− 魂合い −
|
目が覚めるとそこは病院だった。俺、生きてるのか。かなりひどい傷だったのに、誰にももう助けることなぞできないように刺したつもりだったのに。 「あ、気が付きました?」 声が聞こえた。気付かなかった。人の気配に。俺は顔を上げようとした、だが身体がうまく動かない。そう言えばどの位眠っていたのだろう。身体の節々が痛い。 「あの、俺の存在無視するのやめてくれないですか?あ、火影様、やっと来たんですか。遅いですよ、まったく。」 火影の名を聞いて俺はギギギ、と音がしそうな首をなんとか動かして声のする方に顔を向ける。 「うむ、回復は順調じゃな。気分はどうじゃ?」 聞かれても声は出ない。仕方ないので手文字を使うことにした。俺はギシギシと音の出そうな身体にむち打って手文字を作り出す。 「ふむふむ、体調はそれなりに良いか。あちこちが痛い。ふむ、昏睡状態がずっと続いておったからの。仕方あるまいて。」 俺の言葉を読みとって三代目は答えていく。 「して、お主の名前は?」 え、三代目って俺のこと知らなかったっけ?何度か挨拶もしたことあるし、その時はちゃんと名前覚えてくれてたのに。もうろくしたのかなあ、ちょっと切ない。 「ふむふむ、うみのイルカか。なにっ!イルカじゃとっ!?」 なんでそこで過剰に反応するんだろう。俺は怪訝な顔をした。 「へえ、あんたうみのイルカって言うんだ。」 一番最初に声をかけてきた男の声がした。すっかり忘れていた。火影様なんて大物、なかなか普段は見ないからちょっと緊張しちゃったからなあ。 「.....っ!?」 声が出ていたらきっと叫んでいたことだろう。そこには、若返ったカカシさんが立っていた。 「え、なに?なんでそんなに驚いてんの?俺のこと覚えてんの?」 どうしてだっ!なんで若返ってんだっ!?どうなってんだよ、わけわかんねえよっ! 「ふむ、これは益々持って困ったことになったのう。」 火影様がそう言ってため息を吐いた。困ってんのは俺の方だっ! 「まあ、今日はゆっくり休め。カカシよ、イルカの世話をしてやれ。まだ本調子ではないじゃろうからの。」 火影様はそう言って去ってしまう。ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。俺に何か説明してくださいよ。どうなってんですかこれは。ええっ!? 「いやあ、なんだか解らないですけど、あなた敵ではないようでよかったですよ。」 敵ってなんだよ敵って。俺だって木の葉の忍びだ。確かに世間様には顔向けできないことしてて風当たりが冷たいけど、それでも任務はこなしている。敵だなんて、そんな。 「あ、ちょっと泣かないでよ。俺が泣かしたみたいじゃないの。って、あんたもう既に泣いてた?」 そう言えばさっき少し泣いてしまったんだっけ。火影様にも恥ずかしい所を見せちゃったなあ。もういい大人が泣いたりして、みっともない。 「あ、少し気分向上した?よかったよかった。ちなみに俺の名前ははたけカカシね。よろしくー。」 俺はがっくり項垂れた。ほんと、わけわかんない。 「なに?なんかまた気分が降下してきてる?一体何があんたをそうさせてんの?ま、いいけど。とりあえず何か飲む?喉からからでしょ?って、あ、そうでもないかあ。ずっと喉に薬とか注入されてたし。ど?痛くない?」 俺は手文字を使って言った。 “痛くはありません。ただ、声を出そうとすると痛むので。” 「そう、ま、このまま治療を続ければ声は出るらしいから、少しの辛抱だね。」 驚いた。声が出るようになるのか。木の葉の里の医療技術は忍五大国の中でも最低ラインだ。あんな怪我をしてまた声が出せるようになるなんて、半端でなく医療が向上してるのか?何時の間に?解らない。 「なんか不思議そうな顔してるね。ま、あんな大怪我したのにまた声が出せると思って嬉しくて驚いたのかな?でもまあ、綱手様が里に帰ってきてたらもっと早く声が出せるように治療してもらえたろうけどねえ。」 は?綱手様?あの三忍と謳われた綱手様の事を言ってるのか?第三次忍界大戦で40年以上前に亡くなってるじゃないか。 「え、なに?今は何年かって?そんなの忘れちゃったの?昏睡状態になってまだ二週間しか経ってないよ。そんなにびくびくしなくても。ああ、はいはい、今年ね、今年は○○○年だよ。」 俺は今度こそ気を失った。 |