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16. てんとう虫 カカシはイルカの横にしゃがみこんでイルカの背を優しく撫でた。 「そのままで聞いてください。」 カカシの言葉にイルカは頷くでもなく、彼女のいた空間を見つめている。 「最初は人身御供の気持ちで向かっていたんですが、あなたを思うと死ぬに死に切れないと思って、結局は好きな人がいるから死ぬつもりはないと言いに行く気持ちになっていたんです。それで覚悟して行ったら、彼女はとても苦しがっていた。呪術の影響で悪霊になりそうな心と理性とをせめぎ合せていたんだ。こんな状態になるまで森の干渉に気づかなかったと悔しがっていました。自分は術に対抗するだけで精一杯だから俺に術の解除をお願いしてきたんです。それで忍犬を使って探して見つけたんですが、今度はあなたが森の中にいると彼女が言い出して慌てて向かったんです。そしたらあなたは殺されそうになっていた。あの男は特殊な状態のようだから自分にしか始末できないと彼女が攻撃をしかけて、俺はイルカ先生を助けることにしました。彼女は、全てに決着がついたら消えるつもりだったそうです。全てと言うのはこの森の正常化と、イルカ先生、あなたが自分の幸せに執着を見せた時だそうです。」 イルカは顔を上げてカカシを見た。自分の幸せ? 「俺のこと、好きでしょう?」 イルカは口をぎゅっとかみ締めた。 「彼女はあなたが自己嫌悪で苦しんでいることをとても気にしていた。この森に入ったのは自分の意志だというのにイルカ先生はいつもそのことを気にしてばかり。それが枷になって幸せを追求することすらできない状態なのをひどく悲しく見守っていたそうです。それでもそれは自分で切り開いていかなければならないことだからと彼女はあなたが自分で立ち上がるのを待っていたそうです。どうやら今の状態は彼女の合格点のようですが。森の正常化については俺にもよく分かりません。この森の仕組みを把握しているわけではないですから。憶測として彼女は生贄としてではなく、自分から進んでこの森に取り込まれたそうですから、怨念めいたものは少なかったのではないかと思います。それに彼女は立派な忍びでしょう?里に益を与えても、害はなさない。最後まで、優秀なくの一の姿を見せてくれたんでしょう。」 イルカは拳を握り締めた。やはり最後の最後まで彼女に助けてもらってばかりだ。心配までかけて、彼女自身の幸せは生きて成就されることなく終わってしまったと言うのに。 強く握りすぎて手のひらに爪が食い込んでいたがそんなこと気にならなかった。 「彼女もね、好きな人がいたそうですよ。あなたのスリーマンセルの仲間、ウスビと言いましたか。告白されたのはこの森に取り込まれた後だったそうですが、あの様子では彼女も以前から好きだったようですね。どんな言葉を交わしていたのか知りませんが、彼女が幸せだと言うならばそうなんでしょう。」 「俺は、ヒスイのことも、ウスビのこともなにも分かってなかった。」 「他人のことを全て分かり合える人間なんていませんよ。それぞれの葛藤があり、幸福がある。」 風がさやさやと吹いてイルカの髪を撫でる。どこかで何かの鳴き声が聞こえた。この森は本来の森と違わぬ森へと変貌しつつあるのだろうか。彼女のその命を引き換えにして。そして自分は彼女の幸せと引き換えにしてこの場にいる。 「イルカ先生、忘れろとは言いません。彼女はあなたにとって大切な仲間ですからね。でも、仲間はあなたの苦しむ姿を見たかったわけじゃないですよ。そこからいかに成長するかです。俺もかつて自分の判断ミスで親友を亡くしました。後悔しない日はなかった。今でもあの時のことを思い返して自分を責めるときもある。けど立ち止まるわけにはいかなかった。俺は生きているから。そして生きているから人を慈しみたいと思う。これは至極全うな欲だよ。俺はイルカ先生を愛してる、それのどこが罪なの?」 カカシの言葉に気持ちが温かくなる。人を愛してもいいのだろうか、好きになってもいいのだろうか。俺は仲間のことを忘れない。絶対一生忘れない。その気持ちと共に生きていくけれど、愛してやまぬこの気持ちを持つこともまた必要だと許してくれるだろうか。いや、それは自分で決めることなのだと彼女は言った。俺は、 「俺は、カカシ先生が、好きです。」 カカシは満面の笑みを浮かべてイルカを抱き締めた。 「知っていましたよ、昔から。俺が好きになるずっと前からね。」 イルカは抱き締める腕に力を込める。 すぐ横の雑草に羽虫が止まっていた。その虫の名を思ってイルカは瞑目する。
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はいお疲れ様でしたっ!!ここまで読んでくださって本当ありがとうございます〜〜><
初めて連載という形をとりましたが、どうですかあれですかもうだめだめなのはよーく承知してますっ!!(笑
色々とツッコミどころ満載です。助けに行ったアスマはどうしたのだとかころころ二転三転してるしおまけにお題に微妙に沿ってない話しもあったしorz
なんていうか面白み少ないしでも一応ラブはあったような気がします適当に(マテマテ
アスマは、えーと、実は木の上から2人が抱き締め合ってるシーンを発見して声をかけようかどうかしばらく逡巡した後に、後からカカシに愚痴愚痴言われるの覚悟で声をかけてそうです(笑
なんだよ人が折角助けに来てやったのによ、だからあいつらはったくよ、とかなんとか一人酒でも飲んでそうですそんな兄さんが大好き、でした(泣
さてさてあとがきまで暗くなってどうするよ!と一人ツッコミしつつも読者の皆様に感謝しつつ、20000打お礼をありがとうございました〜w