一階の幼少組の部屋を1つ1つ確認し終え、一同は二階へと上がっていった。
二階には教室以外に音楽室や美術室がある。7不思議のポイントが高い教室が連なっている。それを考えたのはナルトだけではない、サクラもサスケも足取りが重かった。

「お前らどうした、元気ないぞ?夏ばてか?この任務が終わったら火影様が甘栗甘でかき氷をおごってくださるそうだから、元気出せよ!!」

イルカの言葉は、普段だったら嬉しいだろう。甘栗甘のかき氷はかなりおいしいので有名だ。甘いものが苦手なサスケもそこの宇治金時ならば食べられるほどだった。
だが、そんなエサを前にちらつかされてもまったく魅力に感じないほど3人は憔悴していた。いつこの任務から開放されるのか、それだけをただ切々と願っている。

「おいおい、修行ばっかりで任務がしたいって言ってたのは誰だ?」

完璧に夏ばてをしていると思い違いをしているらしいイルカが苦笑した。
確かに自分たちがそう言っていたことは認めるが、決してこんな展開を望んでいたわけではない。と、言うかこの状況が異常すぎるのだ。
なんで忍びがおばけ退治をせにゃならんのだ。そんなのは拝み屋がするべきことで忍びには関係ないのではないか?つい少し前まで自分たちが学び舎として通っていたアカデミーがよもやこんな化け物の巣窟だったとは。
美術室に入るとそこに動くものがあった。
瞬間、7班の3人はまたなんかが襲ってくるのか!?と身構えた。
が、そこにいたのは一匹の犬だった。

「な、なんでぇ、犬っころかよ。脅かすなよなあ〜。」

ナルトが緊張していた体をほぐして犬に近寄ろうとした。が、唐突にサスケにその肩を掴まれて引き留められた。

「さ、サスケ?」

サスケの顔が硬直している。サクラの表情も暗い。
まさか、またなのか?だって、ただの犬なのに?ナルトはじっと目をこらして犬を見た。パックンと同じパグ犬で、人なつっこい、と言うかなにか人間くさいものを感じる。
そしてナルトは気が付いてしまった。
この犬、顔が人間だっ!!鼻も口も目も眉も全て人間で皮膚も顔の部分だけが人のもので体だけが犬だったのだ。

「なに見てんだよ。」

おっさんくさい声がした。し、しゃべった!?そりゃ確かに忍犬だって忍亀だって忍蛙だって喋るけど、でも顔がまったく人のものってのはどうにも理解しがたい。

大体どうして顔だけ人なんだっ!?過去に何があったんだ?って言うかそもそもなんでアカデミーにいるんだよっ!

「じ、じんめ、」

サクラが震える声でその物体の正体を今口にしようとした時、イルカはいきなりずんずんと歩いていって、あろうことかその犬っぽいものを抱きしめたのだった。
ひぃっ!!7班全員が悲鳴にならない声をあげる。確かにさきほどのテケテケ言ってたものに比べれば攻撃性はなさそうだが、それでも絶対におかしいだろっ!!
だがイルカはぎゅっと抱きしめて何故だか目を潤ませている。

「パックンを思い出すなあ、カカシさんは今頃、なにしてんだろうなあ。任務、無事にこなしてくれてたらいいんだけど、あの人は仲間思いだから。」

どうやらカカシを思い出してうるっときてしまったらしい。
ちなみにカカシとイルカが恋人同士だということは周知の事実である。

「イルカ先生、忍犬と勘違いしてるってばよ...。」

ナルトががっくりと肩を落とす。でもまあ、別に危害を加えるような感じでもないし、と3人はイルカのおかげで幾分ほんわかとした雰囲気に少しだけ緊張を解いた。その後、イルカはご主人様の所にお帰り、と言って人面犬と手を振っておわかれし、一同は美術室を出たのだった。