翌日、カカシのせいで足腰が立たなくなったイルカの代わりにカカシが7班の部下たちと甘栗甘のかき氷を食いに行くことになった。勿論、後日カカシは再度イルカと共に甘栗甘に行く約束をさせられたのは言うまでもない。
ま、そのくらいのかわいい我が儘は聞いてあげなくては。無理をさせたのは自分だし、とにやにや笑いながらカカシは甘栗甘に向かった。
そしてそこで律儀に待っていた部下たちに手を上げた。
が、カカシを見た途端、サクラが一瞬ぎょっとした。ナルトもサスケも、うっ、とした顔をした。
そういえば昨日の報告で俺の偽物が出てきたとかいうのがあったなあ、とカカシは思った。
カカシはにやにやと笑って部下たちの前に立った。

「なに?俺の顔に虫でも付いてる?」

言えばサクラがクナイを、サスケが火遁の印を、ナルトが影分身の印を結ぼうと身構えた。

「はいはい、俺が悪かった。イルカ先生はちょっと用事があって手が放せないから甘栗甘のほうびは俺とね。まったく、折角会えた上司に威嚇しないでよね。」

ちょっと悪ふざけが過ぎたかな、と思いつつ、カカシは気にした風でもなく甘栗甘に入っていった。3人はがっくりと肩を落としてカカシについて店の中に入った。
店は自然の風通りが良いらしく、冷房が効いていなくとも涼やかだった。風鈴の音がなんとも情緒がある。冷たいものを注文するつもりなのでこの位が丁度良い。
そんな甘栗甘の4人かけのテーブルに座ると、それぞれ注文をしていく。
サクラは抹茶クリームプリンパフェ、ナルトはミルク金時白玉入り、サスケは宇治金時の金時抜き、カカシは小倉アイスと抹茶のセット。
3人は、それぞれ注文したものが来ると目を輝かせて口に運んでいく。昨日の苦労が報われたかのような喜びようだ。
まあ、その気持ちも分からなくもないな、とカカシは思った。何故ならカカシはイルカのその破魔の力が発揮される場面を目撃したことがあるのだ。
部下たちが食べ終わる頃を見計らってカカシは切り出した。

「お前ら、昨日のアカデミーの見回りで不思議な体験したんだろ?」

言うと3人はお互い視線を巡らせた。言うべきか言わざるべきかと逡巡しているようだった。なんとも先生思いの子たちだこと。

「ああ、大丈夫。俺は知ってるから。と、言うか、中忍以上の奴らは大体知ってるから別に極秘扱いってわけでもないし。ただ、本人が無自覚なのがちょっと辛い時もあるんだけどね。」

カカシが言うと3人は深く深く頷きあった。どうやら昨日もそれで散々な目に遭ったらしい。確かに報告を聞いた分ではかなり怖い思いをしたのだろうとは容易に想像がつく。まあ、それでもこうしてちゃんと元気に太陽の下に立ててるんだからまだましな方だって。

「イルカ先生の詳しい話し、聞きたい?」

カカシの言葉に3人は興味をそそられたようだった。ナルトなんかはイルカの思わぬ一面が聞けるかもとちょっと目を輝かせている。サクラはどちらでも良いと言う感じで、サスケは今後の参考までにと一応聞くつもりらしい。

「それじゃあ話そうか。あ、ちなみに途中で逃げるとかダメね。」

えっ、逃げるっ!?と3人はびくついた。何を話すつもりだこの上忍師、と途端に警戒してくる。

「ああ、まあ、ほら、俺はぴんぴんしてるでしょ?だから別に呪われるとか災難が降りかかるとかイルカ先生が本当は人間じゃなかったとかそういうわけじゃないから安心してよ。なに、短い話しだよ。」

カカシの言葉に何か少し引っかかりを感じながらも3人は話しを聞く体勢になった。
カカシは店の女の子にお茶4人分お願いね、と声をかけてから話し出したのだった。