先生の自己紹介

 俺は犬である。名前はタローと言う。主人の奥さんは俺の眉が昔の公家に似ていることからマロと名づけたかったようだが,主人の一声でありふれたタローになったと聞いている。由緒正しき茶色の柴8歳(H12.12現在)で幼名は富石丸、平成4年8月25日、西尾市(愛知県?)生まれである。人間でいうと50歳ちょっと前ぐらい。主人の年齢を追い越しているので,本当は俺の方が主人でも良いと思うのだが・・・。
 
 ここの家族との出会いは,富山市内の新庄町のグリーンマーケットである。当時,変なおやじに見られて気分が悪かったのをしっかり覚えている。それが今の主人である。そこで約8万円で買われてからずっとお世話になっている。後に聞いたことだが,私が運良くこの家に買われた理由は,主人の長男の異常な犬恐怖症を直すためだったと聞いている。それ以来,家族には「先生」とも呼ばれ、庭の外を通る子供が我が家にいたずらしないか、気が向いたら見張る毎日であるが,ほとんど居候と言われても仕方がない俺を8年間も面倒をみてもらって,主人とその家族には深く感謝している。
 
 俺の生まれは愛知県だが,血を分けた弟(黒色の柴)が富山市内の南の方にあるグリンマーケットで,当時,生まれて3ヶ月で俺と時を同じくして身売り先をさがしていたが,どうなったかわからない。当時,主人が弟と俺を比べて,弟の方が俺よりはるかに利口そうな顔をしていたが,体が弱そうに見えたということで仕方なく俺を選んだと聞いている。買われた時,俺は主人の奥さんにかかえられて震えていたと今でも馬鹿にされている。
 
 俺の家を紹介しよう。家は二つある。本宅と別宅である。本宅は主人の家の玄関にあり,別宅は庭の方にある。別宅は雨に当たるので,主人が雨が吹き込まないように屋根を拡幅してくれた。いつもこの両方の家の間を好き勝手に歩き回っているが、縄張りから外に出れないように柵がある。普通,俺の仲間は鎖でつながれていることが多いが,その点,俺は幸せ者と言うべきであろう。今までに,柵や通り道の隙間を探して三度脱走をしたことがあるが,二度は逃げる途中で餌につられてつかまって主人にこっぴどく頬をたたかれたが,一度は完全に脱走に成功し,5時間ほどすき放題遊びまわって,彼女の家にも遊びに行って,夜8時頃に腹が減ったので帰宅した。そのときは,主人とその家族みんなで歓迎してくれて,しかも肉のご馳走があたった。不思議なことである。人間の考えることがよくわからない。(平成12年12月:タロー記)