− 魂合い −
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あ、なんかまた眠っちゃったよこの人。でも今のはどっちかって言うと眠ったんじゃなくて気を失ったって感じだったけど、この人本当に大丈夫なのかなあ?なんか放っておけないなあ。 「火影様、先ほどの件ですけど、」 と言って入ってみれば、そこには書類を目にしつつ、眉間に皺を寄せている火影がいた。こんなに真剣な表情で書類を見ている火影、初めて見たかも。 「火影様?」 もう一度声をかけると火影は渋々書類から目を離した。 「カカシよ。」 「なんですか?」 「最近一人の幼子が行方不明になっておってな。」 「はあ、」 それが何か関係するのか? 「その子どもの名前がイルカと言う。」 「え...。」 なんですと!? 「わしの水晶でずっと探しておったが見つからんでな。里を出れば結界が反応する。ここしばらく侵入者もおらず、拐かしでもない。身内のいない子どもでな、心配する親もとうに死んでおらぬ。だからと言って捨て置くわけにはいかぬ。子どもはこの里の宝じゃからな。そんなわけでずっと探しておったのじゃ。」 「えっと、何歳の子どもなんですかそのイルカって。」 「もう少しで満一歳になる所じゃった。」 俺はあはははははは、と乾いた笑い声を上げた。 「一歳に満たない子どもが変化の術を使ったと!?」 「あほかっ!そんな子どもがどこにおるっ。」 いや、だからもしかしたら超天才かもしれないかなー、と思っただけなのに。ちぇー、冗談が通じないんだから火影はっ。 「でも、そうなってくるとおかしいですね。どう見てもあの人、二十歳は過ぎてそうですよ。」 「うむ、しかしあの鼻の傷。今思い出したが赤子のイルカにも同じ傷があるのじゃ。生まれてすぐに付いた傷でな、父親は男ぶりが上がったと苦笑いしておった。」 「あの、でも、そしたらあの人、どうなるんですか?」 「詳しいことは本人の口から聞かないことにはな。それにカカシよ。お前はどうやらあの者にとって何かいわくがあるのかもしれんぞ。」 「え、俺いくらなんでも赤子にまで手は出しませんよ。」 俺の許容範囲は犯罪になる一歩手前までだ。 「あほかっ!そんなことわしが許さぬわっ!わしが言っておるのは、つまるところあの者が本来いたその世界でお前と何か因果関係があったのではないかと言うことじゃ。お前を見た時のあの者の驚きようは異常じゃった。」 それは俺も思う。あそこまで過剰にならなくたっていいだろうに、ちょっと傷ついちゃうよ俺だって。 「それよりもわしはお前にあの者の身のまわりの手伝いをするように言ったはずじゃが。こんな所で油を売って良いのか?」 「あー、実は気絶しちゃいまして。」 火影の目が不信感に染まる。 「ちょっと、俺は何もしてませんよ。ただ、今年が何年かって聞かれたから答えただけで。」 「それだけで気を失ったのか。益々確信に迫るような雰囲気じゃな。」 俺はそうですねえ、と相づちを打った。 「じゃ、俺はお世話に戻りますよ。起きたらまた知らせるんで。」 火影は頷いた。俺はそのまままた病室へと戻った。イルカさんはまだ眠っていた。何か顔が苦悶に歪んでいる。 “火影様に会わせて下さい。” うん、そう来ると思ったよ。俺は早速火影に式を送った。火影も大変だね、老体なのにバタバタと。 そして火影がやってくると、また手文字で言ってきた。 “火影様と二人だけで話しがしたい。” う、なんか除け者にされたような疎外感を感じるんですけど。 |