|
3年後、カカシさんが帰還するという知らせが届いた。緊急時以外の連絡は取ってはならないという制約があったため、手紙や式なども一切使えなかった。実質3年間は一度も意識の疎通を図れなかったことになる。再会の感動もひとしおに違いない。 「とうちゃ、ごちそ?」 髪を二つに括った女の子がとてとて台所までやってきた。 「ああ、今日は父さんの大事な人が帰ってくる日だからな、シズクの好きなものも沢山作るぞ。」 そう言って頭を撫でてやると、シズクは嬉しそうに笑ってくるくると回って水色のワンピースをひらめかせた。 それから俺はカカシさんの好物も用意してシズクと共に彼の帰りを待つことにした。 「カカシ、さん。」 「遅くなってごめんね。ちょっと邪魔が入ってね。俺の好物、用意してくれてる?」 カカシさんは所々に切り傷を負っていた。おそらく戦闘に巻き込まれたのだ。しかも相手はカカシさんですら手傷を負わせるほどの敵。 「はい、はいっ、俺、沢山準備したんですっ。カカシさんの好きなもの用意して、でもあんまり遅いから冷蔵庫にしまっちゃったんです。でもすぐに温めなおしますからっ。カカシさんはその間、風呂に入ってらしてください。それから傷の手当も、深い傷はないですか?」 俺は自分でもあんまり嬉しくて、てんぱってしまって、べらべらとよくしゃべってしまう。 「イルカ先生、」 深い落ち着きのある声が響く。 「ただいま。」 その言葉を聞いた途端、俺は涙を流していた。 「お、かえりなさい。カカシさん、俺、ずっと待ってました。あなただけをずっと。」 「うん、ありがとう、俺も会いたかったよ。イルカ先生。」 カカシさんはそっと腕を伸ばしてきて俺をぎゅっと抱き締めた。カカシさんの匂いがする。どうしてこんなに泣けてくるんだ。俺は男なのに。簡単に泣いてはいけないってのに。 「ひっ、が、ががじざん、、お゛れっ、」 ぼろぼろ泣いて、鼻声になってしまった俺をカカシさんはさらにぎゅうぎゅう抱き締めてくる。苦しいくらいだけど、それくらいが丁度いい。愛している、愛してる。こんなに人を好きになるなんてもう二度とない。 「これからはずっと一緒です。この家で2人、ずっと暮らしていきましょうね。」 それを聞いて俺はぷっと笑った。カカシさんがおや?と不思議そうな顔をして笑っている。泣いた子がもう笑ったとでも思っているのだろう。 「2人じゃないですよ、3人です。」 抱き合ったまま、カカシさんは不思議そうな顔を少し困惑顔に変えていく。この人は、しらばっくれるつもりか?まったく。 「カカシさん、忘れたとは言わせませんよ。俺に禁術使って妊娠させたでしょ?ちゃーんと子供は産みましたからね。名前もシズクって言って。あ、勝手に命名してしまいましたけど、いいですよね。カカシさんには必要最低限しか連絡取れなかったし。」 カカシさんは少し何か考えていたようだったが、すぐに笑顔になった。 「シズクって、女の子ですか?」 「ええ、かわいい子です。今は眠っていますが、寝顔だけでも見ますか?俺、結構親ばかだとは思いますが本当にかわいい子なんですよっ。」 「そうですか。でもまずはあなたを堪能したいんですが。」 俺はかっと自分の顔に熱が集まったのを感じた。この人は、本当にもう。 「だ、だめです。ちゃんとお風呂に入って、ご飯も食べて、今日は休んでください。子供もいるんですから。」 「3年、ずっと離れてたんだよ。欲しくてたまらないのはイルカ先生も同じだと思ってたけど?」 流し目でそんなこと言われて俺はさらに困ってしまう。だってカカシさんは明らかに突発的な戦闘で疲れているはずだ。俺だって今日も仕事だ。けど、でも、今日くらいは許してもらおうか。
|