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はたけカカシ、健康的な成人男子です。おもっくそストーカーされてました。
ええ、もうすっごい酷いの、朝から晩までずっと見張られてんのよ。しかも勝手に自分が彼女だって思ってて周りの女を牽制もしてたりで、紅なんかもガン付けられたってんで俺に愚痴愚痴文句を言ってくる始末。
俺の恋人はイルカ先生一人だけだっつのっ!と声を大にして何度も言ってんのに信じないし一緒の家に帰ってんだから想像つくだろうに。それからもまったく諦めずに任務にも支障が出はじめた所で火影によりあっけなくストーカーの女は御用となった。
ま、御用と言ってもストーカー行為を除けばかなり優秀な忍びには違いないらしく、持っている血継限界も特殊らしいので、実刑として俺の半径500メートルに近づくことができないって術を施されて放免となったんだけどね。
あー、これでイルカ先生と諸手をあげてイチャイチャできるー!!と思っていたら任務が入ってしばらく離れ離れになったんだけど、どうもその後からイルカ先生の様子がおかしくなった。
どうおかしいかと言えば、積極的になったのだ。
嬉しいんだけど、嬉しいんだけどね。俺としては恥じらいつつも渋々って感じのイルカ先生が好きだったんだけどな〜?
まあ、イルカ先生に違いないからいいんだけど、しかしおかしい。休日に買い物に行く時でも腕を組んで周りの人たちに自分のものだって所有者面して歩くようになったし。
うーん...イルカ先生ってそんなにオープンな性格、してなかったと思うんだけどな〜?
なんとなく今まで付き合ってきたブランドカカシをアクセサリーとして身につけてますって女たちと同じような行動してる気がする。
俺はさ、イルカ先生の俺をブランドとか上忍とか関係なく人間として見てくれている所に惚れたはずなんだけどな〜?
そんなこんなでなんとなく今日はイルカ先生と一緒に帰らずに土手沿いで川辺をぼんやりと見ていた。
対岸岸に俺と同じように土手沿いにぼんやりと座っている人物が見えた。
あ、ストーカー女だ。なんとなくいやーな気分になる。だが家に帰るとなんとなくしっくりとこないイルカ先生が待っている。しばらく気付かないふりをして相手の様子を見てみるか、と気配を消していると、ストーカー女は近くにいた野良猫に猫じゃらしをふりふりとさせて自分の所に寄らせようとしていた。
あー、でも野良だから警戒しちゃってるよ。興味本位に手を出すのはどうかと思うけどね〜。
だが、女は猫がちょっと油断した所を狙って掴みかかった。猫は当然暴れさくり、女の腕も手もひっかき傷だらけになった。あーあー、確か上忍じゃなかったっけあの女。あれで大丈夫なのかね〜。と思っていたら、女は懐から取りだした水筒で猫の足を洗ってやり、その後布などで丁寧に綺麗にして巻いた。
どうやら怪我をしていたらしい。放してやると猫はとっとと行ってしまった。その背中を苦笑して見送って、それから女は鼻っ頭をぽりぽりと掻いた。
あー、そういうこと。
俺は立ち上がるとイルカ先生のいる自宅へと向かった。
それから、ストーカー女の家に向かった。出てきた女は俺の訪問に首を傾げたが俺はにっこりと笑った。
「久しぶりですね、イルカせーんせ?」
女はびくっと体を揺らし、それからぽろぽろと涙をこぼした。
「あー、ほんと泣かないで。俺、あなたの涙に弱いんですから。」
女は涙を流しながらも不思議そうに聞いてきた。
「なんでアスマ先生が俺の涙に弱いんですか?」
まあ、そう言われても仕方ないけどね。
俺はとりあえず女を連れて火影のいる執務室へと向かった。もう準備は整っている。
それから諸々と処置が終わり、俺とイルカ先生は自宅へと戻った。と、言っても今はアスマの体とイルカ先生なのだが。
自宅に着くと俺の体が畳に転がっていた。俺は解っ、と言って術を解いた。アスマは気が付いてゆっくりと体を起こした。
そして俺に向かってなにしやがってんだお前はよっ!と詰め寄ってきた。
「まあまあ、今説明するから。ね、イルカ先生?」
言うとイルカ先生は面映ゆそうに笑った。
アスマと俺とイルカ先生は卓袱台を囲んで座った。そしてイルカ先生は語り出した。
「そもそもの起こりはカカシ先生が任務に出られた翌日に起きました。あの女性が突然俺の前にやってきて、俺の体を乗っ取ったんです。そして俺の意識はその女性に移ってしまいました。彼女は俺に暗示をかけました。『このことを他人に知らせようとすれば自殺するようにプログラムした』と。俺は彼女の姿でいる他になく、誰にも言えませんでした。」
「そうだったのか、気付かなくて悪かったな。でもなんでカカシは俺に心転身の術をかけやがったんだよ。」
アスマが煙草をぷかぷかしながら俺に詰め寄った。まあ。家に呼んで不意を突いて術をかけたのは悪かったけどさ、緊急時だったんだもんよ仕方ないでしょうに。
「だって女は俺と半径500メートル以内に近づけないんだよ?俺の姿のままじゃイルカ先生を迎えに行けないじゃないのよ。」
「だったら俺が普通に迎えに行けば良かっただろうがよ。山中家の術まで使ってすることかっ!?」
「なに言ってんだか、姫のピンチを救うのは王子の役目だってのは定説でしょっ!俺が行かなきゃ始まらないって。」
ま、図柄的には美女と野獣のようだったけどね。
「あー、でも良かった。任務後にイルカ先生とエッチはしてなかったんだよね。俺の第六感が何か違うって反応してたんだもんよ。」
俺の言葉にイルカ先生は目に見えてほっとした。分かってますよ、それが気になってたんでしょ?いくら体は自分のものでも意識が別の人間と自分の恋人がやってたら、そら辛いよね。
「でもよくイルカが女に乗っ取られてたって分かったよな。」
アスマが少し俺を見直したぜ、って感じの視線をよこしてきた。
「いや、俺だって最初分からなかったよ。チャクラの質は同じだし、イルカ先生の性格をあらかじめリサーチしてたんだろうけど、あんまり違和感なかったし。まあ、それでも滲み出る別人の雰囲気は少なからず出てたんだけどね、よもやそんなことになっていようとは思わなかったから流してたんだよねえ。ほんと、至らない恋人でごめんね、イルカ先生。」
俺は両手を合わせてごめんなさいっ、と謝った。イルカ先生はにこりと笑っていいんですよ、と言ってくれた。ああ、やっぱりイルカ先生大好きっ!!
それからとっととアスマを追い出して久方の恋人同士の抱擁を味わったのは言うまでもない。
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