−  flaver 3 −





まいった。
イルカは身を隠していた。どうしてこんなことになっちまったのかなあ。
あれから数日後、イルカは何事もなかったかのように振る舞っていたのだが、どうやら思わぬ所に伏兵が居て、と、言うか、ありえないだろ?
伽に呼ばれた。如月様に。
.....。まじありえねえだろっ!?
なんでそこで自分がでてきて女の代わりをしなきゃなんねえんだよ。なにしたって言うんだ?まさかカキネの手がかりを見つけたことがばれたのか?いや、違うだろ。
今日の昼頃、飯の支度をしている時にタツハ隊長がやってきて言ったのだ。

「うみの中忍、ちょっと頼まれてくれないかなあ?」

「なんですか?」

「如月様のお相手してくれない?」

思考が停止した。いやいやいやいやいや、あれだ、将棋とか碁を付き合えって意味だな?如月様は余程お暇なんだなあ。

「みんなが寝静まった後に如月様の寝室へ来るようにね。ちゃんと身体は綺麗にしてくるように。」

いつものように柔和な笑みを浮かべてタツハ隊長は去って行ってしまったのだった。

「ありえねえ...。」

イルカは悩んだ。相手は木の葉の要人だ。粗相はしちゃならんだろう。だがそれとこれは別問題だっ!!大体自分はタツハ隊長の言葉に従う理由などない。ここへは自分の任務で来てんだっ。誰にも指図は受けない。
けど、逆らえるのか?相手は上忍で隊長クラスだ。中忍の自分が敵うはずもない。とりあえず隠れることにした。色々してて寝室以外の場所でうっかり寝入っちゃって、気が付いたら朝でしたーと...。
そんなごまかし効くような奴らじゃねえ。
だがイルカは隠れた。こうなってはもう、隠れるしかない。
だがどうして自分なんだ?今まで男が連れ込まれたなんて話しは聞いたことなかったのに、なんで抜擢されたんだ?女に見えるのか?少年って体つきでもない、どう考えたってただのごつい男なのに、こんな身体に興味持つ男なんてカカシさんしかいないと思っていたのに。だめだ、理解できねえ、大名の思考回路がさっぱりわかんねえ。
心せよ、ってこういう意味だったのか?
ふと、カキネの心情が解ったような気がした。
もしかして、カキネも伽の命令を出されていた、とか。
くノ一は確かにそういう役目を仰せ使う者もいるが、任務はどれも公平で、任地でセクハラまがいなことがなされればそれはもう懲罰ものだ。まあ、くノ一はしたたか者が多いから、里に帰って懲罰受けさせるよりもその身で罰を与える、と言う話しを聞くのだが。
だがカキネは中忍になったばかりだ。まだそんなしたたかさを持ち合わせていたかは不明だ。むしろ受け身体質だったかもしれない。中忍になり立ててで下忍気分が抜けてなかったとか言われていたし。
もしも無体な行為を泣く泣く、なんてことになっていたとしたら、

「許せねえ、女をなんだと思ってんだ。」

イルカはついつい声に出してしまった。そして気付かないでいたのだ、その気配に。

「うみの中忍、ここにいたのか。」

ひっ、と声を上げた。中忍だと言うのにこのびびりはどうしたものか。イルカは恐る恐る振り向いた。
そこにジンマ上忍が立っていた。

「タツハ隊長が探して来いと言うから探していたんだが、何故こんな所に?」

低い声で聞かれてイルカは泣きそうになった。もう終わりなのか?
ちなみにここは庭の隅にある用具入れの天井裏だった。藁の中に隠れていたのに、簡単に見つかってしまった。
イルカはもそもそとジンマ上忍の前に出てきた。身体についていた藁を取ることさえできない。

「あの、カキネ中忍は、その、」

「手がかりでも見つかったのか?」

イルカは首を横に振った。ここであのメモを見つけたなどと言えるわけもない。とりあえずこの任務が自分で納得できる所まで進展しなければ誰にも言えるはずもない。
ジンマ上忍はイルカのごまかし切れぬ暗い表情に、自分の中では精一杯であっただろう、優しげな声で聞いてきた。

「何かあったのか?」

「あの、俺、今日伽に呼ばれて、でも、俺男なんですけど、」

イルカは心底情けない顔をしていたに違いない。

「如月様がお前を?何故だ?」

「俺が聞きたいです。」

「最近何か色事に関することをしたか?」

「色事って言ったって、そんな俺は女を買ったりするのは好きじゃないですよ。」

だが、はっとした。色恋沙汰、と言えばあの手紙。暗号文だからと誰に見られても暗号文に見えないようにカモフラージュして恋文風にしてしまったのだが、それが知られてしまったのか?いや、その前に女中達に恋人に手紙を書くのだと誤解されたままだったからその女中たちの話しを聞いていたという場合もあるだろう。どちらにしろラブレターを出したとばれてしまったのだ。

「あったんだな、」

イルカの表情に肯定の意志を見いだしたジンマ上忍はため息を吐いた。いかつい顔が強ばってますます箔が付く。

「それが如月様の耳に入って興を買ったとしか思えん。」

「そう、ですか。」

興つったって自分は男なのに、面白味も何もないだろう?あーあ、折角カキネ中忍が忠告してくれたのに、なんてドジなんだ。

「嫌か?」

「嫌ですよ。」

「そりゃそうだろうな、」

「あの、カキネ中忍は、伽に呼ばれたりなんかは、」

ジンマ上忍はいきなりイルカの口を手で塞いだ。イルカはいきなりのことに慌てた。だが、ジンマ上忍はそのまま何もしようとはせず、何かを考え込んでいたようだったが、重々しい口調で語りだした。

「逃げたいか?」

イルカは首を傾げた。そしてジンマ上忍が緩めた手の内で、もごもごと呟いた。

「俺はタツハ隊長の部下ではありませんから命令に従う義務はありません。ですが、上忍の方に逆らうことができるとも思えなくて。」

正直な胸の内を話すと、ジンマ上忍はまた考え込んでしまった。そして手を離してくれた。同情してくれたのだろうか。そりゃあ、そうだよなあ。まさか忍びの男が伽に呼ばれるなんて、随分とおかしな話しだもんな。

「困ったな、どうしたものか。」

「ええ、本当に困りました。これはもう任務妨害と見なして思いっきり正論を申し立てて抵抗するしかないでしょうか。」

「そんなことで引き下がるとは思えん。大体中忍が上忍を言いくるめられると思うか?」

無理だ。相手は隊長クラスだ。正攻法で、いや、例え攻略法でも勝てるとは思えない。

イルカはがっくりと肩を落とした。

「あの、見逃してくれるわけには、いかないですかね?」

駄目もとで聞いてみたが、ジンマ上忍の表情は硬いままだ。だめだろうか、無理矢理連れていかれるのかなあ。嫌だなあ、とほほー。

「ひとつ聞きたい。」

「はい。」

「本当に捜索はまったくはかどっていないのか?」

どうしてそんなことを今聞くのだろうか?言った所でイルカがこの状況を打破できるとでも言うのだろうか。

「あの、」

「あぶり出しは成功したか?」

イルカは飛び退いてクナイを手にした。上忍に勝てるとは思えないが、それでも死にものぐるいで逃げることはできるかもしれない。

「うみの中忍、言い当てられてもそうやってすぐに顔に出して交戦状態になるのは得策ではない。素知らぬ振りをすれば或いはぎりぎりまで堪えれば情報が手に入るかもしれん。もう少し諜報としての応用を身につけた方がいい。まあ、今回はそれが良い方向に出たから良かったものの。」

何を白々しく説教してくれてんだよ。ジンマ上忍が裏切り者だったってことか?しかしカキネ中忍の手がかりをどうしてこうも的確に言い当てられた?解らない、敵か、味方か?状況判断するには情報が少なすぎる。

「落ち着いて考えてもらう時間はないようだ。部屋にある荷物は破棄してもいいか?」

「どういう意味です?」

「どちらだ?重要な巻物や道具は身につけているか?」

武器は身体にいつも携帯している。荷物に大切なものなんて詰め込んでやしない。任務にそんなものを持ってきても無意味に自分の身元を敵に晒すだけだ。任務の資料など全て頭に入っているから手記など存在しない。カキネのメモもその存在を他者に知らせぬためにさっさと灰に変えた。

「破棄しても不都合なものは残してきていない。が、それが一体なんの、」

言葉は途中で切れてしまった。目で追えぬジンマ上忍の動きに、イルカは瞬きする間もなく、その手刀によって意識を手放してしまったのだ。
これが上忍の力か、くそっ、こんなところで倒れるわけにはいかないんだっ。里に帰らないと、帰って、あの人の元に...。
混濁していく意識の中で、ただ、イルカは悔しさに眉間に皺を寄せた。

 

 

気が付くと、そこは洞窟の内部だった。洞窟と言っても真っ暗ではなく、どこからか光が差し込んでいるらしく、ほのかに明るい。

「ここは、」

声が思ったよりも響くことにイルカは自分の口を手で塞いだ。どうなってる?確かジンマ上忍に襲われて、だが身体が拘束されてはいないし、武器もそのままだった。くそ、そのまま放置しても自分には敵わない中忍風情がとでも思ってんのか?
なめんなよ?
イルカは立ち上がった。ふと、誰かの気配がして咄嗟に洞窟の壁に身を隠した。

「あれっ、ここにいたはずなのに。」

やって来たのは女の子だった。気配を隠そうともしない。一般人なのか?だがジンマ上忍の仲間かもしれない。油断をするわけにはいかない。女の子は手に水で濡らした手ぬぐいを持ってそこに立っていた。困った顔をして辺りを見ている。そのどうにも困った様子に、イルカは仕方なく姿を現すことにした。最悪、襲われてきても自分はやられはしないだろうと判断したからだ。

「お前は一体誰だ?」

壁から突然出てきたイルカに、女の子はびくっとして顔をこちらに向けた。そしてほっとした表情を見せると、頭を下げた。

「捜索任務、お疲れ様です。カキネと申します。この度の不始末、大変申し訳ありません。」

.....。

「はあ!?」

イルカは素っ頓狂な声を上げた。さっぱりわかんねえよ、どうなってんだ?
呆然として相手を見やった。大体この女の子がカキネ中忍だとあっさり信用することもできない。証拠でもないと。

「みょうばんの袋、気付いてもらってよかったです。部屋に何かを残してもきっとすぐにばれてしまうだろうからと、台所の、しかもあまり使わない調味料に隠すことで些細な物事からも見落としをしない優秀な捜索をしてくれる人を待っていたんです。」

カキネはそう言って涙目になった顔を隠すことなくこちらに向けた。
う、すみません、あのメモを見つけたのは偶然だったんです。しかもここには拉致されて連れてこられたし、はっきり言って役不足みたいなんですけど。とは言えなかった。
しかしこの人はカキネ本人に間違いないのだろうか?里で仕入れた情報で確認をしてみよう。

「カキネ中忍、あなたの実家で飼っている猫の里親の人が大切にしている盆栽は何か答えてください。」

「瑠璃ビョウタンです。おじいちゃん、青い実がなるといつも教えて見せてくれたから。」

イルカはにっこりと笑った。

「捜索が遅れて申し訳ありません。ですが今一度、この状況を説明してもらってもいいですか?とりあえずここが危険な場所ではない限りですが。」

言うとカキネもつられて笑って言った。

「大丈夫、ここは安全です。私は一ヶ月半、ここでずっと暮らしていましたから。勿論自分の意志でです。私は逃げてきたんです。」

とりあえずイルカはカキネに連れられて住処にしていると言う洞窟の奥の方へと案内された。先ほど自分が横たわっていた所は住処から少し離れていた場所だったらしい。
洞窟の奥に入っていってそこに少しの生活用具や寝袋などが置いてあるスペースにたどり着いた。

「こちらに座ってください。あと、この手ぬぐいで首元を冷やしてください。」

イルカはカキネの言う通り、受け取った手ぬぐいで首元を冷やした。今更ながらズキズキと痛む。そう言えば手刀食らったんだよな。それで気絶までしちまったんだから痛むはずだ。

「まずは名前を伺っていいですか?」

「うみのイルカ、あなたと同じ中忍です。」

カキネはしっかりとした眼光で頷いた。

「私は木の葉の忍びの日常生活一般の雑用を担うことを役目として任務に就いていました。一ヶ月、調査をしてご存じと思いますが、要人警護の要人である如月様は女遊びが過ぎるきらいがありました。失踪する前夜、私はタツハ隊長に呼ばれて言われました。『如月様がお前を伽に使命されたので行くように』と。実はそれまでにも何度かそんな話しを聞かされ、私はその度に拒否していたのですが、その日はどうしても断ることができませんでした。タツハ隊長が明らかに殺気を放って私に強引な形で拒否させないようにしたからです。私は決意しました。逃げようと。私は隊長の下で任務にあたっています。隊長の命令は絶対であると同時に従うべきものだと習ってきましたが、それが利己的で理不尽なものと確固たる判断ができたものについては従う必要なしと考え、逃げることにしたんです。その時に協力してくださったのがジンマ上忍です。ジンマ上忍は私が伽の任務を受けていることは初耳だったようです。ですが私の相談に真剣に耳を傾けてくださって、私をこの洞窟へと連れてきてくださいました。」

そっか、ジンマ上忍は味方だったんだな。

「疑問があるのですが、何故すぐに木の葉に帰還されなかったんですか?」

「この街は国境に近く、如月様はその仕事柄、関所に対してある程度の権限を行使できる立場にあります。私がこの国を出る際には何らかの妨害があることでしょう。それにタツハ隊長の目も気になります。タツハ隊長の下した命令は明らかに任務外の懲罰対象事項に当たります。私が里に戻って証言すればタツハ隊長は懲罰、或いは降格されるかもしれません。きっと私に伽をさせても何らかの形で公言できないよう術をかけるか、脅すか、または口封じをする可能性がありました。その理由から表だって関所に赴くわけにはいきませんでした。ですからこの地でひたすら木の葉からの捜索の方をお待ちしていたんです。」

そうだったのか、もっと早く気付いていれば、早く里に戻してやれたのに。

「悪い、遅くなってしまって。でも、それならどうしてジンマ上忍は俺が探索に来たと知ってすぐにカキネ中忍が洞窟に隠れているということを俺に知らせなかったんだろう。」

「一つはあなたが如月様、及びタツハ隊長の回し者ではないという確証がなかったことと、内情を知ってあちらに寝返りをしない人物であるかの見極め、それに、あなたに近づいて二人に私を匿っていると気付かれないために、不用意に接触できなかったのだと言っていました。」

「そうか、相手は隊長クラスだもんな、慎重に動かざるをえなかったか。そう言えばタツハ隊長があなたには諜報活動をするようにとの指示を出していたと聞いていましたが。」

「そんな命令、受けたことがありません。きっと伽の命令を隠すためについた嘘でしょう。」

あっさり嘘をつかれていたのか。

「しっかし警護してる忍びにまで手を出すなんて、鬼畜な野郎だなあいつは。それに同意するタツハ隊長もだ。」

「ええ、隊長たるもの、任務時の要人の警護についての要望は極力聞くのは当然ですが、任務外の要望に応えるのは異常です。恐らくは賄賂のようなものが裏であったのではないかと私とジンマ上忍は睨んで微力ながら諜報活動をしているのですが。」

「そうだったんですか、しかしそれならそうと火影様に報告すれば良かったのでは?」

「実は、お恥ずかしながら何もつかめていないんです。この一ヶ月、ずっとひたすら調査してきましたが、私の力がおよばないのか、それともさすがは隊長なのか、尻尾を出しません。事を火影様に報告しようにも、この遠く離れた地では式を飛ばすこともできず、だからと言って文をしたためることもできません。」

「えっ、何故です?」

「ここ土の国から木の葉の里へと郵送される文などは極限られた物しかありません。その中に失踪した私が、或いは普段手紙を書くこともないジンマ上忍が書いた不自然な手紙など、すぐに見つかってしまうでしょう。」

手紙出しちゃったんだけどなあ。しかも暗号文だよ、ばれてないよなあ。
イルカはここまで慎重に行動しているカキネたちを助けるどころか道連れにさせてしまうんじゃなかろうかと冷や汗をかいた。

「あの、すごい申し訳ないんだけど、俺も伽の命令を受けてジンマ上忍に連れてこられて逃げてきた身の上なんです。」

「聞いています。でも信頼できる仲間ができたということだけで希望も持てます。それに捜索の任務に就いているあなたが長期間何の音沙汰もなければ里としても何らかの対策を投じるでしょう。もうしばらくは我慢の時ですね。」

カキネは健気に笑った。一ヶ月、洞窟で暮らしてずっと諜報活動してきて、心労はいかばかりかと思いやる。自分よりも年下で中忍になって間もないのにしっかりとしている。いいくノ一になるだろうな。

「あ、でも私も一つお聞きしたいんですけど。」

「なに?」

「何故男であるうみの中忍が伽に呼ばれるんです?如月様にそんな趣味はなかったように思うんですけど。」

俺だって本人にどういうつもりかと聞きただしたいよ、とイルカは思った。

「実は君のあぶり出しの用紙を見つけた後、里に暗号文を送ったんだ。暗号文と解らないように恋文に模して送ったのをどこからか嗅ぎ付けたらしくて、ジンマ上忍の話しによれば、それで俺に興味を持ったらしいね。」

「暗号文をお送りになられたんですか、さすがですね。でも偽りとは言え、恋人に送った手紙を知って恋人のいる身のうみの中忍に伽を命じるなんて、やっぱり非道ですね、如月様は。」

カキネは憤然と言った。男が伽に出るっていう所は責めないのかな。とふと思ったが怖くて聞けなかった。そう言えば宛名を『はたけカカシ』なんて男の名前にしたのがいけなかったのかもしれない。いや、っていうか人の手紙を盗み見るからそうなんだよ。やっぱり自分は悪くないじゃん。
と、まあ、どう言った所で負け犬の遠吠え、後悔先に立たず。ただ、カカシさんのことだ、すぐに暗号文と気付いて火影様に伝えてくれるだろう。手紙が届いていればの話しだが。
宛先を自宅にしたのには訳がある。ここまで連絡もせずに長期間家を開けていたから、カカシさんは必ず頻繁にイルカの家の様子見をしているに違いない。大体カカシさんの家の住所、知らないんだから送るにしたって自分の家に送るしかない。友人に送ってもよかったが、恋文っていうことが頭にあったからどうしても相手をカカシさんに想定してしまったのだ。
それに、カカシさんが自分からの手紙で少しは元気を出してくれれば、なんて少しの打算もあったわけで。うわー、なんかそれってほんと女々しいっていうか、恥ずかしいな、自分。今更ながらちょっと恥ずかしいことしたかも、と思ってしまった。ええい、任務なんだっ。そう割り切って無理矢理自分を納得させる。
でも、会いたいなあ。カカシさんが任務で一ヶ月以上も会えないのはざらにあったけど、自分が任務でカカシさんに会えないってのは初めてのことで、カカシさんは任地でいつもこんな風に自分を思ってくれたりしてたのかな、と、不謹慎ながらも思ってしまった。

「うみの中忍、なに百面相してるんですか?」

カキネに言われてイルカは慌てて居住まいを正した。

「なんでもないです。とりあえずこれからの事を考えましょうか。」

カキネはそうですね、とさして気にした様子もなく、諜報活動などについての詳しい情報をイルカに話し出し、イルカは今後の算段をたてるために耳を傾けた。