↑目次に戻る


――――――――Tomorrow


 ガラガラガラガラッ★。バタンッッ☆

「ちょっとぉ――――――ぉぉぉ!!、京一の馬鹿はいる?。」
はれ?!、アン子ちゃん。どうしたんだろう、あんなに血相を変えて?。
何かイヤな予感がするなあ、アン子ちゃんがこういう登場をする時って。
ちなみに、今は3時限目と4時限目の間の休み時間。普段ならそろそろ『腹が減ったぁ―!。』と騒ぎ始めるはずの京一は、机につっぷして爆睡中なんだよなあ。
なんせ、京一は昨日の夜は殆ど一睡も出来なかったんだから、姉さんの所為で。
あれは流石の俺も気の毒だと思っちゃったよ、渾身の《愛の告白》を失敗した(させた?!)当の相手に添い寝するハメになっちゃんだから。(姉さん、あの後京一の首にしがみ付いた状態で寝こけたまま、朝まで熟睡しちゃったんだ)しかも、あの《悩殺メイドさんルック》のまんまの。
オマケに、『この家で寝ている女の子を襲うなんて不埒なマネをしたら、ミオりん、リリちゃんと一緒に相応のオシオキをするかんね。みゃーちゃんは大人しくひーちゃんの枕兼《ダッコちゃん》になってなさい!。』って深青さんに言い渡されてたからなあ。(深青さんの《相応のオシオキ》って凄く怖いよ。くわばら、くわばら)
いや、俺が言うのもなんだけど、よくもったよねえ、京一の理性。表彰モノだよ。
まあ、もたなかったらもたなかったで、即日婚約→結納→来年の春には挙式(京一の誕生日って確か1月だったはずだから)。婿養子街道最短距離爆進になるだけで、俺は一向に構わなかったんだけどさ。俺、いつでも京一のことを《お義兄さん》って呼ぶ覚悟はできてるもん。
「ダメだよ、アン子ちゃん。京一は、今、寝てるんだから。邪魔しないでおいてくれ。」
って、姉さんが京一の机目掛けて突進してきたアン子ちゃんの前に、京一を庇うように立ちふさがる。流石に、昨日自分が京一の安眠妨害をしたことは申し訳なく思っているらしい。何で安眠妨害になってたのかは、イマイチよく解かってないみたいだったけど。
「ちょっと、龍麻。何で貴方がコイツのことそんなに庇うのよ。こいつが昨日やったらしい事を聞いたら、いくら龍麻といえども、そんな事する気は失せるわよ。」
「うにゅ。き、昨日のこと?(汗)」
脛に傷を持つ姉さんは、一瞬怯む。
なぁ―――んか激烈にイヤな予感が倍増。俺のこういう予感て、まず外れないんだよ。(汗)
「何、どうしたの?、アン子。まぁーた、この馬鹿が何かやらかしたワケぇ。」
「………うふふふ。京一君がどうかしたの?。そんなにアン子ちゃんが騒ぐようなことをしたんだったら、クラス委員として放っておけないわ。」
「と、遠野。とりあえず、事を荒立てずに穏便にな。どんな馬鹿でも一応はクラスメイトだ。」
案の定、いつものメンバーが姉さん達の周りを取り囲む。一方、他のクラスメイト達は関係ございませんって顔をしてるけど、耳がダンボになっている様子だ。(怖い物聞きたさってヤツだね)
「あっ、桜井ちゃん達。そうよ、ちょっと聞いてやってよ。この馬鹿、こともあろうに昨日の夜、歌舞伎町のヤクザと一悶着起こした挙げ句、そのヤクザの頭をシバキ倒して、イメクラ喫茶からすっごい美人の《メイドさん》をテイクアウトしたらしいのよ。」
「うきゅきゅ〜………そ、そ、それは(汗)」
あああああああああああああ、イヤな予感大的中。
あの時、やっぱり誰かに見られてたのか。
確かに、《あの格好》の姉さんはとんでもなく目立ってたけどさ。
しかも、何かとんでもない大誤解な伝わり方しちゃってる。(きっと伝言ゲーム形式だ)。
だって、ヤクザと悶着起こしたのは当の《メイドさん》の姉さんだったし。京一がシバキ倒したのは、単なる通りすがりの親切な(?!)お兄さん(?!×2)だったんだもん。
あのお兄さんには、本当に気の毒な事したよなあ。イマイチ自分の事が解かってなかった姉さんを助けてもらった挙げ句、姉さんの無意識のバカバカしいノロケ話(そう。端から聞いてたら、あれってばノロケ以外の何モノでもないよ)に付き合わされたのに、姉さんのしょうもない誤解を解いてくれた功労者だったのにさ。
あの時、俺まで動転してて、京一から庇ってやれなかったんだもん。姉さんの唇を奪おうとした事も、好意的に考えれば、説得の為の狂言だったかもしれないし。
そういえば、テイクアウトしたのも路地裏からで、イメクラ喫茶からなんかじゃなかったし。
シマッタぁぁ――――ぁぁぁ、俺としたことが。今更ながらに振り返ってみると、京一が姉さんを背負って歩き出した所からは、周囲に目晦ましの【結界】を展開してあったけど。その前は、流石の俺も動転してて、何にもしてなかったじゃん。
うわぁぁぁぁぁぁぁ(汗)、本当にゴメン、京一。また俺達姉弟で京一の外聞を盛大に踏み付けにしちゃってるよ。
『ふに―――ん(泣)。どうしよう、タマぁぁ。』
『どうしようったって、どうしよう?、姉さん。俺の方が聞きたいよ。』
だが、俺達が密かに泣き言を言っている間にも、事態はどんどん転がっていった。
「それ本当なの?、アン子。そりゃ、如何にもこの馬鹿がやりそうなことだけどさ。だとしたら、ちょっと許せないよね。」
「そうね。だって、昨日も龍麻は京一君の家にお手伝いにいってたのでしょう、日曜日なのに。親友の京一君のお母さんの為に、休日を潰してまで看病していた龍麻を放っておいて、自分だけそんな事をしていたなんて…………(怒)。」
「遠野、それはガセネタじゃないのか?。だが、本当だとしたら、流石の俺も庇いきれん。」
だううううううう(涙)。みんな思いっきり信じ始めちゃってる。
本当にどうしよう(汗)。葵ちゃんなんか、既に瞳が妖しく光り始めてるよ。【学園の麗しの聖母様】から【邪眼の菩薩様】モードにメイクアップカウントダウン開始って感じだ。それに、小蒔ちゃん、お願いだから【伏姫の弓】の準備なんて始めないで欲しいんだけど………。
「ねっ、許せないでしょう。龍麻も解かったら、其処を退いてちょうだい。私にはキチンとウラをとって、この非道な行ないの真相を暴く義務があるのよ。それが《記者魂》ってモンだわ。」
るるるるるぅぅぅ(泣)。京一じゃないけど、本当にモノ書きの女の子って油断ができないよぉ。
第一、真相なんて暴かれたら、ヤバイなんてモンじゃない。なんせ、テイクアウトされたメイドさんは、そこにいる姉さんなんだから。(大ピンチじゃん)
「…………(汗)だから、京一の安眠を邪魔しちゃダメなんだってば、アン子ちゃん。それに、それってば誤解だよ。京一は、昨日の夜一晩中オレと一緒にいたんだ。アリバイがちゃんと有るんだから、そんな事が出来るハズがないんだよ。人違いだよ。」
姉さんは、たたみ掛けるように迫って来るアン子ちゃんに一歩も退く事なく、頭をブンブン振りながら必死になって訴える。(そこだ、行け。頑張れ、姉さん!!)
「龍麻、それ本当なの?。この期に及んで、まだ京一を庇ってる訳じゃあないわよね。(疑惑)」
「アン子ちゃんは、オレが嘘を言ってるって言うのか。オレがこんなに真剣に話してるのに。」
確かに、嘘は言ってないよね。ヤクザと悶着起こしたっていうのが誤解なのも、京一が姉さんと一晩中一緒にいたのも事実だもん。
姉さんは、そのままの体勢でアン子ちゃんに食い下がりながら、ここぞといわんばかりに《必殺・そんなに意地悪するんならじーっと見つめちゃうぞ攻撃》まで繰り出す。
「うっっ………(汗)。わかったわよ。龍麻が其処まで言うんなら、信じるわよ。仕方が無いわね。これ以上、この件でこの馬鹿を追求するのは止めとくわ。それでいいんでしょ。」
「(ホッ…)よかった。解かってくれたんだね、アン子ちゃん。ありがとう。オレ、嬉しいよ♪。」
「…………もう、ホントに龍麻には敵わないわ。(苦笑)」
流石のアン子ちゃんといえども、姉さんの《必殺技》には抵抗できず、渋々ながら引き下がる。
そこへ、オマケとばかりに姉さんが《全開笑顔攻撃》繰り出し、止めを刺す。
よっしゃぁ―――――ぁぁ。姉さん、エライ。自力でアン子ちゃんを説得したじゃん。
これは、快挙だよ。それでこそ、京一の【相棒】!!。
はぁぁ―――。よかったぁ。なんとかなったか。ふうっ。

だが、事態は此処で一件落着したりはしなかったのだ。
本当に、京一の《女運の悪さ》と《星の巡りの悪さ》っていうのには果てしがなかった。
(ぜ――ったいに、《血の呪い》だよ、これは。)

「………龍麻。確かに、京一君の昨日の《メイドさんテイクアウト》が誤解なのは解かったわ。でも、その《一晩中一緒だった》っていうのは、どういうことなのかしら?。」
ぎっく――――――ん★。あ、あ、あ、あ、葵ちゃん(汗)。何て鋭いツッコミ。
「ああ、そうなんだよ、葵ちゃん。オレ、昨日ちょっと集中しすぎちゃったみたいで、京一んちで寝こけちゃったんだよ。それで、そのまま京一んちに泊めてもらっちゃったんだ。申し訳ないことしちゃったんだよなあ。ホント、オレって、此処んとこ大マヌケ。(溜息)」
あああああああ(汗)。駄目だよ、姉さん。そんな事を馬鹿正直に葵ちゃん達に言っちゃあ。
そんな事を聞いて、【緋月龍麻お大事同盟】の面々が黙っているハズがないじゃないかぁ。
まさか、それで京一を庇ってるつもりのなの?。やめてよ、お願いだから。
「…………うふふふ。そう。京一君てば、龍麻が疲れて眠り込んでしまうほど扱き使ったという訳なの……。うふふふ………。しかも、龍麻を一晩自分の家に泊まらせたと………。」
はううううううう(激汗)。ヤバイ、ヤバすぎだよ。葵ちゃんの眼がぁぁぁ………(恐)。
「あっ、違うよ、葵ちゃん。扱き使われたなんて事ないんだ。オレが勝手にやってた。っていうか、京一に無理に頼んで家事をやらせてもらってたんだから。それに昨日はどっちかっていうと、家事の方はサボっちゃったんだし。」
「でも、龍麻…………。」
「もう。ひーちゃんてば、まーた京一を庇ってる。本当に甘すぎるよ。………って、あれ?!。昨日寝こけちゃってたのに、何でひーちゃんは京一と自分が一晩中一緒にいたってわかるのさ。ちょっとオカシく無い?。」
だうううううううう(滝汗)。小蒔ちゃん、それって鋭すぎるツッコミ。(どうしよう)×5。
「えっ?!。別にオカシくなんてないよ。それはね…………。」
駄目だ、姉さん。もうこれ以上はやめてよ。不用意な発言は皆の怒りに火に油を注ぐだけ………。って………………。
「オレと京一が昨日は一緒のベッドで寝てたからだよ。オレがずーっと京一を離さなかったから。だから、京一、昨日は一睡もしてないみたいなんだ。」

 ピシッッ☆

だああああああああ(号汗)。姉さん、なんてことを。そんな邪推されまくり、誤解煽りまくりの事をサラリ言っちゃうなんて。(確かに本当のことだけどさ)
どうすんの、これ??。葵ちゃん達やアン子ちゃんばかりじゃなく、耳をダンボにしていた他のクラスメイト達まで石化しちゃってるじゃないか。
だが、天に慈悲は無いのか、はたまた、京一に運が無いのか。事態は其処で終わったりなんぞはしなかったんである。
俺がただ無駄に焦っている間にも、追い討ちをかけるように姉さんの(当人はあくまで庇ってるつもりの)無意識の《戦略核兵器ノロケ攻撃》の追撃が炸裂してしまったのだ。
「ほ――んと、いくらオレと京一が《本州一のラブラブ》な関係とはいえ、ズーズーし過ぎたよなあ。オレ、京一に申し訳なくって。ふう。」

 ビキビキビキビキッッ★。

あああああああああああああああ。ひ、ひ、ひ、ひ、酷いよ、姉さん。酷すぎる。いくら無意識とはいえ其処までする?!。
本人、京一を助けるつもりで、実は更なる《無間地獄》の中に叩き落としちゃってるじゃないか。無意識とか、悪気がないじゃ、済まされることじゃないんだからね。
第一ねえ、姉さん。昨日深青さんが言ったのは《本州中部一》でしょ。勝手に一個単語を抜いて、ランクアップさせちゃ駄目だったら。
しかも、姉さんはトドメとばかりに手近にある(この期におよんでまだ爆睡中の)京一の髪の毛を、極上の笑顔を向けながら撫で撫でしているのだ。
もう教室の中は、まるで深夜の墓場のように静まり返って、誰も身動きすらしない。
最早、京一の外聞は踏み付けられまくり。10tダンプで踏み踏みされて、ノサれて、引かれて、裂かれて、焼かれて、1ミクロンの厚さも無い《食べ残しのスルメ》状態だよ。
るるるるうるるぅ。どうしよう(汗×10)。これじゃあ、絶対に京一の命は放課後までもつハズがない。このまま永眠もありうる。
ゴメン。ゴメンよ、京一。今の俺には、どうすることもできないよぉぉぉぉ(号泣)。

 キーンコーンカーンコーン〜♪。

っと、その時、俺と京一にとっては天の助けとも言うべき、チャイムが鳴り響いた。
そうすると、流石の皆も正気に返って、各々の席へとまるでロボットの様なギクシャクした動作で戻り始める。
はあ――――ぁぁ、よかったあ。
って、良く見ると葵ちゃんと小蒔ちゃんが何か携帯電話らしきものを取り出してるじゃん。
こっ、これは。やっぱ問題は放課後に持ち越しって事だろうなあ。【お大事同盟】勢揃いで。


その後、俺は昼休みに入るなりコッソリと此処一週間かけ慣れてしまった、ユエのPHSb【力】使ってコールした。
『はれ?!。タマはんか。どないしたんや?。確か、昨日でアネキの京一はんちへの《おさんどん通い》は終わりやったハズやろ。もう、わいの助っ人はいらんのやないか?。』
『ゴメン、ユエ。また違った厄介事が起こっちゃってね。悪いんだけど、今日の放課後もまた助っ人をお願いしてもいいかな?。今回は激烈にマジで、京一の命がかかってるんだよ。』
『はあぁぁ。あいかわらず、なんぞ星の巡りの悪いお人やなあ、京一はんは。わかったで。また《旧校舎》の方に行けばいいんやろ。わいにまかしとき!。」
『宜しくお願いするね、ユエ。今度また家に来てね。姉さんに御飯を奢らせるからさ。』
『そりゃ、毎度おおきに。助っ人の件は了解や。ほな、またな。』
『じゃあね。』
プツッ。
はあぁぁ、今回は念の為に霧島君も呼んでおいた方がいいかもしてない。一応は少しでも歯止めにはなるだろうから。

それにしても、やっぱ、【キャンディ・キャンディ】や【ベルサイユのバラ】じゃあ、恋愛知識はともかくとして、一般常識まではフォローできなかったみたいだ。
今度は、【彼氏と彼女の事情】くらいは読ませた方が良いのかもしれない。いや、一般常識というなら、ちょっと古いけど【生徒諸君!】の方がいいかな?。
それと、せめて《ホモ》の意味ぐらいはキチンと教えておかなきゃ駄目だよあぁ。
って、俺が教えんの?。(すっげぇ嫌)それって、できれば避けたいんだけど………。
こっちは、何かイイ資料になるような漫画ってあったかな?。(【風と木の詩】じゃダメだったんだよねえ。やっぱ、【摩利と新吾】かなあ。【BANANA FISH】は流石に不味いよねえ)
ううううううう。何で弟の俺が、姉さんに読ませる《少女漫画》を物色しなきゃいけないんだ。
こんなの、ぜぇ――――ったいに、間違ってる。

でもこのままだと、京一の外聞は毎日シュレッダーで削り取られて、近い将来には何にも無くなっちゃうしなあ。(流石に、元が元だけに本格的な《ホモ疑惑》には発展してないけどさ)
深青さんは、《息子の外聞なんか知ったこっちゃありません》な人なんだもん。
やっぱ、俺が頑張らないと駄目だよねえ………。

はあぁぁぁぁぁ(溜息)。京一、俺も頑張るから君も死に物狂いで頑張ってよ。
今日という辛い日を乗り越えなきゃ、明るい明日はやって来ないんだ。
《女運の悪さ》も《星の巡りの悪さ》も気合でなんとかしよう。うん。


本当に頑張ろうね、京一。


   ・・・・・・・・・・・・とりあえず、えんど♪。




う――ん。オマケSS「京一の明日はどっちだ?!」編でした。
この後、本来なら番外編3に続くハズだったんですが、こぼれ話が入っちゃいました。
なんで、次ぎはこぼれ話1になります。番外編3は・・・・・・・はははは(汗)。



次のSSへ続きます。



峠之紗耶さんへのメールはこちらです→
峠之紗耶さんのSSの目次に戻る