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3. もらい泣き ヒスイの両親は泣いていた。アカデミー時代のくのいち友達も泣いていた。だが、その中でウスビとイルカだけが、2人、泣けないでいた。 ヒスイと上忍師の弔いが終わった翌日、イルカとウスビは火影に呼ばれた。 「あの森のことを、何か聞いているか?」 3代目の言葉に2人は首を横に振り否定する。やはりな、と火影はくわえていた煙管から紫煙を吐き出す。 「あの森はな、滅多に人が入り込むべき場所ではない。かつて人身御供を送っていた森なのじゃ。磁場が狂っているのか、何か物の怪の類がいるのか未だにわからぬ。人が滅多に入り込めぬからこそ、今では貴重となる物資が豊富に残っておる。他里に知れぬようにしたかったのは何も物資を独り占めするためだけではない。犠牲者を出したくなかったのじゃよ。」 「犠牲者って、遭難とか、ですか?」 ウスビの質問に火影はそうかもしれんのう、と曖昧に肯定した。 「あの森は花水木の咲く季節だけ、何故か安全に入ることができるのじゃ。しかも男だけ、な。ここ数十年、女子が入った報告を聞いておらんかった。じゃから任務を振り分けた者も知らなかったのじゃろうな。女人禁制の森だったということを。」 「どういうことです?女の子が森に入ったらだめって、あの森に入ったからヒスイは戻ってこなかったって言うんですか?」 ウスビの言葉に火影は沈黙した。だがやがて重い口を開いた。 「お前たちの報告を聞く限り、必要性のある判断として遂行されたように見える行動だが、おそらくはもっと狡猾に仕組まれた罠であったのだろう。」 火影の言葉にイルカもウスビもなにも言えなくなった。最初から、敵が来たのも上忍師が死んだのもヒスイが森に取り込まれるための駒だったというのか? 「その昔、あの森は魔の森として恐れられ、災厄が訪れるたびに幼い少女を人身御供に差し出していたそうじゃ。報告によればヒスイは森の『主』とやらに出会い、代わりになることを進められていたそうじゃな。おそらくは以前、人柱として祭られた者が森の思念体に取り込まれ、主として存在することを余儀なくされ、そこから逃れるためにヒスイを身代わりにしようとしたのだろう。」 「じゃあ、ヒスイは森の主に?もう、里へは戻ってこない?会えないんですか?」 ウスビの言葉に火影は傘を深くかぶった。それは肯定を意味する彼のしぐさで。 「そんな、じゃあ、ヒスイとはもう二度と、僕は、う、ううっ、うわぁあああっ、」 涙声で何かを呟いていたウスビは、大声を上げて執務室から走り去っていった。イルカは追いかけることもできずに、ただ、震えていた。 「イルカよ、自分を責めるでない。」 顔をあげると火影が切なそうに笑っていた。イルカも釣られて笑おうとして、だが失敗した。流れ落ちる熱い涙が頬を伝って、顔が硬直して思うようにいかない。しゃくりあげる喉が止められない。
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