猫と遊ぼうと思ったら,その猫に襲われて主人に助けられた日

 それは俺が主人の町内めぐりコース散歩にお付き合いしていたある日のことである。散歩の途中で,ある家の庭先で猫に出会った。その猫は少し離れた場所からこちらの様子をうかがっていた。俺は普段から俺の仲間とは違う猫という生き物に興味があったが,この時もこの猫がどんな奴か見極めたくて近づいてじっくり見たいと思った。

 その猫は小さい体だが,今までと違い,凶暴そうで普通と違う感じがした。でも,俺はお犬様である。こんなちびたの猫とはもともと格が違う。でもその猫は予想外の行動をおこした。けんかごしで,いきなり背中を丸めて,尻尾を持ち上げ,全身の毛を逆立た状態で,つま先立ちしながら,2,3歩トントンと俺に近寄って来たではないか。今までの猫だと同じような格好をしていても,必ず逃げて行ったのだが・・・。

 こいつは明らかに今までの猫とは違っていた。でもまさか。俺が高貴でけんかなどと縁のない生まれだからこうなったのであろうか。その猫は恐れ多くもいきなり俺に飛び掛ってきた。その時,主人は機転を利かして,散歩紐をつけたまま咄嗟に自分の周りを猫の攻撃を防ぐために俺を走らせたようだ。俺は一生懸命ひたすら走った。怖かったのは,その後ろをこの世のものとは思えない形相をしたその猫が追いかけてきたことだ。主人は,俺の後を追いかけるその猫を何度か足蹴りして追い払おうとしたようだが,その猫はその攻撃にもひるみまずに,ただひたすら俺の後を追いかけてきた。

 本当に怖い思いをした。犬の俺をこんなにおびえさせる猫がいるとは思ってもいなかった。その猫は俺の後を追いかけながら,主人に蹴られ続けてて俺を襲うことをあきらめた後,5m程はなれたところで依然として俺を威嚇していた。恥ずかしい話だが,俺は今までにない恐怖で,その後しばらくまともな声が出なかった。主人の話だと,俺は猫が離れた後に,キャインキャインと完全に負け犬の死ぬような声を出していて,近所の人が見ていて恥ずかしかったと言うのだが・・・。まさか猫ごときににそのような声を出したとは,われながら本当に恥ずかしい。犬用の穴があったら入りたい心境だ。こんなに馬鹿にされるのであれば,度胸をだして襲われたときに,その猫の頭ごと丸ごとかみついてやればよかったと今になって後悔している。
 
 とにかく,最近の猫は怖いもの知らずで本当に怖い。世の中の仲間にも言いたい。猫には気をつけろ。怖いもの知らずで知能が低いから何をするかわからない。よくよく肝に銘じておくように!(H7夏)