雷が怖くて脱走したら迷子になって10日間放浪した日(H13.12)

 12月29日の夜から翌日の朝にかけてものすごい雨風だった。俺は恐ろしくて、例のベランダ下へかくれたけど、突風が吹きつけてもっと恐ろしい目にあい、家の周りを走り回った。しにものぐるいで逃げ惑った挙句、玄関横の塀の隙間にあててあった板を無理矢理こじあけて外へにげだした。逃げても逃げても風が吹いて、安心できる場所を求めていつまでも走った。気がついたときには、自分がどこにいるのかわからなくなっていた。突風はいつまでも続いていた。

 これから2日ほど自分の家を探して雪の中を黙々と歩いた覚えがある。その間、道行く車に何度も警笛をならされて恐かった覚えがある。これは今でも車が来ると条件反射で体が逃げてしまうことからなんとなく思い出すことができる。
このあとの俺の記憶はない。

 30日も突風が吹いていた。主人も奥さんも放っておけば腹が減って帰ってくるだろうと簡単に考えていたようである。ところが、俺は帰ってこなかった。しかも、31日の夕方から、強風だけでなく、雪が降り始め、アッという間に外は一面真っ白になった。その夜は恐ろしく冷え込み、俺の家族は弟分を含めて大変心配したようだ。俺の脱走は大抵、その日に帰るのが日課であったが、今回は正月3日を過ぎても帰らなかった。勿論、外は雪が積もっており、正月の間、外はものすごく冷え込み、主人は凍死したものと半分あきらめていたようだ。でも、7日に無事家へ帰れたのである。どうして帰れたのか、俺が後から聞いた話しは次のようであった。

 1月1日:主人がホームページ「SUGISANのつれづれなるままに…・・」に俺の捜索願いの掲示をした。(反応ある訳無いだろう)

 1月3日:主人が車で自宅から1km程度圏内を捜索中に、子供二人が12月30日に市内北部の森町で見かけたとの情報を得た。(本当の情報だったか疑問だな)

 1月4日(金):主人が森町から約1km圏内に住む会社の従業員にメールで情報提供を依頼した。犬を飼っている人からは、親切な返事が帰ってきた。その中で、警察で預かっている可能性があるとの情報を得た。警察へ連絡したが、該当犬はいなかった。(ケーブルテレビ富山に親切な人がいたようだ)

 1月7日(月):保健所に電話したかといってくれる人がおり、主人が電話したところ、特徴が似た犬をあずかっている人が市内南部の経堂にいるとの情報を得た。経堂は俺の自宅から直線距離で約5kmもあり、あまりに遠いので半信半疑でその人のところに電話したところ、どうも本物のようであった。主人がその人のところに迎えに来たとき、俺はすっかり室内犬になっており、その家の人に呼ばれるまま元気に玄関へ出ていった。主人の顔をみても、このオッサンがかっての主人だったことを覚えていなかった。寒さで頭がやられていたようだ。(顔だけ良く似た愚犬がいっぱいいるのに良く俺とわかったものだ)

 後から聞いて知ったのだが、どのようにして国道8号線を横断したのだろうか。1月2日には経堂まで来ていたようだ。(田んぼの中の地下道を渡ったのだろうか)スーパー内を走り回って、店員に捕まえられて外に放り出された。それから4日まで、近所の家の駐車場で居候をしながら、子供にえさをあたえられていたところ、この親切な人に拾われ、風呂にいれてもらい、室内犬として7日まで飼われていた。(室内の住み心地は最高だ)とにかく、うまれて初めての大冒険だった。

 俺の仲間と暮らしている世の中の人間へ言っておく。俺でさえもこのようなことになってしまったのだから、世の中の愚かな犬連中では、間違いなく地震、雷、火事、暴風、豪雨が怖くて知らぬ間に暴れてしまうという本性があるということを、よくよく肝に銘じておくように。