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『Happy  Birthday To ? ―前編― 』



 ≪新宿・真神学園―――始点≫
「な、24日に皆で京一の誕生パーティやろうよ」
 得意満面な龍麻君の提案です。
「京一の?」
 何やら不満気な小蒔ちゃん。
「うん!翡翠のトコか晴明んトコで皆でやろう!」
「それは良い考えね。龍麻」
 葵ちゃんは、ニッコリ褒めてあげます。
「だろ、きっと京一喜ぶぞ。
 じゃあ、俺他の皆に知らせてくる」
 そのまま、龍麻君は駆け出して行ってしまいました。
「龍麻らしいと言うか何と言うか…」
 苦笑して龍麻君を見送るのは醍醐君です。

「ひ〜ちゃ〜ん、どこ行くの〜?」
 校門の所でミサちゃんに会いました。
「24日の事、皆に知らせにいくんだ」
「うふふふ〜。京一くんの誕生日ね〜。
 ミサちゃんも待ち遠し〜」
「俺もそうなんだ〜」
「気をつけて、いってらっしゃ〜い」
「いってきまーす」


 ≪渋谷・神代高校≫
「ら・い・と〜♪」
 校庭から大きな声で自分を呼ばれ、仰天して雨紋君飛び出してきました。
「た、龍麻サン。
 何スか?いきなり来て」
「あのな。24日に京一の誕生日パーティやるから空けといてくれよ。
 場所とか決まったら、連絡するからな」
 言いたい事だけ言うと龍麻君は次の目的地を目指します。
「京一の誕生日ねェ…」
 雨紋君は疲れた表情で呟きました。


 ≪目黒区・鎧扇寺学園高校・空手道場≫
「ちわ。兵庫」
「どうした?龍麻」
 他校のそれも道場に何の遠慮もなく上がりこむ龍麻君。
「24日に京一の誕生日パーティやるんだ。
 兵庫も来てくれるよな」
「あぁ、もちろんだ。
 楽しみにしてるぞ。
 そうだ。折角、来たんだ。手合わせでもしていかんか?」
「ゴメン。
 まだ、連絡しなきゃいけないんだ」
「そうか。
 だが、龍麻。24日は…」
「部長」
「おい。俺は、もう部長じゃないぞ」
 紫暮君を尊敬するあまり、後輩君達はついつい『元部長』を『部長』と呼んでしまうのです。
「すいません。紫暮先輩」
「何だ?」
「もう、緋勇さんいませんよ」
「…………」
「急いで帰られました」
「ははははは。蓬莱寺の為となると一生懸命だな、龍麻は」
 置いてきぼりを喰らっても怒らず笑い飛ばす豪気な紫暮君でした。


 ≪千代田区・皇神学院高校≫
「御主人様」
「芙蓉」
「わざわざお越しとは、何か事件でございますか?」
「ううん、違うよ。
 祇孔と晴明いるかな?」
「少々、お待ち下さい」
 有能な芙蓉ちゃんのお陰で、すぐに二人は現れました。
 何だか、村雨君は無理矢理引き摺られていたようにも見えましたけど…。
「何か御用ですか?龍麻さん」
「どうしたんだよ?先生」
「あのさ、24日京一の誕生日なんだ。
 それでパーティしたいんだけど、皆で集まりたいから浜離宮会場にさせて貰っても良いかな?」
「それは構いませんが、あそこは集まるのが大変ですよ」
「総勢20名以上、いちいち案内するなんざ、しち面倒臭えな」
「村雨!御主人様がお望みだと言うのに」
 御主人様に逆らう不届き者を芙蓉ちゃんが睨みつけます。
「いいよ。芙蓉。
 俺もちょっと気になってたんだ」
「御主人様。村雨を庇ってやる必要なぞございません」
「芙蓉、おめえなァ」
 自分と龍麻君の扱いがあまりに違うので村雨君グレかけてます。
「翡翠に相談してみる。
 やっぱり、あそこの方が集まんの楽だし。
 じゃ、三人とも24日忘れないでくれよな」
 来た時と同じく突然いなくなる龍麻君でした。

「あの…、24日と言うのは…」
「良いんですよ、芙蓉」
「言うだけ野暮ってもんだぜ」
「野暮とは、どういう意味です。村雨」
「判らねえだろうな。お前も先生と同じでボケってから」
「村雨。お前にしては良い事を言いますね。
 御主人様と私が同じとは」
 芙蓉ちゃん。村雨君褒めてないですよ。
 何であろうと御主人様とお揃いなのが嬉しい芙蓉ちゃんなのでした。
 龍麻君の影響で人間らしくなったというか、何処となくズレてしまった芙蓉ちゃんに見るにつけ、御門君は龍麻君をちょっぴり恨めしく思うのでした。


 ≪江戸川区・聖アナスタシア学園高校≫
「アラーン」
「アミーゴ」
 人目も憚らず肩を抱き合い、互いの背中を叩き合う二人。
 あまりの騒がしさに、周囲の人が引いてます。
「24日は京一の誕生日パーティやるぞー」
「OH!大いに盛り上がりましょー」
「とーぜん♪
 という訳で24日よろしくな」
「OKデース。
 で、アミーゴ…」
 アラン君がもう一度話しかけようとした時には、もう龍麻君の姿はありませんでした。
「…キョーチはソーハッピーネ」


 ≪墨田区・覚羅高校≫
「ヨォ。あんた藤咲の知り合いだろ」
「うん。亜里沙いるかな」
「待ってな」
 一見、ヤンキー風でありながら中々親切な生徒さんの計らいで龍麻君はココでは不法侵入しなくて済みそうです。
「龍麻、どうしたのさ」
「麗しい女王様のご機嫌伺いに」
「バカ言ってんじゃないの。
 とっとと用件をお言い」
「ははっ。陛下におかれましては来る24日お暇でいらっしゃるでしょうか?」
「誕生日なんだってね」
 ふざける龍麻君を軽くあしらう亜里沙ちゃんは、やっぱり女王様の貫禄充分。
「御存じとは恐れ入ります。いと艶やかなる女王陛下に御臨席頂ければ、京一の誕生パーティも華やぐと思いまして」
「っとに、あんたって人は。
 はいはい、出席させて貰いましょ。
 せいぜい、ドレスアップしてね」
「サンキュー。亜里沙」
 意気揚々と引き上げる龍麻君の背中に、亜里沙ちゃんは呟きました。
「あたしがおシャレしたって仕方ないと思うんだけどねェ」


 ≪葛飾区・拳武館高校≫
 規律正しく重厚な空気を乱す豆台風上陸。
「紅葉」
「た、龍麻!?」
 堂々と他校に乱入する妹弟子に取り乱す壬生君。
 そんな彼を見た事のない同級生は、見てはいけないものを見てしまった気がして目を逸らしてしまいました。人間信じ難いものを見てしまうと、逃避したくなるのは何故でしょう?
「24日って忙しい?」
「…え、あぁ。その日なら空けてあるよ」
「さっすが、紅葉。
 じゃあさ、準備手伝って貰って良い?俺だけだと不安だから」
「いいけど…」
「やったー♪
 せっかくの京一の誕生日だから豪華にしたいもんな。
 ありがとう、紅葉」
「ちょっ…」
 台風一過。
「やれやれ」
 口調こそ呆れてますが、声の優しい響きは隠せない壬生君でした。


 ≪荒川区・ゆきみヶ原女子高等学校≫
 如何に龍麻君といえど男の形で女子高には入れないと思うでしょう。
 甘〜い。
「失礼しま〜す」
 ズンズン進みます。
「あ!真神の緋勇さん。織部先輩に御用ですか?」
「そうなんだ。雪乃か雛乃どこにいるか知らないかな?」
 ゆきみヶ原の奥ゆかしい生徒さんも、人好きするうえ絶世の美形龍麻君には警戒しないようです。ここに来る時だけは、いつも降ろしてある前髪を上げてイメージアップを図っているのも大きいでしょう。
「雪坊も雛ちゃんも被服室でドレス作りの真っ最中じゃろう」
「用務員さん。どうもありがとう」
 竹箒片手に登場した用務員のおじさんまで、闖入者を追っ払うどころか、ご丁寧に行き先を教えて下さいます。
「雪乃、雛乃」
「わあッ!?なんだァ」
「龍麻様…」
 まさかこんな所―――自校の被服室に龍麻君が現れるとは思いません。
 雪乃ちゃんはドレスを、雛乃ちゃんは針を落としてしまいました。
「脅かしてゴメン。
 どうしても知らせたい事があったからさ」
 ドレスも針も落ちる寸前に龍麻君が受け止めました。
「何かあんのか?」
「24日、京一の誕生日なんだ」
「あいつにも人並みに誕生日があったのかよ」
 雪乃ちゃんったら、龍麻君から受け取ったドレスを握り絞めてしまいました。
 せっかく、落ちずにすんだのに、そんなにしたら皺くちゃになっちゃいますよ。
「姉様」
 雛乃ちゃんに睨まれ、そそくさとドレスを机に置きます。
「でさ。その日パティーやるんだけど、来てくれるかな?」
「私達もお邪魔してよろしいんですか?」
 龍麻君から渡された針を裁縫箱に戻しながら、雛乃ちゃんが尋ねます。
「当ったり前。双子の美人姉妹が来てくれなかったら京一ガッカリしちゃうよ」
「俺は別に京一なんか喜ばせたくないね。あんなナンパ野郎」
「姉様!」
 睨まれ首を竦める雪乃ちゃん。
「申し訳ありません。龍麻様。
 姉様ったら失礼な事を」
「良いよ。何のかんの言っても雪乃と京一仲良いの知ってるから」
「龍麻くん!!」
「あははは。じゃ、24日に」
 来た時と同じく公然と女子高を出て行く龍麻君でした。

「何が京一の誕生日だよ」
「龍麻様がそう仰るのなら、それで良いじゃありませんか」
「フン」
 不機嫌な姉をほったらかして、卒業制作を仕上げるべくウエディングドレスを手に取る雛乃ちゃん。
「姉様。手伝って下さいな」
「………」
「頑張らないと24日のパーティに行けなくなりますわよ」
「わかったよッ」


 ≪北区・如月骨董店≫
「お邪魔しま〜す」
「やあ、いらっしゃい」
「龍麻♪」
「マリィ♪」
 マリィちゃんはこの骨董店主の所に遊びにくる事が多いんです。火と水という対極を司る者同士馬が合うとは面白い。
 縁側に腰掛け、お茶を貰います。勢いに乗って東京縦断中ですからここら辺でちょいと一服。
「ふ〜。翡翠の入れてくれるお茶は美味しいなァ」
「どういたしまして、気に入って貰えたのなら幸いだ」
「ホント、翡翠のお茶おいしいネ。
 マリィ、ニガイお茶ニガテなのに翡翠のは飲めるモン」
「そうかい」
 ちゃっかり龍麻の膝の上に座り込んでお茶を飲んでいるマリィ。微笑ましい光景に如月君の頬も緩みます。
 『氷の男』を溶けたアイスクリーム(早い話がメロメロ)に変えてしまうとは、さすが朱雀。
さすが黄龍(???)。
「相談があるんだ、翡翠」
「何かな?」
「24日に京一の誕生パーティやりたいんだけど、ここを会場にさせて貰っちゃ駄目かな?」
「構わないよ」
「ありがとう、翡翠」
 気懸かりだった会場問題も片付いて龍麻君一安心。
 マリィちゃんと如月君に見送られ龍麻君は再び旅立ちます。

「龍麻ってホントに京一お兄ちゃんをあいしてるんだネ」
「そうかな」
「翡翠はわかんないの?」
 マリィちゃん、如月君は判らないんじゃなくて判りたくないんですよ。
「だって24日は…」
「さあ、何時まで外にいると風邪を引くよ。
 中に入ろう」
 聞きたくないからって逃げるのはズルイと思うよ。如月君。
 
 ≪練馬某所≫
「困っている人を見過ごすなんて、俺っちは…、俺っちは…」
「あぁ、俺も苦しい。このまま見ている事しかできないのか」
「そんな…ダメよ。あの二人は仲間なのよ。助けなくちゃ」
「「「…どうやって」」」
 コスモ3戦士がぼやきます。
 なんと彼等の目の前には、アイドルさやかちゃんとナイト霧島君がファンに囲まれ二進も三進も行かなくなっているではありませんか。
 しかし、いくら仲間の為とは言え一般市民に力を振るうなんて練馬のヒーローには出来ません。かと言って仲間が困っているのに何の手助けも出来ないなんて正義の味方として道義・信条に反します。
 かつて無い苦悩に打ちひしがれるコスモ達。
 神は彼等を見放したのか?
 BON!! BON!! BON!! BON!! BON!! BON!!
 割れる割れる。どんどん割れる。
 皆が手にしていた銀色のハート型風船が原因不明の破裂を繰り返すじゃあ〜りませんか。
 キャンペーンで配った風船でしょうね。“SAYAKA LOVE”の文字が次々散っていきます。
 それもさやかちゃんに纏わりついて離れない不届き者が持っているヤツに限って破裂していきます。不思議と小さな子の風船は無事だったりします。
 珍現象に皆の気が逸れている隙にさやかちゃんが忽然といなくなっちゃいました。
「ア〜ハッハッハ。
 見たか!コスモレンジャー。
 アイドル・舞園さやかは、悪の魔人・イエロードラゴン(おいおい)が貰った」
 トラックの荷台の上にさやかちゃんと黒いボレロタイプ(注:自転車に乗るときに着る照る照る坊主スタイルのモノ)のレインコートを着た怪人が立っていた。
 フードを深く被っているので魔人の正体は定かではない(?)がコートから覗くのはどう見ても学生ズボン。足下の少し汚れたスニーカーが眩しい。
「(さやかちゃん。合わせて)」
「(あ、はい)助けて!コスモレンジャー。
 助けて!コスモ・ホワイト」
 クサイ演技です。演技は歌ほど上手くないみたいですね。さやかちゃん。
 魔人・イエロードラゴンはさやかちゃん腰に腕を回して、ひらりと反対側に飛び降りました。
「さらばだ。コスモレンジャー」
 何が起こったのか?見守る観衆には理解出来ません。
「俺は正義のために戦うぜ!!」
「この世に悪の栄えたためしはない!!」
「少年少女の希望を壊す悪行の数々、見過ごすわけにはいかないわ」
 見えを切るコスモレンジャー。
 ポーズを決めた後、呆然とする霧島君を連れて、アイドル誘拐犯を追っかけます。
 いきなりな展開についていけない人々は、まんまとさやかちゃん達に逃げられてしまいました。

「俺っちはカンドーしたぜ。師匠、いやコスモグリーン」
「まったくだ。仲間を救うためとは言え悪役を演じるなんて、お前の熱い友情には頭が下がるぜ。ひーちゃん」
「龍麻の中には私達に対する愛が溢れているのね」
 魔人・イエロードラゴン改め龍麻君を囲み感動を口にするコスモレンジャー。
「ありがとうございました。龍麻さん」
「助かりました。龍麻先輩」
 さやかちゃんと霧島君もコスモに負けじと龍麻君を囲みます。
「さやかちゃんが無事で良かった」
「嫌な思いをしたにも関わらず、仲間の無事を喜べる。
 師匠。お前こそコスモレンジャーのリーダーに相応しい!」
「良い事言うな。レッド。
 そうだぜ。ひーちゃん。俺たちのリーダー・コスモグリーンとして共に戦ってくれ!」
 感極まってレッドとブラックは、龍麻君をコスモレンジャーのリーダーに祭り上げようとします。
「…ゴメン。それは出来ない」
「どうして!?龍麻」
 断られると思ってもみなかったのでピンクはショックを隠しきれません。
「だって俺、ア○パンマンより○イキンマンの方が好きなんだ」
 何言ってるんですか?龍麻君。
「いつも京一と見てるポ○ットモンスターもピ○チュウより○ャースの方がいいし…。
 そんな俺がヒーローなんて、ましてやコスモレンジャーのリーダーなんて無理だよ」
 なんですと、龍麻君。
 正義の味方より定番やられ小悪党の方が良いと仰るんですか?
 そうですか…。わかりました…。
 さっきの見事なエセ悪役っぷりは楽しんでやってたんですね。あなたって人は…。
「あ、でも。猛達は偉いと思うぞ。
 コスモレンジャーは大好きだからな」
 思ってもみない衝撃に打ちひしがれ無口になってしまったコスモ達を龍麻君は励ましますが、なんかあんまり効果無いみたいです。
 哀れコスモレンジャー。負けるなコスモレンジャー。
 リーダーは無理でもヒーローショーの悪役だったら龍麻君ノリノリでやってくれそうだぞ。今度誘ってあげて下さい。
「いっけね。
 ここで諸羽達にも会えて良かったよ。
 あのさ。さやかちゃん。24日に時間取れないかな?」
「ふふ。大丈夫ですよ、その日は。
 霧島君ったら、去年から24日はどーしてもお祝いしたいって大変だったんですから」
「おぉ!さすがは京一の一番弟子。
 弟子の鑑だな、諸羽は」
 おだてられて霧島君ったら赤面してます。
「コスモも来てくれよ。
 翡翠んトコで京一の誕生日パーティやるかな」
「龍麻先輩だって…」
 霧島君が口を挟む前に龍麻君行っちゃいました。
 と思ったら振り返って一言。
「バイバイキ〜ン♪」
 コスモレンジャーを撃沈させ龍麻君、いいえ魔人・イエロードラゴンは去っていきました。
 立ち直ってくれコスモレンジャー。
 練馬の未来は君達にかかっている…かもしれない。


 ≪桜ヶ丘中央病院≫
 産婦人科に物怖じせず突入するのは、もちろん龍麻君です。
 お目当ては優しい白衣の天使二人。
「舞子。紗夜」
「ダーリン♪」
「龍麻」
「お仕事お疲れ様。
 時間ある?」
「だいじょ〜ぶ」
「今、休み時間なの」
「二人とも24日は忙しいかな?」
「その日は、先生にお願いして休みを頂いてあるわ」
「だから舞子も紗夜ちゃんも誕生日のお祝いするの〜」
「良かった〜って、もしかしかしなくともお見通し?」
「ダ〜リン。驚いた〜?」
「うん」
「やったね。舞子ちゃん」
 龍麻君のビックリ顔に白衣の天使達はしてやったりとばかりに手を叩きます。
「あ!お願いがあるんだけど」
「なあに〜?」
「誕生日パーティに二人とも白衣で来てくれないかな?」
「どうして?龍麻」
 なんでそんな格好して貰いたがるんでしょうか?
「だって京一が喜ぶ」
 紗夜ちゃんも舞子ちゃんも脱力してしまいました。
「ダメかな?」
 可愛い看護婦さんが白衣を着ていったとしても龍麻君が考えてるほど京一君は喜ばないでしょう。
 だけど、自分達を伺う龍麻の心配そうな顔に二人ともほだされてしまいました。
「わかったわ。龍麻」
「いいよ〜。ダーリン」
「やったー!
 ありがとう。二人共」
 紗夜ちゃんと舞子ちゃんの手を取り感謝する龍麻君。
 龍麻君の喜ぶ顔が見れるならいいか、と思うナイチンゲール達でした。
 笑顔で龍麻君を送り出します。

「ね〜、紗夜ちゃん。ダーリン忘れてるのかな〜?」
「舞子ちゃんもそう思う?」
「思う〜」
 顔を見合わせ噴出す二人でした。


 ≪新宿・龍麻君のマンション―――終点≫
「ただいま」
「アニキ、お帰り」
「京一は?」
「まだやで」
「そっか。
 弦月。相談があるんだけど。
 24日の…」
「京一はんの誕生日やろ」
「ピンポーン♪
 さすがは我が弟。わかってるな〜」
「わいにまかしとき」
「頼りにしてるぞ」
 意気投合してガッシリと抱き合う兄弟。
「何兄弟でいちゃついてんだよ」
「「わッ!?」」
 二人を引っぺがす京一君。
 別に焼き餅焼いてる訳じゃないんですよ。
 龍麻君と劉君は仲良し兄弟がベタベタするのなんていつもの事ですし、これ位で目くじら立てる程京一了見狭くないです。
 だいたい自分と龍麻君の方がいっつもイチャイチャしてるんですから。
「…一緒に勉強しよう」
 それだけ言うと龍麻君は京一君の腕を取って、リビングへ向います。
 その二人を見届けて劉君はキッチンへ向います。
 龍麻君は、今日も追試に落ちてしまった京一君の勉強を見るため。
 劉君は受験生のクセに自分のコトそっちのけで京一君の世話焼きをする龍麻君と何とか龍麻君に迷惑かけまいと頑張るんだけどなかなか勉強がはかどらない京一君に晩御飯を作るために。

 もうすぐ24日です。


【後編へ】




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