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イルカさんが死にました。 チーン 「って信じられるかばかーっ!!」 と言って俺は喚いた。イルカさんが死亡して5時間後に帰還してその訃報を知っての叫びである。 報告書通り、前からこけたからか額にこぶができていた。その顔色は青白く、どう見てもよく見かける死体と同じだった。 「ふざけるなーっ!!前にHしたの一週間前で俺すっごい欲求不満なのになんでイルカさん死んでんですかっ。このまま俺1人でいたら不能になっちゃうんじゃないの!?俺が不能になって嬉しいんですかっ、この人否人っ!!」 隣で聞いていた医療忍の顔が引きつっていたがそんなことはどうでもよかった。 「ちょっとさ、2人っきりにしてくんないかな?俺、恋人なんだよ、この人とはそれなりに付き合い長いし、頼むよ。」 急に神妙になった俺の態度に医療忍は少し逡巡した後に10分だけですよ、と言い置いて外へ出て行った。 「時空封印の術っ!!」 そう言って俺は写輪眼でイルカさんを特定の時間が停止している空間へと閉じこめることに成功した。あとは式でイルカさんの死体のダミーを作って台の上に置いて。 「5代目っ!!」 俺の顔を見て5代目はわずかに切なそうな目を向けた。かつて恋人を失った者同士という境遇のせいか? 「5代目、すみませんが少し休暇をください。俺にとってイルカさんは、」 そこで言葉を切って俺は顔を俯けた。 「イルカのことだね、辛いのは分かる。私も同じ立場だった。そしてずっと放浪の旅をした。そのショックから立ち直るためにね。分かった、3ヶ月の休暇を許可する。その間に立ち直っといで、カカシ。」 慈愛に満ちた5代目の顔に俺は目を伏せて深く頭を下げ、執務室を後にした。 イタコの里には魔女が住んでいるらしい。かなり迷信じみた話しであるし、たぶんあまり知られていないのだろう。大体イタコの里なんて地図にも載ってないし、口伝だけでその存在が噂されているだけの里だ。大蛇丸も知らないみたいだしね、だって知ってたらすぐに不老不死の方法がないか探ってそうだし。 「もしもーし、ごめんくださーい。」 と言って俺は勝手に家の中に入っていった。するとどこからか老婆が出てきた。 「なんじゃっ、人の断りもなく。」 「いや、耳が遠かったら聞こえないだろうと思って。」 「ちゃんと聞こえとるわいっ、なんの用じゃっ。」 老婆はぷりぷりしている。だってこっちはそんな場合じゃないし。 「依頼に決まってんでしょ、人を1人生き返らせてくんない?」 「軽々しく言うなっ、そんなにほいほいできるわけないじゃろうっ。」 「まあまあ聞いてよ、絶対裏があるんだからさあ。」 俺はこれこれこういう訳でイルカさんの死亡した時の状況を説明した。すると今まで胡散臭そうな目を向けていた老婆が真剣な表情をしはじめた。どうやら脈有りらしい。 「その者、黄泉の者に気に入られたな。」 心当たりのありそうな話しだ。 「詳しく聞かせてもらおうか。」 俺はとりあえず座って茶でも一杯飲みながら話しを聞くことにした。 「どうにも納得のいかない死に方であった場合、その者は呪われた者か或いは黄泉の者に気に入られて向こうへ連れて行かれたかのどちらかに限られる。お前さんの話しだと、その者はどうも呪われるような人間ではないらしいの。と、するとやはり黄泉の者に気に入られて連れて行かれたのじゃろう。連れ戻す方法はただ一つ、直接連れ帰ることのみじゃ。」 「で、黄泉の国ってどうやったら行けるの?」 「そうそう行けるものではない、まずはマンドラゴラの根を口に含み丑三つ時に八咫鏡(やたのかがみ)をのぞき込み、そこに写った場所へ行き、ヴィシュヌ神に祈りを捧げて応えが返ってきたら扉が開かれると言う。」 「なんだか色んな宗教が混じった方法だけど、ま、やってみましょうか。」 「待て、マンドラゴラはそんじょそこらには生えておらぬし、八咫鏡は現在その行方は不明となっておるのじゃぞ。」 「ははは、心配ないって、マンドラゴラなら死んだ親父の研究室に生えてたし鏡は大蛇丸あたりが持ってそうだから強奪してくるよ。」 俺はそう言うととりあえず大蛇丸のいるアジトへと向かった。一カ所には留まらないって言ってたけど、探すのめんどいからサスケの匂いを追うことにした。 「よーうパックン、早速だけどサスケの匂いを追ってね〜。」 「待て、追跡する匂いもないのに追えるか!」 「大丈夫大丈夫、ほら、これあげるから。」 そう言って取りだしたのはかわいいわんちゃん御用達の高級シャンプー、リンス、コンディショナーのセットだった。 「むっ、それはっ、仕方ないのう。」 パックンは早速走り出した。いい忍犬を持って俺は幸せだね〜。 「はーい、パックンお疲れ様〜、はい、これ持ち帰って良いからね。」 そう言って俺は風呂敷にシャンプーセットを包んでパックンの背中にくくりつけた。 「うむ、さっそく使うことにしよう。」 そう言ってパックンはポンっと消えてしまった。 「お、サスケじゃん、久しぶりだね〜。」 「カカシっ、俺を連れ戻しに来たのかっ!?」 「あはははは、そんな青春するわけないじゃん。それはナルトにおまかせするからもう少し待ってなよ。じゃあね〜、」 「ちょっ、それが元部下に対する態度なのかっ!おいカカシっ!!」 サスケの言葉を背中に受けながら俺はさっさと目的の場所へとたどり着いた。 「おやおや、誰かと思えばコピー忍者のカカシさんじゃあないですか、こんな所で何をしているんです?」 眼鏡をくいっと上げてちょっとインテリっぽくしてるけど恰好がださいし額宛てもださいから決まってないんだよね、哀れだな。 「なんですか、その憐れんだ目は。」 「いや、別に。あ〜、大蛇丸元気?昔さあ、あの人眼鏡っ子が好きでよくエビスに短パンはかせてきわどい写真取ってたんだよね。」 びくっとカブトの体が震えた。 「しかもショタ好きでさ、わざわざ変化させてたんだぜ。しかも自前のパンツをはかせてさあ、エビスが火影様に泣きついてことなきをえたんだけど、泣きついてなかったらきっともっとすごいことさせてたんだろうなあ。ほんと、大蛇丸が木の葉からいなくなって良かったよ。ところであんたは大丈夫?同じ眼鏡かけてるけどさ、でも泣きつく人いないからもしかして、」 「うわぁあああああっ、やめろぉおおおおっ、」 カブトは逃げていった。なんだよ、折角教えてやったのに失礼な奴だな。 「あー、ヴィシュヌ神さまヴィシュヌ神さま、さっさと出てこないとラクシュミ(ヴィシュヌの妻です)に2丁目のゲイバーに行ってたことばらすぞ。」 ざっぱーん、と泉の水が盛り上がって個性的な恰好をした男がはい上がってきた。顔が真っ赤である。 「なんでお前がそんなこと知ってんだよっ!」 「俺の情報網を甘く見てもらっちゃ困るな。さ、ばらされたくなければさっさと黄泉の扉を開け。」 「くっそう、本当は開いちゃだめなのにっ、」 「ばらされたいのか?」 「開きますよ開けばいいんでしょっ!!」 ヴィシュヌ神はさっさと扉を出現させた。 「よっし、んじゃあ俺が出てくるまで閉じないでね。俺口寄せできるから忍犬に手紙持たせてどんな場所からでも密告できるから、俺を亡き者にしようとしてもばらすことできるから。じゃーね〜。」 ヴィシュヌ神は悔しそうな顔をしていたが扉の前で仁王立ちになって待つ体勢を取った。よしよし。 「うーわ、悪趣味。」 全裸の少年、青年、壮年の像が所狭しと並べられている。美術が好きというよりも、ただの男好きって感じだよね。 「ごめんくださーい、イルカさんを返せこの盗人やろう〜。」 だが返事がない。耳が遠い人らしい。俺は中にずかずかと入ってイルカさんを探すことにした。 「イルカさーん、イルカさーん、いたら返事してくださーい。あなたのカカシが助けに来ましたよ〜、イルカさーん。」 すると微かに音がした。 「てんめぇっ、」 俺は怒りにその女を殴りそうになったが相手は女だ、手加減しないといけないし、女に暴力を奮うところをイルカさんに見せたくない。 「どうした、あたしを殴らないの?」 女はケタケタ笑っている。あ、そうだ、これ言っておかないと。 「庭の銅像、趣味悪いから全部壊しといた。」 その言葉に女はきゃあーーーっと言って庭へと駆けだしてしまった。この隙に逃げよう。 「イルカさん、さ、手を貸してください。」 「でも、カカシさん、俺、この世界の食べ物食べちゃって、それに体もきっと、もう。」 「吐けば大丈夫です。体も俺がちゃんと保存してありますからね。」 俺はイルカさんの口に指を突っ込んだ。 「ぐっ、げほっ、ちょっ、カカ、ぐふっ、」 吐き出してイルカさんはげっそりとしてふらふらしていた。ま、仕方ないよね。 「おい、お前、すげえ破天荒すぎだぞ。」 まだいたヴィシュヌ神が何か言っていたが聞こえないふりした。 「か、か、し、さん、」 「ああっ、神よっ!!」 「え、俺?」 「あ、帰っていいよあんた、ばいばーい。」 酷い扱いだ、とぷりぷりしながらヴィシュヌ神は帰っていった。そんなことよりも今はイルカさんだ。俺はイルカさんを抱きしめた。 「イルカさん、イルカさん、もう絶対に離しませんからね。絶対絶対誰にも渡さないんですから、いいですね。絶対ですよ!?」 「は、い、もう、絶対、あなたを1人、には、」 イルカさんの言葉を聞いて俺はにっこりと微笑んだ。 「じゃあ早速目覚めのHしましょうね、もう一週間と2日も経ってるんですから、俺のムスコが寂しがってましたよ〜?」 俺はかちゃかちゃとバックルを外しにかかった。心なしかイルカさんの顔が引きつっている。 「俺、3ヶ月の休暇が出てますから、その間ずっとヤリ放題ですよ。あなたは死んだことになってますし。あ、大丈夫ですよ、3ヶ月したらちゃんと木の葉には戻りますって、あなたもちゃんと連れてね。」 俺はにっこりと笑ってイルカさんの服を脱がしにかかったのだった。
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