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あんっのくそじじいぃっ!!
と、罵ってみても仕方がないが、仕方ないんだけどさっ、これってひどくない?俺のこともしかして嫌いなの?
と、思ってはや1年と数ヶ月が過ぎた。
誰にも知られないように、誰にも悟られないように忍を殺さねばならない。それは秘密だから、暗黙の了解だから。
暗い山の中腹でカカシは一人、佇んでいた。足下には無惨にも一太刀で絶命してしまった死体。雲隠れの里の忍びはどうにも好きになれない。
姑息と言うか、方法を選ばないと言うか、仕掛けるならば仕掛けるで、もっと礼儀に乗っ取って工作活動してほしいもんだね。忍に礼儀も何もあったものではないのは自分だってよく知ってはいるが。でも、ま、躊躇なく殺せるからかえって都合が良いのかもしれない。
カカシは土遁の術で死体を埋めると、解らないように地形を元に戻した。そしてため息をひとつこぼしてその場を去った。
雷の国と火の国の国境近くのこの場所は、一般の人たちにとってはなんてことない街道沿いの宿場が建ち並ぶどこにでもある歓楽街なのだが、忍びにとっては心休まることのない場所だった。
雷の国の隠れ里、雲隠れの里とは友好関係にあるものの、いまだに敵対心がくすぶっている。この国境近くの場所は、まさにそんな鬱憤のはけ口と言わんばかりに、日々、人目のつかない所で忍び同士の殺し合いが日常化していた。
目に見えない所では何をしてもいい、そんな暗黙の了解ができあがっている。
カカシはこの歓楽街で、火の国の者を雲隠れの忍びから影ながら守る役目、極端に言えば治安維持を言い渡されていた。任務期間は2年。短いようで長い。いや、ここでの時間で言えばものすごい長い、長すぎだっつの。俺神経おかしくなりそう...。
と被害者ぶったところで任務期間が短くなるわけではない。
ここの任務は過酷だ。並大抵の神経ではやっていけない。街の人間の半数は火の国の者だが、残りの半数は雷の国からの入国者でできている。いつどこにビンゴブックに載っているような忍びが紛れ込んできてもおかしくない。
それに便乗して火の国の人間が雷側に寝返るということも簡単に起こっている。どこかこの街はいかれていた。誰も信用できない、信用できるのは自分だけ。
それは当初から解っていたことだった。本来ならば2.3ヶ月で交代するこの任務をカカシが一人で2年もの間務めなければならない理由なぞ、実はないのだが、一番の適任で長く持ちそうだからとかあの火影のじじいの一言でこんなことになっちまったらしい。
戻ったら有給1ヶ月はとってやる。こんな殺伐とした任務など、本当は好きじゃない。
すぐに終わる任務ならばいい。だが、この任務は明日も明後日も、一ヶ月後も数ヶ月後も続くのだ。
街の人間を守るというのが表向きの任務だけれど、内実、この街の人間は全て疑った方がいいのだ。でなければ、殺されるのは自分だ。まあ、簡単に殺されてはやらないし、死ぬつもりもない。
自分は暗部だ。現在も、そして未来、辞める事情がなければ続けるだろう。暗部の中でも精神は鋼のように強靱だと言うのは理解している。仲間の死を何度も見てきた。どんなひどい裏切りも、ひどい内容の任務もこなしてきた。こなしてきてなお、カカシは自我が崩壊することはなかった。幼い頃の父親の死、親友の死、恩師の死、大切だと思う人々が次々にばたばたと倒れる中、カカシは思ったものだ。自分は絶対に死ぬものか、彼らの守った木の葉を自分が守らずに誰が守るか!?他人任せでいいと思うか?ありえない、絶対に自分が守ってみせるっ。
心の中に強固に息巻くその精神は、カカシ本人よりも火影の方が先に気が付いた。そして暗部になり、暗部の部隊長となって部下をも持てるようになった直後にこれだ。今現在、カカシは暗部ですらやりたがらないこの任務を、半ば強引に押しつけられてここに至るのだった。
歓楽街に入ると、カカシはかぶっていたフードをおろした。額には木の葉の忍びの額宛て、口元は口布で隠してある。
わざわざ忍びであることを隠す必要はなかった。むしろ自分が忍びだと公言して誘ってすらいた。自分を殺したければ殺すがいいし、ちょっかいを出してきてもいい。それが暗にならば、返り討ちになどいつしてもいいからだ。誰にも知られなければ。だから堂々と忍びの恰好をしている。
それに、歓楽街であまり黒ずくめの恰好をしていたらそれこそ怪しまれる。何気ないふりをして観察する。ただ歩くのではない。いつもと変わりはないか、見覚えのある忍びの顔はないか?
疑心暗鬼と言えばそうかもしれないが、それが任務だ。そして、カカシはそんな任務など、苦ではなかった。
好きではないが、任務となれば選り好みなどしていられない。そして自分はそれを達成できる能力を持っている。
あと数ヶ月、最後の最後まで気を抜かずに、ただひたすら、最低のラインの規律を乱す忍びを殺す日々。
見たところ、街にそれほど目立った異変は感じられない。今日はもう寝ようか、今夜一人殺したから、少しは静かになるだろう。
カカシは仮住まいの家に帰って後はさっさと汗を流すことにした。ドアを閉めるときにはかかさず結界を張る。誰にも進入されないように。
そして忍犬を一匹出して見張りをさせてから眠る。
眠ると言っても半分意識は残したままなので熟睡なぞしていないのだが、それでも横になるだけで身体は休まる。
明日は木の葉の里側の出入り口辺りをぶらぶらしてみようかねぇ。
そんなことを思いつつ、カカシは薄い微睡みを彷徨った。
そういえば、この任務に就いてからと言うもの、熟睡なんかしたことないなあ。一日でいいから熟睡してみたいものだ。まあ、その時は自分が死ぬような目に遭っている時かもしれないが。
何がおかしいのか、カカシはふふっ、と笑って寝返りを打った。
翌日、有言実行とばかりにカカシは街の南にある出入り口の門の一つ、木の葉側の門の辺りをぶらぶらしていた。何をするでもなく、店を覗いたりぼんやりと茶をすすったり、人から見れば働きもしないでぶらぶら遊んで、まったくいい身分だと思われそうだ。まあ、確かに滞在費用は全て任務経費で落とすし、ここでの任務は昼間よりもどちらかと言うと夜の方がはかどるので、昼は偵察がてらにぶらぶらするだけだった。なんとも不健康な時間のサイクルだった。
ま、そんなのは木の葉の里で暗部に在籍していた頃ともあまり変わらないような気もするのだが。
実は一つ、カカシはこの歓楽街で気に食わないことがあった。任地で気に食うも食わないもあるかと火影に罵倒されそうなものだが、生理的に嫌な感じがするのだから仕方ない。
それは、匂い、だった。
別に近くに温泉地があって硫黄の匂いがしているとかではない。空気が濁っているのだ。微かに漂ってくるその匂いは一種類ではない。白粉の誘うような匂い、麻薬のような合法ドラッグのぴりぴりした匂い、きつくて頭が痛くなるようなタバコの匂い、ほのかな酒の残る匂い、誰かのきつい香水の匂い、全部全部ひっくるめてぐちゃぐちゃになった腐った匂い。
一つ一つに趣はあってもそれが混ざり合えばそれはただの腐敗臭にしかなりえない。
なまじ暗部の中でも鼻がよかったカカシにとってはまさに地獄だった。
口布をしていてもなお鼻につくこの街独特の濁った匂いは、本当に苦痛だった。
まあ、そのおかげで自分の血臭も誰に悟られることもないのだろう。ま、血の匂いなんてさせる程馬鹿でもないが。
ふと、そんないつもの匂いの洪水の中で、嗅ぎ慣れない匂いがあった。
昔はいつも嗅いでいた匂い、けれど最近はあまり、いや、数年嗅いだことのない、清涼とした匂い、なんだっけ?この匂い、どこだろう、なんだっけ?
任務も忘れてカカシはキョロキョロと辺りを見渡した。木の葉の里の方の門から数人の人たちが街に入ってきていた。木の葉の里の者たちのようだ。その中の一人の男、そうだ、あの鼻の上に傷のあるあの男だ、あいつの匂いだ。カカシは近づこうとして、だがやめた。
里の者であろうがなかろうが、自分から接点を持つのはよくない。任務上で声をかけるのならばいい。だが、彼らは任務で話しかけるような相手ではない。
しかし変わった一行だった。なんだかこの街には似つかわしくない、のほほんとした男たち4人で談笑しながら門の関所で通行手形を見せている。
興味のない振りをしつつ、カカシは4人の男達の動向を観察していた。
額宛てをしている所を見ると忍のようだが、動きから見て下忍ではないが上忍ほど卓越もしていない。特別上忍から中忍と言ったところか。ほこりっぽい旅装束だが足取りはしっかりとしている。この街から雷の国への旅だろうか。次の宿場までは数日かかる。ここで一端休息し、荷を整えて次の宿場へと旅立つ者は少なくない。
昼はとうに過ぎている。今日はこの街で早めに宿を取って明日出発するのかもしれない。
なんとなくの観察でそこまで見抜くと、カカシは息を吐いた。ここでの人間観察はもう日常生活で当然のことのようになってしまった。
でもまあ、あの一行は同じ木の葉の忍だ。特に警戒することもないだろう。
ただ、気になったのはあの匂いだけで。
一行は宿場の建ち並ぶ方へと向かっていった。カカシは目だけで追いかけたが、すぐに視線を逸らした。
そう言えば朝から何も食べていなかった。昨日の夜から食べていない、どこかで何かを食べようか。
今まで感じていなかった空腹が突然わき起こってカカシは頭をぽりぽりと掻いた。今まで
2.3日食べなくても特に不便でもなく、ただ体力がものを言う仕事なので兵糧丸を服用してしのいだ時もあった。それなのにこの空腹感、なんだろうねぇ。
カカシは適当な蕎麦打ち所に入って山菜蕎麦を注文した。
特別美味しくも不味くもなく、ずずっ、と音を立てて食べ終わると、カカシは茶をすすった。勿論蕎麦の中に何かしらの毒が混入されていなかったか、この店は信用できる店かなどはとっくの昔に調査済みだ。
食べ終わってカカシは立ち上がった。また街を見回りでもしてこよう。今日はなんとなく気分がいい。
カカシは人の往来の激しい大通りにいた。道を行く人々の表情を見ていないようでしっかりと観察する。先日回ってきた手配書にある忍はいないだろうか、目の奥で何か不審な動きをしようとしている者はいないか。そんなもの、数え上げればきりはないと解ってはいるのだが。
ふと、視界に結わえられた黒い髪が揺れているのを見て、気のない振りして視線を向ける。あの人だった。鼻の上に傷のある人。自分と同じく十代後半、もしくは二十代前半であろう。
その彼は一人でこの街を観光でもしようと言うのか、辺りをキョロキョロと見渡していた。
何をそんなに珍しいものがあるだろうか。ここは確かに雷の国の特産を置いている土産物屋もあるが、一度も見たことがないと言うわけでもあるまいし。
あ、いや、一度も見たことがないのかもしれないなあ。とカカシは男の表情を見て考え直した。
男は、少々、いや、かなり嬉しそうに土産物屋を見ているのだ。なんだよあのキラキラした雰囲気は、あんたきゃんきゃんご主人についてくる犬っころみたいだぞ?
もしかしたら火の国から出たことがないのかもしれない。ありうる話しだ。第三次忍界大戦が終結した後は、小さな小競り合いはあっても大きな戦争は起きていない。
内勤だったら火の国どころか木の葉の里すら出たことがないのかもしれない。
そんなことをつらつらと考えていると、視界の中にいる男は人に押されてよろけた子どもを支えてやった。子どもは礼を言って立ち去っていった。
...。
.....。
..........。
馬鹿か!?額についてんのは飾りかっ!?
カカシはずんずん歩いていって男の目の前まで来ると仁王立ちした。
「あんた馬鹿ですか!?」
顔を近づけて覗き込んで言ってやれば、男の方ははぁ?と怪訝そうにこちらを見ている。
ちっ、と舌打ちしたくなった。だがそう言っていられる時間もなかった。
「あんたここにいなさい、いいですね。」
カカシは走っていった子どもに向かって瞬身を使って追いかけた。そして目の前に立ってにこにこと笑って言ってやった。
「くそ坊主、さっさとよこしな死にたいか?」
片目だけ見える目をこれでもかと言わんばかりに薄く細めて笑ってやると、子どもは懐に持っていた財布を慌てて投げつけてきやがった。そして脱兎の如く走って逃げていく。相手が忍の、しかもやばい奴だと解ったからだろう。変わり身の早いこと。
しかし額宛てをしているのにスリ一つも見抜けないなんて、忍びとしてどうなんだ?いや、一般人だからこそ却って気付きにくいものだったのかもしれない。
カカシはさっさとあの男のいる場所へと戻った。男は仏頂面しつつもちゃんと待っていた。よしよし、良い子だね、ご褒美あげましょう。
カカシの姿を見つけると、ずんずんとこちらにやってくる。肩が怒ってますよ、といらぬ助言をしてしまいそうになる。
「ちょっとあなた、急に一体なんなんですか、人を馬鹿呼ばわりしたかと思えばそこで待てなんて、俺は犬じゃないんですよ!?」
「そんなの見れば解りますよ。」
冷静に答えると男はため息を吐いた。
「それで、一体なんなんですか?」
「ええ、あなたスリに遭われていたので犯人を追いかけて財布を取り戻してきました。」
カカシは懐から財布を取り出して男の手に渡した。
男はぽかーんとしている。考えもしなかったのだろう、自分がスリに遭っていたなどと。そして慌てて頭を下げてきた。
「す、すすすすすみませんっ。俺、恩人になんて失礼なことをっ。」
「あー、いえ、馬鹿とか言った俺も俺ですから。」
普段ならもっと冷静に対処していはずだ。なーんかこの人見てると人間らしい感情の起伏が激しくなっちゃうんだよねえ。さっきは久しぶりに空腹なんて感じちゃったし、今度は何だかこの人放っておけないとか思っちゃうし。
ん?、放っておけない?なんだそりゃ、どっかの生娘相手じゃあるまいし。
むーんと考え込んでいるのを何と勘違いしたのか、目の前の人はおごらせて下さいっ!!と意気込んできた。
「え、」
「財布を取り戻してくださった恩人に何もしないのではうみの家の恥です。教師として生徒に示しが付きません。旅の途中なのでそんなに高いものはできませんが、どうかおごらせて下さいっ!」
と、真剣に言ってくる。そうか、この人、うみのって名前なのか。
...ってそこに関心がいってどうするよ!?
「あ、今日は予定ありましたか?」
黙っていればそれをネガティブな方向に持っていきそうになったこの人に、カカシは慌てて首を横に振った。
「あ、いえ、予定はないですよ。この街に知り合いなんていないですし。」
「え、でもこの街に滞在していらっしゃるんですよね?」
恰好とか雰囲気だとか、そんなものでなんとなくこのカカシが街に順応していると見たのだろう。観察眼はそこそこあるらしい。
「まあ、仕事で来ているだけですから、親しい人を作るのは面倒なんで。」
はい、嘘。この街の人間が誰一人信用できないので親しくしないだけです。
「そうでしたか、仕事で。って、あ、任務のことは他言無用なのに、俺なんかに話しちゃったら、」
「誰かに他言するつもりなんですか?」
「いえっ、まさか。」
「ならいいです。」
いや、ダメだろう。だが、この人は大丈夫だという感が働く。それに同じ木の葉の忍で教師だ。身元はしっかりしている。
「あの、それで今夜は、」
おずおずと聞いてくる様に、カカシは少し笑った。あ、今俺自然に笑えたなあ。作った笑みじゃなくて、心から笑った。
「ご相伴に与りましょう。俺ははたけカカシです。」
「うみのイルカです。」
握手、と差し出してきた手をつかむと、男らしい無骨な手の感触があった。温かいな、と思った。
それからやはり調査済みで特に不審な所のない居酒屋に入って飯を頼む。なんたって任務中だし、この人も明日にはここを経つだろうから酒の類は頼めない。なんとも色気がないことで。
「そういえばカカシさんはこの街長いんですか?」
「ええ、そうですね。長いと思う程は過ごしました。イルカ先生も任務ですか?」
生徒でも同僚でもない俺から先生呼ばわりされていると言うのにまったく気付かないこの人は、いいえ、と笑って否定した。
「任務中の方に言うのは少しはばかられるんですが、同僚と旅行に来たんです。」
「旅行?」
「はい、雷の国の温泉地です。海沿いにあるそうで。」
嬉しそうに言うこの人は嘘を言っているようには見えない。となれば本気で雷の国の中枢へと行くということなのか。
雷の国、カカシが日々殺している忍の国だ。まだ完全に信頼しえたと言うわけでもないだろうに、のこのこ温泉旅行などと。
「あの、カカシさん、」
と呼ばれて顔を上げると、注文していた焼き魚定食がやって来たところだった。
カカシは盆を受け取ってさっそく食べ始める。昼もがっつり食って夜もがっつり食べるなんて、本当に最近してないことだな。
イルカは定食ではなく海鮮丼を食っている。幸せそうに男らしく豪快にがつがつ箸を動かして食べているのを見ると、それだけで気持ちが晴れるようだ。いいなあ、この人。なんだか落ち着くなあ。
でも、雷の国に行ったら忍びに殺されるかもしれない。さっきだってスリに気付かなかったくらいだ。この人なら簡単に殺されるかもしれない。
食べていた魚の目を見てため息を吐いてしまった。
「どうかしたんですか?おいしくないですか?」
「いえ、そう言うことではなく。うーん、なんだか言うのはおこがましいんですが、大丈夫ですか?」
「は?」
「いえ、ですから雷の国に行くんでしょう?その、」
言い及んでいると、悟ったらしいイルカは苦笑している。
「確かに俺はスリにも気付かなかったし、階級も中忍ですし、心配されるには充分な要素が有り余っているようですが、死にませんよ。」
言われて目を見開いた。正面切って死なないと言った忍を今まで見たことがなかった。この自分でさえ、明日は死んでいるかもしれないと言うのに、この人は死なないと確固たる自信を持って言うのか。
「そんな、保証のない。」
「いえ、今回の旅に限ってはですが俺は死にません。」
期間限定の死にません宣言なのか...。それでもどうしてそこまで自信たっぷりなのか。
「まあ、今は詳しいことは言えませんが、帰りにまたこの街に寄るつもりなんで、その時に種明かしをしましょう。」
笑って言われればそれ以上の追求はできず、しかし本人がこれほど大丈夫と言うのだから、これ以上あれこれ心配する素振りを見せるのも無粋というものだろう。
「わかりました。ではまたこの街に寄ったら俺の家に来て下さい。これが食い終わったら案内しますから。」
「解りました。雷の国で酒のつまみをしこたま買ってきますね。あ、任務中だから飲めないんでしたね。」
抜けてますね、とイルカは苦笑いした。俺も笑った、今夜は酒も飲めなかったけど、なんだかほろ酔い気分だった。任務中だけど、こんな夜があってもいいよね?
それから食事が終わって、目立たない場所にある自分の借家を案内して、イルカを宿屋に送って、色々と移動したのに、別れるときはすぐにやってきてひどくつまらなかった。
って、なんで男相手にそんなこと思うかな?俺おかしいのかな...。
「ではカカシさん、また一ヶ月後に。その辺りにまたこの街に寄ると思いますから。」
「はい、イルカ先生、良い旅を。」
心配はするなと言われたので、別れ際の挨拶にも気を付けて、なんて言わなかった。
「はい、楽しんできますね。」
と言ってイルカは宿の中に入っていった。
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