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それから月日は流れ、雪の匂いがしてくる季節になった。 「焼き芋一つください。」 ぼんやりとし過ぎていて人の気配に気付かなかった。 「カカシ先生。」 「俺のためにおいしそうなの選んでくださいね、イルカ先生。」 俺は顔が赤くなるのを必死になって誤魔化そうと俯いて焼き芋をつかみ取る。 「カカシ先生は焼き芋お好きなんですか?俺も好きなんですよね、このほくほくした感じの黄色い中身を見るとほっとすると言うか、でも男って焼き芋苦手な奴多いんですよ。俺の同僚も苦手だってのが多くて。」 俺は新聞紙にくるんだ焼き芋をカカシ先生に差し出した。 「本当はね、イルカ先生。俺は甘いもの苦手なんです。」 意外な言葉に俺は目を見開いた。 「えっ、あの、でもそれじゃあ。」 「口実に利用しました。あなたと話しをするために。」 「ど、して...。」 「口実の理由ですか、ちょっと言うのは勇気が要りますね。」 カカシ先生は苦笑して指先をカリ、と噛んで印を結んで口寄せをした。 「パックン、悪いけどこの屋台の店番しててね。イルカ先生、ちょっとご一緒して下さい。」 パックンと呼ばれた忍犬はやれやれと妙に人間くさい表情を浮かべながらも分かった、と返事をした。 「えっ、あの、でも俺は任務中で、」 俺は慌ててカカシ先生の手を取ろうとしたが、その手は外れない。痛いわけではないのにまったくはずれないとはさすが上忍、いや、そんなところで感心するんじゃなくてだな。 「任務中、すみません。いや、本当はいつだって話しをしようと思えばできたんですけど、俺は臆病者で、あなたが来るのをずっと待ってた。そんな都合よくあなたが来てくれるわけもないのに。」 同じだ、俺も本当ならいつだってカカシ先生の家に行くことはできた。でも、名目がないと勇気が出せなくて。 「あなたが屋台をしているのを偶然見つけて、それでやっとあなたと話す口実を見つけて、その口実と言うのは、」 カカシ先生はぐっと拳を握っている。 「あなたが、好きだから。愛しいと思ってしまったから、話したくて、会いたくて。」 カカシ先生の口から紡がれる言葉が流れるように耳から入り込む。 「あ...。」 俺ときたらカカシ先生の告白に頭が真っ白になってまともな言葉すら発することができなかった。 「混乱、させてますよね。返事はまた今度聞かせてください。時間を取らせてしまってすみませんでした。」 カカシ先生は困ったように少し笑って、そして背を向けた。 「あ、あのっ、」 カカシ先生は立ち止まって振り返り、自分のベストを掴んでいる俺の手と俺を交互に見ている。 「あの、」 なにを躊躇しているんだ。カカシ先生はこうして勇気を出して言ってくれたのに、俺はずっと引っ込んだままでいいわけがないだろう。 「好きです。カカシ先生のことが。ずっと、好きです。」 はぁ、と安堵の息が漏れたのはどちらのものだったか。そんなことどうでも良かった。 「良かった。どうしてもほしかったものがやっと手に入った。」 カカシ先生が笑ったような気がした。 「あの、いつから俺のこと好きだったんですか?まさか最初からとか言わないで下さいよ?」 「いえ、好きだと自覚したのは掛け軸のセールスの時でしたけど。」 自覚したのも同じ時期だったらしい。なんと言うか似たもの同士だな、俺とカカシ先生って。 「最初はおもしろい人だな、くらいだったんですけどね。段々あなたの人となりが分かってきたら気になってしまって。親父の掛け軸を選んでくれた時にぎゅっとしたくなって、まあ、有言実行とばかりに抱きしめてしまいましたが。それからどうしても欲しくて欲しくて、そんな風に誰かを思ったこと今まで無かったからどうしていいか分からなくてほんと困りました。なのにあなたはなかなか約束のセールスに来てくれないから、我慢できなくてこちらから売り込みをしてしまいましたよ。」 はあ、それは、どうもすみません、と俺は屋台を引きながらもごもごと口の中で謝罪した。 「イルカ先生は?いつから俺のことを好きになってくれてたの?」 聞かれて俺は顔を真っ赤にした。やはり聞いた手前話さなくてはならないとは思うのだがどうにも照れが勝ってしまう。 「あの、俺も掛け軸の時に自覚したんです。少しでもカカシ先生の役に立てていればどんなにか嬉しいだろうって。俺は普段からアカデミーや受付などで人と対峙することはままありますが、あれほどまでに誰かに尽くしたいと思ったのは初めてで、それは好きだからだろうって思って。セールスに来られなかったのは、クツワ商店が火の国に出店するとのことで、セールス販売から手を引くことになり任務自体がなくなってしまったからなんです。約束したのに来られなくてすみません。」 「そういうことでしたか。良かった。俺はてっきり俺のことも約束もどうでもいいと思われてて、もう来てくれないんじゃないかと思ってしまいました。少しやりすぎたかな、なんて思って。」 「え、やりすぎって何のことです?」 「あー、いえ、あ、収納場所あそこじゃないですか?」 上手く誤魔化された気がしないでもなかったが、確かに倉庫に着いたので屋台を収納した。今日の業務はこれで終了だ。あとは直帰して良いことになっている。 「キスしていいですか?」 ふいにかけてきたカカシ先生の声にびくりと震えながらも俺は頷いた。 「好きです、大好き、イルカ先生。」 耳元でふうわりと囁かれて、その唇が耳をかすめるのを感じて、俺は耳を真っ赤にしながら、今度は逃げずにカカシ先生の背に手を回したのだった。 |
はいっ、お疲れ様でした!!
り、リリカルだよっ!なに青春してんだよあんたたちっ!てなほど気恥ずかしい二人を書いてみましたが、はは、ここいらが私の限界です。orz
って言うか他の作品を読んでいらっしゃった方にはきっともうバレバレでしょうが作者は激しく圧力鍋を所望です!
だって煮込んでも焦がすことがないなんてすごくないですかっ!でも煮込み料理くらいにしかほとんど使い道がなさそうだと思うとなかなか手が出せません。
そんなまなぬるいファン意識爆裂の圧力鍋語りカカイルでしたっ!(違