。」 K「苦しい」 (苦しげな表情で) 私「精神的に向上心のないものは馬鹿だ。」「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ。」 K「馬鹿だ。僕は馬鹿だ。」 (力に乏しく) K「(私の名を呼んで)もうその話は止めよう。止めてくれ。」 (変に悲痛に) 私「止めてくれって、僕が言い出したことじゃない、もともと君のほうから持ち出した話 じゃないか。しかし君が止めたければ、止めてもいいが、ただ口の先で止めたって仕方 があるまい。君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ。いったい君は君の平生の主張をどうするつもりなのか。」 K「覚悟?」「覚悟、覚悟ならないこともない。」 (独り言のように) (夢の中の言葉のように) |
Q 私はどういう意図でこの言葉を発したのか。 Q 私はKの「馬鹿だ」をどのようにとったか。 Q 私はKの「覚悟」を私はどのように誤解して いったのか。 |
Q Kはこの意図に気付いたか。又、私がこう言った理由をどのように考えたのか。 Q 「馬鹿だ」とは自分のどんな点について言っているのか。 Q どうして自分からしかけた話を中途でやめようとしたのか。 Q Kはどんな覚悟をしたと考えられるのか。 |
| 3 | ◎上野から帰った晩のこと (Kの呼ぶ声で目を覚ます) K「もう寝たのか」 私「何か用か」 K「たいした用でもない、ただもう寝たか、まだ起きているかと思って、便所へ行ったついでに聞いてみただけだ」 |
Q 私は、Kが襖を開け私の名を呼んだことをどう思ったか。 |
Q Kが襖をあけて私の名を呼んだのは何故か |
| 4 | ◎翌朝のこと 私(Kにきのうの晩のことを聞く) K「ふすまを開けてわたくしの名を呼んだ」 私「なぜそんなことをしたのか」 (調子の抜けたころになって) K「近ごろは熟睡ができるのか」 (うちを出てから) 私「あの事件について何か話すつもりではなかったのか」 K「そうではない」(強い調子で) |
Q 私はKの言葉をどうとったのか。 Q このやりとりの後、私はどんな思いを抱いていくのか。 |
Q Kが話したかったことは何か。「そうではない」という強い否定を考えあわせてみよう。 |
| 5 | ◎一週間後の私の仮病 私と奥さんの会話 私「特別な用事でもあるのか」 奥さん「いいえ・・・何故です」 私「じつは少し話したいことがあるのだ」 奥さん「なんですか」 私「(言葉の上でうろつき回って)Kが近ごろ何か言いはしなかったか。」 奥さん「何を。・・・あなたには何かおっしゃたんですか。」 私「いいえ」 「Kに関する用件ではないのだ」 奥さん「そうですか」 私「奥さん、お嬢さんをわたしにください。」 「ください、ぜひください」「わたくしの妻としてぜひください」 奥さん「上げてもいいが、あんまり急じゃありませんか。」 (落ち着いて) 私「急にもらいたいのだ。」 奥さん「よく考えたのですか。」 私「言い出したのは突然でも、考えたのは突然ではない」 (二つ三つの問答) 奥さん「よござんす、差し上げましょう。差し上げるなんて威張った口の利ける境遇ではありません。どうぞもらってください。ご存じのとおり父親のない憐れな子供です。」 「親類に相談する必要もない、後から断ればそれでたくさん。本人の意向も確かめるに及ばない」 私「親類はとにかく、当人にはあらかじめ話して承諾を得るのが順序らしい」 奥さん「大丈夫です。本人が不承知のところへ、わたくしがあの子をやるはずがありませんから」 ◎昼ごろ 私「今朝の話をお嬢さんにいつ通じてくれるつもりか」 奥さん「自分さえ承知していれば、いつ話しても構わなかろう」 「もし早いほうが希望ならば、今日でもいい、けいこから帰ってきたら、すぐ話そう」 私「そうしてもらうほうが都合がいい」 |
Q 私の言葉から、当時の私のどんな性格が見てとれるか。 |
奥さんのこころ Q 奥さんが確信をもって「大丈夫です」ということから、お嬢さんとの間にどういう合意があったのかを推測しよう。 |
| 6 | ◎再び坂の下で、お嬢さんと会う 私「今お帰り。」 お嬢さん「もう病気は治ったのか」(不思議そうに) 私「ええ治りました、治りました」 |
Q ここの部分から私のどういう性格が読み取れるか。 |
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| 7 | ◎下宿に帰ってきて K「病気はもういいのか、医者へでも行ったのか。」 (いつものとおり『今帰ったのか』とはいわないK) |
Q 私はKの言葉をどう感じたのか。 Q またKのこころを理解していたか。 |
Q Kは、今までとどのように違ってきたか。 Q こう言うKの心境の変化を推測しよう。 |
| 8 | ◎夕飯の時 お嬢さん(奥さんに呼ばれて、次の部屋で、)「ただ今」 K「どうしたのか」 (不思議そうに) 奥さん「おおかたきまりが悪いのだろう」(私の顔をちょっと見て) K「なんできまりが悪いのか」 (なお不思議そうに) (奥さんは機嫌良く、微笑しながら私の顔を見る。私はひやひやしている。Kはまた沈黙する。) |
私はなぜ「ひやひやして」いたのか。 |
Q お嬢さんは、「私」の求婚をどう受け止めたのか推測してみよう。 Q Kは、お嬢さんの態度や、奥さんの顔つきから何を感じたのか推測してみよう。 |
| 9 | ◎その後の二、三日の間 ・・・その上奥さんの調子や、お嬢さんの態度が、しじゅうわたくしを突っつくように刺激するのですから、・・・それ以来殊に目立つように思えたわたくしに対するお嬢さんの挙止動作も、Kの心を曇らす不審の種とならないとは断言できません。・・・ |
Q Kはこうしたお嬢さんの行動をどう受け止めたのか推測してみよう。 |
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| 10 | ◎五、六日たった後、奥さんと私の会話 奥さん「Kにあのことを話したのか」 私「まだ話さない」 奥さん「なぜ話さないのか」(私をなじる) 「どうりでわたしが話したら変な顔をしていましたよ。あなたもよくないじゃありませんか、平生あんなに親しくしている間柄だのに、黙って知らん顔をしているのは。」 私「Kがそのとき何か言いはしなかったか」 奥さん「べつだんなんにも言わない」 「・・・たいした話もないが・・・」 ◎奥さんの語るKとの会話 (私とお嬢さんの結婚の話を聞いて) K「そうですか」 (Kはこの最後の打撃を、最も落ち付いた驚きをもって迎えたらしい) 奥さん「あなたも喜んでください」 K「おめでとうございます」 (微笑して、席を立つ。茶の間の障子を開ける前に) 「結婚はいつですか」 「何かお祝いを上げたいが、わたくしは金がないから上げることができません」 ・・・わたくしはそのときさぞKが軽蔑していることだろうと思って、独りで顔を赤らめました。しかし今更Kの前に出て、恥をかかせられるのは、わたくしの自尊心にとっておおいな苦痛でした。・・・ |
Q このやりとりを聞いた私の気持ちをまとめよ |
奥さんのこころ Q 奥さんの「あなたも喜んでください」という言葉は、どんな意図で発せられたのか。 Kのこころ Q Kの「最も落ち付いた驚き」とは、予期してのことととると、Kが気がついていたのはいつか。 Q Kの言葉「わたくしは金がないから・・」という言葉は、自分について何を自覚しているか。 Q ここでのKの気持ちを独白(モノローグ)風に書いてみよう。(後の、寂しさから自殺という点から考えてみよう) |
| 11 | ・・・いつも立て切ってあるKとわたくしの室との仕切りのふすまが、この間の晩と同じくらい開いています。・・・ |
Q Kが襖を開けたのはどんな気持ちからだったのか。 |