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ナルトは困っていた。 「おいナルト、何かあったのか?」 いつもだったらドベと言ってくるサスケまで心配顔だ。 「イルカ先生ちょっと待って、ナルトの様子がおかしいの。」 サクラが先頭を歩いていたイルカを呼び止める。その声は必死だ。だらだらと汗が流れる。 「ナルト、どうした?腹が痛いのか?」 ビンゴである。だが肯定したらトイレに行かなくてはならない。トイレの恐怖と最悪な状況とを天秤にかけて、彼にとっては究極の選択を迫られ、ナルトはトイレの恐怖に立ち向かうことにした。 「もうっ、さっさと行ってきないよっ、馬鹿ね。待っててあげるから、ほら早くっ。」 サクラが少しだけ笑ってナルトを促す。 「何も怖いことないぞ。アカデミーのトイレなんていつも行ってるじゃねえか。さ、行ってこい。」 イルカのまったく無責任な言葉に3人の子どもたちはやや引きつった笑みを浮かべたが、とりあえずナルトはみんなからの励まし(?)に元気づけられてトイレへと走っていった。 「赤い紙がいいか〜?青い紙がいいか〜?」 その声にナルトは自分が男だと忍びだとか言う概念を捨てた。と、言うか絶対俺じゃなくたって叫んでるっ!! 「お前たちはトイレの前で待っていろ。万が一俺が痴漢を取り逃がした時、お前たちが捕縛するんだ、いいな!」 痴漢だったら捕縛することも可能だが、それが人外のものだったらどうしようもない。 「ナルトっ、大丈夫かっ!?」 イルカの存在にほっとしてナルトは涙声でせんせぇ〜、とか細い声を上げた。 「赤い紙がいいか〜?青い紙がいいか〜?」 どこからともなく聞こえてきた声にイルカはぷちっと血管をぶち切った。 「紙に赤いも青いもあるかっ!紙は白に決まってんだろうがっ!!大体俺は昔っから薔薇の印刷されてる匂い付きのトイレットペーパーが気にくわなかったんだっ!花ならまだしも文字まで印刷されてて巻くごとに格言やらなにやらでくるくるくるくる、ああっ、苛々するっ!流して捨てるものでまで知識を補わなくちゃ脳みそは皺を刻めんのかっちゅうのっ!!」 はー、はー、と息を切らしてそう言うとそれっきり声は聞こえなくなった。そう言えば気配もない。そもそも人の気配なんかあったっけ? 「ん〜?幻聴か?昨日も寝るの遅かったからなあ、寝不足はいかんな。」 イルカは少々自分の生活を振り返って反省しつつ、頬を叩いて気合いを入れ直した。 「で、ナルト、どうした?さっき声を上げてただろ?」 どよどよした空気がなくなり、イルカの声で我に返ったナルトは紙がなくて、と呟いた。 「ああ、そうなのか。」 イルカは補充用のトイレットペーパーを個室に向かって投げ入れた。 「まったく、紙がないならないって言えばいいのに。叫ばなくてもちゃんと聞こえる場所にいるんだから、しょうがない奴だな。俺はてっきりまた痴漢かと思って慌てちまったじゃないか。ま、男子トイレに痴漢しに来る奴はいないと思うがな。」 イルカはからからと笑うとトイレから出て行った。
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