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目が覚めると病院だった。 「はたけさん気が付かれたんですね。気分の悪いことはないですか?」 医療忍の男が聞いてきた。脈を取ったり触診されたりしているが特に調子の悪い所はない。 「いや、別に。それよりも大変だったでしょ、俺すごい汚い恰好してただろうから。」 そう、過酷な任務でずっと風呂にも入れなかった。嗅覚の鋭い忍犬たちを今回の任務の後半では極力使わないようにしていたほどだ。 「それほど汚くなかったですよ?ちゃんと体を拭かれていたみたいですし。ああ、運んできた人が拭いてくれたのかもしれないですね。」 なんて心の広い、と言うか寛大な人なんだろうな。雪山で得体の知れない汚い人間を介抱して病院まで運んでくれたとは。 「それ、誰?礼を言いたいんだけど。」 「あー、名前は聞かなかったです。でも確かその人も任務帰りだと言ってましたから、ここに運ばれてきた日に受理された任務報告を調べれば分かるかもしれないですね。」 カカシは頷いて運ばれてきた日付を聞き出した。 それから退院して受付に向かったものの、その日に受理された任務を調べるのに少々手間がかかり、自分の任務もこなさなくてはならず、雪山を通って帰還した任務を特定するのに数ヶ月かかってしまった。 「あのさ、ちょっと聞きたいんだけどライダっている?」 すると彼女たちは胡散臭そうな目で見てきた。まあ、確かに得体の知れない恰好をしている自覚はあるがそれも仕方のないことなのだ。ビンゴブックに名前が載っているから顔をさらしてはいけないし、写輪眼を移植してある目を開いているとそれだけでチャクラが漏れていくのだ。だがそこまであからさまに不審な目で見なくてもいいでしょうに、少し声を掛けたことに後悔の念がうまれる。 「あの、ライダは私ですけど、あなた誰ですか?」 ああ、そう言えば自己紹介もしていなかった。これでは胡散臭さも倍増と言った所か、とカカシは自分の行動を顧みた。 「俺ははたけカカシって言うんだけど、数月前雪山で遭難してた所を助けてくれたでしょ?すごく助かったから礼を言いたかったんだ。ありがとうね。」 はたけカカシ、と名乗った所で彼女たちはきゃー、と黄色い声をあげた。店内にいた人たちが何事かとこちらに顔を向けてくる。うわあ、いたたまれない。 「あの、」 と戸惑った声をかけると、先ほどまでとは随分と違ったきらきらした目でこちらを見てきた。 「そうだったんですかぁ、あの時の方だったんですねぇ、もう体は大丈夫なんですかぁ?」 急になんだか舌っ足らずな言い方に変更しなかったか?と思ったものの、それも仕方ないことなのかな、と思う。自分の名前はかなり売れているのだが、顔はあまり売れていないのだ。だから自分が自己紹介をすると急に態度を変える輩はかなり多い。彼女たちもその部類だったようだ。慣れていることなので特に何とも思わないけどね。 「えーと、それだけだから。話してるとこ邪魔して悪かったね。」 カカシはそれだけ言うとそのまま彼女たちに背を向けた。店の人間がこの騒ぎにちょっと顔をしかめているし、目立つことはあまり好きではない。さっさと退散しよう。 「あの、何か?」 「折角こうして再会できたんですもの。少し話しません?」 再会と言っても自分はずっと意識を失っていたのだが、と一瞬思ったが、あの時の状況がどんなものだったかも知りたかったので彼女の意見に同意した。 「あの時は本当に心配してたんですよ。でもこうして元気になってらして良かったです。」 「あー、どうも。チャクラ切れして雪山で行き倒れちゃってね。俺すごい汚かったし、体拭いてくれたんでしょ?なかなかできないことだよね、感謝してる。」 実際、それは大変な作業なのだ。意識のない人間を介抱すると言うのはちょっとやそっとのことじゃできない。しかも自分は大分汚れていた。誰でも当然のようにできることじゃない。 「いいんです、同じ木の葉の人間ですもの。きっと大変な任務だったんだろうって思ってましたから。」 「でもライダも任務後だったんでしょ?疲れてただろうに。」 「そんなっ、関係ないですよ。大変な時はお互い様ですし。」 「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。」 さっきはちょっとどうかと思ったが、彼女はなかなか思いやる精神が強いようだ。カカシは幾分警戒心を解いた。名前だけ有名になって、カカシの中身よりも外ッ面だけを求めてくる人間が多いのだ。 「あの、唐突なんですけどはたけさんって恋人いらっしゃるんですかぁ?」 「いや、いないよ。」 任務任務で恋愛なんてできなかったし、向こうから寄ってくるのはやはりカカシの外側だけが目的の人間がほとんどだった。 「そうなんですかあ。あの、良かったらまたこうやってお話しませんか?」 自分を助けてくれた命の恩人だ。少しくらいの要望は聞いた方がいいだろうと思ってカカシは頷いた。 それから、カカシとライダはしょっちゅう一緒に行動するようになった。ライダの方がどこからかカカシの行動を聞きつけて隣にいるようになったのだ。
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