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『寛永寺決戦!!』

―――これを読む前に

緋勇龍麻♂のプロフィール(抜粋)
中学生並に背が低く童顔で、何に対しても一生懸命。戦闘時は誰よりも頼りになるが、それ以外ではマスコット扱い。しかし持ち前の無防備かつ無敵の笑顔で、男女問わず事件に関わる者を全て仲間に引き込む恐怖の高校3年生。

ちなみにタイトルにも書いてありますが、ここの如月はとっても『邪悪』(ダークでないのがミソ♪)です。涼しげな笑顔がとっても似合う若旦那しか認めない人には、精神衛生上よくないシロモノなので注意してください。

それでは本編をどうぞ




「いくぜェ!!」
京一の掛け声を合図に、魔人たちは寛永寺に突入した。
目指すは本堂の柳生宗崇、そして彼の所有する「陰の器」
しかし本堂が見えたところで、京一と醍醐は妙な違和感を感じた。それは半年以上前に感じたものと同じ、一種の狂気に近いモノ。

本堂の前には紅い学生服の男が立っていた。
ここにいる魔人たちは全員が彼の名を知っている。
その男の名は―――柳生宗崇

「待っていたぞ、『黄龍の器』」
柳生は口を開いた。その顔はかつて見たときと同じく絶対の自信に満ち溢れ、その態度は傲慢不遜そのものである。
その声に応えて龍麻は一歩前に出た。
「柳生くん、こんな馬鹿なことは今すぐやめようよ」
「フン、何をいまさら。だいたい、なぜ貴様ごときに止められなければならんのだ」
「だって、柳生くんは吸血鬼とか狼男とかでもないんだろ? 別に周りの人に嫌われていたわけでもないのに、なんでこんなことをするのさ?」
「フ、嫌われていない・・・か」
「ボクはずーっと、ずーーーーーーっと昔から生きてきた人知っているけど、彼女だってこんな無茶はしなかったよ。だから、―――」
「貴様のような童顔に何がわかる!!!!!」
柳生の怒号が響いた。
「俺は15の時に眉間に傷を受けた。そして、その後10年間、やれ「老け顔」だの「傷が怖い」だの言われつづけてきた。ご近所では『柳生のたっちゃん』」と呼ばれ可愛がられてきたこの俺がだ!! その後の10年間はとりあえず平凡な人生を送ることができた。しかしその後の10年はどうだ。今度は小さい時には老け顔だったくせに今は若作りだと陰口を叩かれ続ける始末!」
「あの〜〜〜(困惑)」
「その時ようやく自分が不老不死であることを悟った俺は、別の土地に移り再び15歳からの人生を始めた。しかしそこでも「老け顔」だと言われる毎日。そして2度目の25歳の誕生日を迎えた時、俺は決心したのだ。こんな人間共は粛清してやるんだと!!!」

「・・・」
「・・・」
「・・・それがボク達と戦ってた理由なの」
やっとのことで口を開いた小蒔。
声が怒りで震えています。
「貴様らみたいに若くてピチピチした奴らに、この俺の苦しみがわかってたまるかぁ!!」
龍麻や小蒔に切っ先を向けて怒鳴る柳生。もちろん今の彼の視界からは無意識のうちに醍醐や紫暮は排除されています。
「このヤロ―――」
飛び出しかけた小蒔の腕を京一が掴み、すぐに引き戻した。
「なんで止めるのさ!」
京一は小蒔の問いに答えず、正面から柳生を見据えている。
「おい、紅い学生服の若作りのおっさん。そろそろ『切り札』ってやつを出した方がいいんじゃねえのか?」
「・・・そうだな。そちらが見え透いた罠で引っ掛けようと思っているのなら、こちらの方から仕掛けて手前の方から一人一人つぶすまでだ」
「フン。始めから待ち伏せ程度に貴様らが引っかかるとは思っていない。まあこういうものは意表を突いてこそ、ありがたみがあるものだからな。―――いいだろう。出でよ、我が無敵の剣鬼達!!」

ズザザザザザザザザザザザザッ!!






「「「「へ?」」」」

「おい醍醐」
「なんだ?」
「・・・俺の目、おかしくなってしまっちまったのかな」
「・・・そう思うなら、龍麻か小蒔に聞いてみればいい」
「おい、龍麻。おまえの目の前に何がいる」
「ええと。ずっと前に一度闘ったことがある剣鬼が14人。今回の装備は、右手に村正で左手に拳銃らしきもの、さらにテンガロンハットにウェスタン風の皮ジャケットとウェスタンブーツという典型的なサムライガンマンスタイルです」
こういうときは何故か妙に冷静な龍麻くん。
「ふむ、正確な分析だな。しかし拳や刀相手に飛び道具とはなんと卑怯な」
そこでボケるか、紫暮。
「アーッハッハッハッハッ。恐れいったか、小童ども。これぞ遥か異国の地で眉間に十字傷を持つ男に学んだ生○無○流の究極のスタイル!」
「生活無能流?」
「○涯○敵流だっ!! これの前には―――」
「HAHAHAHAッ。こういう時こそボクの出番ネ」
人の話は最後まで聞いてやれよ、アラン。
「コノ『青龍』の前には、いかなる飛び道具も無効ネ」

ガチャ。ガチャガチャガチャ。

14の銃口は全てアランに集中。
「HAHAHAッ。多芸に無芸ってヤツネ」
「ええい。この役立たずが!」
「Oh。仕方ないネ、キョーチ。同じ『青龍』デ、14対1では勝ち目がアリマセン」
「言い訳になるかぁ!!! って『青龍』だと!?」

見てみると、剣鬼の左手には全て『青龍』が握られている。

「こら、柳生!! 何処からそんなもの仕入れやがった!?」
柳生は京一の怒鳴り声に全く動じていない。
「フッ、笑止! そのようなもの金さえつめば、そこらの店で買ってくることが出来るわ!」
「ふざけるな! あんな物騒な物、普通の店に置いてあるわけが―――」
ハッとして京一の声が途切れた。
京一だけでなく、いつの間にかほぼ全員が硬直している。
そして―――アランと裏密を除く全員が、その男の方向にギギギギギギッと音を立てて振り向いた。
そこにはいつもの涼しげな笑顔の若旦那がいた。

「き〜〜さ〜〜ら〜〜ぎ〜〜ぃ〜〜【怒】」
「なんだい?」
京一の地獄の3丁目から響いてきそうな超低音の怨嗟の声を如月はさらりと受け流す。
「『なんだい?』じゃねえ! 敵に武器を売りつけてどうすんだ!?」
「大丈夫だよ」
「『大丈夫だよ』で済む問題か! 俺達を殺す気か?」
「少なくても、龍麻くんだけは護り通すよ」
「てめえのそのセリフが一番信用ならねえ!!」
「ねえ、如月くん」
いつのまにか如月君の側まで来ていて、裾を引っ張る。
「ボクだけじゃダメだよ。みんなで生きて帰ろうって約束したんだし」
「ああ、そうだね。でも『僕にとっての一番』」はやっぱり龍麻くん―――」

スッパーーーーーン!!!

葵嬢のハリセン炸裂!!
「こんなところで【陰】モードの会話をするんじゃありません!!」
「Ohーーー! そうデシタ!」
「ど、どうした。アラン」
ポンと手を叩いたアランに醍醐がすぐに聞き返す。
「そう言えば、ヒスーイの店であの紅い学生服のヒトを見たことがアリマス。あれがヤギュウだったんですネ! 気が付きませんデシタ。―――どうしたんデスカ、醍醐?」
アランの間抜けぶりに思いっきり脱力する醍醐だった。

「―――お前ら、楽しいか?」
柳生のおっさん、いつのまにか蚊帳の外になってしまったのが、相当気に入らないらしく、声が少し震えています。
「ああ、楽しんでいるよ」
そこで挑発してどうする、如月。
ほら、柳生さんの肩の震えが心なしか大きくなっている。
「―――そうか。ならば、もはや言うことはない」
何を思ったか柳生さんくるりときびすを返します。
「柳生! てめえ、逃げる気か?」
そして、京一の声を無視して本堂にゆっくり歩き出しました。
「もう、俺が相手をするまでもない。貴様達全員、剣鬼どもの『青龍』で蜂の巣になるがいい!」
そのセリフが戦いの合図になった。





―――剣鬼達との戦いは、一瞬で終わった。
「何故だぁ!?」
剣鬼達は全滅していた。
ちなみに柳生は背を向けていたため戦いの経過を見ていない。
「何故、うちのスー○ーウルト○セク○ィな剣鬼達が敗れなければならんのだ!!」
だから、ウ○○プシステムに喧嘩を売るようなセリフはもうやめなさいって。
「何故って言われても、なあ」
「ああ。『青龍』を構えたまま硬直している剣鬼を蹴倒しただけだが」
「マリィの術からも逃げようとしなかったシ」
「引き金を引いてモ、弾が発射しないんデ。困っていたように見えマシタガ」
「・・・」
「・・・」
「そうかぁ(ポン)」
龍麻くん、素っ頓狂な声をあげると、如月のところに駆け寄ります。
「如月くんはこの時のために偽物を売りつけていたんだね」


「「「「なにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」


「本当か? 如月」
「翡翠、エライ!!」
「だが、あまり関心できるやり方じゃないな」
「う、うむ」
「・・・・・」
どうでもいいですが、遥か彼方で柳生さんが大きく肩を震わせていますけど。

「貴様等ぁ〜〜〜〜!!」
とうとう柳生さんキレました。
「たかだかヒトの分際で、ここまで柳生宗孝を愚弄するか! バチモンを掴ませて喜んでいられるのも今のうちだ! 今この場で『阿修羅』の錆にしてくれる!!」
あ、柳生さん本気でキレています。その『阿修羅』も骨董屋で買った物だいうことをすっかり忘れています。
「木刀が錆びるか! こちらも本気で行くぜッ!!」
つまらんとこで人の揚げ足を取る京一。ちなみに京一の装備は『天叢雲』(笑)
「来い、ヒトの限界というもの教えてやろう!」
「いっくぜェ〜〜〜! 必殺―――」

「盛り上がっているところをすまないが」
「「〜〜〜〜〜〜、何だ!!」」
上がりきったテンションに水をさされ、苛立つ2人。
「僕は偽物を売った覚えはないよ」
「「・・・何だと!」」
「うちは清廉潔白、信用第一をモットーとする由緒正しき骨董屋だからね」
―――悪逆非道、利得第一をモットーとする『死の商人』だろ―――京一は心の中でツッコミを入れる。
「ならば貴様が売ったのはなんだと言うんだ」
「それを尋ねる前に、まずは取扱説明書を読むことだね」
柳生の言葉に対し、如月は冷静に指摘する。
「・・・取扱説明書?」
「商品の苦情を小売店等に申し立てる場合、先に説明書で取り扱いに誤りがないか確認する。消費者の常識だ」
「う・・・」
如月の店主としての威厳に圧倒される柳生。案外小心者である。
「トラブルシューティングは17ページだ」
「ちょ、ちょっと待て」
早速、龍麻たちに背を向けて説明書を読み始めた。
「何なに。霊銃から弾が発射されない場合、以下のようなことが考えられます。
1.安全装置が外されていない場合
2.霊力が低い場合
3.使用者の名前が別紙一覧に該当しない場合
おい、この3番は何だ」
「それはですね―――」
「うおあっ!?」
いきなり真後ろから声をかけられ、柳生は飛び退る。
「何故貴様がここにいる!」
「巻末の一覧を参照すれば、いいということです」
「そ、そうか。(ペラペラペラ)―――と、そういうことではない!」
「本来、このような騙し討ちみたいなやり方は本意ではないが」
いきなり柳生の後ろに現れる、白虎醍醐。
柳生がギョッとする間もなくセリフは続く。
「龍麻ニイチャンを傷つける人は許さナイ!!」
脇に現れる朱雀マリィ。
「My Friend、守るタメ」
神出鬼没の青龍アラン。
「外法の者は断固滅殺!!」
こういうときだけまともな、玄武如月。
「いくぞ!」



「「「「四神方陣!!!!」」」」



―――今、一つの悪が滅んだ。
四神方陣に続き、アッシュストーム、フレイムスナイパー、楼桜友花方陣、黄龍菩薩陣、、サハスラーラ、六芒魔法陣、不動禁仁宮陣を連続で食らい、悪の権化柳生は石化したまま昇天、もとい地獄に落ちた。
だがしかし―――



「おい、醍醐」
「なんだ、京一」
「あいつをあのまま放っておいていいのか?」
「頼むからそのようなことを俺に聞くな」
彼らの視線の先には、柳生に売りつけた『青龍』と『阿修羅』をせっせと回収してまわる如月の姿があったという。


≪終り≫






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