みゆき:ということでですね、先週もお知らせしましたとおり、ここでですね、金のないニッポン放送がですね、
     特に今週だけはゲストを呼んでもいいと言うことでしたので、今日は華々しくゲストコーナー!
     今日のゲストは松任谷由実さーん、どぉーぞー!

ユーミン:噂には聞いてましたけど、すごい登場のしかたですね。

 みゆき:うちの番組聞いたこと、おありですか?

ユーミン:あのねぇ、偶然ラジオの中で聞いたことあったんですけど。

 みゆき:ラジオの中で?

ユーミン:じゃない、車の中で。よく、歌ってる歌とはずいぶん雰囲気違うってのは耳にしてたけど。

 みゆき:それが不安だったんですよ。一度でも番組聞いたことあったら来るわきゃないと思って。

ユーミン:いえいえ、そんなことないですよ。

 みゆき:んで、それこそ金のないニッポン放送が誰かゲストを呼んでもいいってことだったんで、どうせ
     この際だからなるべく金のかかるような人を呼ぼうと思って。(笑)最初は所ジョージを呼ぼうと思った。(笑)
     えーと、かなり前に、いっぺんだけ、こちらが番組におうかがいしたんですね。

ユーミン:そうです。もう5年ぐらい前になるかもしれないけど、本当に。だってわたし荒井由実だったの、まだ。
     それにあの番組だってもう8年位やったもん。だからもう困っちゃうわけ30ぐらいに見られて。
     中島みゆきさんより年上だと思われてんですよ。困るんですよ。

 みゆき:あらっ?あたし今もそう思ってますけど。

ユーミン:あたし26です。

 みゆき:うっそぉーっ。うっそよーっ。ほんとに?みんなね、30ぐらい・・・。

ユーミン:だと思ってんの。

 みゆき:あれ?同じ位だと思ってたけど。

ユーミン:関係ないですけどね。もう25越しちゃうと。女も修羅場ですから。(笑)

 みゆき:今日のテーマはですね、いい女とはどういうものか。

ユーミン:なんか、歌うたってる人の中でいい女は誰か?みたいなこと言わせたいらしいですね。

 みゆき:そりゃもう、あたししかいないですよ。

ユーミン:だからここで争うとまた大変だから、私たちはのけて、と言う話をしましょうか。

 みゆき:あ、いいですねぇ。
     話はコロッと一回転。ところでダンナは元気ですか?

ユーミン:元気ですよ。うん。ええ。

 みゆき:あのね、こないだ、とあるコンサートに行ってね、ま、ステージで見たって言うのも、必ずしも生で
     見たってことにはなんないのかもしれないけど。ピアノ弾いてる後ろ姿を見てね。

ユーミン:どういうふうに思いました?

 みゆき:もしかするとユーミンってのは、渋好みだなあと。

ユーミン:あっそう、それいい意味?

 みゆき:別に年増好みとかそう言うことでなく(笑)もしかしていいの捕まえたんじゃないかなぁ、と。

ユーミン:そう?それで、それをステージで言ったんでしょ。なんだかんだって。

 みゆき:なぁーんにも。(笑)でも思ったよりやせてる。

ユーミン:そうなの。でも、太ったの。すごく。ところで、あなた、やせたんじゃないですか?昔より。

 みゆき:あんまり体重は変わんないの。胸のあたりがちょい減ったくらいね。

ユーミン:でも顔なんか細くなったみたいね。前髪あげたでしょ?あげたって言うより前切ったのね。

 みゆき:わりとさ、自信がないわけね。体格に関しては。でね、衣装なんか…。…そう言えば、衣装よ衣装!衣装。
     言いたいんだ、このひと言。これ、言わせてくれ!衣装。その衣装を買ってきてくれる姉さんがいて、ね。
     その人がね、かつて、まだ荒井由実さんだった頃、衣装を借りに走ってた姉ちゃんで、その人が
     決定的な慰め言葉言ってくれてね。

ユーミン:何だって?

 みゆき:「あたしってさ、サイズ大変なのよね〜」って言ったのね。でも、「いや、嘆くことはない、
     ユーミンはもっと大変なんだ」ってー。(笑)

ユーミン:どういうとこが大変なんだって?

 みゆき:上げ底が。

ユーミン:上げ底って?あっ、バストね。うん。でも形はいいのよあたし。

 みゆき:あっ、大小の問題じゃないわけね。

ユーミン:うん、大小の問題じゃないの。

 みゆき:と、ダンナが言うんですか?

ユーミン:いえいえ、自分で点検するのそれは。

 みゆき:はっはーあ、そんなもんでございましょうかね。

 みゆき:ね、ところでさ話コロッとイボコロリなんだけどさ、ハンドマイクってやるじゃない? ユーミン:やりますよ。  みゆき:手持ち無沙汰じゃない? ユーミン:初め手持ち無沙汰だったのね。  みゆき:そんなもんかな。 ユーミン:あたしがデビューした頃って言うのは、女のシンガーソングライターだとさ、どおーっと髪長くて顔隠さなきゃ      いけないとかね、ピアノかギターを必ず弾き語りしててさ、なんかこう影の部分…中島みゆきとは全然違う幼稚な発想で、      ジャケットでも何でも影の部分出してるって言う頃でさ。あたしはすごい華やかなのが好きなわけ。ステージでも何でも。      で、ハンドマイクで歌うの別に抵抗なかったんだけどね。でも、歌謡曲だとか言われたり。自分でもね、      おかしかったのね、最初。いざ立ってみたのはいいけども、なんか手持ち無沙汰でおかしかったんだけど、そのうち      なんか自分のペースになっちゃったって言うか…。  みゆき:あの時、歌謡曲って言われてたの? ユーミン:当たり前でしょう。  みゆき:そうだよね。だから逆に、今度いきなりなんか弾いてるとさ…。 ユーミン:新鮮かもね。  みゆき:新鮮な感じがする。そっか、ハンドマイクって言うとたいてい歌謡曲路線なのか。だってね、フリがついてるじゃない、      ああいうのって。わざとらしいフリが。なんか3人並べてみんな同じみたいなフリがさ。でも、わたしの場合      ああはやってないじゃない。そうすると何をやってるんだろうなぁとか、自分で思うわけよね。 ユーミン:一応フリ付けの先生とかはいるよ。ステージでやる時はね。ただ…。  みゆき:全然守んないでしょ、そんなの。 ユーミン:守らないって言うかね。アイデアだけ出してもらって、なんか勝手に動くって言うか…。  みゆき:だろうなあ。突然コロッと忘れてたりして。曲順忘れるとか。あたしなんかさ、一人でやってるからギター一本弾いて      歌ってる分には曲順違ったって、2番と3番間違ったって、途中でダン!と終わったっていいわけよ。でもメンバーが      一緒にいるとさ、こんで終わりーと思って歌い終わったらメンバーが盛り上がっちゃった、とかってなったら(笑)      絵になんないんじゃない? ユーミン:そうね。  みゆき:ない?そういうこと。 ユーミン:あるよ、たまに。というかねぇ、もう音楽の聞き方とかはね、生理的に覚えちゃうのね。      歌詞やなんかも、わりと最近間違えるんだけど。  みゆき:わりと最近間違える。こんなもんですよ、みなさん。 ユーミン:一度も歌詞カードとか見て歌ったことないのね。立って動き回ってるからね。見れないでしょう?  みゆき:そうだわな。ハンドマイク持ってさ、歌詞カードのせた譜面台一緒に持って歩いたりして(笑) ユーミン:下にローラーがついてたりしてね。でもね、そういうのは覚えてるんだけど、ステージの仕掛けがすごく多いのね。  みゆき:あっそうか。展開がいろいろと。 ユーミン:って言うか大道具とかが多いわけ。でねぇ、今やってるのはね、ま、ステージの上にブラウンズ・ホテルって言う、      ホテルの建物を作ってね、片方はね、回転ドアで動くようになっててさ、片方はエレベーターで昇り降りするわけ。      本当に。  みゆき:ほんとにつけちゃうわけ!?ほんとに!? ユーミン:金かかってんだからぁ、4000万ぐらい。もう赤字なのよ。  みゆき:すっごーい。うちのコンサートなんかドアつけて下さいって言ったら「後ろの布に描きますか」って言われますよー。      本当にドアつけちゃうわけ? ユーミン:本当に。本当にそれはすごいわよ。「全員集合」のスタッフが作ってんだから。  みゆき:なんかカラーが分かりますね。ダアーッと。 ユーミン:いやいや、それだけ仕掛けが精巧って感じなのよ。  みゆき:じゃあさ、忘れたらえらいことになるじゃない。 ユーミン:でねぇ、最初は裏に隠れてるんだけどね、銀のドームみたいのがあってさ、ガーッて開くと、そっから      ピアノ線でさ…。命がけなのよコンサートが。空を飛んじゃったり。  みゆき:命がけ…。サーカスみたいなもんじゃない。もうそこまで行ったら。 ユーミン:そう、もうサーカスみたいなさ、レビューみたいな感じなんだけど。んで、エレベーターにも乗らなきゃならない。      その上で次の歌唄わなきゃなんないとかそういう仕掛けがあるからね。ところがさ、ずうっとエンディング      踊ってたりして、乗らなかったりしてね。エレベーターに。(笑)  みゆき:アハハハ。スタッフが後ろで泣いてる。 ユーミン:そうそう、そういうことある。時々。  みゆき:しかしスケールが大きいね。間違えるにしてもさ。 ユーミン:いやぁ、だからなんとか採算をとりたいものだ。  みゆき:アハハハ。 ユーミン:でもね、存在感っていうのは、やっぱり一人でやる方が出るよ。  みゆき:それぞれだけどね。 ユーミン:いいんじゃない。だからそれぞれのパターンを守ればいいんだけど、世の中浮き足立つ人もいるからさ。  みゆき:まぁな。何かが流行るとそれをやってないとどっかはしょったんじゃないかみたいな感じ。 ユーミン:そういうのってあるよね。  みゆき:でも、まぁそうでない人も最近結構多いからねえ。例えば服の流行にしてもさ、全員がなにか流行ったから      それ着てないと遅いとかそういうのじゃないじゃない。自分で着たいもん着てる感じだもんね。      歌の好みなんかも、結構、あんなのが流行ってるとアレっぽくないからイモだとか、そういう人たち      ばっかりでもないじゃない。そういうとこ、わりと楽しみなんだ。 ユーミン:多様化してきたというか。  みゆき:楽しみだなぁ。これでわたしも明日はメシが食えるかしらというか…。(笑) ユーミン:でもそれだけ個性があったらすごいわよ、本当に。
 みゆき:北海道って何べんも行った? ユーミン:わりと何べんも行った。あたし北海道でねぇ全然人気ないのよね。  みゆき:ウッソー。 ユーミン:本当によ。ほんとに。  みゆき:売れてるじゃない。 ユーミン:「お前らそんなに中島や松山がいいのか」って言いたくなっちゃうよ。(笑)  みゆき:ぎゃははは…。あたしは北海道であんまりコンサートやってないよ。 ユーミン:でね北海道に行く時、必ず何かハプニングがあるわけ。台風で道具が届かなかったりとかね。  みゆき:やーだ。 ユーミン:だからね、言ってやったんだステージで。これは中島みゆきの怨念だって。(笑)  みゆき:アハハハ、あたしがまだコンサートに行ってない町にどーしてユーミンが行ってんの、なーんて。 ユーミン:えっ?北海道でコンサートやってないの?  みゆき:あたし割と少ないんだ。って言うのは、最初の頃はさ、住んでる町じゃない、昨日までそこらの店先に      カゴ下げてさ、「おばちゃん、この菜っ葉少し高いわあ」とか言って立ってた人が、「皆様こんばんわ」も      ないもんじゃない。 ユーミン:でも「皆様こんばんわ」なんてステージやんないでしょ?  みゆき:あたしゃ上品ですもん。いやまぁ、そういう部分もあって、なーんかやりづらくって、しばらく全然      やってなかったわけ。んでちょっとやってみようかなって思ったのが、まあ去年のコンサート。      ん?去年のコンサートか?本数としては少ないんですよ。 ユーミン:北海道は限られるでしょ?コンサートできる季節がね。11月ごろからはあんまり…。  みゆき:移動が大変なの。トラックが。 ユーミン:うーん、そういう経験はある。吹雪でね、寒かった。  みゆき:あれ、機材がこないと焦るもんねえ。 ユーミン:ほんとに。トラックの運転手さんも大変。  みゆき:遊びになんか行かない? ユーミン:遊びにはね。ないんですよ残念ながら。こういう仕事しちゃうとね。ただ、一度だけコマーシャルの      撮影って言うのでね、一回だけでたことあんのよ。顔。それ、カリフォルニアに行くはずだったんだけど、      どうしてか北海道になってしまって。  みゆき:あれも、いわば海外ですから。 ユーミン:でも楽しかったよ。すっごく。すぐその時の話ばっかりになっちゃうんだけどね。  みゆき:何月頃行った? ユーミン:8月かな。いい季節よとっても。ただもう9月になりかかってて。  みゆき:あ、それで、もう涼しく…。 ユーミン:うん、もう相当ね。東京で言えば10月の中頃とか11月とか。  みゆき:そうなんだよね。8月末でぐっと涼しくなるんだよね。 ユーミン:標津って言う町でしたけどね。釧路の近くの。そこの牧場みたいなとこで撮ったの。でね、一応      繁華街じゃない。小さい街だったんだけど。で、空気がよくてね、牧場みたいなのあるとこだったら、      なんか夜もそういう感じで過ごそうと思うけれど。  みゆき:ところがどっこーい! ユーミン:ネオンの光に魅かれてしまうのが人間の悲しさで。で行くとさ、すごいバーとかがあるのよね。      なんて言うの?ムームーを光りもんにしちゃったようなのを着てる人とかさ。  みゆき:ちょっとどう言う店入ったのよう。(笑) ユーミン:芦屋雁之助を女にしたような人とかさ。  みゆき:そういう店ばっかりじゃないんだからねぇっ。 ユーミン:指が、辛子めんたいみたいな人とかさ。いやほんと、すごかったよ。そのたまたま行ったところの      カフェやなんかがね。で、ディスコってのもあったわけよ、一応。  みゆき:ありましたか。 ユーミン:あったのよ。それがねえ幼稚園のお遊戯室みたいなとこでさぁ。  みゆき:こんな輪っかの鎖があったりして。 ユーミン:そうそうそう、そうなのよ。銀紙の輪っかがさぁ。(笑)  みゆき:ほんとに?(笑) ユーミン:一年中クリスマスみたいなディスプレイなわけ。で、まん中にジュークボックスが置いてあってね。      でも、森進一のとか、そんなのばっか入ってるわけ。で、たまに洋モノが入ってるとさ、      [ソウル・ドラキュラ]Fの2、歌:外人とか書いてあって…。  みゆき:ウタ、ガイジン…。あのねーっ。(笑)北海道ったっていろいろあんですけどねぇ。 ユーミン:楽しかった。ポップな街だった。もう一度行きたい。      函館だっけ?  みゆき:あたしは札幌。あちこち行ってるからね。一番長いのはやっぱり札幌かな?札幌もね、      オリンピックがあってからずいぶん開けたって言うか、建物がガッと増えたけどね。 ユーミン:札幌でね、一番印象に残ってんのはね、こないだのツアーで行った時にね、食事にみんなで行くでしょ、      バンドの人とかスタッフの人たちと。で、あたしは食後に必ず甘い物をとるのが好きなのよ。  みゆき:あたしも。 ユーミン:アントルメ。  みゆき:あんっとるめ!すごい!どーしてその名前を…。あたしも言ってみよ、アントルメぐりゃー言ってみよー(笑) ユーミン:それがミスタードーナツなのよ、たいてい。ツアーの時は。あるじゃない。どこにでも。  みゆき:何がアントルメじゃ。 ユーミン:ミスタードーナツ夜中行くの好きなのよね。それで札幌のススキノに交番があるよね。その横に      ミスタードーナツがあるのよ。  みゆき:で、アントルメがどうしたの? ユーミン:それでね、行ったのよね。そしたら暴走族の集会があったのよそこで。  みゆき:街中で? ユーミン:うん街中で。すごかったの。ケガ人が出たりしたらしいんだけどね。救急車とかワアーッと通るしさ、交番が      もろドーナツ屋の横だからね。おまわりさんがそこを拠点にして出てったりとかね。あたしなんかバンドの連中と      ドーナツを食べながらさ、コーヒー飲みながら見てたわけ。ニューヨークのようでしたよ、札幌は。  みゆき:うわあおーっ。海外ですもん。(笑)と、盛り上がったところで、そろそろ時間かな?いや、ギャラの分      たっぷり喋ってもらいましたけどね。 ユーミン:今日、だんながいないのよ。嬉しくって。久しぶりにいないから。  みゆき:あ、そっか。だんな送ってきてくれたんだと思ったけど、違うの? ユーミン:そんなことしませんよ。  みゆき:あ、わりとそう?送ってってくれるとかさあ。迎えに来てくれるとかない? ユーミン:ない。全然ない。  みゆき:なんかね、マメそうだけどね、見た感じ。 ユーミン:優しそうに見えるでしょ。そうでもないのよね。  みゆき:わりとさ。風邪気味だから薬でも飲もうかなと思ったら、すぐ、いつの間にか…とか、ない? ユーミン:あたしなんて一応家事全般やるのよ。もう今はやんないけどね。お料理はちゃんとやるんだけどね。  みゆき:へぇ意外だね。 ユーミン:あたし、結婚生活って言うものは好きなのよ。相手はともかく。  みゆき:あれ?あれ?おい…。 ユーミン:いや本当に結婚生活って言うものが好きなの。  みゆき:そんなもんかなあ。 ユーミン:時間気にしながら帰ったりするのが、結局好きなのね。  みゆき:ふーん。湿っぽい世界だなあ。 ユーミン:そーお?  みゆき:なんて言うか、家路の灯りがさあ、なんかこう、またたいちゃうね。 ユーミン:でもわりとそういう家じゃないからさ。  みゆき:アハハハ、だからね、戸を開けると全然それぞれ違う部屋なんでしょ。んで、緑のお部屋でしょ?      もういい加減にして。ほーんと。じゃ、今日どうもありがとさんでしたー。 ユーミン:こちらこそ。
(C)1987 ニッポン放送出版、扶桑社

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