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「あっれ〜?」 俺の声に目の前にいた女はびくりとした。 「イルカ先生ですよね?」 女ははぁ、と深く深くため息をついた。 「ご名答です、カカシさん。」 女、いや、イルカ先生は引きつった笑みを浮かべた。 「えーと、そういう趣味だったんですか?」 「ちっ、違いますよっ!俺はくの一の代わりに来たんです。カカシさんはこのキャンプ地の責任者だと聞いてますからご存じでしょう?俺は慰問の依頼でここにいるんです。」 憮然とした表情に俺はくすりと笑った。はい、実は知ってました。けどくの一の代わりに変化して慰問とは、そんなに人手不足なのか...。まあ、このキャンプ地での俺たちの任務延長もその人手不足の一端を担っているんだろうけど。 「いやいや、お疲れ様です。どんなくの一が来るのかは来てからのお楽しみと言われていたので少しからかってみたくなっただけです。しかしイルカ先生がいらっしゃると言うことはまだアカデミーの復興はされてないと言うことですか。」 聞くとイルカ先生はそうなんです、と少し表情を暗くした。 「アカデミーが再開するまでは教師たちも通常任務を担っていますからね。しかし今回の依頼はさすがに5代目も苦渋の決断だったみたいです。まあ、くの一限定と言われているわけではないですから任務内容を裏切っているわけじゃないです。体裁は悪いですが...。」 困ったように笑うイルカ先生に釣られて俺もははは、と乾いた笑いを浮かべて言った。 「ま、俺の方でも何かあったらちゃんとフォローしますから。」 イルカ先生はそれを聞くとやっと少し明るい笑みをこぼした。 「飲み仲間のよしみでお願いします。他にも数名来ていますがみな少し幼いので俺が音頭を取らなければなりませんから。」 ありゃりゃ、そいつはまた苦労しそうだ。 「分かりました。飲み仲間のよしみですからね。」 「ほんと頼みます。実は俺以外はみんな下忍なんです。」 その言葉に俺はちょっとひるんだ。慰問と言っても別に接待をするわけではないが、それでも舞踊、曲芸など、ちゃんとしたものを見せなければならない。男とは言え、任務経験の豊富な中忍のイルカ先生はまだ良くとも、その他が下忍だけとなるとかなり厳しい状況になることは必死だ。 「大丈夫なんですか?」 少々不安な気持ちで聞いたが、イルカ先生は大丈夫ですよ、と朗らかに笑った。 「いざとなったら幻術を使いますから!」 イルカ先生はぐっと親指を立てた。 あこぎな商売するつもりだ、この人。 「ところでここではイルカと呼ばないでもらえますか?」 イルカ先生の言うことに俺は頷いた。いくら依頼時にくの一限定と言われていないからと言って、男がくの一の代わりに変化して慰問に来ました、なんてことがおおやけになるのは依頼者側にも、そして同僚側にもあまり知られたくないのは当然だ。 「気付かれないように自分の名前から離れたものを持ってくるのが通常ですが、そこまですることもないでしょうから、俺のことは『ルイカ』とでも呼んで下さい。」 イルカ先生はそう言ってにっと笑った。笑顔の明るい、人好きのする女性に見える。 うーん、やっぱり好みだなあ。 「やー、ルイカさんはほんと俺の好みですよ。」 「へー、カカシ先生はこういう感じがお好みですか。」 「ええ、特にこの胸の大きさがなんともジャストですね。」 俺は遠慮なしにイルカ先生の胸を鷲掴みにした。イルカ先生は少々驚きはしたのもも、されるがままになっている。こういう所、イルカ先生は物に動じないと言うか、男らしいと言うか。 「ちょっとカカシ先生、中身を知っているからってセクハラですよ?」 「いいじゃないですか、減るもんじゃあるまいし。元は男なんですから少しくらい触らせてくれたっていいでしょ?」 俺はむにむにと胸を掴んでやっぱりいい形だ〜、と褒めた。 「褒めてくださってもまったく嬉しくないんですけど。」 俺は少々やりすぎたかな、と反省して手を退かした。 「ま、慰問と言っても2.3日と聞いてますから気負わずにね。幻術、香だとか何か仕掛けが必要だったら言って下さい。準備しますんで。」 「よろしくお願いします。俺は到着した奴らと打ち会わせしてきますからこれで失礼します。詳しいことはまた追ってお知らせします。」 「はい、了解しました。」 イルカ先生は一礼すると宿舎の方へと踵を返した。俺はその姿を合掌して見送った。なむさんです。
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