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「はい、あなた、あ〜ん。」 「あ〜ん。」 イルカは目の前の女の子からどろだんごを口元にやられて食べる振りをした。 今日はイルカの誕生日。夕暮れ時も差し迫った公園でイルカは女の子とおままごとをしていた。 「はい、じゃああなたはおしごとにいってらっしゃい。」 「はいはい。」 イルカは立ち上がって地面に描かれた玄関部分へと向かった。女の子もお見送りとばかりにイルカの後ろをとことことついてくる。ひよこみたいでかわいいな、なんてイルカはくすりと笑った。 「あなた、いってらっしゃいのちゅうは?」 「えっ、ちゅう!?」 最近の女の子はませてるなあ、いや、そんなことないのか?イルカは苦笑しつつもかがんで女の子のほっぺに軽くちゅっとキスをした。 「おみやげは、お花でも買ってくるから、うっ、」 イルカが女の子の頭を撫でようとした時、突然、辺りに殺気が迸った。一般人の女の子はまったくわからずにきょとんとしているが忍びならば鳥肌が立つ程だ。 「カカシさん、一般人の女の子にその殺気は、」 イルカが声をかけるとカカシはぼそりと呟いた。聞こえなかったイルカがえ?と聞き返すと、 「イルカさんの上の口も下の口も俺のものなのにイルカさんの浮気者――っ!!」 と叫んでカカシは走り去っていった。 「おくちはうえとしたがあるの?」 しばらくして、くいくいとイルカの服を引っ張って質問してきた女の子の言葉にイルカは正気に返った。 「いや、それは、」 女の子に向かってわたわたしていると、覚えのある気配がしてイルカは視線を向けた。 「おうおう、そいつぁじっくり説明してやんねえとなあ、イルカ先生?」 視線の先に立っていたのはアスマだった。にやにやと笑ってイルカたちを見ている。 「すげえ殺気がしたもんでやってきてみりゃあ痴話げんかとは、平和だねえ。で、ちゃーんと説明してやんのか?」 「封印術っ!!」 イルカは女の子に向かって印を組んだ。 「ってちょっと待てイルカ。お前一般人のちっさいガキにそんな忍術使ったら副作用が出るじゃねえかっ。」 「大丈夫です。この手の封印術は手慣れてますので後遺症は残りません。」 だからそんなに抵抗もなく術を使ったのかとか、なんで手慣れてるんだ、とか言う質問は高尚にも控えたアスマだった。 「アスマ先生、この子のこと頼みます。俺はカカシさんを追います。」 イルカは眠ってしまった女の子をアスマに渡すと瞬く間に走り去っていった。 「ちょっかい出すんじゃなかったぜ...。」 今更後悔しても遅いだけのアスマだった。 カカシは火影岩の頂上にひとり、ぽつんと座っていた。夕日が沈む一歩手前で里を赤く照らしている。 「カカシさん、探しましたよ。」 背後からイルカがやってきてカカシの隣に座った。 「ま、あなたはいつも何かあるとここに来るから探すのは楽なんですがね。」 イルカはカカシの顔を覗き込んだ。もう殺気は消え失せているが表情は沈んでいる。 「イルカさん。」 切なげな声で呼ばれてイルカは微笑む。 「なんですか?」 「他の人にキスしないでください。」 「はい、分かりました。」 イルカは頷く。するとカカシはイルカの手を取って真剣な眼差しで言った。 「では証しとしてここから里に向かって『俺ことうみのイルカの上の口も下の口もカカシのものだっ!』って叫んでくださいっ!!」 言ったら俺、公然わいせつ罪で捕まるだろうなあ、なんてことをイルカは遠い目をして思った。 「カカシさん。」 子どもに言い聞かせるが如くの笑みでイルカはカカシの手を握り返す。 「なんですか?」 「俺の愛は言葉で軽く証明できるものじゃないんですよ。そう、例えば今日カカシさんが作ってくれた心のこもった料理のように、愛は目に見えないものの方が大きく暖かい。そうは思いませんか?俺は、そんなカカシさんの手料理が早く食べたいです。」 言うと途端、カカシの顔はぱぁああっと輝きだした。 「はいっ、愛情一杯、致死量ほど注ぎ込みましたからイルカさんを絶対に満足させてみせますっ!!いえ、料理だけでなく夜もちゃんとご奉仕しますからねっ!!なんたってイルカさんの誕生日ですもんねっ!!明日も明後日も休みですから、俺、俺がんばりますっ!!」 カカシの言葉にイルカはにっこり微笑んだ。 「楽しみです。」 二人は手を繋いでマイスイートホームへと帰っていったのだった。 その頃公園では、 「俺がパパ役か...。」 「だーめ、おひげがいたくてちゅうができないからあなたはあかちゃんのやくよっ!」 女の子の恐怖の言葉に凍り付く髭の上忍が見かけられたとか。 完
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あこがれサイトの雪風堂さまのイルカ先生生誕企画、3年目の浮気疑惑に投稿させていただいた作品でした〜w
うちのアスマ先生はいつもこんな感じですよねの決定版みたいな話しですorz 哀れアスマ先生、でも救済は考えてません♪(酷