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―――――― ≪翡翠君の憂鬱な一日≫


あれから、三日。《あの》阿鼻叫喚の騒ぎは、既に記憶から遠い。(というか、遠ざけた)
そうだ、暫くは忘れていよう。あーんな事もこーんな事も、心の奥底に封印しておけば、心は痛まない。腹も立たない。ついでに、(不本意に)押し付けられたこの請求書の金額も忘れておけば、懐も痛まない。
ああ、今日はよく晴れている。これは蔵の整理日和だな。ふむ。(平日なのに学校は?などと突っ込んではイケナイ)と、店のカウンターの所でいつものごとく《猫磨き》に没頭する。

なんぞと、らしくもなく現実逃避の日々を過ごしていた(でなければ、とてもじゃないがやっていられない)僕に、その日、更なる《認めたくない事実》が襲い掛かってきたのは、なんの因果なんだろうか?。
これも《宿星》だというんなら、流石の僕も《宿星の仲間》なんぞ、やめたくなるぞ。
そして《それ》は、僕的に《侮れない一般人女性第一位》の人物の来襲から始まったのだ。
(ちなみに、二位との差は比較的大きいかもしれない)

 ガラッ☆
「きゃほぉーい♪。スイちゃん、元気してたぁ??」

戸を開ける音がするまで、この僕が全くといっていい程気付かなかった。相変わらず、一般人の割には気配を消すのが異常に上手い人である。
「・・・・・・・・・・。(モクモク)」
「あーん(涙)。スイちゃんってば、相変わらずクールビューティさんだよねえ。でも、ちゃんとお返事してくれないと此処で泣いちゃうよ。だって、スイちゃんに何かあったら、ルリルリに申し訳がたたないんだもん。」
トテトテトテトテトテトテ、ピト☆
だああああああああああっっ、どうして其処で僕が磨いてる方の《猫》に抱きつくんですか!!。第一、そんなウルウル目で訴えたって無駄です。僕が貴女のその手口に何度引っ掛かったと思ってるんですか。其の所為で、あんな《内職》にまで手を出すハメになってるんですからね。
だが、このままシカトを続けていても、どうせ行き着くところは同じなんだろう、今までの苦い経験からすれば・・・・・・。
仕方が無い、ここは適当にあしらって、とっととお引取り願うしかないな。(いまだ、件の精神的ダメージから完全復帰しているとは言い難い僕なのだ)
「・・・・・・(溜息)。一応、身体的には元気ですよ。ですから、貴女が母に申し訳が立たないなんぞと嘆く必要は欠片ったりともありません。」
そう、この一見するといいとこ僕の姉ぐらいにしか見えない(外見20歳前後)この女性は、僕の亡き母の特に親しかったという友人で、更に不条理極まりないことに学校の部活の《先輩》だったそうなのである。(いや、元々家同士の付き合いはあったらしいのだが)
この《常識の限界に挑戦した若作り》の一点においても、その侮れなさが測れるというものだ。
(つまり、先ほどの《ルリルリ》とは、僕の今は亡き母《如月瑠璃》のことなのである)
「もう(プウッ)。本当にスイちゃんてば、可愛くなくなっちゃったんだから。ちっさい時はあんなに素直だったのに。これも、ルリルリがいなくなった後に、ハニーちゃんがちゃんと育児をしないで、あんな超合金ニューZ頭の糞爺に預けちゃうからだね。オマケに二人揃って育児の途中でトンズラこくなんて。ぜーったいに許さないんだから。ハニーちゃんも超合金頑固頭爺も、今度会ったら目にモノみせてやるもんね。己が所業を後悔させてやるもん。」
育児の途中って・・・・・・・・・(汗)。
言っておきますが、父が音信不通になったのは僕が中学2年の時で、お祖父様が行方不明になられたのは高校一年生にはなっていた筈です。
第一、そのお祖父様が行方不明になられた時に『骨董品屋なんて、定額収入があるわけじゃないのに、ましてや一人でなんて、生活費とかはどうするの?。ちゃんと定額収入のツテは確保しておかなきゃ駄目なんだかんね。』とのたまわって、僕にあんな《内職》を押し付けたのは誰だと思ってるんですか?!。
(ちなみに、ハニーちゃんとは僕の父のことで、超合金頭の糞爺とはお祖父様のことである。僕の知る限り、父はともかくお祖父様をこんな呼び方をできる度胸の持ち主は、この人だけだ)
が、ここで反論しても無駄なことはやっぱり思い知っているので、さっさと会話を進めよう。
「・・・はいはい。煮るなり焼くなり貴女の好きにすればいいでしょう。それで、今日はどんなご用件なんですか?。暫くの間はできるだけ直接此処には来ないで下さいとよーっく御願いしておいたハズですが・・・・。」
今年に入ってからの《突発的異常事態》(特に鬼道衆だな)への巻き添えの恐れは言うに及ばず、ここ(店)でこの人と他の仲間が鉢合わせでもしようものなら、本当に目も当てられない事態になってしまう。(雨紋・アランなんぞとなんて、言語道断だ!。橘さんの時で心底コリたぞ、僕は)
ましてや、橘さんや雛乃さんの《あの趣味》が判明した以上、ヘタをすると芋蔓式に僕の《内職》までバレる可能性が・・・・・・・(汗)。
「えへっ♪。ちゃんと《お仕事》の話だよん。こないだみたいに極道なマネしなですむように、先に次の新シリーズの設定書とプロットとラフと資料を持ってきたの。」
言ってるそばから、《内職》の話になっている。(汗)
「その程度なら、FAXかメールで充分だと思うんですが。わざわざ貴女が持参する必要が何処にあるっていうんですか!!。」
そもそも、こっちの仕事に必要だからといって、馬鹿高い普通紙カラーFAXだのデスクトップパソコン(レーザーカラープリンター付)だのを僕に購入させたのは、この人なのだ。
「えーっと・・・・・、だって最近スイちゃんと全然連絡とれなかったんだもん。携帯に留守電入れても、ろくすっぽお返事くれなかったじゃない。メールもお返事あんまりくんないしさ。」
それは、できるだけ貴女と関わりたく無かったからです、とは流石に面と向かっては言えないな。
(どんな反撃がくるのかが恐ろしい)
「それは忙しかったからに決まっているでしょう(キッパリ)。僕の本業はあくまで《学生》、本分は学業なんです。そして、副業が《古物商》。あいにくと、それ以外の、特に《内職》関係に割ける時間は限られているんですよ。」
我ながら空々しい言い分だとは思うが、真実をいう訳にはいかないのだ。他に言い様が無いのだから仕方が無い。
「スイちゃんってば嘘ばっかり。(プン)こないだ学校(王蘭)に聞いたスイちゃんの出席日数、今の所ギリギリだっていうじゃない。だいたい、東京一の忍者の本文が《学業》だなんて、誰が信じるの?。お店の売上だって、先月までで前年比300%アップ(更に上昇中)の状態のくせに。そんなのチャンチャラ可笑しい言い草だよ。」
あうううううううう(汗)。出席日数はともかく、なんで店の本当の売上までバレてるんだ?!。
龍麻達相手の商売は、こっそりと別帳簿にしてあって、来年の確定申告の時には不審を招かないように調整しようと思っていたのに・・・・・・。(脱税というなかれ。いくらなんでも不審過ぎるんだ、物の質といい量といい、あの《旧校舎》関連の売上は)
「そ、それは・・・・・・・・・。(滝汗)」
「まあ、とりあえず元気そうなのは確認できたからその辺は不問にしといたあげる。スイちゃんにもプライベートってもんはあるし、なんてったって思春期だもんね。イロイロとあるんだろうから。(ニヤッ)・・・・・・それにしても、うちのみゃーちゃんといい、すいちゃんといい、最近の高校生って挙動不審になるのが流行りなのかなあ??。」
ん?!!。何だろう?、今の意味ありげな笑いは(怖)。
それに、挙動不審って・・・・??。確か、この人には二人の娘がいて、一人は僕と同い年だというのは知っているが。そっちも《事件》がらみじゃないといいのだが・・・・・。
「それで・・・・・・。」
「ああ、本題ね。次の新シリーズも挿絵は《樹崎みどり》でいくように編集部に確約とっといたから。この資料によーっく目を通しておいて欲しいの。多分5巻はいくと思うんだ。それでねえ、主人公のカップルなんだけど・・・・・・・。」
ああああ、頼むからそのペンネームを大きな声で言わないで欲しい。(涙)
これなんだ、僕の脛の傷は。
絶対に他人に言える訳がない、僕の大きな声で言えない《内職》が、実は《少女向け恋愛小説の挿絵描き》だなんて(激汗)。(そう、つまりあの時橘さんが持っていた本の表紙&挿絵を描いていたのは僕だという訳なんだ)
オマケに、何故だか人気が出てしまって、テレカだのなんだのキャラクターグッズの書き下ろしまでするハメになっているんだ。(実は、ゲーム化した作品のキャラデザの話もきたが、キッパリと断った。これ以上あの業界に関わってたまるか!!)
くうううううううう(涙)。僕にたまたま絵心がなければ、そして、あのお祖父様が失踪された時に預金残高が3万をきっていなけでば、こんな事にはならなかったのに・・・・・・。
(これがバレたら、他の仲間達になんと言われることか。そんなことは絶対にゴメンだ!)

だが、そんな僕の崖っぷちな心情に頓着することなく、目の前の女性から更なる精神攻撃爆弾が投下されてきた。本当に、この人は侮れない人である。

「この二人、《男装の麗人》の主人公《リンちゃん》と、その恋人になる予定の《晃一くん》なんだけどね。この二人をモデルに描いて欲しいの。これだけは譲れないんだ。だって、ミオりんの理想なんだもん♪。」
 ペラリン☆
そうして、ニコりん☆と笑って僕の前に差し出された写真の人物は・・・・・・。
 ガッチャン★
あああ、しまったぁ。《猫》が・・・・・。これは結構気に入っていた大きさのヤツだったのに。
って、そんなこと気にしている場合か!!。
「な、な、な、な、な、な、なんなんですか、これはぁぁぁぁ?!!!。」
「え?、何って。この話の主人公のモデル達さんだよ。」
「モデルさん達じゃありません。何処から引っ張り出してきたんですか、この写真は!!!。」
そう、僕の前に差し出された写真に写っていた二人の姿は、選りにも選って、この三日間の僕の現実逃避の原因の蓬莱寺と龍麻、しかも、龍麻の方は《夜間・絶世の美女バージョン》の上に、やたらとエッチ臭い《イメクラ仕様メイド服》姿で蓬莱寺に抱きついたまま寝こけているという、危なさここに極まれりというべきヤバイ内容の写真だったのである。
「・・・・・・・・・・・・(ワナワナ)。」
「・・・え――っと、どしたの、スイちゃん??。」
おっ、おのれ、蓬莱寺(怒)。あんの常識知らずのドスケベ木刀赤毛脳天パー男が!!。
純真無垢な龍麻になんて事をさせてるんだ。今度会ったら絶対に殺す!。いや、今すぐに止めを刺しに行ってやる。《全技フルコース×10》を喰らわせて、その五体寸刻みの上で東京湾の魚の餌にしてくれるわ!!。
 がたっ★
「すいません、急用を思い出しました。詳しい話は後日伺います。僕は少々出かけてきますので。」
「ちょ、ちょっと待ってよ、スイちゃん?。」
 ガシッッ☆
「離して下さい。僕は行かないといけないんです。」
「駄目だもん。ちゃんと理由をお話してくれるまで、離さないもん。(ヒシッ)」

なんて僕達の遣り取りの所に、更に混乱を招き、そして認めたくない事実を増殖させる《来訪者》という名の爆弾が、連続投下されてきた。
本当に、一体僕が何をしたというのだろう(泣)。

 ガラッ☆
「こんにちは、如月君。駄目よ、ちゃんと学校に来ないと・・・・。」
「こんにちは、翡翠。こないだのお詫びに《鬼灯の葛きり》を作ってきたんだけど・・・・。」
「だから、ひーちゃん。アイツにワザワザ詫び入れなんてする必要はないんだって・・・。」
『ここまで来て往生際が悪いよ、京一。いいじゃん、京一の懐が痛むわけじゃないんだからさ。』

 ピタッ。・・・シ―――ン。・・・パラリ☆。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)×5。

「ちょ、ちょっと、如月君。その人は一体誰なのぉ!!!!!。(怒)」
た、橘さん。誤解だ!!!。たとえ縋り着かれているとはいえ、頼むから、選りによってこの人と僕の関係を邪推しないでくれぇぇぇぇ(焦)。
「あれ?!。深青お母さん、どうして此処に??。それに翡翠と???。って、うきゅきゅぅ〜(ポッ)。な、何で《あの時》の写真が此処にぃぃぃぃ??????。」
た、龍麻。君、やっぱりこの人と知り合いなのかい???。それに、その反応って・・・(汗)。
『み、深青さん?!。何で此処に??。って、うっそぉぉぉ!!。何で《あの時》の写真なんかがあるのさぁぁぁ??!!。』
タマくん、君まで・・・・・・・・・・。
「あれぇぇぇ?。みゃーちゃんにひーちゃんまで、どうしたのぉ?。新宿からこんな所まで???。それに、スイちゃんと知り合いなのぉ????。」
みゃーちゃんにひーちゃんって・・・・・・(汗)。
っとすると、蓬莱寺が・・・・・・・(激汗)。ちょ、ちょっと待って下さい。貴女のお子さんの《みゃーちゃん》は、たしか女の子のハズじゃあ・・・・・・(汗)。
「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、何でお袋がこんな所に居やがるんだよぉぉ??!!。
しかも、根性曲がりな守銭奴亀と・・・・・・(汗)。嘘だろぉぉぉぉぉ!!!!!(絶叫)。」
お、お、お、お、お、お、お、《お袋》ぉぉぉぉぉぉ????!!!!。
そんな馬鹿な!!!!。蓬莱寺、お前があの《ミヤちゃん》だっていうのか??!!。
「だああああああああああ!!!、い、一体何がどうなってるんだぁぁぁぁぁ!!(此方も絶叫)」
―――――――阿鼻叫喚☆


そうして、その後、極めつけ・僕の知る限りこれ以上はないと言うのしっちゃかめっちゃかの大騒ぎに収拾をつけたのは、やっぱり僕的に《侮れない一般人女性第一位》の旧姓《紫森深青》さん(現姓:蓬莱寺、実はこの時初めて知った)と、いち早く正気に戻った《侮れない一般人女性第二位》の橘朱日さんだった。(やっぱり僕は修行が足りません、お祖父様)


「うーん。スイちゃんてば本当にスミにおけないのねえ。こんな可愛い彼女つくってるなんて。」
「そんな・・・・・彼女だなんて(ポッ)。《まだ》友達なんです。って、すいません、志守先生。さっきは取り乱してしまって・・・・。それにしても、志守先生が蓬莱寺君のお母様で、如月君の後見人だったなんて・・・。酷いわ、如月君。こんな超絶にオイシイ話を黙ってるなんて。」
「しょうがないよ。うちのみゃーちゃんもスイちゃんも、あれで結構《照れ屋さん》なんだから。あっ、朱日ちゃん。志守先生なんて堅っ苦しい呼び方しないで欲しいの。ミオりんって呼んでね。でなきゃ、ひーちゃんみたいに、深青お母さんでもいいよ。スイちゃんの彼女なら、ミオりんの娘も同然だもん。」
「そんな・・・・・・いいんですか?。えーっと、じゃあ、深青お母様、と、とりあえず、これにサイン下さい♪。」
「OK、OK。これからもスイちゃんやみゃーちゃのことヨロシクね。うふ♪。今度朱日ちゃんもどっかのお話に出してあげるから。(ルン)」
「はい!!。有難うございます。」
あああああああああ(涙)。橘さんが懐柔されてる。(しかも、誤解が深まって伝染している)
駄目だ。あそこにはもう近づけない。
そうだ、聞かなかったことにしよう。見なかった。聞かなかった。南無阿弥陀仏。(チーン)

そして・・・・・・・。
「おい・・・・。」
「なんだ?、ミヤちゃん。」
あああああああああああ、おのれ、蓬莱寺!!。貴様の所為でまた認めたくない事実が量産されているじゃないか(泣)。この程度のイヤミは許されるはずだぞ。
「だあああああああ。その呼び方をひーちゃんの前ですんな!!。思い出したぞ、てめえこそ、《泣き虫毛虫のスイちゃん》だったじゃねえか!!!。」
「いうなぁぁぁ!、第一、そんな呼び方されるようなことを僕にしたのは、貴様だろうが!!。ええ、《顔と中身が不一致な、ピンクの良く似合うミヤちゃん》!!!。」
「だから、その呼び方はするなといってるだろうがぁぁぁ(怒)!!。」
そう、僕があの人の子供が二人とも娘だと思い込んでいた原因。
6歳の時に引き合わされた僕と同い年だというあの人の子供は、その当時、ピンク色のヒラヒラのワンピースを着て白いレースのリボンを髪に結んでいた姿で、たいそう愛らしい《少女》にしか見えなかったのである。
その日本人離れをした色彩(淡い色の赤毛と、これまた淡い琥珀色の瞳)もあいまって、当時の幼かった僕はその仏頂面をした子を《まるでフランス人形みたいな綺麗な子だなあ。笑えばもっと可愛いのに、勿体無い》と、たいそう感心して魅入っていた覚えがある。(今思えば、爆笑モノの甘ちゃんな考えだった)
もっとも、その子と遊ばされたその後の3日間で《外見と内面は必ずしも一致しない》という事実を徹底的に骨の髄まで思い知らされたものだが・・・・・・。
実際、その可愛らしい少女の外見を裏切るあまりのガサツさに、以降二度と会わずにすんでいたことを、天に感謝していたのだ。(いや、マジメな話、女性不審になるかと思ったぞ)
ふう、それにしても・・・・・・・如月翡翠、一生の不覚!!。いくら幼き日の過ちとはいえ、こともあろうに、この蓬莱寺を可愛いなどと思っていたとは・・・・・・・・・。(汗)

『え――っと、つまり、京一と翡翠って、実は《幼馴染み》だったりするわけ?。』
「だああああああああ、その言い方はやめんか、このデバガメのタマっころ!!。たかが6歳の時に、ちょろっと遊び相手をさせられただけだ。しかもお袋に無理やりにだ。」
「そうだよ、タマ君。ほんの三日間。それも延べ時間にしても12時間程度だ。そんなのを《幼馴染み》なんぞといってしまったら、本当の《幼馴染み》に申し訳がたたないよ。」
第一、あれを遊んだとは言わないぞ。どっちかっていうと、僕が一方的に苛めらていたような気がする。(なんか、思い出したらムカムカしてきてしまった)
『・・・・・・じゃあ、百歩譲って幼馴染みじゃないとしても、お互い実は《初恋の人》なんてのは、可能性あったりする?。(クスッ)』
「「んなわけあるかぁぁぁぁ!!!!。」」
『なにも、そんな二人同時にハモって否定しなくても・・・・・。ほんの冗談なのに。』
「「そんな寒い冗談、二度というなぁぁぁぁ!!!。」」
『またハモってる。実は結構二人とも気が合ってるんじゃないの。』
「この根性曲がりの腹黒ビー玉野郎。これ以上フザケタことをほざいてると、お袋にてめえの事をバラすからな。アニメ化が嫌なら、今すぐその余計な口を閉じて引っ込んでろ!!。」
『うっっ・・・・(汗)。ちょっとしたお茶目なのに。京一の意地悪!!。』
なんだ、流石にタマ君のことはあの人にはバラしてないのか。(賢明な判断だ)

って、さっきからず―――っと黙ったままの龍麻はというと・・・・・?。
「・・・・・・・・・・・・。」
なっ、何でそんな目で僕を見つめてくるんだい?。なんかその視線って・・・・・・(汗)
「え――っと、ひーちゃん?。」
「龍麻??。」
「・・・・・・・・・(ボソッ)ずるい。」
「「へっ?!!」」
あああ、またハモってしまった。って、ずるい???。
「さっきから二人でばっかり昔の話をしてて、オレ、仲間外れだ。それに、翡翠ばっかり京一の可愛いところを知ってるなんて、すっごくずるい。オレが京一の【相棒】なのに・・・・・・。」
「「・・・・・・・・(汗)。」」
「オレも見たかったのに、《ピンクの良く似合う小さくて可愛い京一》を・・・・・・。」
わぁぁぁぁぁぁぁぁ、た、龍麻。頼むから、そこで《じーっと見つめちゃうぞ攻撃》なんかしてこないでくれ!!。(懇願)
こ、これは・・・・・・・つまり、僕は龍麻に嫉妬されてるってことなのかい?。
はううううううううう(涙)。なにが楽しゅうて、選りにも選って自分の現在の想い人から、最大の恋敵との間を嫉妬されなちゃならないんだぁぁぁぁぁ。(号泣)
酷い、酷すぎるぅぅぅぅぅぅ。(滂沱)


今日は一体なんていう日なんだ。(《内職》はバレるは、思い出したくも無いことを思い出させられるは、知りたくも無かった事実を突きつけられるは、止めに、想い人からあらぬ嫉妬の視線を浴びせられるは・・・・・)
ぼ、僕が本当に何をしたって言うんだ!!!!。


認めたくない、断じて認めたくないぞ、今日の日の出来事は。


ちなみに、龍麻のあらぬ嫉妬については、蓬莱寺と僕の必死の懇願を振り切った、
「そうだよね。ひーちゃんも知ってなきゃ不公平だよね。んじゃあ、これ、プレゼント。大丈夫、いっぱい焼き増ししてあるから。あっ、丁度いいや、朱日ちゃんにもあげとくね。はい♪。」
という、彼の人からの贈呈品《ピンクのワンピースを着たミヤコちゃん6歳と白地に朝顔模様の浴衣姿のスイちゃん6歳の記念写真》によって一応の決着を見た。
だうううううううううう(涙)。なんでこんな事に・・・・・・・・。(あの写真だと、蓬莱寺もさることながら、僕も女の子にしか見えないのだ)
しかも、例の写真についても・・・・。
「ああ、あのひーちゃんの《メイドさん》はね。ミオりんが御願いして着て貰ったの。どう?。すんごく良く似合ってるでしょ♪。」
という彼のご婦人の悪気なんて欠片ッ足りともありませんという言葉と、
「あれ、こないだ京一んちにおさんどんに通った時の《作業服》なんだ。京一も深青さんも良く似合うって誉めてくれたんだけど。翡翠はどう思った?。あんまり人様には見せられないみっともない格好ってわけじゃないよな?。」
という、当の本人の至って無邪気な言葉に、最早、蓬莱寺に止めを刺す気力すらも無くなってしまったという、情けない結果に終わってしまった。
(その写真はとりあえず手元に確保しておいたが。はああああ。僕は惰弱者です、お祖父様)


 ふ―――う、世の中とは、なんと認めたくない事実に満ちていることか・・・・・(溜息)。
一体僕の【宿星】って、どうなっているんだろう???。



 ―――――とりあえず、えんど☆


* ***********************************


――――――――――そして、オマケの××years after


 ドタドタドタドタ☆
「たっだいまぁぁぁ♪、お父様。」
「こら!!(怒)、水晶[みあき]。仮にも、飛水家の者が騒々しいぞ。」
「いやあねえ、お父様ったら。相変わらず眉間に皺をよせて。第一、この間『家の中で気配を消してると、何か他人行儀な気がする』っておっしゃったのは、お父様でしょ。」
「うっっ・・・・・・・(汗)。それはそれ、これはこれだ。気配を消すなとは行ったが、騒々しく家の中を歩けとはいっていないぞ。」
「は―――い☆。次回からは気をつけま――す。」
はああああああ。我が子ながら、この娘のやたらと強気でマイペースなところは、一体誰に似たんだろう?。って、母親の方だろうなあ。僕の方ではないのは間違いないから。
「お母様は??。」
「今日は地裁の方だ。」
「ふーん。敏腕弁護士様は今日も多忙ってわけね。じゃあ、今夜もお父様が食事当番ね。」
「たまには《私が代わりに作るわね♪》という言葉はでてこないのかい?。僕の娘からは。」
「だって、お父様の作る方が美味しいんですもの。お店の方は今は暇なんだから問題ないでしょ。それに、私、今日はこれからヒカルやリン達と縁日に行くんですもの。」
「花園神社のかい??。」
「そう。リンによれば、今日の縁日には、涼麻様達も来るって行ってたから、一発頑張らなきゃ。恋は押して押して強気に出た方が勝つってお母様も言ってたし。翠乃姉様には負けないわ!!。」
そうだろうねえ。その強気の押しの結果、お前がここにいるんだから・・・・。
それにしても、涼麻[スズマ]くんかい・・・・。
いや、確かにあの外見はともかく中身は父親そっくりのあそこの長男坊に比べたら、外見も中身も欠片ったりとも父親に似ていないたいそう出来の良い次男坊くんは、僕もお気に入りではあるんだが・・・・・・。あの、唯一の欠点《木刀の常時携帯癖》さえなければなあ。
でも、お前の恋路は前途多難だよ。父親の目からみても、現時点では織部さんちの長女の翠乃[みどりの]さんの方が部がありそうだから。
「まあ、頑張りたまえ。お父さんはお前を応援しているよ。」
「うん、水晶、飛水流のくのいちの名にかけて頑張る♪。いざとなったら、編みタイツだって履いちゃうもわ。くのいちパワーで涼麻様のハートを悩殺よ。」
・・・・・・・(涙)。頼むから、それだけは止めておいてくれないかい。そんなことに《飛水流のくのいちパワー》を使われたら、もし御先祖様のくのいちが知ったら、情けなさの余り泣き伏してしまいそうだから。
第一、 お前の魅力なら、生足だって充分イケルよ。(←親馬鹿)
「編みタイツの件はおいておいて(汗)。それで、お前がそんな目でお父さんを見ると言うことは、何か他にあるんだろう?。」
「うん。さっすが、お父様。縁日に行くから、お小遣い頂戴っていうのは、駄目?。」
・・・・・・・。ここで駄目だとキッパリ言えないあたり、僕も堕落したものだなあ。
「(パシッ)ほら。行っておいで。だが、8時までには帰ってくるんだよ。」
「うふ♪。だからお父様って好き。じゃあ、いってきまーす。」
ドタドタドタドタ☆
あの娘は、言ってるそばから・・・・・・・(汗)。
そうして、僕は、2時間後に帰ってくる妻の為に食事の支度をすべく、席を立った。


 あれから、イロイロ(そりゃもう、イロイロ)なことがあったが、結局、どんな事実にも開き直って幸せになちゃったもんの勝ちというのが、僕の今までの人生で思い知った教訓なのは間違いない事実だったりする。
でなきゃ、やってられなかったのも事実だからなあ。

――――はあ(溜息)





あ――――はははは(汗)。なんかトンでもない無い内容のオマケSSになってますねえ。おまけに、オマケSSにあるまじきくらいに長いし。
まあ、あの御方が出て来ると文章が無限増殖するのはいつもことだし。
ああ、今回の更なるオマケ部分についてのご質問・苦情等は、メールにて御願いします。反則ですが、峠之的には結構気に入ってるんですよ、水晶ちゃん。(汗)



→次のSSへ続きます。



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