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はい、下です。追加対談が入っているので、更に長いです。
それでも、イイと言う方はこのままお進みください。
だって、こんなに事態がこんがらがるとは、思っても見なかったんです。
さて、この地獄から本当に京一はリベンジできるか?!。
とりあえず、糸は垂れてきてるらしいです。


 ACT.5 「ジェラシック・パーク」後編 〈下〉


* 龍那



オレの耳に、さっきの妖しげな声の主の言葉が反響する。
『てめえら、もう終わりだな。…………てめえらは、もう逃げる事はできねェよ。あらためて、ようこそ【獣の王国】へ。ひひひひひ…………、は――はっはっはっはっはッ』


「京一ぃ!!!。」
オレは、何かを必死に抑えようとしているようにガクンと崩れ落ちそうになった京一の身体を、とっさに抱き止めて支えた。
木刀を強く握り締めて、小刻みに身体を震わせて、苦しそうに何か耐えている。
「おい、如何したんだ?!。答えろよ、京一!!。」
「ウッ―――?!。わから………ねえ………。ただ、体が……俺の体がぁぁぁ………。」
その京一のかってない様子に混乱しかけたオレに、まるで追い討ちを駈けるように次々と仲間達の体の異変が続く。
「頭が………、頭が割れそうだッ!!。」
「ボクも体が……ヘンだよ………。なんだよこれ………。熱い……熱いよォォ………!!!。」
醍醐に小蒔ちゃんまで…………。
「もしかして、これが………。あいつが言ってた『逃げられない。』って意味…………?。」
まるで、のたうつようにして苦しんでいるみんなの姿に、残ったオレ達はパニックに陥り掛ける。
そんなオレ達に、天野さんの冷静な声が正確な状況分析を伝える。だが、取り乱しきってるオレの頭に入ってくるのは断片的な言葉だけだ。
《闘わせる事が罠》、《受けた傷》、《精神の高揚》、《霊の進入を容易にする》。そして、アイツは、オレ達がこの池袋に探索にきたのは【憑依師】。
オレの心に、学校を出る前に聞いたミサちゃんの忠告の言葉が蘇る。―――――「死にたくなければ、《平常心》。」
どうする事もできずに、ただ京一の身体を支えていることしかできなかったオレは、ふと視界の中にその小さな傷を見つけた。いつものよう捲り上げた学ランの腕に付けられた、小さな、ホンの小さな引っ掻き傷。
あの時、憑かれたとはいえ子供を殴り倒すことが出来ずにいたオレを庇って付けられた傷。
こんな小さな傷の所為で………。オレを庇った傷の所為で…………。
『ひーちゃんは、どうしようもない《お人好し》なんだから、子供の相手なんてできないだろ!!。アイテムでも使ってるか、美里の所へでもいってろよ!!。』
顔は怒っていたのに、声は不思議と優しい響きだった。何故だか、いつもの京一らしくない瞳の光だった。
その光を浮かべたままで、言いながらオレ達の方に向かって来たOLらしい女性の鳩尾に、木刀で手加減した突きを入れていた。自分だって《女子供》には弱いくせに……………。自分だってお人好しのくせに………。なんで【相棒】クビになりかけてるオレを庇ったりするんだよ………。
「だめ……だ………。ひーぃ…ちゃ……ん………、俺…から……離れ…ろ………。」
「いやだ!!。」
「馬鹿……や…ろう………。この…まま……じゃ………、俺……は………、さっき……のヤツ…ラ……と…同……じ…に……お前…を…………。」
「馬鹿はどっちだ!!。弱気な事いってんじゃない!!。オレは絶対離れないからな!!!」
オレは、意外なほど弱々しい力でオレを突き放そうとした京一の腕の逆に握り締めて、その身体を抱き支えている腕に精一杯の力を込める。
この身体を苛んでいる苦痛を少しでも肩代わりできるように。京一の意識を少しでも繋ぎ止めておけるように。オレには、今それだけしかできないから…………。
『なんとかしろ、タマ!!。こういうのは、お前の管轄だろ!!!。』
『できるんなら、さっきの戦闘の時にでも何とかしてるよ。だいたい、【超陽氣発散体質】の京一や、【四神・白虎】の醍醐に憑依しちゃうような異常霊、俺にどうしろっていうの?!!。』
そうだ、京一の【陽氣発散体質】は無意識に(そこらの弱い怨霊はいうに及ばず)お稲荷さんにさえ喧嘩売って勝っちゃう非常識レベルだし。醍醐は【白虎】を守護霊獣につけてるんだ。一体、どんなヤツなんだよ、【憑依師】って。
向こうで、蹲ってしまった小蒔ちゃんに必死に呼びかけを続けていた葵ちゃんが、悲鳴のような声を上げる。
「みんな…………。どうしたら、どうしたらいいの?!。みんな―――――!!!。」
「京一先輩!。くっ!!、どうすればいいんだ!!!。」

その時、そんな大混乱をきたしているオレたちに、緊迫感を無視したノホホンとした声がかかる。
「なんや、人の枕元でそないに騒がんといてやァ。」
「誰―――――?!。」

なんか、オレ達に昼寝を邪魔されたって言ってるけど、こちとら、そんなノンビリ者に関わってる暇なんかないんだよ。
昼寝だろうが、夕寝だろうが勝手にやってろ。
中国だか韓国だか何処の国の留学生だか知らないが、それがどうだっていうんだ!。諸羽の命の恩人だろうが何だろうが知るもんか!!。
って、諸羽の命の恩人んんんっっっっっ?!!。
「それよか、そっちにおるんは病人かいな?。なんやったら、わいが診たるけど―――――って、少年。この池袋で何しおったんや?!。」
診るって、治せるのか?なんとかできるのか??おい、謎の関西弁(自称)留学生!!。
「あんたら、一体何を知っとるんや?!。隠さんと正直にいうてみィ!!。」
治してくれるんなら、何でも言ってやる。
どうせ、隠すほどのことじゃないんだ。そんなもん、京一達が元に戻るんなら、これ以上苦しまなくって済むんなら、《ヘ》みたいなもんだ。しろって言うんなら土下座だってしてやる。だから、とっとと京一達を治せ!!。
葵ちゃんも似たような考えだったのか、小蒔ちゃんを抱き起こしながらソイツに丁寧な言葉で事情の説明をはじめた。
「私達は此処で起きている事件を解決するために来たんです。敵の正体は突き止めたんですが、仲間がその人に…………。」
「詳しい話は後や。あんたらはさがっときぃ!」
「何をするつもりなの?!。」
「安心せえ。わいの【剄】は本場もんや。それに、わいは多分………あんたらの敵やない。」
なんか、意味ありげにこっちの方を見ながら、そいつは何か印をきりだした。
でも、オレも不思議とその言葉に、そいつの纏っている雰囲気に安心できるものを感じて、腕から力を抜く。
「ええから、さがっときッ!。――――― 我求助、九天応元雷声 晋化天尊 我窮 無上雷公 威名雷母 雷威震動 便滅邪―――!!。いっくで――――!!、アイヤ!。【活剄】!!。」
そいつの手のひらから清冽な青白い輝きが迸ると、京一達の体から翳のような何かが浄化されていく。
よかった。みんな、治ったみたいだ。もう大丈夫だよな。

そうして、無事に治ったみんなとその(自称)中国人留学生とで、(恒例の)自己紹介をする事になった。
なんか、まだ醍醐は青い顔してるけど大丈夫かなぁ?。自分の中に別のもんがいるなんて、オレの場合物心ついたころからの日常茶飯事だったからなぁ。そんなに嫌なもんでもないんだけど。
『ちょっと、ねえさん。俺をそこらの動物霊と一緒にしないでよ(怒)。言っとくけど、姉さんが憑かれなかったのは、俺がいたからなんだからね。』
『あっ、悪りい。感謝してるよ、タマ。』
あっ、自己紹介が始まった。こういう時は諸羽の礼儀正しさって有効だよな。
「あっ、この人はあの時僕を助けてくれた人で、今も不思議な技でみなさんから獣の霊を追い払ってくれたんです。えーっと、お名前は?。」
「ははッ、そうやったな。自己紹介がまだやったな。わいは台東区華月高校2年の劉 弦月。
今年の春に、知り合い頼って中国から留学してきたんや。まあ、よろしゅうたのむで♪。」
ソイツ、劉はそう言って、真っ直ぐにオレを見つめながら、その手をオレに差し出してきた。
その時、何故だかオレは不思議な感覚に囚われた。そうして、気が付いたらその差し出された手をとって自分の頬に押し当てていた。
何だろうこの感じ。なんか、知っている気がする。オレはこいつの【氣】って知ってる。もっと、柔らかくって大きな【氣】の誰かと一緒にいたような……………。
「ユエ………。」
気が付くと、オレの口から言葉が漏れていた。誰かがそう呼んでいたような…………。
「なっ、なんや、初めておうたのに、エライ親密な挨拶やなぁ。けど、わいも堅苦しいのは、嫌いやさかいにな。あんたとは、気があいそうや。」
劉は、オレから自分の手を戻すと、不思議光を宿した瞳でそのまま言葉を続ける。
「あんたなら、ユエって呼んでもろうてもかまわんよ。いや、そう呼んでほしいわ。」
「ちょっとまて、こら!!(怒)。」
と、思ったら、京一がオレとユエの間に割って入ってきた。
あっ、なんか京一がユエに突っ込みをいれてる。ユエも上手くボケてるなあ。聞いてるとすんごく楽しいや。って、こっちの自己紹介がまだなんじゃないか?。やっぱ、相手が名乗ったら自分も名乗らなきゃ失礼じゃないのかなあって思うんだけど………。
そしたら、また自己紹介再開。京一は、突っ込み勝負に負けて唖然としちゃってる。
あの顔って可愛いなあ。ふみゅ。頭撫で撫でしたいなあ。ってオレにはもう無理か(シュン)。手が寂しいなあ。
「さてッと――――、そういや、あんたの名前もまだきいてへんかったな。あんたの事も、わいにおしえてくれんか?。」
「【緋月龍麻】だよ。ユエとは《月》の字がお揃いだな。オレのことも好きに呼んでくれていいから。よろしくな、ユエ♪。」
そう言ってから、オレは寂しかったままの手でもう一度ユエの手を取ると、今度は押し当てるだけではなく、頬に擦り付けてみる。
うにゅっ、なんか京一にスリスリするのとはまた違った感じ。なんか、安心できる。やっぱり、不思議だなあ。
「………(汗)。ハハハッ。なんや、わい、えらい歓迎されとるようやな。」
だって、ユエは初めてあったはずの京一達を助けてくれたじゃないか。オレの大事な仲間達を。(いや、その中に約一名オレ的には《仲間以上に特別な大好きなヤツ》が混じってるんだけどさ。オレの一方通行だからなあ。うきゅきゅぅ。今、ちょっと相棒の座もピンチだし。)それに、ユエとは、なんか絶対に仲良くしなくちゃいけないような気がするんだ。
「だって、ユエはみんなの恩人だろ。それに、すっごく好きになれそうな楽しいヤツだと思うからさ。こういうの、ユエはイヤか?。」
「ぜんぜん。わいもあんたみたいな人と知り合えて、ごっつう嬉しいわ♪。ほんま、よろしゅうな、アニキッ!!。」
「うん。」
また新しい呼び方だな。アニキかぁ。なんか、ちょっと新鮮。姉さんっていうのは呼ばれなれてるけど。こっちの方が男っぽくて、オレ的にはいい感じ。ほんとにお兄さんになったみたいだ。
『何、馬鹿言ってんの。姉さんは、俺の《お姉さん》でしょうが(怒)。俺、アイツ嫌い!!。』
「さて、そんじゃ、そろそろ行きまっか!!。」
うきゅっ?!、ユエ、何処へ??。
「行くって。お前まさか、俺達に付いてくるつもりじゃねえだろうな?!。」
「もちろん、そうや。わい、困っとる友達見捨てておけるほど冷血とちゃうで。」
えっっ♪。オレ達に付いてきてくれるのか?。友達?!。ふみゅぅ。ユエって、やっぱ良いヤツ。
「いつから、友達になったんだ?。」
「なんだか、こんな展開前にもあったような気がするわ(笑)。」
本当にそうだ。知り合う仲間って、みんな頼りになって良い人ばっかりで嬉しいよな。
東京って、こんなに良い人ばっかりだと思ってなかった。オレみたいな、ガサツで我が儘な半端者の友達になってくれる人がいっぱいいるなんて、本当に良い所だ、うん。
『自分を知らないって、罪だねえ。また、姉さんに一人引っかかって《転んだ》か………。』
なんじゃ、タマ、《転んだ》って?。オレは道端の石っころじゃないぞ。お前と一緒にするな。
でも、ユエが一緒に来てくれるんなら、大歓迎!!。さっきみたいな技が使えるんなら、また変なモノ憑かされても、すぐに治してもらえばあんな思いしなくてすむもんな。
にゅにゅ。オレ、京一のあんな声もう二度と聞きたくないもん。
それに、ユエとはまだ一緒にいたいし。みんなもユエについてきてもらうのは異存なさそうだし。
って、京一。なんかお前だけすんごくイヤそうにしてるのは何でだ?。お前だって、助けてもらったろ。なのに、さっきからどうしてそんなにユエにつっかかるんだ。なんか、変だぞ。
それとも、まださっきの後遺症があるのか?。
『だから、罪だっていうんだよ。この男心の解らない《超鈍感爆裂娘》は………(溜息)。』
誰が鈍感だ!。それに、オレは真っ当な【女】じゃないんだから《娘》なんていうな。(怒)
「京一先輩…………。でも、この人は、劉さんは僕の命の恩人です。それに、京一先輩のことを助けてくれたじゃないですか。お願いです、龍麻先輩。劉さんも一緒に行ってもいいですよね?」
うきゅきゅっ、イイこと言うなあ、諸羽。お前もイイコイイコしたいぞ。
「勿論だよ。劉には、こっちからお願いして付いてきて貰いたいくらいだ。」
「じゃあ、いいんですよね!!。よかったぁ、ありがとうございます、龍麻先輩!!!。」
うにゅ、京一は何でそんなにイヤがるんだ?。鬱陶しいオレが仲良くしてるから、劉のことまでイヤなのか………。オレのことは仕方が無いけど、劉は京一の恩人でもあるんだぞ。
ふにゅう〜、そんなにオレや劉や諸羽に意地悪するんなら、ジーっと見つめちゃうんだからな。
「うっっ………(汗)。ったく、しょうがねえなぁ…………。まあ、確かに俺もこいつの刀術には興味あるし…………。好きにしな!!!。」
うっきゅきゅう。わーい♪。やったぁぁ――!!。京一も解ってくれたんだぁ。
『また、あの《必殺技》使ってるよ………(溜息)。京一には絶対に抵抗できるわけないじゃん。そうやって無意識で男心をを弄んでるんだから…………。いつか、しっぺ返しが来るよ。』
なんじゃ、《必殺技》って…………??。
第一いつオレが心を弄んでるっていうんだ。人聞き悪い。心なんて遊ぼうと思って遊べるモンじゃないぞ。自分のだって、ままならないのに。
タマはそんなにオレを、悪人にしたいのか?。自分だって、《悪魔の知恵持ちの玉》のくせにさ、にゅにゅん。


そうして、オレ達は、天野さんからの情報で、敵(今回は、【憑依師】の火怒呂って言う奴らしい。また高校生なんだって)が本拠地にしているらしい《東池袋中央公園》に向かった。
こないだ、京一とサンシャインに来た時にちょっと立ち寄った公園だ。そしたらタマが………、
『あ―――っっ!、思い出したぁ。あの時感じた嫌な【氣】と、帯脇についてた【氣】の残り香が同じだったんだ。それに今日、天野さんやさっきの京一達に感じた【氣】も同じ嫌な感じだったし。そっかぁ、あれ火怒呂っていう奴の【氣】だったのかぁ……。あはは……………(汗)。』
それじゃあ何か。お前がとっとと思い出してたら、火怒呂の奴の所へ直行できてたっていう事か。罠なんて関係なく、奴をぶちのめしてたっていう事か。京一達はあんな目にあわずに済んだって事か。そうか、――――――こぉんのぉぉ、能無し役立たず愚弟がぁぁ。いつか、【秘拳・黄龍】を10発は食らわせてやるかんな。覚悟しとけよ!!!。
『ひ――んんっっ(泣)。ごめんなさ――いぃぃ。今度から気をつけるからさぁ。…………でも、ユエと知り合えたんだから、プラスマイナス0じゃん。』
むうう、確かに。ちっ、今回はユエに免じて勘弁してやる。
ちなみに、此れをタマからこっそりと聞いたらしい京一も、何故か激怒していた。
何か「デートの邪魔をしやがった。」とか「チャンスを潰された。」とか、ブツブツ言ってたけど、そっかぁ、他の子と此処にデートに来たことあるんだ。ふみゅう〜。また胸がチクチクする。
なんて、胸のモヤモヤに気を取られてたら、信号の所で渡り損ねちまった。うっっっ、オレって最近本当に大マヌケ。
「しもうた…………。わいとアニキだけ渡り損ねてしもうた。しゃあない、大人しゅう《青》になるんを待とう……………。」
ああ、ユエもか。なんか、付き合わせちゃったみたいで悪いなぁ。
仕方がないので、信号を待っている間二人で話をしていた。此処の信号って、本当に待ち時間が長いや。
「なあ、アニキ。もしかしたら、わい、こんな風についてきてもうて迷惑やったんとちゃうか?。」
「何言ってんだよ。迷惑だと思ってたら『付いてきて欲しい』なんて言わないよ。本当に、一緒に来てくれて嬉しかったんだから。オレ、ユエとは本当に仲良くしたいんだ。」
そう言って、俺はまたユエの手を握り締める。ふみゅ。やっぱり、なんか知ってる感じ。
「アニキぃ………。わい、あんたに会えてほんまにめっちゃ嬉しいねん。…………わいは、この東京で、やらなあかんことがあるんや。………………せやけど…………、もしかしたら、あんたにも会えるんやないかと思うてた。占師だった死んだじっちゃんに、わいはよう聞かされとった。日本におる《緋月 龍麻》っちゅう奴と、いつか共に闘う為に出会うって。」
占師?。言われてた??。共に闘う???。
「ユエ…………。」
「それに、わいとあんたは昔一度会ってるんやで…………。ずうっと昔………………。あれは、たしか ―――――――。」
「おい、何やってんだよ!!(怒)。信号もう換わってるぜ。早くしねえと置いてくぞ、お前ら。」
あっっ、向こう側で京一が怒ってる。
うにゅ。急がなくっちゃ。些細なことで、これ以上嫌われたくないもんなぁ。
「って、もう置いてっとるやないか!!!。なんて、つっこんどる場合とちゃうわ。へへへっ。行こうで、アニキ。」
「うん、ユエ!!。」
って、二人で走り出そうとしたら、京一が剛を煮やしてこっちに走って来た。
「ほら、いつまでもそんな奴構ってんじゃねえよ。ひーちゃんがこなきゃ、何にも始まらないんだぞ。みんな待ってるんだからな。早くいこうぜ。」
そういって、ユエの手を握っているのとは逆の、オレの腕を強引にグイッと掴んで走り出した。
うきゅう、京一また怒ってるのかなぁ??。でも、これすんごく嬉しい。片方の手に京一、もう片方の手にユエ。呆れられてもいいから、このままでいたい。
「こら、あんさん。わいは無視かいな。」
「お前は勝手に付いてきたんだから、勝手にしろ!!。」
「でも、オレがユエの手握ってたら、同じだよ。ほら。」
「じゃあ、ひーちゃん。そっちの手、放せよ。」
「ヤダ。このままがいい。(キッパリ)」
「うっっ(汗)。………仕方ねえなあ。ひーちゃんの好きにしろよ。」
「うん。する。」
「……………(汗)。」
「だから、わいは無視かいな(泣)。」


そうして、オレ達は戦場へと足を踏み入れた。
また、一つの謎を解決するために。

『本当に姉さんって、罪作りだよねぇ。どうなったって、俺、知らないよ。』



* 京一



そうして、この一週間以上俺たちを振り回した、一連の事件の黒幕(あくまで、今回の蛇と獣憑きの件に関してのみ)若年性前髪後退デコピカ野郎は俺達にぶちのめされた。

とりあえず応援は、もし間違って変な霊に憑つかれても心の痛まない野郎共だった(雨紋、如月、アランだ)。
そうしたら、劉の奴が、「なんや、このメンバーなら、ちょっとやそっとの霊じゃ、憑依できんで。ごっつうナイスな人選や、アニキ!!。」だと。なんでも、既にとんでもなく強い守護の霊獣が憑いているらしい。なるほど、言われてみれば、【四神】の【玄武】と【青龍】に【雷獣】憑きだもんなあ。案外、タマあたりの入れ知恵かもな。
さらに、劉曰く「そっちの【白虎】はんが憑かれたてもうたんは、なんか精神にダメージくらっとったからやろ。気いしっかりもっとけば霊の方が逃げ出すで。」だそうだ。そういえば、池袋に着いてからずーっと何か変な目で俺と諸羽を見てたよな。何かあったのか?。アイツは見かけによらず繊細なヤツだからな。
ちなみに、俺も「京一はんも、なんぞ辛いことでもあったんか?。わいの見るかぎり【青龍】のお人と同じ位には【陽氣】が強いで。普通なら、ちょっとやそっとの霊じゃ近寄れんはずやのに。」だと。ああ、そうだよ。ここ数日間《極寒地獄》にいたからな。しかも、今日は午後から後悔と自己嫌悪の嵐だったしな。
だが、てめえなんぞにそんな事を指摘されたくねえよ。
ところで、劉。こともあろうに、俺をアランの奴と同レベルなんぞにするんじゃねえ(怒)。
それにしても、劉の奴はどうもいけ好かねえ。妙に胡散臭い、臭すぎる。
さっきの戦闘前のデコピカ野郎との遣り取りも、なんか納得いかねえ。絶対に、俺達の知らない何かを隠してやがるぜ。
だいたい、登場の仕方からして気に食わないんだよ。こっちが思いっきり醜態を曝しちまってる時に(いや、あの時ひーちゃんに抱き締められてちょっと幸せだったが)のほほんと顕れて颯爽と技を決めやがって。(助けてもらったのは感謝してるけどよ)
おまけに、ひーちゃんが初対面から懐ききってるんだぜ。業突く張り亀忍者の時でさえ、あんなに打ち解けてなかったんだぞ。
あまつさえ、ひーちゃんに(手とはいえ)ほっぺスリスリされるなんて到底許せるもんじゃねえ(あれは俺のだけの特権のハズなのに)。これに関しては、ド腐れ亀の野郎もドタマにきてたみたいだがな。(なんか、他にも関西弁がどうとかいってたが)

とにかく、鬱憤溜まり切ってた俺は、そこらの憑き物連中を亀忍者その他に任せて後退デコ野郎に特攻した。
なんせこいつには、ひーちゃんとの初デートの時に告白チャンスを潰された恨みもあるからな。人の恋路を邪魔してくれたツケはキッチリと払ってもらうぜ。って【細雪】を連チャンでぶちかましてたらよ、またしても、横槍。こともあろうに、ひーちゃんからの「方陣技で止めをさせ!。」とのお達し。しかも、劉と(いや、諸羽もいたが)。
俺にとっては、到底納得できる終わり方じゃあなかったえ。くっそう(怒)。

また、何かデコピカ野郎も変なこと言ってたが、そんな事は俺の知ったこっちゃなかった。

そうして、結局みんなで池袋でラーメンを食べて帰ろうという事になった。これまた、気に食わないことに劉の案内で。
まあ、ひーちゃんが喜んでるから仕方が無いが。此処でクレームをつけてこれ以上の関係悪化はゴメンだからな。

それにしても、俺、何時になったらひーちゃんにこの間の誤解を解いて貰えるんだろう。
あの時のことはいくら後悔しても足りねえ。折角、折角、折角のひーちゃんからの《キス》だったのに。あの時告白できていれば今ごろは【天国】だったのに。少なくとも、《キス》を自分からするくらいには俺のことを【相棒】以上に想ってくれてるって解ったのによ。(もしかしたら、ひーちゃんにとってはたいしたことじゃないかもしれない、っていう一抹の不安はあるが。)
あの時ほど自分を情けねえと思ったことはないぞ。しかも、その図星を指摘されてタマに八つ当たりするなんていう恥の上塗りをしちまってよ。
どうしてこう、ひーちゃんに関する事って俺は弱腰なんだろう。それが、本気で惚れてるって事なんだろうか。それにしたって、情けなさ過ぎるぞ、俺。天下の《蓬莱寺京一》の名がスタリきってるぜ。
そんな、恋する男の腐れた思考に沈んでた俺を、すぐ側で鳴っている携帯の音が引き戻した。
何だ、諸羽の携帯か?。
「………あっ、もしもし?………さやかちゃん?。うん。そう。こっちは終わったよ。……うん。皆さんも大丈夫。そう、…………で、さっきの件なんだけど……………。」
さやかちゃんからか…………。いいよなあ、もう出来上がってる奴は。しかも、天下のアイドルさやかちゃんだぜ。ファンにバレたら、諸羽おまえきっと《フクロ》だぞ。
でも、《フクロ》にされても本望なんだろうなあ。
俺だって、ひーちゃんと堂々と《恋人宣言》できるんなら、【熾天使の紅】だろうが、【鬼哭飛燕】だろうが、【雷神降臨乱舞】だろうが、【瀧遡刃】だろうが、【RIP SHOT】だろうが、まとめて受けて立ってやるくらいの覚悟はあるからな。そりゃもう、マジで。
「………そう、OK?………。じゃあ、こっちは頼んでみるよ。…………うん、きっとなんとかなるから……………じゃあ、あとでね♪。」
なんだ、さやかちゃんからの緊急の呼び出しか?。なんか、諸羽お前、顔が緊張してるぞ。
「…………あの、すいません。僕、ラーメンを食べに行けなくなっちゃいました。折角の劉さんお勧めのラーメンなんですけど…………。」
「しやーないわ。大事な人からの呼び出しなんやろ。また来ればいいんや。」
「そうだよ。霧島クン。さやかちゃんが待ってるんだろ。アイドルなんだから忙しいんだもん。早く行ってあげなよ。ボク、応援してるからさ。」
そうしたら、諸羽の奴、すっげえ、すまなそうに切り出してきたんだよ。
「……………あの、龍麻先輩。申し訳ないんですけど。一緒に来ていただけないでしょうか?。今、さやかちゃんに懇願されたんです。この間のプリンのレシピを是非とも教えていただきたいって。本当だったら、さやかちゃんが先輩の所にお伺いするのが礼儀なんですけど。さやかちゃん、新曲のレコーディングとキャンペーンの準備で時間が取れないんです。なんか、どうしても手作りで渡したい相手がいるそうなんですけど。それで、今晩少しだけなら時間が空くんです、なんとかこれからお時間を割いていただけけないでしょうか?。」
手作り渡したい相手って、お前のことじゃないのか?。
だいたい、そんな上目遣いにお願いされたら、《人外魔境のお人好し》のひーちゃんが断る事なんかできるわけがないぞ。
「いいよ。それこそ、ラーメンはまた来ればイイんだし。皆とはいつも食べてるからな。さやかちゃんの時間の方が貴重だろ。一緒に行くよ、オレ。」
ほら、案の定。美里達もしぶしぶって顔だけど、文句は言えないみたいだ。(アイドルは強し)
「あっ、それから、京一先輩!。この間お約束していた、さやかちゃんの隠しライブの《限定チケット》確保できたんだそうです。お手数ですが事務所の方に受け取りにきていただけますか?。数が限られているんで、迂闊に事務所の中に置いておけないんです。どこに流されるかわかりませんから。僕と一緒に行けば、事務所もフリーパスですんで、今からご一緒してください。」
へ?!。俺、そんなもん頼んでないぞ。第一、隠しライブがあることさえ知らなかったのに。
諸羽は、そのまま呆気にとられた俺と、困った顔をしているひーちゃんの手を強引に取ると、
「それでは、皆さん。もうしわけありませんが、此処で失礼させていただきます。さやかちゃんが待ってますので。先輩方をお借りしていきます。では、また…………。」
そう言って、異様に元気にぺこりと頭を下げると、俺たちを引き摺るようにして足早にその場を後にした。


「「おい、諸羽?!!。」」

諸羽は、そのまま俺達を、さっきの戦闘の場所からそれほど離れた所でもない小さな公園につれてきた。そうして、やっと手を放したところで、俺とひーちゃんは同時に疑問の声を上げた。
「ここに、さやかちゃんがいるのか?。どうもそうは見えないんだが。」
「事務所にも見えねえぞ。第一、チケットって何だよ?。」
当然の疑問の声が、諸羽に向けられる。
「あ、あれは両方とも嘘です。」
へ?!!。
諸羽は、いけしゃあしゃあと言い放った。(おい、お前。こんな奴だったのか?)
「今日、桜ヶ丘で高見沢さんに聞いたんです。お二人が、何か誤解で仲違いをなさってるって。それで、とっても悲しいって。もしよかったら、僕が京一先輩に力を貸してあげて下さいって。」
高見沢…………(汗)。本当に、一体何考えてるんだ、あいつは。
「僕も、今日のお二人を見ていて悲しかったです。それで、一生懸命考えたんです。僕に何ができるだろうって。それで、結局お二人のプライベートな問題なら、ウジウジ引き摺っていらっしゃらないで、一回全部とっぱらって二人だけでじっくりと余人を交えずお話し合いをしていただければいいんじゃないかって思いまして、さやかちゃんに頼んでおいたんです。頃合を見計らって僕の携帯に電話をくれるように。それで、僕が適当な理由をでっち上げて、誰もいない所にお二人の連れ出すからって。此処なら新宿じゃありませんから、蟠りなんて全部関係なくするのにいいんじゃないでしょうか?。と言う訳で、これからお二人で腹を割ってキッチリ話し合って下さい。先輩方は、本当に些細なことで仲違いをしていい方達じゃありません。言いたいことは言って、やりたいことはやっちゃって下さい。そうすれば、先輩方なら誤解で喧嘩なんて馬鹿な事は無くなります。」
諸羽、お前……………。
「「……………………。」」
「それじゃあ、僕はここで失礼します。んで、お二人共ちゃんと話し合って下さいね♪。」
そういって、悪びれもせず頭をぺこりと下げると、あっという間に公園から出て行ってしまった。

暫くは、俺もひーちゃんも成り行きについていけずに、無言でそのまま立ち尽くしていた。
だが、その沈黙に耐え切れなくなったのか、先に口を開いたのはひーちゃんだった。
「…………この間はゴメンな。泣いちゃったりして。すごっく女々しかったよな。軽蔑されても仕方がないよな。」
「ひっ、ひーちゃん……………。」
「でも、京一も悪いんだぞ。正直に言えって、イヤなら言えって言ったのに…………後で、無視したりするから。ちゃんとイヤだって言ってくれたら、二度とあんなイヤがられるようなことやったりしないのに…………。このまま【相棒】でいさせてくれるんなら、もっとちゃんと男らしくするようにしたのに……………。」
月明かりの中に浮かぶ、奇跡のような美貌の俺の《女神》の表情が歪む。まるで泣くのを必死に堪えてでもいるように。
それだけで、俺の胸が音を立てて軋む。
あれだけ考えていた弁解の言葉が、口から出てこない。
「………だから、京一もちゃんと正直に言えよ。怒るのも、呆れるのも、それからにしてくれよ。京一が優しいのはオレが一番よく知ってるから。変な遠慮や同情なんてしてもらっても、その方がオレは惨めだから。キチンと言ってくれるんなら、オレ、何でもするからさ。だから、せめてオレを…………。」
「…………誤解だよ。」
「だから、正直に…………。」
「だから、ひーちゃんの誤解だって言ってるだろ!!!!!。」
俺はそう叫ぶと、ひーちゃんのそのしなやかな身体を抱き寄せ、強引に唇を奪った。
あの時と同じ柔らかくて暖かい感触。
ひーちゃんは突然の俺の行為に驚いたのか、そのまま呆然としている。
その抵抗のなさに、俺はそのまま腕の中にひーちゃんの身体を抱きこむと、啄ばむような口づけを続けた。そのまま何度も何度も唇を合わせつづける。
「……ん………。」
唇を合わせつづけることで息苦しくなってきたのか、ひーちゃんの体から力が抜けその朱唇が緩むと、俺はその緩んだ隙間から舌を滑り込ませる。
「!」
そのまま舌を絡めとり、ひーちゃんの熱く甘い吐息を味わう。
思いの丈を込めた、深い口付け。俺の思いが少しでも伝わるように。
吐息を、鼓動を重ねて。お互いの想いまで重なるように。

ひーちゃんの体から完全に力が抜け、俺の腕の中にその身体を寄り掛からせてきた処で、俺はその唇を名残惜しげにだが開放した。
いつのまにか、その瞳に溢れていた涙を、離れたその唇で拭い取る。
そのまま、俺は開放された唇で荒い息を繰り返す、ひーちゃんの身体を支え抱き締め続けた。
暫くたって、ひーちゃんの呼吸が落ち着いてきたところで、俺は尋ねる。
「今の………、イヤだったか?」
「……………。」
ひーちゃんは、まだ呆然としたままだ。
「イヤだった見たいだな。」
「…………………。」
「ごねんな、ひーちゃん。」
「…………ち……が………う……。」
するとひーちゃんは、まるで振り絞るように言葉を紡ぎ出す。
「ひーちゃん、違うのか?。イヤじゃなかったのか?。」
「………ちが……う。イヤ……じゃな…い。」
「ハッキリ言ってくれないと、俺にはわからねえよ。」
「………イヤなんかじゃない!!。」
ようやく意識がはっきりとしてきた様子のひーちゃんは、まるで怒ったように俺に言葉を返してきた。
「ちがう、イヤじゃない。イヤなことなんかじゃない!!。だから、京一が謝ることなんかないんだ。ただ、驚いて……、突然だったから驚いて………、今みたいなのは初めてだったから驚いちゃったんだ…………。だから………、だから………。」
また、溢れそうになった涙を、今度も唇で拭い取ってから、俺は言葉を続けた。
「………同じだよ。」
「うきゅ?!!。」
「あの時の俺も同じだってこと。……あの時のは、俺にとって突然で、すっごく驚いてて、イヤじゃないっていうのがやっとだったんだよ…………。情けにないことにな。そりゃ、呆然としちまって約束すっぽかしちまった形になった俺も悪かったけどよ。ひーちゃんだって悪いんだぜ、あんな不意打ち仕掛けてくるから…………。」
「京一…………。ふみゅみゅ〜。」
「しかも、タマが何て言ったか知らねえけど、俺の『イヤじゃない。』って言葉を信用してくんなかったんだから、酷いぜ。その前に『これからは信用してやる』って言ったくせによ。」
「ふみゅう、じゃあ、オレのこと怒ってたりとか、呆れてたりとか、イヤなことをする鬱陶しいヤツとか思ってたんじゃないのか?。触られたりするのがイヤじゃないのか?」
ひーちゃん…………(汗)。どっから、そんな発想がでてくるんだよ?!。タマ、あんにゃろう。ひーちゃんに何を吹き込んでやがったんだ。(怒)
「俺が、いつそんなこと言ったんだよ。俺よりタマの勝手な解釈を信用するのか?。本当に俺のこと信用してなかったんだな。相棒として悲しいぜ。」
「うにゅうぅ〜。ゴメン。」
ああああっ、小さくなっちゃってるひーちゃん、激烈に可愛いぜ。
「まあ、これでおあいこだからな。チャラにしようぜ。って、じゃねえか。俺の方が、この間のひーちゃんがやったのよりすごいことやっちまったからなあ。」
うーん。よく考えると収支黒字かもしれねえ。軽いキスは何回したのか覚えてないぞ。
「………えーと(汗)。まあ、諸羽もやりたいことやってスッキリしろって言ってから、この際だ、まとめてやっちまおう。ひーちゃん、俺に何して欲しい?何をやりたい?。俺がやりたいことと言いたかったことを先にやっちまったから、今度はひーちゃんの番だぜ。そうしたら、その次は、この間の夜に俺が言い損なった事を聞いてくれよ。なっ♪。」
できれば、いつもの《抱き付いてほっぺスリスリ》攻撃してきてくんないかなあ。なんか、劉のヤツにもやってたのが無性に悔しい。今なら(この学ランの格好なら)、俺の理性も余裕があるから、充分に堪能できるはずだ。(いつも、それどころじゃないからなあ。理性がピンチで)
それから《愛の告白》しちまえば、完璧だ。
ひーちゃんは、一瞬小首を傾げて考えると(くーっっ、爆発的に可愛いぜ)、すぐに俺に向かって微かに頬を染めながら言葉を発した。
「うにゅぅ。…………じゃあ、さっきのヤツもう一回。」
へ?!。ひーちゃん、それマジ?!!。
「ひっ、ひーちゃん。さっきのヤツって、さっきの《あれ》全部?。最初から最後まで??。」
「…………うん、全部。なんか、最初は驚いたし、ちょっと息が苦しかったけど、すんごく気持ち良かった。この間俺がやったのより、何か安心できたし。へんな胸のチクチクが無くなった。京一の事すぐ近くに感じられた。」
ひーちゃん、それ嬉しすぎ。そんなに俺を喜ばせてどうすんだよ。(ところで、胸にチクチクって何だ??。なんか、ヤバイ表現だぜ)
「ダメか?。もうやるのイヤか??」
上目遣いのおねだり攻撃かよ。ひーちゃん、それ犯罪だ。(理性、ちょっちヤバイかも)
「イヤなら、俺の方からやったりしねえよ。俺も安心できるからな。」
俺は、片手でひーちゃんの腰をしっかりと抱き締めると、残った方の手をひーちゃんの顎にあてて、その奇跡のように美しい顔を心もち上に向かせながら、顔を近づけて囁く。
「ひーちゃん、いや、龍那の望むままに…………。」
そうして、俺は誘うようなその唇に、再び俺のそれを重ねた。
さっきと同じように、何度も啄ばむようなキスを繰り返す。何かを確かめるように何度も何度も。そうして、唇が緩んできたところで口付けを深くし、また舌を、吐息を絡めあう。
今度はさっきとは違い、ひーちゃんもその行為に、たどたどしいが積極的に応じてくる。
お互いの全て味わおうとするかのように、吐息さえ一欠けらも逃さぬように、全てを貪るように、深く深く。そして、同じように想いを、鼓動を重ねあう。

さっきよりも、長い長い口付け。

ようやく唇を離した時には、ひーちゃんは立つ事すら出来なくなっていた。力の入らない体で、必死に俺に抱き付いてくる。
深い溜息をついて、潤んだ瞳で俺を見つめてくるひーちゃんも耳元に、俺は吐息と共に囁くような言葉を紡ぐ。
「気が済んだら、今度は俺の話を聞いてくれるか??」
ひーちゃんは、ゆっくりと頷きを返してくる。
「あのな、この間俺が話したかったのは、俺のひーちゃんへの…………。」
俺がひーちゃんへの、言葉を続けようとしたその時だ。
「アネキに何しとるんや!!!。」
その怒号と共に、俺達の足元で【氣】の光弾が大きく弾けた。
その声に、咄嗟にひーちゃんの身体を抱きこんだまま、臨戦体制をとった俺の視界の飛び込んできたのは、
「ふにゅ!?、ユエ??」
「りゅっ、劉?!」
なんで、アイツがこんな所に乱入してくんだよ。しかも、今アイツ、アネキって言わなかったか?
「なんや、アネキのことが気になって【氣】を辿って追いかけてきたんやけど、大正解や。こないな所でアネキに不埒なマネ働こうとは。いくら京一はんとはいえ、わい、許さへんで。【相棒】って言ってるアネキを裏切る気なんか!!。」
「誰が不埒だ、誰が!!。これは、ひーちゃんの希望だ。俺がひーちゃんを裏切るわけないだろうが。てめえ勝手な勘違いしてんじゃねえ!!。」
俺は、思わず状況を忘れて、怒鳴り返していた。そうしたら………。
「(突然)そうですよ。劉さんこそ、なんてことしてくれるんです!。やっと仲直りして下さったお二人の邪魔をするなんて。変な勘違いをしないで下さい!!。」
俺達の背後の木の蔭から、今度は諸羽が飛び出して来た。
なっ、何でおまえ(汗)。さっきどっかへ走っていったハズなんじゃぁ…………(汗)。
「すいません、京一先輩。僕、先輩方がちゃんと仲直りできたかどうか心配で戻ってきたんです。大丈夫です。今見た事は、絶対に他言はしません。僕は、たとえ先輩方が《ホモ》でも尊敬していますから。」
「もっ、諸羽…………(汗)。」
誰が《ホモ》だ、誰が!!(怒)。貴様まで、変な勘違いしやがって。
そう俺が怒鳴りつけてやろうとした時に、今度は俺がその存在をすっぱりと忘れていた《オマケ》が、諸羽と劉の間に突然しゃしゃり出てきて、喚きだした。
『ちょっと、霧島君。変な誤解をしないでくれる!!。うちの姉さんはれっきとした《女》なんだからね。《ホモ》だなんて、姉さんと京一に失礼でしょうが。それから、ユエ!!。せっかく良い所までいってたのに、よくも邪魔してくれたねぇ(怒)。またぞろ、二人の関係が拗れちゃったらどーしてくれんのさ!!。折角のチャンスだったのにぃぃぃぃ………。』
たっ、タマ。貴様まで。(いや、よく考えたらタマいるのは当たり前なんだが。)
「勘違いって………ホモって………(汗)。あっ、あんさんが、もう一人の【龍麻】はんなんか?。わいが二人の邪魔って………・・。」
へ?!。劉のヤツ、タマのこと知ってんのか?。
「…………アネキって?。………。姉さんって??。…………《ホモ》じゃなくって、それに、小さな龍麻先輩が…………?????(汗)。」
諸羽のヤツは、あっけにとられて、呆然としちまってる。おい、これどーすんだよ。
『あ――――――――――っっっっ、しまったあぁぁぁぁ。あんまり腹立ったんで、つい出てきちゃったぁぁぁぁ。どーしよう、どうーしよう。うわぁ――――――んっっ(泣)。』
こら、タマ!。てめえ、勝手に事態を混乱させといて、俺より先ににパニくるな!!。パニクリたいのは、こっちだってんだ!!。
腕の中のひーちゃんはといえば、あまりの展開に呆けちまってる。
てめえら、このお邪魔虫ども!。人のラブシーンをデバガメした挙句、折角の良い雰囲気をぶち壊しやがって。
しかも、やっと掴んだ(待望の)告白チャンスを木っ端微塵に粉砕してくれたな。
もう許さねえぞ。そこに直りやがれ!!!。
「てめえら、いい加減にしやがれ!!!」
ブチ切れた俺は、そこでパニックに陥ってる馬鹿どもを一喝する。
「きょっ、京一はん(汗)。」
「あぁぁぁぁ、すいません、京一先輩ぃぃ。」
『ちょっ、ちょっと京一、落ち着いて…………(汗)。』
「人の恋路を邪魔する奴等はなあ……………。」
俺は、足元に落としちまっていた木刀を拾い上げると、片手でひーちゃんを抱きかかえながら、もう片方の手でゆっくりと全身の【氣】を木刀に込め、渾身の叫びと共にそれを開放した。
「全員まとめて地獄に落ちろ!!。【剣聖・天地無双】ォォォ!!!。」


怒りに我を忘れれていた俺は、まるで夢見るように呟かれたひーちゃんの声に気付かなかった。

「京一、さっきの。頼んだら、またやってくれるかなぁ…………………うにゅ。」



* 弦月



ブチ切れてもうた京一はんの一撃で、その小さな公園は壊滅してもうた。
なんとか呆然自失状態から戻って来たアネキがとりなしてくれたおかげで、わいらの命はかろうじて助かったんやけど。やりすぎや、京一はん。(いや、邪魔してもうたわいが悪いと言われれば、しゃーないんやけど)
とりあえず、騒ぎになる前に慌てて近くの大きなビルの広場の隅に場所を移す。
そうしてから始まったのは、(主に霧島少年への)事情説明会やった。
「…………はあ、えーっと、龍麻先輩は実は女性で、その《小さな龍麻先輩》が先輩の双子の弟さんのタマさんなんですね。それで、このことは他の方々にはとりあえず内緒にしておく。って、こんな感じでよろしいんですか?。」
霧島少年は、律儀に一つ一つ確認しながら肯いてる。なんや、ほんまに生真面目ぇな子やなぁ。
『そんなとこかな、頼むね霧島君。俺達にもイロイロと事情があるんだ。申し訳ないんだけど、さやかちゃんにも内緒にしておいてくれる?。』
「はい、勿論です、タマさん!!。なんか、京一先輩方と共犯者になれたみたいで、僕ワクワクします。だから気にしないで下さい。」
と、ここでタマはんは、結構据わった目でわいに突っ込んできた。
『それで、ユエ。君は何で姉さんのこととか、俺のことを知ってたの?。ちゃーんと答えてくれるかな。言っとくけど、俺にはボケとツッコミの誤魔化しは効かないからね。』
うっっ…………(汗)。流石、本来の【黄龍の器】。弦麻はんの長男。わいのもう一人のアニキ。ちっこい今の状態でも、迫力あるわ。
本当にヘタな誤魔化しは効きそうにないな。
一応、じっちゃんからアネキのことは聞いてるけど、まだ全部言う訳にはいかへんからなぁ。
「別に隠すつもりやなかったんやけど。………わいのこの片目なあ、ちょっと特殊事情でその手の目晦ましって効けへんのや。だから、初めておうた時からタマはんの事は見えとったよ。んで、アネキとの会話も聞こえとったんや。だからや。」
とりあえず、嘘やない。わいのこの目に目晦ましが効かないのは本当や。
だから、今日はたまげたんやで。火怒呂との戦闘中、日が沈んだ瞬間にアネキが突然、楊貴妃もかくやっていう絶世の美女に変わってもうたんやから。あんまり美人さんなんで、わい、金縛ってもうて、危うく刀落っことしてまうとこやったわ。
わい、アネキの本当の姿って、赤ん坊の時の顔しか知らへんかったから。
思わず、アネキがこんなに超絶美人さんやったら、アネキのお母はんも相当な美人さんやったんろうなぁ、なんて馬鹿なこと考えてもうたで。(弦麻はん、意外とスミに置けんお人やったんやな)
『ふーん、とりあえず嘘じゃないみたいだね。でも、他にまだ何かあるんじゃないの?。』
うっ。鋭い。本当に侮れんお人やなぁ。
「こら、タマ。あんまりユエを苛めるな。誰にでも言いたくない事ってあるんだ、オレ達みたいにな。別に、そんなに急いで追求しなくてもいいだろ。その内ちゃんと話してくれるさ。」
う―――っっ、やっぱアネキってエエお人や。京一はんなんかには勿体無さすぎるで。
でも、アネキが京一はんがいいっていうんなら、しゃーないわ。
「そやな、アネキが本当の名前を教えてくれるんなら、わい、もうちょっと正直になるわ。」
そういえば、じっちゃん、アネキの本当の名前まで教えといてくれへんかったからな。
「あっ、僕も知りたいです。そりゃ、タマさんはタマさんで、龍麻先輩は龍麻先輩で良いんですが、知ってたほうがいろいろ便利なんじゃないでしょうか?。」
そうしたら、それまでタマはんに説明まかせてそっぽ向いてた京一はんが、(いや、気持ちは解かるんけどな。ラブシーンを思いっ切り邪魔してもうたんやから。)
「教えてやることないぜ、ひーちゃん。諸羽には必要ねえし、劉は勝手にさせとけ。」
って、喋ろうとしたアネキの口を塞いでしもうた。
「………モゴ……でも、京一………。」
「ひーちゃんの名前を、俺以外のヤツに教えるのは、俺がイヤなんだ。」
「みゅっ。何でイヤなんだ?。」
「とにかく、イヤなものはイヤなんだ。ひーちゃんの名前を俺以外のヤツが知ってるのはな。」
そういうて、京一はんはますますアネキを腕の中に抱き込んでいく。
「………うにゅう、京一がイヤならしょうがない。ごめんな、ユエ、諸羽。」
ああああ、アネキがそんなすまなそうな顔する事ないんや。大人気ない京一はんが悪いんやから。
男の嫉妬は醜いで。
まあ、このアネキが相手やったら、しょうがないかもしれへんけど。
(名前の方は、今度こっそりとタマはんにでも聞いとこう)

わいは、京一はんと、その腕の中にいて困った顔をしているアネキを見比べると。ニッコリと笑って二人に近づいた。
「なあ、京一はん。さっき邪魔してしもうたお詫びや。受け取ってくれるか?」
「なんだよ、受け取るって??。」
「たいしたもんやない、これや。」
 バキィッッ☆。
わいは、力いっぱい京一はんをぶん殴った。(勿論、アネキに被害が及ばないようにや)
「きょっ、京一ぃ!!。ユエっっ?!。」
「てめえ、劉。なにしやがる!!。(怒)」
おお?!。踏み止まっとるやないか。流石やな。
「へへへっ、あるお人との約束でな。ほんとなら、あんさんには3発は入れなあかんとこを、残りの2発まけといたるわ。それが、お詫びや。」
そう言って、二人から遠ざかる。

わいの、瞳に焼き付けられた。彼の人の最初の《願い》。

『もしもユエくんが、この子の【運命】に逢った時、その人を《お義兄さん》って呼んでもいいって思ったら、そう認めてあげるくらい良いヤツだったら…………。』

楽しげに紡がれた言葉。

『ソイツのことを、俺の代わりに2・3発ぶん殴っておいて欲しいんだ。だって、俺と迦代の大事な大事な可愛い《一人娘》を取ってちゃうんだよ。それくらいされても仕方が無いよね。そう思わないかい?、俺は《極めつけの親バカ》なんだから当然だよ…………。』

でも、真剣な思いの末に語られた言葉。

『そうしたら、今度はユエくんがソイツのことを助けてあげてくれるかい?。きっと、いっぱい苦労するだろうから、辛い目にも逢うことになるから…………。』

未来への、精一杯の希望を込めた《想い》

『…………お願いだよ。』


「ほな、またな♪。アネキ、京一はん、タマはん。」
わいは、呆気に取られているアネキ達を背にして、また雑踏の中に足を向けた。

今度は未来への道標を見つめて・・・・。



 ⇒ TO BE NEXT STORY・・・・・・・・



□ 「リベンジだ!! & 結成!!【真・阿修羅活殺陣】トリオ対談」

京一「よっしゃぁぁぁ!!。やったぜぇ。これでもう甲斐性無とは言わせねえぞ。壬生だろうが、村雨だろうが、いつでも来いってんだ!!!。」
峠之「まあ、仕方ないな。前言撤回はしてやろう。一応(援護付とはいえ)、自力で先に進んだからな。精進は認めてやらねばなるまいて。」
龍麻「でもさぁ、手と体を使えと言われて、そのまま手と体と口を使っちゃうあたり。直接的というか、短絡的というか………。《割れ鍋に閉じ蓋》カップルとは、このことだよねぇ。」
京一「やかましい!。事態を引っ掻き回した挙げ句、イジケてた役立たずは黙ってろ!!。」
龍麻「ぐっっ。(反論出来ない)。」
弦月「わいは、なんや、激しく順番まちごうとる気がするんやけど………。」
諸羽「そんなの、終わりよければ問題なんてありません。京一先輩、《逆襲のディープキス》×2、おめでとうございます。」
京一「…………(汗)。諸羽、お前その表現やめろ。なんか、すごく馬鹿にされているような気がするから。それから、劉。順番訂正の為の《告白》を邪魔したのは、貴様だ!!。」
弦月「それは悪かったと思うとるわ。せやかて、仕方がないやないか。わいは、アネキが大事やっただけや。それに、デバガメよりましやと思うで。」
諸羽「いいじゃないですか、京一先輩。ハタからみたら、やる事やって立派にデキ上がって見えるんですから。順番なんて〈へ〉のカッパです。告白なんて、いつでもできます。たいしたことじゃありません。」
龍麻「霧島君、それってすんごく甘い考え。あの《爆裂・超鈍感・世間知らず迷惑娘》の姉さんを侮っちゃ駄目だよ。」
京一「諸羽、お前なあ。いつでも出来るんなら、俺はここまで甲斐性無し呼ばわりなんかされてねえぞ。」
諸羽「はあ………。そんなもんなんですか。でも、次は待望の【餓狼】なんでしょう?。【陰】行きの。さっきも、『壬生なんて、いつでも来い!。』って言ってたじゃないですか。」
京一「そりゃあそうだが………。」
峠之「あっ、それ違う。【餓狼】行きは、まだちょっと先だ。」
京一「なにいぃぃぃぃ??!!。おい!。ちょっと先とは、どういうことだ(怒)。」
峠之「だって、《あの》龍那をこの状態のまま【陰】に連れて行くのは無茶苦茶不安だ。まだまだ、(こと恋愛に関しては)お子様なんだもん。このまま18禁にいったら、お前、犯罪者だ。まあ、ちょうどネタはあることだし、番外編か番外編モドキの本編を2・3回いれて、もう少し龍那の情緒を成長させようかなあと思ってな。だいたい、お前だって、結局今回も《愛の告白》は成功してないしぃ。」
京一「うっ…………。(汗)」
龍麻「…………一応正論を、述べてはいるみたいだけどさ。建前は建前として、ちゃんと素直に本音も言ったら。まだ《全編シリアスの18禁話》を上手く書く自信全然がありません、ってさ。今回の《あれ》だって、七転八倒して頭かかえながら書いてたくせに。」
峠之「わぁ―――――っっっ!!!(焦)。そんなこと、はっきりとバラすなぁぁぁぁ。」
京一「おいっっ、こら、貴様ぁぁ。(怒)」
諸羽「無様というか、情けないというか……(溜息)。」
弦月「精進が必要なんは、あっちの方やったみたいやな。」
龍麻「…………(意味ありげに)ふーむ。このまま暫くは番外編が続くのか。そうだとすると、京一は相当悲惨なことになるねぇ。」
京一「………なっ、なんだよ。悲惨って。(嫌な予感)。」
弦月「へ?!。なんや、今回あないにできあがってしもうてるんやから。幸せなことはあっても、悲惨なんてことあらへんはずやろ。」
諸羽「そうですよ。だいたい、また痴話喧嘩でもされたら、僕困ります。」
龍麻「喧嘩とは違うよ。まあ、ある意味では幸せだろうけどね。………いやさあ、姉さん今回で京一(の理性)にとって、結構ヤバイ攻撃技を習得しちゃったから。」
弦月「なんや、ヤバイ攻撃技って?。」
龍麻「…………《ディープキスのおねだり、上目遣いオプション付》。」
諸羽「どこがヤバイんです?。それって、単に京一先輩が嬉しいだけじゃ…………。」
龍麻「それだけならね。ところでさぁ、当然のことながら、ここからの番外編って恒例の《サービス・ショット》は必ず入るんだよねぇ?。」
峠之「何を今更。あれは峠之の潤いだ。今回、ページと場所(池袋)の都合で入れられなかったから、すんごく悔しかったんだ。次回からは、脳味噌を雑巾のように捻じって絞り尽くしてでもネタを考えて入れるぞ。まあ、インパクトは前回までのに負けるかもしれんが。」
龍麻「っと言う事はだ。京一がどういうことになるかというと…………。『毎回毎回、(程度の差こそあれ)エッチ臭い格好をした美人でナイスバディの(ベタ惚れしている)想い人に、抱き着いてほっぺスリスリされた挙げ句に、上目遣いに、こう、おねだりされるわけだ。『こないだみたいな気持ち良いキスしてくんないのか?』ってさ。』
諸羽「そっ、それは………(汗)。」
弦月「むっちゃ、凶悪やなぁ。」
龍麻「あの短絡思考の姉さんのことだもん。今回で味を占めちゃったから、次回から絶対に繰り出してくるよ、このコンビネーション攻撃。その場合、今までだって滅殺寸前だった京一の理性はどうなると思う?。」
弦月「粉微塵に爆砕されるやろなぁ、きっと。」
諸羽「いえ、原子レベルまで電気分解されると思いますよ、僕。」
京一「…………。」
龍麻「ところがだ、いくら京一の理性が破壊されようとも。」
峠之「いっぺん公言した以上、【餓狼】までいかなきゃ、《あれ》以上は絶対にやらせんからな、私は。必ず横槍を入れてやる!。(断言)」
龍麻「ということ。つまり、毎回毎回【寸止め】、もしくは【おあずけ】をくらっちゃうわけだ、京一は。【餓狼】に行くまでの間、何回になるかわかんないけどね。」
諸羽「それって、《生殺し》って言いませんか?。」
弦月「思いっきり、《生殺し》や。それも、かなり質の悪いヤツやで。」
龍麻「っていうわけで、京一のこれから辿る運命はわかってくれたかな?。まあ、人によっては違う考え方もあるかもしんないけど。」
諸羽「よーっく、わかりました。本当にある意味では幸せですよね。」
弦月「ほんま、ようわかったわ。わい、《弟》でよかったで。」
京一「こらっ(怒)、てめえら、他人事だと思って、納得してるんじゃねえ!!。」
峠之「……………(ガサゴソ)ふふふふふ。んじゃま、私はちょっくら情報収集と修行の旅に出てくるから。帰ってきたら、《女王様》だろうと《バニー》だろうとシュチュエーションをでっち上げてやるから。楽しみにしておけよ、京一!。………ふふふ。【寸止め】♪。ふふふ♪。」
京一「ちょっと待ったらんかい!!。(焦)」
峠之「なんだ?。〈番外編をとばせ〉とか、〈サービスをやめろ〉とかいうのは聞く耳持たんぞ。」
京一「いや、どうせ回避できない運命なら、この際開き直ってやる。頼むから、《裸エプロン》は【餓狼】の後に入れてくれ。」
峠之「はあぁぁ??!。」
京一「そうしたら、充分に堪能でき…………。」
   ちゅっど―――――んんっっっ☆
京一「(直撃)どわぁ――――――――ぁぁぁぁぁっっっ!!!。」(バッタリ)
諸羽「・・・・・・・・・(汗)。」
峠之「馬鹿め。【陽】にあるまじきことをほざくからだ。」
諸羽「…………(汗)今の、【秘拳・黄龍】でしたよね。しかも、最大パワーの。」
龍麻「………そうだね。しかも、一切手加減抜きだったみたいだ。うん。」
諸羽「…………(汗)今の、天(↑)から繰り出されてきませんでしたか?。」
弦月「…………ああ、そやな。弦麻はんやろ、きっと。」
諸羽「そういうの、ありなんですか?。」
弦月「あんのお人なら、なんでもありや。なんせ、《極めつけの親バカ》なお人やから。」
龍麻「俺と姉さんの実の父親だもん。何をしでかしたって不思議じゃないよ。」
諸羽「それで納得できちゃう、自分と皆さんが怖いです。」
峠之「それじゃあ、ちょっと行ってくるから。この馬鹿の事はヨロシクな。」
諸羽「任せておいて下さい。」
弦月「まあ、面倒みたったるわ。(ノビてる京一に)一応、【活剄】!!」
龍麻「そっちも、せめて《ナメクジ》から《亀》くらいにはなって返ってきてね。」
峠之「やかましい!!。」



□ 「なんやかんやだ、内情暴露の追加対談」

諸羽「それにしても。僕がいうのも何ですけど、この話ぐらいじゃないですか、【真・阿修羅活殺陣】年少組がここまで出張ってくる《京一×女主》の話って。」
弦月「そうやなあ。わいはともかくとして、霧島はんの場合は珍しいんやないか。しかも、ここまで暴走しとるんは。」
龍麻「まあ。普通は【紫龍黎光方陣】トリオの方が出張ってくるのが圧倒的に多いよね。」
峠之「(ちょっと戻って来た。)だって、あっちはまだ(【魔獣行】の段階では)壬生と村雨が出揃ってないんだもん。一応順番通りにストーリィを辿っているんで、こないだみたいな反則技(【緋いリボンの〜】の時の壬生)でも使わなきゃ出せないんだ。そうしたら、本編の方で出張らす訳にはいかないじゃないか。」
諸羽「だからって、僕をあそこまで暴走させることはないんじゃないですか。」
龍麻「仕方ないよ。この人、《自称:設定マニア》でびっちり設定作るの大好きで『キャラの暴走が恐い』とか言ってる割には、実際にキャラを暴走させまくる常習犯だもん。俺や姉さんだって(当初の設定より)かなり暴走してるんだし。前にTTRPG小説で、《人間嫌いで、陰のある儚げなハーフエルフの美少年魔術師》の設定のキャラを、《やたらめったらに攻撃呪文をブチかまし、女装癖ありの熱血暴走[女王様]美少年魔術師・兼・拷問係》にしちゃった前科があるくらいだよ。あの程度で済んでよかったんじゃない。」
諸羽「っそ、それは確かに…………(汗)。」
峠之「(焦)こら、お前、人の過去の汚点をあっさりバラすな!!。」
龍麻「だからこの話だって、わざわざストーリィに沿ってるんじゃなく、順番通りにしか書けないんだよ。いつ、どんなキャラが暴走して性格や設定が変更を余儀なくされるかわかんないから。先の話書いてつじまが合わなくなっちゃうのを恐れてるんでしょ。既に書き途中だった番外編、「胸騒ぎの女神」(1月初めの話)を(姉さんの性格)設定変更の為に凍結せざるおえなかったんだから。」
峠之「だから、内情をバラすな―――――ぁぁぁ!!!!」
龍麻「だいたい、また正論ぶった建前を言ってるけどさ。本当は、ユエと霧島君の出番が多いのは、単に年下の少年を書きたいだけじゃん。この人、筋金入りの《ショタコン》なんだから。」
弦月「それ、わい、知ってるで。《キャプ○ン翼》の《自称:「馬鹿は馬鹿でもサッカー馬鹿だ!!」の主役》に入れ込んで以来、自分より年上もしくは18歳以上のキャラは《アウトオブ眼中》なんや。確か、入れ上げたキャラの平均年齢は15歳やったはずやで。」
諸羽「…………(汗)。それは………(病気なんじゃ?)」
峠之「だーかーらーぁぁ(涙)。おまえら、私をイビッてそんなに楽しいか?。」
龍麻「だって、今回の話。伏線三回も使って大ボケしてたりとか。イジケて馬鹿言ってるとか。俺ってば、全然良いトコ無しなんだもん。ユエばっか美味しいトコを取ってってさ。ライバルの俺の立場ないじゃないか。悔しいからあんたも道連れになってよね。」
峠之「だうぅぅぅぅぅ――――――っっ(号泣)。お前、いつからそんな性格捻じ曲がったんだ。そんな子に育てた覚えは無いぞ。」
龍麻「あんたに育てられた覚えはないよ。姉さんと俺を育ててくれたのは《あの》義母さんだもんね。だいたい、俺の事を《悪魔の知恵持ち》呼ばわりさせてるのは、あんたでしょ。」
弦月「たしかに、そうやな。」
峠之「うううぅぅぅぅぅぅ。(泣)。畜生ぉぉ。そっちがその気なら、こっちだってお前等が揃ってやった、ストーリィ上の大ポカをバラしてやるぅ。」
弦月「なんや、わいもか?。わい、タマはんと違うて変なことはやった覚えないんやけど。」
峠之「あのなぁ。今回、お前等がキスだのホモだの騒いで、京一が壊滅させた公園は《日の出町公園》といって、《東池袋中央公園》からサンシャイン60を挟んで南に150m位の所にあるんだ。そんで、事情説明してたのはワールドインポート前で、文字通りそのすぐ側だ。」
龍麻「だから何なのさ?。」
峠之「お前等が馬鹿騒ぎしてたすぐ側の《東池袋中央公園》では、丁度その頃に、火怒呂が柳生に止めを刺されてるんだよ。」
龍麻・弦月「「っ、なっ!!!」」
峠之「つまりお前等は、他人の恋愛ざたにかまけてすぐ横にいた最大の宿敵を見逃してるんだよ。ユエユエなんか、ヘタをするとサンシャイン通りで柳生と擦れ違ってるぞ。」
弦月「そんな馬鹿な…………(油汗)。」
龍麻「そんなの詐欺だ――――――――!!!!!。」
峠之「わかったか、オマヌケども。己の迂闊さを悔やむがいい。ふふふ…………。まあ、柳生とその時点で殺りあっても、思いっきり返り討ちだったろうが………。っと言う訳で、峠之は今度こそ旅にでるからな。悔しかったら、そこでノビている馬鹿にあたってくれ。じゃっ。(脱兎)」
龍麻「信じらんないぃぃぃ。」
弦月「京一はん。やっぱ残りの2発、まけとくのは取消しや。覚悟したってや!!。」
諸羽「わ――――っっっ。っ駄目です、劉さん。京一先輩はまだノビてます。【黄龍螺旋昇】×2はやめてくださぁ―――――いっっ。」


阿鼻叫喚・・・・・・・・・☆。


と言うわけで、本編はここまで。
そして、ここからは未投稿の一部の方限定のオマケSSへ続いちゃいます。
これは投稿することはこれからも無いですから、以降もHP限定です。
でも、その後の番外編にネタ振ってますよ。(笑)
だから、ちょっと覗いて見ておいた方がおトクです。



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