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今回は、本来なら番外編でもありません。単なる後日談です(汗)。
でも、ネタが出て来ちゃったんで書いちゃってます。んで、寂しいんで番外編扱いにしちゃいました。(←おい)
しかも、内容はとんでもない馬鹿話(汗)。
いいのか、私?!。皆さんに見捨てられるぞ!!。
って、また長いじゃないか(ごめんなさい)。
もうしわけないなんですが、皆さん最後まで読んでやって下さい。どうぞお願いします。(平身低頭)
うちの女主人公は、緋月龍那(ひーちゃん)といいます。
但し、世間様と仲間内(京一と舞子ちゃんは除く。だったんですが、前回で劉と霧島にもバレちゃいました)には【龍麻】という男で通してます。
おまけに、特殊事情(夜間限定の女でレンズマンでミニチュアサイズの双子の弟【龍麻】通称:タマを飼っている)持ち。さらに本人女の自覚皆無というこまったちゃんです。
やっとこの間、(ほんのちょっぴり)恋愛感情を自覚しました。
んで、自覚したとたん《あれ》かい!!。あの爆裂娘は…………(汗)。
頑張れ、京一!。頑張れ、タマ!。まだまだ相手は手強いぞ。(笑)
では、本文へどうぞ。
* 龍那 《一日後》
授業が終わって、放課後。オレが、目的の桜ヶ丘病院まで来たら、丁度、舞子ちゃんが病院から出てきたところだった。
「舞子ちゃーん♪。」
「あっ!、ダーリンだぁ♪。今日はどうしたのぉ。なんか、すっごくご機嫌だねぇ。」
「えへへ。そうかなぁ?。」
「うん。すっごく《幸せぇ》って顔してるよぉ。ダーリンがぁ、そんなに幸せなお顔してるとぉ、舞子まで幸せな気分になれるよぉ。何か良い事でもあったのぉ?。」
「ふにゅ。うん、昨日すっごく良い事がいっぱいあったんだ。」
事件はきちんと解決して、憑依師のヤツはブチのめしてやれたし、ユエと知り合えて仲良くなれたし、京一とちゃんと仲直りできたし、オマケに京一にあんな《気持ちのイイ事》して貰ったし、更には京一にまた可愛いリボンプレゼントしてもらったし。(パフェを一緒に食べられなかったのはちょっと惜しかったけどさ)
もう、オレってばこれ以上はないっていうくらい幸せ気分なんだよな。
『いいよねぇ。周りの苦労も知らない《超鈍感お気楽娘》はさ。』
こぉら、タマ。誰が鈍感だ。しかも、また《娘》って言ったな。(怒)
だいたい、苦労って言ったって今回お前が何をしたっていうんだ。今回いろいろと頑張ったのは、ユエと諸羽と京一じゃないか。それに、諸羽に気配りを頼んでくれた舞子ちゃんとな。
お前なんか、オレに嘘教えたり、肝心な事を忘れてたりして、全然役立たずだったくせに。
よく考えたら、オレが京一に変な誤解してたのだって元はと言えばお前の所為じゃないか。(京一に「相棒の俺よりタマを信用するのか?。」って拗ねられちゃったんだぞ)
『うっっ…………(汗)。』
ほーら、反論できないだろ。可愛げのない能無し愚弟は、引っ込んでろ!!。
「それでね、その内の半分は舞子ちゃんのおかげだから、お礼を言いに来たんだ。だって、諸羽にオレ達のこと頼んでくれたの舞子ちゃんだろ。」
「ダーリン………。」
なんせ、舞子ちゃんが諸羽にオレ達の喧嘩の仲裁を頼んでくれたから、諸羽が(さやかちゃんにまで手伝ってもらって)皆に嘘までついてオレ達を二人っきりにしてくれたんだ。だから、オレ達ちゃんと話しあって誤解も解いて、(あんな気持ちの良い)やりたい事もやれたわけだし。
でなきゃ、オレ、まだ今頃もタマのイヤミを信じてイジケてたぞ、きっと。
「じゃあ、ダーリン。京一くんと仲直りできたんだねぇ。」
「うん♪、諸羽のおかげでね。それにさ、この間の舞子ちゃんのアドバイス、すっごくタメになったんだよ。舞子ちゃんの言った通りだったんだ。」
ちゃんと、お互いにやりたいことを一つ一つ確認してやっていけば、変な気持ちにならないっていうのは本当だった。
だって、京一に《あれ》をやってもらったら変な気持ちにならなくなったんだ。とっても安心できたし。(また変な気持ちになったり、胸がチクチクしてきたら、《あれ》をやって欲しいって頼んでみればいいよな。それとも、頑張って今度はオレからやった方がイイのかなあ)
それに、池袋からの帰り道に聞いてみたら《スリスリ》も《髪の毛撫で撫で》も《キス》もイキナリじゃなければ好きなだけやってもいい、って言ってくれたし。オレに触られるのって、全然イヤじゃないって言ってくれたしさ。(やっぱり、京一って優しいよな)
勝手に決め付けないで、きちんと聞いてみるっていうの大事だったんだよなぁ。
『言っとくけど、姉さん。だからって、人前でやたらとやったら駄目なんだかんね。』
んな事わかってるよ。オレみたいな半端者に平気でそんなことさせてるって広まったら、《オネーチャン命》の京一の外聞に関わるっていうんだろ。
昨日も諸羽に《ホモ》呼ばわりされた時、すごーく怒ってたもんなぁ。(ところで、《ホモ》ってどういう意味なんだろう?)
「じゃあ、ダーリンもう変な気持ちにならなくてすむのぉ?。もう、京一くんに嫌われるって怖がったりしないですむのぉ?」
「うん。京一、《撫で撫で》も《スリスリ》も全然OKだって。《キス》もいっぱいしたし。変な気持ちになったらどうすれば一番いいのかも解ったし。オレもう全然平気だよ♪。」
うみゅ♪。そうだよなぁ。あんなに《キス》してくれるんだから、京一はオレのこと嫌いじゃないってことだよな。少なくとも、他のみんなの中では特別だって思ってもいいんだよな。
もしかしたら、オレが京一にとっても《みんなの中で一番好き》って自惚れてもいいのかなぁ?。ダメかなぁ?。(うきゅ、何かすっごく胸がドキドキする。)
『ちょっ、ちょっと、姉さん(汗)。』
「わーい♪。すごぉーい。いっぱい《キス》したなんて、ダーリンと京一くん、もう《ラブラブ》だねぇ。ダーリンがそんなに嬉しそうだと、舞子も嬉しいよぉ。」
ふみゅっ。………《ラブラブ》?!。………《ラブラブ》??!!。京一とオレが《ラブラブ》。
そっかぁ、こういうのを《ラブラブ》っていうのかぁ。それ、なんかすっごく嬉しい響き♪。
「そっかぁ、《ラブラブ》かぁ………(ウットリ)。」
「そうだよぉ、《ラブラブ》だよぉ。素敵だよねぇ、ダーリン♪。」
『誰か、この二人を止めてやってよぉぉぉ……(涙)。舞子ちゃーん、お願いだからうちの《爆裂恋愛オンチ無自覚脳天パー世間知らず迷惑娘》の姉さんを調子に乗せないでぇぇぇ〜。(泣)』
「やかましい!!。さっきからグダグダとうるさいぞ。黙ってろって言ったろ、この石っころ!!!。」
折角の人の良い気分に水を差すな!!。
「わーい♪。タマちゃんも泣くほど嬉しいんだねぇ。二人のことを心配してたんだもんねぇ。本当にお姉さん思いの良い子だよねぇ、タマちゃんはぁ。」
『だうううう――――ぅぅぅ(号泣)。違うよぉぉぉぉ。』
「照れることないよぉ、タマちゃん。舞子、ちゃぁーんとわかってるからぁ。」
『だぁーかぁーらぁー………、違うって言ってるのにぃぃぃぃ…………シクシク(泣)』
舞子ちゃん、そんな事言って、この役立たずの愚弟を調子に乗せちゃだめだよ。
第一、《良い子》って言ったって、タマは(オレと双子だから)舞子ちゃんより1歳年上なんだから。
タマ、お前もそのまま大人しく引っ込んでろ!!。
「だからさ、これオレからの精一杯のお礼なんだけど食べてくれる?。昨日の夜に慌てて作った間に合わせなんで、申し訳ないんだけどさ。」
また、お菓子ってのも何なんなけども。まあ、無いよりマシだよなあ。
「えぇっ、またダーリンの手作りぃ。今度はなあにぃ、舞子、何でも嬉しいよぉ。」
「えへっ♪、良かった。今日はドーナッツだよ。いろいろあるから全部食べてね。」
今回は油で揚げた《餡ドーナッツ》。但し、中身はアンコだけじゃ芸がないので、自家製のイチゴジャムと林檎ジャム、それにチョコカスタードとバナナカスタードとにそれぞれ中身をかえてある。ちゃんと生クリームと黄桃で飾付もしてあるし。
『うわっ、またゲロ甘なものを…………(汗)。』
「わーい。ダーリンありがとう。」
「えへへ♪。」
それにしても、やっぱ美味しいお菓子作るのにはオーブンレンジが欲しいよなぁ。(電子レンジとガスコンロじゃやっぱり限界がある)うーん…………。
あっ!、そういえば、京一ん家の台所って、結構立派なオーブンレンジがあったよなぁ。あれ、たまにでもいいから使わせてもらえないかなぁ?。駄目かなぁ?。ちょっとズーズーしいかなぁ…………?。今度、京一から深青お母さんに頼んで貰おうかなぁ。
う――ん、そうしてみよ。何事も言ってみるのは大切だもんな。(ダメで元々だもん。)
「舞子ぉ―――――ぉぉ!!、遅れてゴメン。って、あら、龍麻じゃない。」
「龍麻サン?!。」
「あっ、亜里沙ちゃんだぁ。大丈夫だよぉ。」
「亜里沙ちゃん?!。それに、雷人?!。」
あれ、もしかして舞子ちゃん、二人と待ち合わせしてたのかなぁ。
なら、引き止めて悪い事しちゃったのかな?。
「ゴメンね、舞子。この感電馬鹿が遅れてくるから。って、ところで、龍麻は今日は如何したの?、こんな所で。体の具合でも悪いワケ?。」
「まさか。違うよ、亜里沙ちゃん。オレは舞子ちゃんにさし入れに来たんだよ。ちょっとしたお礼にね。亜里沙ちゃんこそ、舞子ちゃんや雷人とどっか行くのか?。」
って、聞いちゃってからシマッタと思った。このメンバーなら行く所なんて決まってる。
「やあねぇ、龍麻ったら、今更。いつものカラオケに決まってるじゃないの。今日は後からアランと雪乃と雛乃も来るわよ。」
そういって、亜里沙は雷人の方を意味ありげにチラリと見る。うにゅ??(何だ?)
「そっ、そうなんですよ(汗)、龍麻サン。あっ、龍麻サンも今から一緒にどうですか?。きっと雪乃サン達も大歓迎ですよ。」
「そうよ、龍麻。今日こそ一緒に来なさいよ。今日はあの《バカ》はいないんでしょ。」
「あっ、亜里沙ちゃん、あのねぇ、ダーリンはねぇ………(汗)。」
「なによ、舞子だって龍麻がいた方が嬉しいでしょ。」
「そうだよなぁ。オレ様だって龍麻サンの歌って是非とも一回は聴いてみたいんすけど。」
うっ(汗)、あのバカって、やっぱ京一のことだよなぁ。うーん、流石のオレでもちょっと反論できない。
亜里沙ちゃんと雷人は期待いっぱいの懇願の目でオレを見ている。
歌、歌ねえ。うみゅ、困ったなあ。もうすぐ、日が沈むし。(最近、日暮れが早いからなぁ)。どうしよう????(汗)。
(!)あっ、そういえばそーだ。
「ごめん、亜里沙ちゃん、雷人。やっぱ、オレみんなとカラオケは行けないよ。」
「何でよ?。別に今から急用があるって訳でもないんでしょ。だいたい、どうしていつもカラオケの誘いだけは駄目なのよ。」
「うーん、この間までは別の理由だったんだけど………。今回からは約束したからなんだ、京一と。」
「約束ぅぅ??、あのバカと、何をよ!!」
オレは、できるだけハッキリと亜里沙ちゃん達に向かって言った。
「うん。オレが歌うのは京一だけにって…………。京一の前だけで歌ってればいいって。だから、申し訳ないんだけどカラオケ行ってみんなの前で歌う訳にはいかないんだ。」
ピシッ☆
へ?!。あれ?!!
亜里沙ちゃんも雷人も何で固まっちゃってるんだろう?。オレ、そんなに変なこと言ったのかなぁ??。ちゃんと、正直に言ったのに。
『ねっ、姉さん(焦)。いきなり何てコト言うのさ。相手を見てモノを言ってよ!。』
だって、いつもみたいに[京一の補習に付き合って待っててやる]とか[京一のレポートを手伝う]とかよりも京一の外聞も良いと思うんだけどなぁ。
『どこが外聞に良いんだよ。外聞踏みつけにしてるの間違いでしょーが(怒)。こんなの広まったら、またぞろ、京一の命が縮むよ。』
何でだよぉ、《約束した》って言っただけだろ。タマ、お前こそ何で変なこと言うんだ。
「たっ、たっ、たっ、龍麻サン(汗)。何で、そんなバカバカしい約束をしたんですか?!!。」
あっ、復活した。でも雷人、お前ドモってるぞ。
第一、バカバカしいことなんかじゃないんだからな。京一、あの時(珍しく)すっごく真面目な顔してたんだから。
「そっ、そうよ、龍麻(汗)。何で龍麻が京一とそんな約束する必要があった訳ぇ。」
「えっ、だって…………。」
『わ――――――――――っっっっ!!!!、駄目だ、姉さん。それ以上は………。』
うるさいぞ、タマ。引っ込んでろって言ったろ!!。
「………オレと京一は《ラブラブ》だから。」(キッパリ)
ビキッッ★
あれれぇ〜〜。今度は二人とも石化しちゃったみたいだぞ。
おっかしいなぁ、此処は【旧校舎】じゃないんだけど…………??。(まあ、舞子ちゃんいるから問題ないけどさ)
『ああああ―――――――ぁぁぁぁっっっっ(涙)。遅かったぁぁ―――――――ぁぁぁ。』
何だよ、タマ。そんなうめくような声だして。オレ、そんなに変なこと言ったか?。
『ねぇ〜〜え〜〜さぁ〜〜ん〜〜(油汗)。お願いだから、これ以上他人の前でアホなこと言って、京一の外聞を踏みつけにするのはやめてよぉぉぉぉ(泣)。姉さんが考え無しなことを言う度に、京一の寿命が縮んでいくんだから……………(滝汗)。』
むぅ。ムカっっ☆。今のの何処が考え無しでアホな事なんだよ。
「ねっ、舞子ちゃん♪。オレと京一って《ラブラブ》なんだよね?。」
「うん、そうだよぉ。舞子とぉ亜里沙ちゃんも《ラブラブ》なんだけどぉ、ダーリンと京一くんには負けちゃうよぉ。《新宿一のラブラブ》だよぉ♪。」
ほら、みろ。舞子ちゃんがこう言ってるじゃないか。(うきゅぅ、《新宿一のラブラブ》だって。すっごく幸せな感じ。なんか、ほっぺがホカホカしてきた)
もう、京一のことに関しては、タマの言うことなんて絶対・絶対・ぜぇーったいに信じてなんかやんないんだからな。フンっ!。
『はうぅぅぅっ。違うのにぃ、違うのにぃ、違うのにぃぃ――――ぃぃ。(号泣)。』
勝手に泣いてろ!。この、不感症のビー玉愚弟!!。(って、京一が言ってた。)
「じゃあ、オレ、これから諸羽の所へ行くから。」
「霧島くんの所ぉ?。」
「うん、さやかちゃんにも会うんだ♪。」
二人にもちゃんとお礼をいっとかなきゃな。ちゃーんと二人の分のドーナッツ作ってあるし。
ちなみに、京一は一緒に行かない。だって、(諸羽はともかく)さやかちゃんは京一が嫌いだって言ってるから。
それに、なんかタマが『霧島君の方には、俺からキチンとお礼の品を送るようにしといたから、姉さんからはいいよ。』だって。(いつのまに?!。何を送ったんだか、一抹の不安はあるんだが・・・・・)
「それじゃあ、亜里沙ちゃん、雷人、それに舞子ちゃん。オレ、カラオケ付き合えなくて本当に申し訳ないんだけど、みんなで楽しんできてくれよな。アランや雪乃ちゃんや雛乃ちゃんにオレがヨロシク言ってたって、伝えといてくれ。」
「うん。舞子、わかったよぉ。ダーリンも霧島くんにヨロシクねぇ。」
「ありがとう、舞子ちゃん。じゃあ、亜里沙ちゃんも雷人もまた今度な。」
「「……………。」」
あれっ?!、まだ二人とも石化したまんまだ。大丈夫かなぁ。
「じゃあね♪。」
そう言って、オレは3人の前から走り出した。
なんか、お礼に来たのに。舞子ちゃんには、また良いことを教わっちゃったなあ。
《ラブラブ》かぁ…………。うきゅきゅぅ、心臓ドキドキするけど、なんかほんわか気分になれる言葉だなあ。今度、他のみんなにも言ってみよう。
『だぁーかぁーらーぁぁ、もうこれ以上犠牲者を増やすのはやめてよぉぉぉ(泣)。京一だって、今度こそ本当に他のみんなに殺されちゃうよぉぉぉ〜。』
うるさいぞ、タマ!!。それ以上訳のわかんないこと言ったら、実家の義母さんに「タマはオレの邪魔ばっかりしてます。」って言いつけてやるんだからな。
『るるるるるぅぅぅぅぅ。それだけは、やめてぇ〜〜〜。(涙)』
フンッ、だったら、いい加減に大人しくしてろ。
ちなみに、当然のことながら、オレはその後に起きたみんなの会話は聞き取れなかった。
「ちょっとぉぉ、舞子!!あんた、龍麻に一体何を吹き込んだのよ(怒)。」
「えーぇぇ。別にぃ、本当の事を言っただけだよぉ。」
「何処が本当のことなんだよ!。あんの木刀馬鹿赤毛野郎、今度こそオレ様が【雷神降臨乱舞】で止めを刺してやる。それと、如月サンにも報告だ!!。」
「【クィーンズ・ウィップ】の分も残しときなさいよ!!。」
「なんでぇ亜里沙ちゃん達ぃ、そんなに怒るのぉ?。」
「舞子ぉぉぉ、あんたねぇぇ(脱力)。」
* 醍醐 《二日後》
スパコーンッ☆
「こら、京一。人が折角付き合ってやってるのに寝るな!!。」
人気のない放課後の教室に、小気味良い音と啖呵がが響き渡る。
「だってよう、ひーちゃん。俺、もう限界。漢字なんてこれ以上見たくねえよぉ。」
「この、大馬鹿者!!。昨日の放課後、『ABCなんてもう嫌だ。日本語以外は見たくねえ』って言ってたのは、何処のどいつだ。」
「そりゃ、俺だけどよぉ………(シュン)。でも、ひーちゃん。漢字ばっかりの文章なんて、日本語じゃねえよ。中国語だよ。だから、これ(古文)だって俺が勉強なんかする必要ねえじゃねえか、俺は日本人なんだから…………。」
スパコーンッ×2☆
「すっとぼけたへ理屈をこねてるんじゃない!!。日本人であろうと無かろうと、学校の授業に関係あるか!!。だいたいなあ、《日本人が日本語だけ勉強する》なんて言ってたらユエやアランやマリィちゃんの立場はどうなる?!。とにかく、お前がそのプリントをさっさと終わらせないと帰れないんだから、たかがあと1/4くらい15分で終わらせろ!!。でないと、オレは醍醐と二人で先に帰るからな。」
「ひーちゃん、それ、酷えぜ。」
「(ギロリ)何か、文句あるのか?。」
「いっ、いえ何でもありません。(汗)」
「ははははっっ、本当にあいかわらずだな、京一は。いい加減に、少しは学習能力を身に付けた方がいいぞ。」
俺は、ようやく戻ってきた日常を感じて、安堵の笑い声をあげる。
「何だよ、タイショー。お前は余計なことを言ってなくていいんだよ。」
「………き・ょ・う・い・ち。シノゴノ言ってる暇があるのかぁ?。」
「(ハッ)はい、すいません。今やります。すぐやります。即効でやります。だからひーちゃん、置いてきぼりは勘弁してくれぇぇぇ(泣)。」
「よろしい。あと14分だからな、頑張れよ。その代わりちゃんと時間内に終わったら、オレがとんこつラーメン餃子付で奢ってやる。」
龍麻………お前、結局京一には甘いんだな。(桜井曰く「ひーちゃんは京一に《コー○ーコ○ナーのジャンボプリンに生クリームと蜂蜜をたっぷりかけたくらいに甘い》んだよ。」だそうだ。)
だいたい、さっきから京一の頭を叩いているのも丸めたノートで、音の割には痛くないハズだ。
京一の奴はといえば、案の定シャカリキになってプリントに取り組みだした。最初からそうやっていれば何の問題もなかったろうに。(溜息)
それにしても、二人ともすっかりいつも通りに戻っているな。本当によかった。あんな状態の二人を見ているのは、こっちも落着かなかったからな。
まあ、最初に《龍麻の泣き顔》なんていう凶悪なモノを目にして(いや、実際あの大きな蒼い瞳から涙をボロボロ零されて見つめられるのは、視覚と精神への暴力だ。何にもしてなくても自分がとんでもない悪党になった気分になるからな)桜井達に引き攣られてしまって京一にした事は、我ながら大人げなかったと思っているんだがなあ…………。
とにかく、事情も解らずにどん底まで落ち込みきっている二人を、見ているだけで何もしてやれなかった自分の情けなさを痛感したもんだ。
いや、一番情けなさが身に染みたのは《あの》霧島に詰め寄られた時だったんだが………(汗)。今思うと、あれが結構な精神的ダメージになってたんだな。(その前にもイロイロと累積してはいたが)我ながら修行が足りん。
「何だよ、醍醐。顔がニヤけてるぞ。そんなに、京一が必死に勉強してるのが楽しいのか?。」
「まさか、龍麻じゃあるまいし。俺はお前達が元どうりの鞘に収まっているが解って、安心しているんだよ。あれは、見ている俺も居心地が悪かったかったからな。」
「うっっ……………(汗)。あれは本当にオレの勝手な誤解だったから、京一にもみんなにも迷惑かけて悪かったと思ってるよ…………。」
なんだ、本当に京一の言った通り誤解だったのか。
処で、何で其処で龍麻が赤くなるんだ?。
「それなら良かったんだが。まあ、こっちのことは気にするな。終わり良ければ全て良しだ。」
「そう言ってくれると助かるよ。まあなんだ………、諸羽のおかげで誤解が解けたっていうのも、先輩としてチョット情けないんだけどさ。」
霧島のおかげ?!!。ということは、あの時霧島に二人が引っ張って行かれた後に、霧島が何かしたってことなのか?!。
なにか、背筋にゾクゾクくるのは何故なんだ(汗)。
「よっしゃぁ――――――ぁぁっっ、終わったぜ!!。13分フラットだ、ひーちゃん♪。」
「おっ、終わったのか?。何だ、早いじゃないか。できるんなら、最初っからそうやれよ。」
まったくだ。京一は元々、やればできるんだからな。
「だってよぉ、そうしたら、ひーちゃんの奢りはねえじゃねえか。というわけで、一分早かったんだから、何かオマケ付けてくれよな、ひーちゃん♪。」
京一、おまえなぁ………(怒)。そのお前に付き合ってやってる、俺達の立場はどうなるんだ?!。
「この大馬鹿者ぉぉぉ!。オレはいいが、付き合わされた醍醐に申し訳ないと思わないのか!!。…………って、まあ努力の結果は結果だからな。+αは認めてやる。何がいいんだ?。」
龍麻は京一を一喝してから、ふわりと京一の頭に手を置くと、その赤茶の髪の毛を撫で撫でしながら照れくさそうに微笑んで、京一に言葉を続ける。
「龍麻、お前…………(汗)。」
『オレはいいが』ってなあ、本当にお前は京一に甘すぎるぞ。(しかも、京一も。大の男が髪の毛を撫で撫でされて喜ぶな!)これに関しては、桜井達の拗ねたくなる気持ちも良く解る。
まあ、龍麻の京一への甘さも理由がない訳じゃないのは知っているんだが…………。
凶津の事件の時の少しだけ話してくれたんだが。なんでも、龍麻は東京に来る前、中学の時に、幼なじみだった親友と相当酷い喧嘩別れをしてしまったらしい。(「オレの方がアイツを裏切ったんだ。」と言っていたが)以来、こっちに転校して来るまで、只の友人といえるような人間でさえも殆どいなかったと言っていた。(二人ほど、少しだけ親しかった人間はいたらしい)
だからだろう、こっちでやっとできた《親友》の京一を心底大切にしていて、絶対に失いたくないと思っているようなのだ。(最も、最近その《親友》の域さえ出るような甘やかし方だと感じてしまうのは、俺の気の所為ろうか?)
今回のどん底の落ち込みっぷりも其処いら辺に原因があるらしく、その辺りの事情を知っている上に脛に傷を持つ俺としては、本当に此処3・4日間の龍麻を見ているは辛かったのだ。
「えっ?!、ひーちゃん、本当に俺のリクエスト聞いてくれんのか?。」
「一昨日奢れなかったのと《リボン》の代わりだ。男に二言はない!!(キッパリ)。但し、オレの出来る範囲内でだぞ。それから、変なこと言ったら【八雲】×3だ。以上、わかったらとっとと希望を言ってみろ。」
龍麻(汗)。そんなに京一を甘やかしてどうするんだ。(これ以上、この馬鹿を調子に乗せるな)だいたい、《リボン》の代わりってどういう意味なんだ?!。
「………(汗)。そんなたいしたことじゃねえよ。ただよ、もういっぺん《晩御飯もひーちゃんの手作りが食べたいなぁ》ってだけでさ。これくらいはダメか?。」
おい、京一。ラーメン奢って貰った上に晩飯もとは、ずーずーしいぞ。
それに『もういっぺん』とは、どういういことだ?!。って、おい、龍麻…………。
「なんだ、そんなことか。いいぞ、ラーメン食ったら買い物に付き合え。そんで、そのままオレの部屋へ食いに来ればいいだろう。オレに作れるモンなら何でも作ってやるから。ちゃんと深青お母さんにはオレん家で夕食を食べるって電話しておけよ。」
「へへ♪、やったぜ!!。了解。どうせお袋は、またぞろ《内職》に没頭中だ。俺のことなんて気にしちゃいねえよ。」
「ちょっ、ちょっ、ちょっとまて、龍麻!!。(焦)」
「ふにゅっ?!。何だ、醍醐?。」
《龍麻の家に手作りの晩御飯を食べに行く》だとぉぉ。
あの、真神の俺達はいうに及ばず、仲間内の誰一人として足を踏み入れさせたことのない龍麻のマンションの部屋、通称《魔界都市新宿の絶対不可侵聖域》(BY雨紋)にか?!。(マンションのエントランスの所で必ず追い返されるんだ、喩えマリィでも)
しかも、何でも好きなモノを作ってやるだと?!。
こんなことが美里や桜井や如月にバレてみろ(いや、他の人間でもたいした違いはないが)、一体どんな騒ぎになることか。当の京一はいうに及ばす、この件を看過した俺にまでトバッチリが来る事は間違いない。絶対に、この新宿に血の雨が降ることになるぞ!!。
「何だよ、タイショー。『俺も一緒に食わせろ!』って言うんなら却下だぞ。」
いや、それはそれで嬉しいかもしれんが………。(龍麻の料理は本当に美味いからなあ)
って、ちーがーうー。そんな馬鹿なことを考えている場合か、俺。
「この馬鹿者が!!。俺をズーズーしい貴様と一緒にするな。って、それより、一体どういう風の吹き回しだ?、龍麻。手作りの晩御飯を作ってやるのはともかく、こいつ(京一)をお前の家へ入れるなんて。今まで、あんなに『他人を自分の部屋に入れるのは生理的に受付けない。絶対に嫌だ!!。』って言っていたのはお前だぞ…………。」
これは、最早甘すぎるで済むようなレベルの問題じゃない。
しかも、そんなにあっさりと許可されたら、今まで門前払いをくらい続けた他の人間達の立場はどうなる?!。(俺もその一人か)
「あっ、それはもういいんだ。京一だけなら、家に来たって別に問題ないから。」
たぁーつぅーまぁー(汗)。京一だけならって………、おい…………。
「いや、しかし………、京一だけなら問題無いって…………お前なぁ…………。」
「シノゴノうるせえぞ!、醍醐。ひーちゃんが良いっつってんだんだから、お前がとやかく言うことじゃねえだろーが。」
京一、俺はお前の身を安じているんだぞ。(トバッチリを食うであろう俺の身もだが)
「しかし、他の奴等が納得しないだろう、京一だけなんて。一体何で京一だけ問題ないんだ?。」
「ああ、皆には申し訳ないけど、それはしょうがないんだ。だって………。」
『わぁ――――――っっ!!。駄目だぁ――――っ、それ以上はやめてぇぇ!!!。』
なんだ?!、空耳か?
「オレと京一は、《ラブラブ》だから。」(キッパリ)
ピシッッ☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)。
いっ、今、何かとんでもない事を聞いたような・・・。気の所為か?。気の所為だと思いたい。
だが、気の所為じゃないみたいだな。京一も其処で真っ赤になって固まってるから。
「………たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、龍麻。お前、今の冗談じゃないよな?。」
「なんだよ、醍醐。冗談なわけないだろ。オレ本気だよ。ちゃんと真面目に答えたのに。」
「いや、聴き慣れなれない言葉だったもんでな。ちょっと驚いたんだ。」
驚いたなんてもんじゃない。自分の耳に【螺旋掌】×5くらったかと思ったぞ。
だが、龍麻のこの表情を見る限り、心の底からそう思ってるのは間違いない。
一体、誰なんだ?!。純真無垢な龍麻に、こんな誤解煽りまくりのとんでもない単語を吹き込んだ奴は。断固として厳重注意だ!!。(あの様子を見る限り、京一の奴じゃあないらしい)
「そうなのか?。」
「…………ああ、そうだな。普通《親友》同士の間柄ではあまり使わない表現だ。龍麻は誰かにそう言われたのか?。」
頼むから、『霧島だ』なんて言ってくれるなよ。(あいつは《比翼の鳥・連理の枝》発言の前科があるからな)真面目で純真な後輩を信じられなくなるから。
「え―――っと、舞子ちゃん。オレと京一は《新宿一のラブラブ》だよって言ってくれたんだ。この表現、結構嬉しくて気に入ってるのになあ…………。」
たーかーみーざーわーぁぁ(汗)。お前、何てことをしてくれるんだ。(もっ、盲点だった。)
だが、高見沢じゃ他意が無さすぎて厳重注意なんぞできん。(アイツのことだ、きっと100%本気で言ってるぞ)下手をすれば、泣かれる。どうすればいいんだ????(汗)。
「…………ひっ、ひーちゃん。それはちょっと違うぞ。」
おっ、復活したか、京一。そうだ、当のお前が言えば龍麻も納得するはずだ。
「うきゅっ?!。何が違うんだ、京一。」
「たいした違いじゃねえから、今度高見沢に訂正しておいてくれよ。俺とひーちゃんは《新宿一のラブラブ》なんかじゃねえ…………。」
その調子だ、京一。誤った認識はキチンと訂正しておかないと、あらぬ誤解を量産するぞ。
こんな事態を放っておいたら、龍麻にもお前にもろくな事にはならん。
「俺達は《東京一のラブラブ》だ。」(キッパリ)
ビッキンッッ★
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)。
「あっ、そうなのかぁ。本当だ、言われてみると、何か《新宿一》より嬉しい感じ。」
「だろ、ひーちゃん♪。」
「さっすが、京一。こういう事は舞子ちゃんより詳しいよな。わかった。今度、舞子ちゃんに訂正頼んどくし、オレも次からちゃんと気を付けておくよ。」
「よっしゃ――――ぁぁ!!。っという訳で、このプリント提出してきちまうから、先に行って校門の所で待っててくれ。」
「あっ、職員室ならオレも一緒に行くよ。マリア先生にこのノート提出するから。」
「なんだ、それなら早く言ってくれよ。じゃ、行こうぜ。」
「うん。悪いけど、醍醐。先に行って、校門の所で待っててくれ。すぐに行くから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ボケッとしてねえで早く行けよ、タイショー。」
「じゃあ。」
そうして、二人は金縛ったままの俺を残し、教室から去っていった。
(頼むから、男二人で校内を手を繋いで歩かないでくれぇぇぇ)
『悪いねえ、醍醐。考えなしの《無自覚バカップル》で…………(溜息)。』
何か、また何処からか空耳が聞こえてくる。
ちなみに、その後京一はその日《龍麻の部屋へ手作り晩御飯を食べに行く》どころか、龍麻からの《とんこつラーメン餃子つきの奢り》をも享受することはできなかった。
昨日、(俺より)一足先に龍麻の《オレと京一はラブラブ》攻撃を受けた連中(それ以外も何か言われたらしいが)と、その報告を受けた《緋月龍麻お大事同盟》の幹部連による待ち伏せに校門でぶつかり、阿鼻叫喚の大騒ぎになってしまったのだ。(結局、俺の配慮も空しく、新宿に血の雨は降ってしまった。)
京一は(いつのまにレベルアップしていたのか)たった一人で、一歩も引かずにその事態を切り抜けたんだが、それに全精力を使い果たしてしまったのか、その後の予定を実行不可能な状態に追い込まれてしまった。
最後まで未練たらたらの様子だったので、あのまま大人しく引き下がったりはしないだろうが………。
ふう―――――――――――――――――――――――っっ。(溜息)
とりあえず、【四神方陣】と【不動禁仁宮陣】を阻止してやったのが、俺の二人への友情の証だと思ってくれ。
なにか、火怒呂に動物霊を憑依させられた時より頭が痛いぞ、俺は…………。
* 諸羽 《三日後》
「じゃあ、私のインタビューはこれでお終い。どうもありがとう、さやかちゃん。あとは楽しく皆でラーメンを食べましょ。」
「あっ、はい!。」
ああ、やっと遠野さんのインタビューが終わったかぁ。さやかちゃん、ホッとした顔してる。
元はと言えば、僕の所為だからなあ。ごめんね、さやかちゃん。
「もう、アン子はしつこいんだから。ラーメンが冷めちゃうだろ。ほら、さやかチャン、もう塩ラーメン出来てるよ。」
「うふふふ………。」
「ほら、諸羽も。ちゃんと終わるまで待ってたんだから、本当にお前は偉いぞ。こっちの餃子はオレの奢りだから、しっかり食べろ。お前は育ち盛りなんだからさ。」
「はい!。ありがとうございます、龍麻先輩!!。」
ああぁぁぁ(喜)、頭撫で撫でしていただいた。幸せだなぁ。本当に龍麻先輩って、超絶に綺麗なだけじゃなくて性格も良い方なんだよなぁ。
「ひーちゃん。お前、諸羽に甘すぎ。後輩ってもんは、もっとビシビシ鍛えてやらないといけねえんだぞ。」
「おい、京一。霧島も、お前にだけは『甘すぎる』なんて言われたくないだろう。」
「るせえよ!、醍醐。」
「何だよ、京一も餃子食べたいのか?。なら、最初にそう言えよ。」
「ひーちゃん。それ、ちょっと違うぜ。(汗)」
「うにゅ?!。違う??。」
うんうん。お二人が楽しそうにじゃれていらっしゃる。
嬉しいなあ。やっぱり先輩方はこうじゃなくっちゃ。本当に、この間龍麻先輩が言っていらっしゃった通りお二人とも《ラブラブ》だ。(これぞ《眼至福》♪、《眼至福》♪、ふふふっだなあ)
さーて、後は遠野さんにこっそりと《商談》を持ち掛けるだけなんだけど、………京一先輩方にバレないようにするには、どうしたらいいんだろう?。
う―――――――ん。(思案中)
この間の池袋の一件の後、その夜の内にタマさんの指定のメールアドレスに例の《丸秘》FDのデータのコピーを送っておいたら、その翌日の夜にはもう約束のモノが送付されてきた。(なんと、《当日着エクスプレス時間宅急便》で)
中身は、タマさんのお話の通りの《龍麻先輩の前の学校の制服姿の写真》の学ランバージョンとセーラー服バージョン。更に、なんと《龍麻先輩の和服姿》(ちゃんとした女物)という超豪華な追加まで付いていたという、出血大サービスな内容だった。(もう、滂沱の感涙もの)
暗緑色の学ラン姿はともかく(それだってやっぱり綺麗だが)、どうやら《本来の龍麻先輩の姿》であるらしいその非常識領域の美しさのセーラー服姿は(こちらは暗緑色の変形タイプ)、不機嫌そうな顔の写真なのに、見た僕をその場でたっぷり5分間金縛ってしまった程の艶麗さだったし。
流麗な文字で『先日は、当家の娘と息子が大変お世話になりました。些少ですがこちらは私の方からの御礼です。どうぞこれからも御協力のほど宜しくお願い申し上げます。』と書き添えられていた(何故か龍麻先輩のお母様かららしい)髪を結い上げて椿と鷺をあしらった藤色の小袖姿の写真の方に至っては、柔らかく微笑んでいる表情の所為もあって、奇跡のようなというか、魂が抜かれるようなというか、あまりの凄絶な美貌にさやかちゃんという《最愛の姫君》がいる僕ですら一瞬血迷いそうになってしまったいう、まさしく地上に具現した《夢幻天女》の如き代物だったんだ。(後から聞いたら、京一先輩は《俺の女神様》と呼んでいるそうだ。うんうん、納得。流石、京一先輩)
こんな、常識に喧嘩売ってるとしか思えない超絶無比の美貌じゃあ、(特殊事情を除いても)普段から【目晦ましの結界】で姿を誤魔化しているのは大正解。(しかも、スタイルも抜群なんだもんなあ)この他に比べるもとてない圧倒的美貌を目にしても、いっかな動じることのない京一先輩や劉さんを改めて尊敬しちゃいましたよ、僕は。本当にマジで。(僕は普段見えないもんなあ)
そうして、その麗し過ぎる《至福の写真》をたっぷりと堪能し終わった後に僕が抱いた望みとは(野望とも言うなあ)、《この素晴らしい龍麻先輩の着物姿の横に、是非とも京一先輩の凛々しい剣道着姿を並べたい》という、僕的には至極当たり前のモノだった。
ああ、重度の《京一先輩&龍麻先輩奇跡コンビ症候群》たる僕が、そんなささやかな望みを抱いたとて、一体誰が責められよう。いや、誰に責められたって知ったこっちゃない。邪魔するモノは、何であれ粉砕あるのみ!!。
そこで、思い立ったが吉日とばかりに、その夜の内に其の件についてタマさんに問合わせのメールを送ってみたら、意外にアッサリと返答をいただけた。
その有り難いアドバイスとは、『そーいうことなら、真神学園の新聞部部長のアン子ちゃんに当たってみなよ。うちの学校の写真関係は全部彼女が仕切ってるからね。京一の剣道着姿の写真の一つや二つ軽いもんなんじゃないかな?。現金(3000〜5000円くらい)か、さやかちゃん関連の限定グッズとの交換なら、割と簡単に交渉に応じてくれるハズだよ。』とのことだった。
こりゃもう絶対にやるしかない!と意気込んだ僕は、今日の授業が終わるなり本日オフのさやかちゃんと一緒に(っていうか、「先輩方に会いに行く」って言ったら付いて来ちゃったんだ)真神学園に先輩方(と、遠野さん)を訪ねてやって来たんだ。
そのまま、無事に先輩方と遠野さんに逢えたのは良かったんだけど、其処からが問題。
いつのまにか、遠野さん主導による《ラーメン食べながら舞園さやかにインタビュー》に先輩方まで巻き込んで雪崩れ込むハメになってしまっていたんだ。
遠野さんって、何かすっごい迫力で、京一先輩が苦手にしているっていうのが本当によくわかっちゃいましたよ、僕。(ええ、思い知りましたとも)
まあ、遠野さんにとっての僕は《さやかちゃんのお付き》に過ぎないので、僕自身への被害なんてたいしたことなかったんだけどね。ちょっと、ラーメン食べるのが遅れたくらいで。
本当にゴメンネ、さやかちゃん。僕の《野望》の所為で。折角のオフなのに。(汗)
こうして、《遠野さん紹介記念、さやかちゃんのインタビュー・新宿スペシャル》も終わったことだし、僕的にはさっさと遠野さんとの《商談》を開始したいところなんだけど………。
実際、困っちゃったよなぁ。先輩方と一緒にラーメン食べられるのは、すごく嬉しいんだけど。まさか、当の京一先輩方の前で遠野さんに『大変不躾ですが、お手持ちの京一先輩の剣道着姿の写真の中からできるだけ凛々しく撮れているモノを2・3枚御譲り頂けないでしょうか?。予算は5000円までは大丈夫です。もしくは、《さやかちゃん関連の限定グッズ》及び限定ライブチケットとの交換でいかがですか?。折り合いがつけば、他の京一先輩の写真も順次買取させていただきたいと思います。』なんて交渉持ち掛ける訳にいかないし。(流石に、照れくさいもんなあ。さやかちゃんも一緒にいるんだから。)
しょうがない。今日は直接交渉は諦めて、遠野さんの連絡先だけでもこっそり教えてもらって、一旦引き上げよう。
後日、再接触を諮って《商談》(《裏取引》ともいうが)を持ち掛けるしかないか。
う――ん。ちょっと、残念。(今日は《眼至福》だけで我慢しよう)
「じゃあ、食い終わったし。もう行くか。」
「うん。ボク、もうお腹いっぱい。」
「うふふふ………。」
「そうね。じゃあ、出ましょ。あっ、さやかちゃんと霧島君は、お会計の方はいいのよ。今回はインタビューのギャラとして、私が新聞部の経費で落とすから。なんせ、私がイキナリ付き合わせちゃったんだから。」
「えっ?!、いいんですか?。」
僕は、財布を取り出しかけた手を止める。聞いていたのより結構ビジネスライクな人なんだな。
「いいのよ、元は充分とれるから、確実にね。だから、龍麻もその財布を引っ込めていいの。」
「うきゅ。本当にいいのか?、アン子ちゃん。」
「アン子の奴がいいっつってんだから、いいんだろ。この程度なら雨は降んないだろうしな。」
「京一、あんたねえ(怒)。言っとくけど、あんたの分は出ないわよ。新聞部には、あんたの為に使う経費は一銭たりともないんですからね。」
「おい!。(怒)」
「はははは。当然だな、京一。」
「ふにゅっ。なら京一の分はオレが払おうか?。」
「ひーちゃん、ダメだったら。まぁーた、京一のヤツに甘すぎだよ。」
「…………うふふふ。そうよ、龍麻。(キラリ)」
「あっ、それなら京一先輩の分は、僕が出させていただきます。お幾らですか?」
「きっ、霧島くん…………(汗)」
なんて、ラーメン屋の中で騒いでいたら……………。
ポタッ。
「あら、霧島君。何か落ちたわよ。これ、パスケース?。」
と、僕のポケットから落ちた物を遠野さんが拾い上げた。(財布を出そうとしてたから)
はっっ!!。しっ、しまったぁ――――――ぁぁっっ、ヤバイ。その中には…………(汗)。
「駄目よ、気をつけないと。って、何?、この挟んであるの。誰かの写真?。さやかちゃんじゃないみたいだけど…………。」
はううう――――――っっ(激汗)。ヤバすぎ。あれは門外不出の《龍麻先輩・天女バージョン》の方なのにぃぃぃ。(ちなみに、《不機嫌セーラー服天使》の方は財布の中)
「え?!、誰の写真。まさか、京一じゃないよね?。駄目だよ、さやかチャンをを差し置いて、他の女の子の写真なんて。」
「それは、問題だな。どれ…………。」
「うふふふ…………。」
「こら!、諸羽。二股なんて俺が許さねえぞ。って、どんな子なんだ?………。」
「うにゅ?!。どれどれ………。」
「霧島くん?………。」
って、皆さんで出てきた写真を覗き込んで…………。
ピシッッ☆
あっ、全員金縛っちゃっいましたよ。
無理も無いよなぁ。僕だって初めて見た時はたっぷり10分間は精神麻痺した代物だもの。
『きっ、霧島君。何て物を持ち歩いてんの!。あーゆー危険物は取扱厳重注意なんだよ。』
すいませ――――ん(泣)、タマさん。でも、どうしても手元に置いておきたかったんですぅ。
それにしても、タマさん。危険物って………(汗)。そりゃ、【幌金縄】や【枯野の琴】より威力はあるみたいですけど。
僕は、固まったままの遠野さんの手から慌てて写真(とパスケース)を取り戻す。
「すいません。これはある方からの貰い物なんで別に他意はないんです。皆さん誤解なさらないで下さい。さやかちゃんのはちゃーんと生徒手帳の方に入ってますから。」
本当にただ眺めていたいだけなんだから。あくまで僕の《姫君》はさやかちゃんなんだし。
だから、さやかちゃん。頼むからそんな目で見つめないで欲しいんだけど(滝汗)。
だいたい、この《夢幻天女様》にあの京一先輩を向うに回して横恋慕なんて、できるわけがないじゃないですか。僕は自分の身の程ってモンを知ってますよ。
『君の目も相当腐れてるんだね。流石に京一の《一番弟子》を名乗るだけはあるよ。』
タマさん、それ誉め言葉ととっていいんですか?。
「びっ、びっくりした〜。本当にいるのねえ、こんな常識外れの美女って。やっぱり、芸能関係の人なの?。」
「うん。ボクも驚いちゃった。ラーメン食べてる時じゃなくてよかったよ。」
「そうだな、桜井。俺も驚いた。本当に実在する人物なのか?」
「そうね。うふふ………。」
「………………(汗)。」
あっ、皆さん、金縛り状態から回復したみたい。
よかったぁ。どうやら、皆さんはこの《夢幻天女様》の正体に気が付いてないみたいだ。
セーフセーフ。それだけ、目晦ましの威力が大きいってことだよな。
って、あれれれ…………。
「まあ、諸羽には諸羽の付き合いってモンがあるんだろ。俺達が、横から深く詮索するのはやめといてやろうぜ。」
そう言って、京一先輩はポンっと僕の肩を叩く。
ひえぇぇ―――ぇぇぇっっ(汗)。京一先輩、目がマジです。おっかないですぅぅぅ。
やっぱり、京一先輩の方は一発で《天女様》の正体に気付いてる。(なんせ、京一先輩の《女神様》なんだもんなぁ。流石というべきなんだろうって、当たり前か)
もう一方の当事者である龍麻先輩の方はといえば、苦虫をまとめて10匹くらい噛み潰したような顔でブツブツいってる。(きっと、タマさんに文句をいってるんだろうなぁ)
「ほら、諸羽、出るぞ。お前等もいい加減にしとけ。行くぜ!。」
そう言って、京一先輩はまだ少し呆然としている皆さんを残し、僕を促しながらさっさと店を出ていかれた。
勿論、こっそりと擦れ違いざまにだが、低いがおっそろしく迫力のある声で僕に、
「後でキッチリとこの写真の出所について詳しく説明して貰おうじゃねえか。覚悟しとけよ。」
と囁いていくのを忘れなかった。
うわぁぁ―――ん。すいませぇ―――ん。
そんなに凄みのある顔をしないでくださ―――いぃぃぃ。
僕には、本当に他意はないんですからぁぁぁ(泣)。
でも、その凄絶な迫力のお顔も格好良くってウットリです、京一先輩。
そうして、僕は其の日、折角の《野望への第一歩》を実行することはできなかった。
ふふふ。こんなことくらいで負けるもんか!。次回にまたチャレンジあるのみ!!。
『君って、本当に京一の《一番弟子》だよねぇ・・・・・(溜息)』
だからタマさん。それって、僕には誉め言葉にしかなりませんてば。
* 京一 《四日後》
ピンポーン☆、ピンポーン☆
カチャガチャ★
「あっ!!、ひーちゃん。おーい、俺だぜ。」
『あっ、何だ、京一か。いいよ、鍵開けるから上がってきちゃって。501号室だよ。姉さん、今ちょっと手が離せないから………。』
なんだ、タマか。
「了――ぉ解♪。」
俺は、マンションのエントランスのインターホンから離れると、直ぐ傍のエレベーターに乗り込む。
んったく、完全セキュリティのマンションって、これだから面倒くせえんだよ。
本日、放課後、俺はひーちゃんにマンションの部屋に呼ばれてきていた。
なんのこたあない、一昨日潰された《ひーちゃんの部屋に手作りの晩飯を食べに行く》を実現するためだ。
勿論、今度はあんな騒ぎにならないように、他の奴等には内緒に決まっている。(あの糞亀若年寄野郎とその他共、今度は邪魔はさせねえぞ)
下心?!。そんなモンありまくりに決まってるじゃねえか。
5階でエレベーターから降りて、真っ直ぐに501号室に向かう。すると、本当に鍵は開いていた。
(なるほど、電子ロックキーか。これならタマでもOKだな)
ドアを開けて玄関に入ると、唐突に目の前にタマが出現する。
『いらっしゃい、京一。さっさと上がってドア閉めて。んじゃ、こっちね。』
そうして、初めて上がり込んだひーちゃんの部屋で、俺がまず案内されたのは、12畳はあろうかというようなやたらと広いリビングルームだった。(これなら仲間内の宴会、充分にいけるな)
「おい、タマ…………(汗)。」
『ん?!。ああ、これ?。こんな風だから、皆を部屋に呼べないんだよねぇ。』
なんつうか、確かにとても一人暮らしの男子高校生の部屋じゃねえよなぁ。
淡い暖色系で統一された部屋はキチンと片付けられていて、少女趣味という訳ではないがインテリアとかカーテンやテーブルクロスや敷物等、其処かしこに女の子らしさが滲み出ている。(俺の部屋なんかとはとてもじゃないが比べらんねえ)
本当にひーちゃんて無意識領域で女の子らしいっていうか、お嬢様っていうか、普段からは想像もつかないくらい激烈に可愛らしいんだよなあ。(また惚れ直しちまいそうだ)
何より、部屋に溢れている大小取り混ぜたぬいぐるみの群れ!。(軽く30個はあるな)
そりゃ、ひーちゃんが《キラキラした物やフカフカした物が好き》とは聞いてはいたが、ハンパな量じゃねえぞ。しかも………。
「おい、タマ。何だよ、あの《全長2mはあろうかという白い虎のぬいぐるみ》や《巨大な青いタツノオトシゴのぬいぐるみ》とか《手裏剣背負った等身大のゼニガメのぬいぐるみ》とか《槍持った全長1mのピカチュウのぬいぐるみ》ってのは…………。」
とてもじゃないが、市販されているモンには見えねえ。(どっから見付けてきたんだ?)
『ああ、あれ?。姉さんの手作りだよ。結構よくできてるでしょ。気に入ったのが見つからないと自分で作っちゃうんだよ、姉さん。ちなみに、《巨大な紅いインコのぬいぐるみ》は寝室の方にあるよ。此処にある分は寝室に置ききれなかった分だからね。』
「………………あのなぁぁ(脱力)」
そりゃ、(ひーちゃんを【男】だと思ってる)他の連中は絶対に呼べんわな。納得だぜ。
『それじゃあ、悪いんだけどそのまま暫く待っててくれる?。俺じゃお茶とか出せなくて申し訳ないんだけどさ。姉さん、もうすぐ出てくると思うから。俺は、ネット続きやりたいからあっちの部屋にいるからね。………あっ、姉さんの写真の話なら義母さんに連絡しておいたから、明日にはバリエーション揃えて京一の家の方に届くと思うよ。じゃあ、ごゆっくりぃぃ♪。』
そう言って、タマの奴は姿を消しちまいやがった。
むう、ひーちゃんの写真か……………。くそう。昨日、諸羽の奴から没収してやれなかったのが、返す返すも悔やまれる。
あんの野郎、なあにが「これは労働に対する正当な報酬です。ほら、龍麻先輩のお母様からのお墨付きもあります。だから、いくら京一先輩のご命令とはいえ、これだけは勘弁して下さい(泣)。」だっつーんだ。
まあ、出所は素直に白状したし、アイツには《他意》ってもんが無いのは解っているし(さやかちゃんがいるからな)、《正当な報酬》ってのは俺も認めるのは吝かじゃないんで(実際、誤解が解けたのはアイツのおかげだからな)、渋々ながら没収は勘弁してやったが。(正直に言えば、未だに未練はある………、ひーちゃんの着物姿………)
当然のことながら、その後タマのヤツに詰め寄って、俺の所にもひーちゃんの写真を各種送らせるように手配させるのは忘れなかった。(なんせ、俺が持ってる《龍那》の写真はあの《月天使様》のヤツだけだもんなぁ。)
なんか晴れない気分に、ちょうど足元にあった《手裏剣背負ったゼニガメのぬいぐるみ》を踏みつけてから蹴り飛ばす。(それで、ちょっとだけとはいえ気分が晴れる自分が情けない)
それにしても、広い部屋だよなあ。造りからみると2LDKはありそうだけど、とても高校生の一人暮らしに釣り合う部屋じゃねえぞ。(しかも完全セキュリティ)
まあ、《あの》ひーちゃん(特に夜)ならこれくらいしねえと安心できねえってのは俺も理解できるが。本当に一体どういう家なんだよ、ひーちゃん家って…………(汗)。
とりあえずソファーに座り込んでボケっと部屋の観察をしていた俺に、暫くすると、バタバタという音と不機嫌そうな俺の《女神様》の声が聞こえてきた。
「おい、タマ―――ぁぁ!!。そろそろ京一から連絡が入ってないのか?。シチュー温めないといけないんだから。お前そこら辺を見て来い…………って、京一?!!」
「あっ、ひーちゃん。わりい、上がらせてもらってた……ぜ………って………。」
?!!!!・・・・・・・・★☆○□▲×
タっ、タっ、タマ。あの不感症のドアホウ!!。何が『姉さんは手が離せない』だ。
ひーちゃんが《風呂に入ってる》んならそう言いやがれ!!!。(心の準備が………)
俺の目に予告抜きで飛び込んできた姿は………。
風呂上りに大きめのTシャツ一枚を身に付けているだけなんだよ、素肌に。(グラグラ)
そりゃあ、《バスタオル一枚》より露出度は落ちるが、拭き取りきれなかった水でシャツの布地が素肌にぴったりと張り付いて、その理想的なまでに麗しすぎる姿態のゴールデンサイズのボディラインがもろわかり。
しかも、薄い布地に加えて所々が水で濡れている所為で、胸のあたりとか腰のあたりとかが透けて見えちまってて、ヘタなオールヌードよりエッチ臭いぞ。(当然、Tシャツの下から伸びている白く輝くすんばらしい脚線美は健在だ)
「なんだ、タマのヤツ。京一がもう来てるんなら、そう言えばいいのに。あっ、京一。待たせちゃったみたいで悪かったな。もうご飯はできてるから、とりあえずお茶でも飲んでてくれ。」
「…………。」
そう言って、ひーちゃんはその激烈に刺激的な格好のままお茶を出してくると、俺の座っていたソファーの隣にちょこんと腰を下ろして座り込んだ。(ちなみに、お茶は玉露らしい)
毎度のことながら、ひーちゃん。自分の格好に自覚もってくれぇぇぇ。
どうしてそう俺の理性を暗殺したがるかなあ、ひーちゃんは…………。(汗)
「うにゅ。どうした?、京一。待たせて怒っているのか?。」
「……………い、いや。ちょっと考え事してただけだぜ、ひーちゃん。」
ヤバイ。ボケッと見惚れてる暇なんかない。何か喋らないと、またあらぬ誤解をされる。(でも、目がいっちまうんだよなぁ)
「そうなのか?。」
「ああ。だから気にするなよ、ひーちゃん。頼み込んで押しかけてきちまったのは俺の方なんだからよ。………あっ、そうだ!!。昨日頼まれてた《俺の家のオーブンレンジを使わせて欲しい》って件、お袋にOKとっといたぜ。何か作った時に、余り物でも食わせてやってくれよ。それでいいからさ。」
あんの脳天気童顔母親、この件を切り出したとたん『わーい♪。ひーちゃんの手作りお菓子ぃ。リクエストしたら、ミオりんにも何か作ってくれるかなぁ?。たーのしみぃ、ルンルン♪。』だなんぞとヌカシくさりやがって。
おまけに、その後言うに事欠いて、『やっぱ、みゃーちゃんが早くひーちゃんをお嫁に貰ってくれれば、変な遠慮しなくていいのにねえ。頑張ってね、みゃーちゃん♪。でないと、りりちゃんに言っちゃうぞぉ』だぞ。
畜生、あの常識知らず。いい加減、これ以上の俺んちの非常識な内情暴露は止めといてくれよ。
あのド変態姉貴の方は、俺が鉢合わせしないですむように気をつけているしかねえか。
「うきゅぅ?!、本当にいいのか?。わーい♪。ありがとう、京一。」
ぱふっっ。スリスリィ☆
はうううううぅぅぅ。ひーちゃんの必殺《抱き付いてほっぺスリスリ攻撃》炸裂☆!!
ヤバイ(汗)、ヤバすぎる。この間のナース服より布地が薄い。胸の感触が激烈リアルだ。
しかも、風呂上りの所為かすんごく良い香りがする。(うっ、甘い香りが更に誘ってる)また、《対:俺の理性攻撃力》がアップしてるぞ。
更に…………。
「なあ、京一ぃ。この間の《あのキス》って、頼んだらまたやってくれるのか?。京一も《あれ》って安心できるって言ってたし。今なら誰も見てないから、この間みたいに《ホモ》呼ばわりされないと思うんだけど…………。ダメか?。」
ピキッ☆
はっ?!。俺、一瞬思考が飛んじまったぜ。
ヤバイぜ、ひーちゃん、ヤバすぎ。あのなぁ、この状況でそんな事を上目遣いにおねだりされたら俺の理性はなあ………。
「ふにゅっ、京一ぃ??」
頼むから、ひーちゃん。その角度で見上げてこないでくれ!!。む、胸の谷間が…………(汗)。
ダメだ。もう理性が持たねえ。ちっくしょう。勝手に滅殺されろ、俺の惰弱な理性。(自制心の方なんざ、とっくの昔に跡形もねえわ)
「龍那!!。」
俺は、あっという間にひーちゃんをそのままソファーに押し倒し、そのまま唇を奪う。
「………ん。」
こんな激烈にヤバイ(美味しい)状況で俺の理性が命惜しさに遥か彼方に逃亡を謀ったとしても、誰が責められよう、いや、責められたって俺の知ったこっちゃねーわ!!。
俺は、奪ったひーちゃんの唇に啄ばむように幾度か口付けると、そのまま首筋から鎖骨までキスを散らしながら唇を辿らせる。
そうして、もう一度、今度は貪るようにその唇に深く口付ける。
「……んん………。きょう…い……ちぃ?」
「………龍那、あのなぁ、俺は龍那のことが……………。」
充分に堪能した後、ゆっくりと唇を開放し、その耳元に囁くように言葉を続けながら俺の手は、さりげなくひーちゃんのTシャツの裾にかかる。
(だぁ――、止まらん!。って、この後に及んで止める気はないが)
その時だ。
ピンポーンっ☆
広いリビングに、よく通る呼び出し音が響き渡った。
そのままの体勢で固まってしまっていた俺達を尻目に、部屋の隅にあるインターホンの所にタマが出現すると何やら応対をしだす。そうして、今度は俺の頭上に顕れたタマがのたまう。
『ねえ、お二人さんとも、《お取り込み中》の所で大変申し訳ないんだけどさ。今、下の方にユエが来てるよ。一応、そのままこっちに上がって来てくれるようにしたんだけど、どうすんの?。姉さんが呼んだんでしょ。』
すると、ひーちゃんは固まったままの俺の下からスルリと抜け出し、慌てたように立ち上がる。
「あっ、ユエもう来たんだ。イイんだよ、そのまま部屋に上がってもらって。さっき、買い物の時に駅で逢ったんだ。今晩の夕御飯、決まってないっていいうから。夕食を一緒にどうかって誘ったんだよ。じゃあ、もう御飯を温め直さないとな。」
そういって、その格好のままバタバタとキッチンの方に向かって行ってしまった。
『あーあ。京一ってば、本当に間が悪いよねぇ。折角のチャンスだったのにさ。』
「…………。」
『まあ、気を落とさないで次回にまたチャレンジしてやってよ。《不屈のチャレンジ精神》てヤツを持ってさ。弟子の霧島君を見習ってね。』
「…………。」
『一応、俺からの支援としてこの部屋のスペアキーを京一のあげるように、姉さんにこれから頼んであげるからさ、適当な口実つけて。』
「…………。」
『ほら、ユエがもう部屋に上がってくるよ。その体勢のまんまじゃ、ユエに見られた時に、結構情けないと思うんだけど………。』
「…………。」
『まったく、仕方ないよねえ………(溜息)。』
そうして、暫くの間俺はそのまま呆然と固まっていた。
「あっ♪、ユエー、いらしゃーい。」
「邪魔するでぇ、アネキぃ……………って、どわぁぁぁぁ??!!。アっ、アっ、アネキなんてカッコしとるんやぁぁぁぁぁ!!!。(絶叫)」
「うきゅ?!。どうしたんだ、ユエ???。」
なんか向うで騒ぎが起こってるみたいだが、今の俺には遠い何処かの出来事のようだ。
その後、ようやく現実に復帰した俺が、思わず手近にあった《大きな黄色いひよこぬいぐるみ》を劉のヤツに向かって蹴り飛ばした為、ひーちゃんに怒りの鉄拳制裁をくらっちまったことは、思いっきり余談だ。
畜生!!。俺は絶対に負けねえぞ。
この間の《極寒地獄》のことを思えば、この程度なんざ………って、結構辛いかも(涙)
ちなみに、勿論、ひーちゃんの部屋のスペアキーを貰って帰るのは忘れなかった。
(あったりめえだ!!)
* 龍麻 《五日後》
「【水流尖の術】!!」
「【陽炎・細雪】!!!」
北区、【如月骨董品店】前にて、死闘の火蓋は切って落とされていた。
次々と繰り出される水の刃は、目標に辿り着く前に凍りつき打ち砕かれる。
一方、同じく木刀から放たれる【氣】の刃も、ヒラリヒラリとかわされ目標を捕らえる事はできない。
って、シリアスぶってもたいしたことじゃない。単に、すでに恒例と化したの京一と翡翠の果し合いだ。
(ここ最近で、回数激増してるなあ。)
本日、新しく仲間になった記念にと、ユエと霧島君の新しい武器及び装備品を見繕いにきたら、ユエが口を滑らせて、昨日京一とユエがうちで姉さんの手作りの晩御飯を食べたのが翡翠達にバレちゃったんだ。
おまけに、例によって絶妙のタイミングで姉さんの《オレと京一は東京一のラブラブ攻撃》の直撃を受けて、翡翠(っと周りにいた若干名)は石化。(本当に大した威力だよね。有効対象が味方限定っていうのが問題だけど………)
その後、石化が解けるなり店の前で、大乱闘に突入しちゃったんだ。
「【飛水影縫】!!!」
「ぐっっ!!」
あっ、京一ってば麻痺しちゃった。こりゃ、ヤバイかなあ?。
(本当に京一って、この手の攻撃に弱いよねえ。だから、姉さんが【独鈷杵】譲ったのに、装備しないんだもん。意地っ張りなんだから)
「ハイヤ!!!、【活剄】!!。」
ありゃ、ユエ。京一の援護してくれてるよ。さっきの責任感じてんのかなぁ。
こっちとしては、助かるんだけど。
「如月サンの邪魔をするな!。いくぜ、えせ関西人。【雷光ブラスター】ッ!!。」
「そっちこそ、イキナリ何するんや(怒)。それに、わいは中国人や。【光撃掌】!!!。」
はれ、雨紋って何でユエに攻撃してんのかな?。
ああ、そっかあ、4月から仲間になってる雨紋にしたら、ほんの最近仲間になったばかりなのに、もう姉さんの家に呼ばれちゃったユエは、ムカツいてもしょうがないか。
(今まで、どんなに頼まれてもうちは出入厳禁だったもんねえ)
「タマさん、僕、どうしましょう?。やっぱり、京一先輩達の方をお手伝いした方がよろしいんでしょうか………。」
『ああ、大丈夫だよ、霧島君。あんなの大したことじゃないから。4人共あれくらいじゃ、死なないよ。』
「いや、そういう意味じゃあないんですけど………。(汗)」
『すぐに終わるから、まあ、見てなよ。それから、ちょっとさがっててね。』
「はい?!。」
戦闘開始から約10分経過。そろそろかなぁ…………。
俺は姉さんの方をちらりと見ると、タイミングを計り始める、
『カウント開始。5・4・3・2・1・・0!!!。』
「てめえら、いい加減にオレの話を聞けよ!!。勝手にオレをつんぼ桟敷にしてるんじゃねえ!!。みんなのばっかやろう――――――ぉぉぉ!!。【秘拳・黄龍】!!!。」
ちゅっど―――――――んっっ☆。
姉さんの怒りの一撃炸裂☆ (当然、手加減抜き)
ほーら、これで戦闘終了。
店の前の掃除もできて一石二鳥。
(ついでに、4人共掃除しちゃったけど………)
世はこれで事もなし。
まっ、俺達の日常なんてこんなもんじゃないの。。
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