今日は待望の24日です。
準備万端。後は主賓の登場を待つばかり。
仲間は、如月君家に集合しています。
「ほら、京一早く」
「なんで如月んトコなんかに行かなきゃならねェんだよ」
借金がかさんでこき使われた祟りか、京一君の足は中々前に進みません。
龍麻君後に回って京一君を会場に押し込みます、けど勢いをつけ過ぎせいかバランスを崩してしまいました。
二人揃って転がり込みます。
「Happy Birthday 龍麻」
京一君の上に被さる格好で倒れた龍麻君は、首を傾げて言いました。
「今日は京一の誕生日だよ」
「…………」×たくさん。
やっぱりというか期待を裏切らない龍麻君の反応。
「ひーちゃん。ひーちゃんの誕生日って何日?」
小蒔ちゃんはふて腐れてます。
「俺の…1月24日だよ」
「今日は何日だい?龍麻」
パーティの始まる前だと言うのに既にくたびれた様子の如月君。
「1月の24日」
「って事は君の誕生日じゃないのかな」
噛んで含めるように言う壬生君の説明でやっと飲み込めたみたいです。
そう今日、1月24日は京一君の誕生日ですが、龍麻君の誕生日でもあるんです。
「あ…、忘れてた」
自分の誕生日を忘れてしまう位、京一君の誕生日が大事なんですね。龍麻君。
それから、そろそろ京一君の上からどきましょうね。
倒れる時に京一君とっさに受身を取ったので、京一君と龍麻君正面から抱き合う格好で倒れてます。
いつも過度のスキンシップに慣れ親しんでる龍麻君は全く気にとめてないようですけど、周り皆が気にするんですよ。可哀想に京一君、皆に睨まれて針のむしろ状態ですから止めて上げてください。
京一君は龍麻君が怪我しないように自分が下敷きになっただけなのにねェ…。
さあ、楽しいバースディパーティの始まり始まり〜。
「Happy Birthday 京一♪」
真っ先にプレゼントを手渡す龍麻君。
ブルーのリボンで飾った四角包みを照れ臭そうに受け取ります。
ホントは物凄く嬉しいんですよ、京一君。思わず龍麻君をギュッってしたくなっちゃう
位。そんな事すると後が恐いから我慢してるんです。
バサバサッ。
京一君の手から龍麻君のプレゼントが落ちました。
何やらよく判りませんが、写真誌のようです。
「WOW!GREAT!!」
落ちた本に飛びついたのはアラン君。
「うっわー。凄ェ…」
ちゃっかり雨紋君も拾って見ています。
賢明なる皆さんは、もう龍麻君が贈った本が何だったか予想がつかれた事でしょう。
はい、そうなんです。
龍麻君が京一君にプレゼントしたのは俗に言う『Hな本』です…。
と言っても自販機で売ってる安っぽいエロ本のじゃなくて、キチンとした写真集ですよ。
日本じゃ下らない規制のせいで手に入らないか、ボカシや黒ベタで台無しされてしまう類いの本です。
勿論、ボカシも黒ベタもない貴重品。
「…京一の好みに合わなかったか?」
京一君が石化して固まっちゃったのをてっきりプレゼントが気に入らなかったと勘違いしちゃった龍麻君。
「おかしいなぁ。兄さんに頼んで送って貰ったんだけどな」
外国にいるモデルのお兄さんに頼んじゃったんですか?
「ちゃんと言ったんだぞ。京一はキレーなオネーチャンが大好きで夢は酒池肉林だって」
未来の義兄にそんなコトばらされてしまったとは不憫な京一君。
ここで一言言わせて頂ければ、別に龍麻君は京一君にHな本をプレゼントするつもりだた訳じゃなくて、キレーなオネーチャンが沢山載ってる本を贈るつもりだったんです。
現役モデルで目の肥えたお兄さんならステキなのを選んでくれると思ったんですね。
依頼を受けた賢明なお兄さんが龍麻君の説明から京一君の喜びそうな本を的確に選択しただけなんです(これも一種の嫌がらせでしょうか?)。
「ゴメンな。京一。
後で別の、もっと京一が好きそうなの送り直して貰うよ」
プレゼントが喜んで貰えなかったのでションボリしてしまいました。
「そ、そんなコトねェよ」
「いいよ。無理しなくて。
こんな事だったら、京一のヒミツの本見せて貰っとくんだった。
そうすれば京一の好みが判ったのに。
ヒミツの本ってキレーなオネーチャンの本なんだろう?」
「何ッ!?」
目を剥く京一君。
「俺のヒミツの本って…」
「京一の部屋に隠してあるんだろ?」
確かに京一君の部屋に人様に見せられない本が隠してありますけど、何で知ってるんですか?龍麻君。
「京一のお母さんが教えてくれたんだ。京一の内緒」
「いつ?」
「京一家に遊びに行った時」
「俺そんなの知らねェぞ」
「うん。だって京一はお風呂に入ってたもんな」
良いお母さんですね。本人の居ぬ間に息子の内緒を友達にばらしてくれるなんて。
まさに油断も隙もあったもんじゃありません。
救いは、相棒に無断で内緒を覗くのを龍麻君が良しとしなかった事ですね。
「そう言えばさ。一緒に隠してある内緒の物って何?」
止めの一撃。京一君崩壊。
聞いちゃいけません!龍麻君。
内緒の本と一緒にしまってあるモノなんて。
男の子のナンパの必需品(持ってるのが礼儀かな?いざって時にないと困るモノですよね?いえ、あの…、その、△※■ー○の事ですってば。追究しないで下さいませ)なんですから、答えられないでしょ。
ここまで来ると流石に京一君が哀れになってきます。
腹を抱えて見ていた仲間達の笑いも引っ込んでしまいしました。
「…しっかし先生もやるなぁ。
どうやって持ち込んだんだ。
こりゃあどれも正規ルートじゃ持ち込めねえ品ばかりだぜ」
本を手にとり感心するフリして村雨君が話を別の方へ誘導します。
「………」
龍麻君バツが悪そうに視線を泳がせています。
その時、壬生君がハッとしました。
「まさか…龍麻」
「…う、うん。冬吾おじさんにお願いした」
ガーーーン。
学校長として、また法で裁けぬ悪を断罪する暗殺組を率い壬生君ら部下達から崇拝と尊敬を集める拳武館長・鳴滝冬吾。
その人にHな本を密輸させたんですか〜?
何も知らず館長直々の命令でHな本を密輸させられた仲間を思うと壬生君涙が出そうです。きっと彼は何か重要な任務だと信じて疑わなかった事でしょう。
龍麻君に甘いのは知っていましたが、此処までとは…。
京一君に続いて壬生君も壊れてしまいました。
「やっぱりいけなかったかな?」
自分の我侭で先生に無理なお願いをした自覚がある龍麻君、眉が八の字になっちゃってます。
そんな龍麻君を見て思わず壬生君ったら「気にしなくていいよ。龍麻」ですって。それも笑顔付きで。
甘々さ加減は弟子も師匠も良い勝負みたいです。
日頃悪ふざけやとんでもない事を仕出かして、皆を振り回す龍麻君ですが、こんな風に『お願い』をしてくれる事はあんまりありません。
だから、怒れなかったりするんです。
全部、京一君の為ってのが一部を除いた仲間の気に喰わないんですけどね。
テーブルの上に所狭しと並ぶ料理はぜーんぶ京一君の好きな物ばかり。
付き合いの長さでは上の醍醐君だって、ここまで詳しく京一君の好物を把握してないでしょう。龍麻君だからこそできた事です。
京一君は知りませんが、下ごしらえを手伝った壬生君と如月君が、忘れてるにしても龍麻君の誕生日でもあるんだからと龍麻君の為に何か作ろうとする度に「こっちの方が良いよ。京一好きなんだ」って全て京一君の好きな物に作り変えてしまったんです。
その上、小夜ちゃん達はナース姿。
亜里沙ちゃんは、きわどいミニスカにビスチェという悩殺スタイル。
雛乃ちゃんは巫女さんルック。
さやかちゃんだって、プライベートにして華やかな装い。
芙蓉ちゃんは、妖艶な式神の格好。
どれもこれも京一君を喜ばせようと龍麻君が『お願い』したに違いありません。
プレゼントといい的は外していますが、一生懸命ですよね。
それが京一君に通じないはずはありません。
「ひーちゃん。
ホントにありがとな。嬉しいぜ」
おでこをゴツンとくっ付けて龍麻君の髪をワシワシ撫でくりまわします。
ちょっと荒っぽいですけど、これが京一君の素直な感謝の表現です。
「良かった〜」
京一君を喜ばせるという念願叶って肩の力が抜けた龍麻君の顔に浮かぶのはそれは嬉しそうな笑み。
誕生日のこの日、龍麻君の一番幸せそうな笑顔が見れたのは、皆から次々と贈られたプレゼントを受け取った時にではなく、この瞬間でした。
京一君のプレゼントと違って皆から龍麻君に贈られたプレゼントはどれもそれぞれに龍麻君を想い意趣を凝らした物ばかりです。
勿論、龍麻君はとっても喜んでくれたのですが、それでも京一君の『ありがとな』に敵いませんでした。
ちょっと悔しいですよね。
だから、誰も龍麻君に教えてあげませんでした。
京一君が、一番嬉しいのは龍麻君が自分の想いに気付いてくれる事だって。
沢山のキレーなオネーチャンより、ただ龍麻君が京一君の事は愛してるんだって自覚して欲しいだけなんだって。
難しいんですけどね。
いつまでたっても女の子になれない龍麻君に、京一君に対する『好き』は皆に対する『好き』と違うんだって気付かせるの。
何時になるやら…。
さて、参考までに京一君に贈られたプレゼントの一部を紹介しましょう。
微笑ましい所ではマリィちゃんの『龍麻君レディ化計画予定表』。この予定通り事が進むといいですね。
スタンダードなのは霧島君とさやかちゃんのコンサートチケットと特別に録音したオリジナルCD。
考えさせられてしまうのは壬生君のセーター。当然手作り。それも龍麻君とお揃い。
これを着て龍麻君と二人で街に出たらそりゃあ注目されるでしょうね。
ホモップルとして…。
借金の返済の替わりに働いて返せという意味でしょう。如月君の『労働換金券』1枚1時間12枚続き。
等々。
龍麻君の『Hな本』といい大半が一癖も二癖もある品でした。
こういう人徳もあるんですね…。
え?京一君は龍麻君に何を贈ったのか気になる。
はい、それではおまけつきでどうぞ。
楽しいパティーも終わって、龍麻君と京一君お家帰って来ました。
「ほい」
リビングのソファに凭れている京一君に冷たいビールが差し出されました。
「悪ィな」
微塵も悪いなんて思ってない笑顔で喉を潤してます。
今日のパティーは女の子達と醍醐君も出席してたから、ノンアルコールでしたもんねえ。無理ないでしょうか。
それを見越してビールを出したげる龍麻君って、ホント京一君に甘い。
ビールを飲み干し、ひと心地つくと京一君は思い出したように学ランのポケットを探りました。
そこには、葵ちゃんから貰った小さな包みが入ってます。
『はい、京一君。おまけ。
うふふ、こっちが本命かしら?』
なんて意味ありげなコト言いながら、渡されたモノです。
言っておきますがプレゼントじゃありませんよ。
葵ちゃんは小蒔ちゃんと合同で新しい袱紗をプレゼントしてくれたんですから。
度重なる戦いですっかり擦り切れてしまった―――村雨君に言わせれば小汚い袋を新調してあげたんです。
そんな訳で京一君の木刀は、今紫の綸子で作られた袱紗に納まっています。おや、よく見れば流水の地紋じゃありませんか。粋ですねえ。
古いまんまの結び紐だけが居心地悪そうに揺れています。
「ん?」
紙袋から出てきたのは、鬱金で染めた生糸で作られた組み紐でした。
新しい袱紗の結び紐にぴったり…なんですけど…。
「ああぁぁ!!何でソレが!!!!」
キッチンから自分のコーヒーを持って戻って来た龍麻君が叫びました。
慌てて京一君の手から組み紐を奪い取ろうとします。
が、そうは問屋が卸しません。
京一君素早く身体を逸らせて、龍麻君の手から組み紐を遠ざけちゃいました。
「京一!よこせ」
「ヤダね。俺のもんだぜ」
「嘘付け」
「嘘じゃねェよ。美里がくれたんだぜ」
「なッ!?」
京一君に抱きついて紐を奪い取ろうとしていた龍麻君の動きが止まりました。
相棒のニヤけた顔を凝視しています。
京一君の顔がニヤけちゃうのは、龍麻君が嬉しいコトしてくれたせいです。
だって、今京一君の手の中にある紐は、龍麻君の手作りなんですもん。
なんでそんなコトが判んのかって?
簡単ですよ。
ヨレヨレであっちこっち歪んだ組み紐なんて売っていませんから。
こんなへたれた組み紐を編める天才的なぶきっちょさんは龍麻君しかいませんって。
ね、バレバレでしょう。
きっと、京一君の誕生日にプレゼントにって、一所懸命頑張ったんでしょうね。
さしずめ組み紐の編み方を教えてくれたのは、手芸が得意な兄弟子さんあたりでしょうか。葵ちゃんや小蒔ちゃんも協力してくれたんでしょうね。
でも、こんなのしか出来なかったから、急きょ予定を変更してお兄さんにオネーチャンの写真を頼んだに違いありません。
隠しておいた組み紐を葵ちゃんが京一君に渡してあげたという事ですか。
龍麻君ったら、二重のお馬鹿さん。
多少(?)へんなのでも龍麻君が作った物なら京一君喜んでくれるのに。
それから、隠ぺい工作が失敗してもそらっとぼけちゃえばいいのに、正直に慌てふためくから相棒さんにモロバレ。
隠し事が出来ないっていうか、らしすぎです。
そんな龍麻君は京一君には毒です。
可愛くって可愛くって、うっかりおでこにキスしちゃいました。
これはマズイですよ。蓬莱寺さん。
龍麻君はあくまで男の子のつもりなんですから、そんな事したらヘンタイ扱いされちゃいますよ。
どうするんですか?
「「………」」
沈黙が痛いです。
二人とも動けません。
「…ほ、ほ、ほら見ろ。
ひーちゃんだって、男にキスされたら驚くじゃねェか」
そう言えば京一君、いつも龍麻君のお茶目の餌食になってましたね。
小っちゃい時から、青や緑の目をした人や金色銀色の髪の知り合いが多かったせいか、龍麻君挨拶のキスに抵抗がありません。
日本人としての常識も身に付いていますので、誰彼ともなくキスしたりしませんけど、京一君にはキスを迫ったりふざけてキスしたりするんです。
苦しい言い訳ですけど、ひとまず説得力はあります。
「う〜〜、でも、別に京一にキスされたってヤじゃないぞ」
いつも京一君を困らせてる龍麻君にしてみれば、してやられたみたいで悔しいみたいです。
でもね。龍麻君、今の台詞は…。
本当にそうだからって、必死に堪えてる京一君に罪なコト言うのは止しましょうね。
いくら龍麻君に鍛えられて我慢強くなったといっても京一君は、今日やっと18歳になったばっかりの男の子なんだから、可哀想でしょう。
ついでに言うと龍麻君は、もう少し大人になって下さい。あなたは年頃の女の子なんですよ。いい加減自覚してくれないとはた迷惑でしょう。
「とにかくコレは俺のなんだから遠慮なく使わせて貰うぜ」
必死に動揺を隠して京一君は宣言すると、古い方の紐を外して新しい組み紐で袱紗を結びました。
「止せよ。京一。
新品の袱紗が台無しだぜ」
「じゃあ前のヤツに戻してコレ使う」
まだ捨ててなかった前の袱紗を取り出しました。
何が何でも龍麻君お手製の紐を使いたいんですね。京一君。
一方、何とか自作のへたれ紐を使わせまいとしていた龍麻君もこうまで言われてしまうと反対できなくなってしまいます。
「そんな事しなくていいよ。
もったいないじゃないか。せっかく葵達が作ってくれたのに使わないなんて」
「だったらコイツだって使わなきゃもったいないじゃねェか」
へへへといつもの笑顔で新しい袱紗に新しい紐を結びます。
京一君の笑顔につられて龍麻君の困った顔にも笑みが浮かびます。
「忘れねェうちにっと」
京一君は龍麻君に紅石英のネックレスを掛けました。
「これは?」
「プレゼント」
「…えっと、ありがとう」
龍麻君の胸元に薄紅色のアステリアが淡い光を放っています。
実はこのネックレスは紅石英の指輪をペンダントヘッドに加工してあるんです。
前に旧校舎で紅石英の指輪を手の入れた時、ミサちゃんが『紅石英はローズクオーツって言って〜アフロディーテの石なんだよ〜。愛と美を司ってるんだ〜』と教えてくれたのを覚えていたんです。
ホントは指輪のままで贈りたかったんですが、無手空拳の使い手である龍麻君には指輪は邪魔になるだろうと如月君に頼んでネックレスに作り変えて貰ったんです。
美はともかく少しでも愛に目覚めて欲しいな〜なんて願いつつ。
下心は置いといても、紅石英の美しさが龍麻君に似合うなと思ったんです。
紅というより桜を思わせる淡い輝きが、出会ったばかりの頃、舞い散る桜の中にいた龍麻君を思い起こさせてくれたから。
「でもさ、男がアクセサリーするのっておかしくないか?」
やっぱりそうきますか。
男の子だってピアスの一つや二つ当たり前の世の中で、龍麻君は男がアクセサリーをするなんて、とかなり時代遅れな思想の持ち主だったりします。
あんたは女の子でしょ、というツッコミは龍麻君にはするだけ無駄ですよ。
「ひーちゃん…。
俺だって、チェーンネックレスぐらいする時あるぜ。
その考え古臭くねェか?如月みてェ…」
「う゛…、そ、そうなのか」
京一君の見事な切り返しに龍麻君うろたえてます。
龍麻君がどういう反応をするか予測済みだったんですね。
「そうそう」
「うぅ〜」
「なんだよ。ひーちゃんは俺のプレゼント喜んでくんないのか?」
「えぇ!そんな事ない。嬉しいぞ」
ワザとこんな事言って駄目押しするなんて、京一君もやりますねえ
こうして紅石英のネックレスは龍麻君の胸元を飾ることになりました。
ただ、あんまり長い間の事ではありませんでした。
石に込めた京一君の願いが功を奏したのか再び指輪に変身する事になりましたので。
勿論、龍麻君の左手の薬指にはめる為にね。
「京一、スキあり」
思惑通り事が運んで気の緩んでいた京一君の唇に柔らかくて暖かい感触が。
「!?」
「驚いたか?」
やり返したとばかりに得意気な龍麻君に京一君は黙ってぎこちなく頷くのみ。
そんなに京一君にやり込められたのが悔しかったんですか?
だからって、いきなりキスを強奪するのはやりすぎでしょう。
それもmouth to mouthっていうのは…。いつもはほっぺだったのに。
負けず嫌いもここまでくれば御立派。
自分がやらかした事の意味も分からず鼻高々な龍麻君の頭を、京一君を苦笑いしながら撫でてあげました。
『ひーちゃんッ!!
いくら挨拶でも男にキスすんじゃねェ!!女にやれ』
『京一のバ〜カ。
日本で女の子にいきなりキスしたら犯罪だろ』
『それ言うんなら、男にだってやらねェ!』
『京一ならいいじゃん』
『良くねェッ!
キスってのは好きなコとするもんだろうが』
『俺、京一のコト好きだぜ』
『………』
『納得したか?ん?』
『……あのなァ。
俺は、好きな女の子としろって言ってんだよ!』
『………』
『ははァ〜ん。
ひーちゃん、もしかして女の子とキスしたことねーんだろ〜』
『う、うるさい。
俺は京一と違ってそーゆうのは大切にしてるんだ』
『さびしいな〜。
女の子とできないからって相棒にキスするヤローなんてよ』
『言ったなー。
覚悟しろよ』
『何すんだよ!』
『こうなったら男も女も関係ない!
好きなコとマジなキスしてやる!!』
『止せッ!ひーちゃん。血迷うなーーー!!』
『逃げんな!京一』
『逃げるわい!!』
ある日の二人の会話です。
誕生日ですし、龍麻君のファーストキスも京一君にプレゼントってコトにしちゃいましょうか。
それでいいですよね?
18歳おめでとう。京一君、龍麻君。
【END】