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「あなたは俺のものだっ!!」 大きな声で叫べば愛を育めるとでも雑誌に書いてあったのか?とイルカはうんざりとした。目の前の男は、それはそれは真剣な表情をしている。 「今日は俺の誕生日です。ハッピーバースデートゥミーです。そんな日くらい俺の願いを叶えたって罰なんか当たらないと思いませんか?」 「思いません。」 自分でトゥミーとか言ってりゃ世話ないぜ、ったくよ、とイルカは鞄を担いだ。 「あ、帰るんですか?じゃあ俺も一緒に帰りますよ。今日と言う今日はあなたをもらうまで帰りませんよ?」 イルカは勝手にしろと言わんばかりにカカシを無視して受付を後にした。ちゃんと職員に労いの言葉は忘れずに。 うみのイルカははたけカカシにつきまとわれていた。それはしつこいほどにストーカー並にもういっそのこと里抜けしてくれと思わんばかりにそれはすさまじくしつこかった。 「ねえねえ、イルカ先生、俺としては〜、なんて言うのかな?やっぱり記念日?アニバーサリー?それは特別な日、恋人たちの身を焦がす一時!ね、そう思いませんか?」 大通りの真ん中で何を言ってるんだろう、こいつ。 「一遍死んでこい。」 「仮死状態になれってことですか?うーん、でもあれやっちゃうと一週間は身動き取れないし、任務とかをする身にとっては〜、ちょっときついんですよね〜、半死状態ならなんとかなりますけど。」 「一昨日きやがれ。」 「一昨日ですか?禁術を使えば時戻りの術で行けますけど、火影様に許可をもらわないとできないんですよね。俺1人の個人的なことで許可がもらえるかは分かりませんが、イルカ先生がそうしたいと仰るならば、不肖はたけカカシ、すぐさま火影様に掛け合ってきますよ!!」 こんな調子である。イルカはもうどの方向にこのやるせなさをぶつければいいのかほとほと困り果てた。 「で、イルカ先生、どうやってあなたをもらえばいいですか?俺としてはイチャパラ風味が一番シチュとして萌えますが!!」 イルカはなにかほざいているカカシの言葉を右から左へと聞き流しつつ、ふと、一軒の店の前にあったのぼりに注目した。 「ハッピバースデーカカシ先生、これあげるんでさっさと帰れ。」 「えっ、なんです?」 カカシは包みの中身をそっと覗いた。そこには豚まんが入っていた。湯気が立っていてほこほこと熱そうである。 「あの、イルカ先生からいただけるものならなんだって嬉しいんですけど、なんで豚まんなんですか?」 「文句言うつもりですか?あんたが欲しい欲しいって言うから買ってやったんですよ?」 「俺が欲しいのはただ一つ、イルカ先生だけなんですが。」 「文句を言うなら返してください。」 イルカがカカシの手から包みを取ろうとした。だがカカシはそうはさせじと必死になってガードした。この辺り、もう上忍とかそういう雰囲気は皆無である。 「いいえっ、もらいますっ。これはよーく味わって食べさせてもらいますっ!!」 「ええ、よーく味わって食べてください。表面から中身までちゃんと咀嚼して残さずに食べるんですよ。いいですね?誰にもあげずに1人で食べるんですよ?分かりましたか?」 「えっ、あの、全部、ですか?」 包みは大人が抱えてもまだ溢れそうなほどである。そう、豚まんは一個ではなかった。 「じゃ、俺は帰ります。」 イルカはカカシを後にしてさっさと自宅のあの方向へと行ってしまったのであった。 が、その途中でアスマたち10班と出会った。 「ようカカシ、今日は非番か?」 「お前らは任務帰り?」 見るとアスマの班の部下たちの恰好は少し薄汚れている。力仕事だったのだろう。 「なんだよ、お前が肉系の食い物を大量に買い込むなんざ珍しいな。お前、どちらかと言うと肉より魚の方が好きなのにな。」 「うっさいねー、これは特別なのっ!なにせイルカ先生が誕生日プレゼントにくれたもんなんだから。全部1人で残さず食べてくださいね、ってそりゃあもうかわいらしくおねだりしてくれちゃったんだもんね!」 カカシは嬉しそうに包みを持っている。 「どう考えたって嫌がらせにしか見えないわね。」 山中家の娘がこそこそと奈良家の息子に耳打ちしている。おいおい聞こえてるぞー!? 「ま、そんなわけでチョウジ君、君にこの豚まんはあげられないんだなー。後でアスマに買ってもらうといいよ。今日は暑いからあんまり買う人もいないだろうしねー。」 言うとチョウジはアスマに熱い視線を送った。よだれが出ている。もうアスマのことは豚まんにしか見えないのかもしれない。 「その豚まん、大和亭の新商品、海洋深層水で育まれた黒豚の肉を使用したものだ。その肉は余計な脂身もなくあっさりとしているのに噛み締めるとほどよい食感と肉汁があふれ出すと言う。」 チョウジの解説にふーん、とそれ以外の人間は頷いた。 「なかなか凝った肉を使ったんだな。」 アスマの言葉に頷くチョウジ。 「その名も『海の豚まん』そのかぐわしさは一度食べたものを虜にすると言う。」 「へえ、虜にねえ。イルカ先生も俺の虜になってほしいもんだよ。なあ、シカマル君。」 同意を求めているわけでもないが、そう言ってカカシはため息を吐いた。 「あのー、思ったんすけど。それってイルカ先生がとうとうカカシ上忍を認めたったことじゃないっすか?」 「は?なんで?」 とカカシはシカマルの言葉に首を傾げた。 「カカシ上忍は今日もイルカ先生につきまとっていた。今日も今日とて迷惑がられていたにもかかわらず、『海の豚まん』なんて自分の名前をもじったような食い物を差し出してきた。そりゃあつまり、イルカ先生はその豚まんにちなんで俺も一緒にどうぞって意味なんじゃないっすか〜?」 シカマルのやる気のなさそうな言葉にカカシの目が熱く燃え上がった。 「そっか、そうだったんだ。俺はもう少しで見逃す所だった。海洋深層水、海の宝石、海の豚、そう、それは海豚(いるか)せんっせー!!」 カカシは豚まんの包みをシカマルに渡してさっさとイルカの家の方角へと走り去っていった。 「チョウジ、豚まんが手に入ったぜ。イノも食うか?」 シカマルは自分の分を一つ手にとってイノにも手渡した。そして残りをチョウジに渡す。 「シカマルよ、いつからお前、自分の恩師を売るようになったんだ?」 アスマが苦笑して言った。 「いいじゃないっすか。見ているこっちはきついんすよ、毎日毎日カカシ上忍はイルカ先生を口説いて、そんでもってイルカ先生はカカシ上忍の好意にやぶさかでもない。」 「そこまで見抜いてたか。」 「気付いてないのは自分らだけなんじゃねっすか?」 シカマルの言葉にアスマは頷いた。 「この豚まんはさしずめ普段からそれに宛てられている俺たちへの慰謝料ってもんっすよ。」 シカマルは平然として豚まんにかぶりついた。すこしばかり涼しい風が吹いて秋っぽいと感じなくもない、そんな午後の一時だった。 おまけ そしてイルカ宅 「イルカせんせー!!カカシですっ!あなたのカカシですっ!!俺、やっと気が付きました。あの豚まんの意味。そうだったんですね!俺は、俺はもう感動ですっ!!」 「あー、うっさい、家の前で喚くなや人間公害野郎っ!!」 イルカはドアを開けて渋々カカシを家の中へと上げた。 「あのっ、イルカ先生、さっきの豚まん、『海の豚まん』だそうで、あのっ、あのっ、それって、」 カカシのしどろもどろな言葉に、眉間に皺を寄せていたイルカはふっと破顔した。 「だって仕方ないでしょう、ほだされちまったもんはさ。」 イルカは鼻の頭の傷を指でさすって小さく笑った。その笑顔のなんとさわやかでかわいらしいこと。 「じゃあ、じゃあ、いいんですね!?」 「いいですよ、もう、仕方のない人ですね。」 イルカの言葉にカカシの脳内は沸騰した。 「ではお言葉に甘えて、いっただっきまーすっ☆」 「は?」 暗転 こうしてめでたく(?)うみのイルカは、はたけカカシに食われました。とさ!! 終わっとこうよ!!
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と、言うわけで一日遅れの短編upでした><
って言うか、何かいつもこういう時事ネタのカカシ先生はいじめられてますね、私の話の比率的的に(汗)
でもカカシ先生のこと嫌いじゃないのよ〜!?
ま、まあ、そんなわけで最後にはいい目にあってるんだからこれで良しとしましょう!!(逃