「んで、俺にどうしろってんだよ...。」

アスマは隣で眠りこけているカカシに毒づきながらも同情の目を向けた。
事は数日前にさかのぼる。カカシはイルカとお付き合いすることになった。それはそれはもう熱々ぶりで周りから野次を飛ばされるほどのバカップルぶりだったのだが少し前、正確に言うと今朝からカカシの様子がおかしかった。なんだよもう倦怠期かよと冗談半分にからかったが運の尽き、アスマはカカシに連行されて上忍御用達の会話が漏洩されない料亭へと連れてこられた。そして数時間前、カカシに告げられた衝撃的な事実。アスマも最初は笑い飛ばしていたがその真実味ある言葉に段々と笑い事では済まされない状況になってきた。

「まさかカカシがコウノトリを信じてたとはなあ。」

アスマはおちょこに注がれていた酒をぐいっと飲み干した。
カカシは実は童貞だったのだ。しかもセックスはしたい者だけがするもので赤ちゃんはコウノトリが運んでくるものと信じて疑っていない。今もだ。
イチャパラなんて子供だましに近いような純愛ものの18禁小説を愛読しているくせに想像はそこまでで終わり。実体験もなにもしたことがなく全てが想像なのだそうだ。
そしてイルカとの初夜、カカシは衝撃を受ける。まさかこんなことをするなんて!と。

「しかもイルカもイルカだぜ...。」

カカシの言うことをよくよく聞いてこれば普通の状況ではなかったことがうかがわれた。ろうそくに荒縄に鞭にレザーブーツが用意されていたらしい。他はカカシも一体何に使うのか用途不明なものが転がっていたとか。
間違いない。

「イルカはその手の情報に精通している。」

困ったことになった。
カカシはとりあえずなんとかその場から苦しい言い訳を残して立ち去ったらしいがそれからどんな顔をして対面すればいいのかほとほと困っていたらしい。そこで自分に白羽の矢が刺さったと言うわけだ。

「ったくめんくどせえ奴らだよ。」

仕方なくアスマはよっこらせとカカシを抱えてカカシの家に運ぶことにした。勿論料亭の代金はカカシ持ちだ。
そしてカカシの家まで来ると明かりがついていた。しかも中にいる人の気配、これは...。とアスマは戦慄した。
アスマの気配に気が付いたのか、ドアがむこうから開かれた。そして出てきたのは案の定イルカだった。

「アスマ先生でしたか、あれ、カカシさん酔いつぶれてしまったんですか。仕方のない人ですねえ。」

イルカは苦笑してこちらまでお願いしていいですか?とアスマを家に上げた。アスマは断る理由も見つからずおとなしく中に入った。
そしてカカシを寝室のベッドへと運んで適当に転がした。
居間へと戻るとイルカがコーヒーカップを二つ持ってテーブルに付くところだった。

「カカシさんをここまで運んでくださってありがとうございました。コーヒーでも飲んでいってください。あ、お酒だったらまずは水の方がよかったですか。」

イルカの気遣いにアスマは首を横に振った。

「いい、そこまで酔っちゃいねえ。こっちをもらうぜ。」

アスマはそう言ってカップを手に取った。
イルカも自分のカップを手に取った。

「カカシさんは○○○○での○○に興味はないんでしょうか。」

ぶふーっ!とアスマは噴出した。
いま、今なんつった!?

「い、イルカよ、そんな言葉どこで覚えたんだ?」

「え、自然にですよ。上忍ともなればこんなの常識でしょう?」

イルカの癒しの笑みが今は悪魔の笑みに見えるのは幻覚か?
やめてくれ、上忍を全員変態で鬼畜だと思うのはやめてくれ!
アスマの切実な願いも虚しくイルカの言葉は続けられていく。

「最初は比較的定番と思われる○○での○○プレイで挑もうと思ったんです。けれどカカシさんにはお気に召してもらえなかったものですから。そしたらもっと直球を狙っていったほうがいいのかな、と。俺もさすがに○○○○○ほど際どいことを最初からするつもりはありません。ですが○○○○ははずせないんじゃないかと。」

イルカはまったく真剣にさっきからイチャパラでも出てこないんじゃないかと思うような単語を羅列していく。アスマは口から泡を吹きそうになった。

「イルカよ、なあ。普通って考えはできないのか?実は今日カカシからそのことで相談を受けてな。カカシはセックスに対する認識はノーマルに近い。と言うか子供だ。純粋だ。むしろ乙女だ。そう思って接してやってくんねえか?実はな、あいつは、その、秘密にしといてやってほしいんだが童貞なんだ。」

カカシ悪い、とアスマは心の中で手を合わせた。

「はあ、そうだったんですか。俺も童貞です。」

だがイルカの言葉にアスマは口をあんぐりと開けた。

「はぁ〜?おっまえそんだけその手の知識を披露しといてでまかせ言うなよっ!」

「いえ決してでまかせでなく本当です。誰とも肌を重ねたことないんです。寒さをしのぐためにおしくらまんじゅうしたり温泉でふざけあったりとかはしたことありますが実際の経験は皆無です。ですがそんなことでは立派な忍びにはなれないとあらゆる情報を身に着けるべく学習していったんです。」

その成れの果てがこれか...。とアスマの涙を誘った。まじめな奴ほどまじめに吸収していっちまうんだなぁ...。

「イルカ、確かに知識を吸収するのは、その、人に教授する身としては正しい姿勢だとは思うが人の営みって言うのは一般的にはまず最初は普通でいいと思う。それでお互いに理解し合って次のステップに移るもんじゃねえかな。」

「ええ、ですから最初は手始めに比較的入りやすい○○で行こうと。」

「まてまてなんでそこで○○なんだよ。まずは普通に体をだな、」

「ですから普通に○○でしょう!?」

段々と白熱してきたところでアスマはふと気づいた。

「イルカ、お前普通のセックス知らないのか?」

「普通ってなんですか?基本は○○でしょう?」

まったくもって当然と言わんばかりのイルカにアスマは自分の言葉がビンゴだったことを悟った。

「アスマ先生、俺、どうしたらいいんですかね?カカシ先生はどんなプレイがお好みなんでしょう?」

アスマは今度こそ言うべき言葉が見つからなかった。この2人をうまく普通にやらせてやるにはどうしたらいいんだっ!!
ぴこぴこーん!とアスマは閃いた。

「イルカ、よく聞け。これから言うことを実行してみろ。それでだめだったら、その時はまた相談に乗るからよ。」

イルカはまじめな顔でこくりと頷いた。

 

 

それから数日して、再びカカシから飲みに誘われた。
今度は上機嫌である。
またもや漏洩されにくいように例の料亭である。

「聞いてよアスマっ!イルカ先生ったらほんとかわいくて、俺、どうしよう〜♪」

頭に花畑が延々と咲いているような春まっさかりの言葉とこの態度、間違いない、作戦は成功した。

「そうか、そいつは良かったなあ。ったく心配させやがってよ。けどそういうことは2人の秘密にしといた方がいいぞ。俺なんかにイルカのかわいいところを披露してどうすんだ。」

「いやあ、アスマには世話になったからねぇ。あ、ここのは俺のおごりでいいからね。」

「この間もおごってもらったのに悪ぃな。」

「いいっていいって、アスマのおかげだし。」

カカシは上機嫌でナスの煮浸しを突いている。
言えない、このお気楽者にイルカに助言したあの作戦を言うことなぞできない。
カカシは羞恥プレイがお好みだ、恥じらいを見せて初心そうに振る舞いそしてさりげなくリードしてやれ。そしたらカカシはきっと応じる』などと。

 

言えやしない、例え相手が火影であろうが言えやしない。
こうして、アスマの背に新たな十字架が掲げられたのだった。

おわり 

 

はいっ、と、言うわけでお疲れ様でした!
そして微妙orz
やはり最終的な相談役は永遠のお兄ちゃんアスマでしたな話です(え、そうだったの!?
作中に出てきた○○○○や○○は実際に言葉が当てはまるようになってますがほら、そこみなさんの豊かな想像力でっ!(ぇ
そんなわけで逃げます!(堂々と