福祉車両コクエー
 
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 「移動」は誰もが日常生活を営むうえで欠くことができない大切な要素です。
福祉車両コクエーでは、高齢者や障害をお持ちの方はもちろん、あらゆる人のパーソナリティーを大切に考え,「安全に、快適に、自由に」すてきな移動時間を過ごしていただけるよう、「介護タクシー」の運営を質の向上を目指しながら、積極的に取り組んでおります
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二、障害の知識及び利用者理解

Ⅰ.障害の知識
 身体障害とは、先天的あるいは後天的な理由で、身体機能の一部に障害を生じている状態、あるいはそのような障害自体のことをいう。手・足がない、機能しないなどの肢体不自由、脳内の障害により正常に手足が動かない脳性麻痺などの種類がある。視覚障害、聴覚障害、呼吸器機能障害、内部障害なども広義の身体障害に含まれる。先天的に身体障害を持つ場合、まれに知的障害等を併せ持つことがあり、これを重複障害という。また複数の種類の身体障害を持つことを指すこともある。(肢体不自由と視覚障害を併せ持つなど)
 身体障害者福祉法の対象となる障害は、1) 視覚障害、2) 聴覚障害・平衡機能障害、3) 音声・言語障害(咀嚼障害を含む)、4)肢体不自由、5)心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・大腸・小腸・免疫等の内部障害の5種類に大別される。これら5種の障害の中で最も多いのは肢体不自由で、身体障害者手帳を交付されている人のうち、約半数を占める。視覚障害・聴覚障害・言語障害は、該当者こそ増えているものの、全体の割合からいくと年々減少の一途をたどっている。その一方で、内部障害は該当者・割合ともに増加している。身体障害者が増加しているにもかかわらず、内部障害者の割合が増加しているのは、一つには内部障害として認定される器官が増えたこと、もう一つには内部障害の原因となる疾病(糖尿病や心臓病等)にかかる人が増えたことが理由だと考えられる。身体障害者には高齢者が多く、65歳以上の割合が60%以上を占めている。日本の人口における高齢者の割合が増加していることから、今後も身体障害者の人数(割合)は増えていくものと思われる。また障害者を隠そうとする風潮が弱くなり、障害の認定を受けるようになったことも一因だと考えられる。
 
 知的障害
とは、1,知的機能に制約があること 2,適応行動に制約を伴う状態であること 3,発達期に生じる障害であることの3点で定義されるが、一般的には金銭管理・読み書き・計算など、日常生活や学校生活の上で頭脳を使う知的行動に支障があることを指す。よくある傾向として、乳幼児期には、同年齢の幼児との交流が上手くいかなかったり、言葉に遅れがあったりする場合が多い。染色体異常などの病理的原因(後述)の場合は早期に発見されることが多い。学齢期(6 - 15歳ごろ)には、判断力や記憶力などの問題で、普通学級の授業についていけない場合が多い。複雑なルールの遊びに参加することは困難である。そういったストレスから、各種二次障害が発生する場合もある。また、後期中等教育への進学に当たっては、各種の問題がある成年期(18歳 )には、一般的な職場への就労はハードルが高く、障害者の保護者やボランティアなどが開設する通所施設で活動する例が多い。また、日常的でない判断(高額な契約など)が難しく、時に判断を誤ることや、悪意の接触にだまされることがある。

1.原因による分類
1)病理的要因 ダウン症候群などの染色体異常・自閉症などの先天性疾患によるものや、出産時の酸素不足・脳の圧迫などの周産期の事故や、生後の高熱の後遺症などの、疾患・事故などが原因の知的障害。脳性麻痺やてんかんなどの脳の障害や、心臓病などの内部障害を合併している(重複障害という)場合も多く、身体的にも健康ではないことも多い。染色体異常が原因の場合は知的障害が中度・重度であることが多く、外見的には特徴的な容貌であることも多い。
2)生理的要因 特に知能が低くなる疾患があるわけではないが、たまたま知能指数が低くて障害とみなされる範囲(IQ69または75以下)に入ったというような場合。生理的要因の知的障害がある親からの遺伝や、知的障害がない親から偶然に知能指数が低くなる遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因である。合併症はないことが多く、健康状態は良好であることが多い。知的障害者の大部分はこのタイプであり、知的障害は軽度・中度であることが多い。「単純性精神遅滞」などともいう。
3)心理的要因 養育者の虐待や会話の不足など、発育環境が原因で発生する知的障害。リハビリによって知能が回復することもある。関連用語に「情緒障害」がある。また、離島や山岳地帯や船上などの刺激が少ない環境で成育した児童の場合も、IQが低い場合が多い。

2.知能による分類
 基本的には、知能指数が100に近い人ほど人数が多い。しかし、知能指数の種類によっては最重度まで正確な存在数比率を出せない場合もある教育の分野では、軽度の生徒を「教育可能」、中度の生徒を「訓練可能」と分類する。医学的に考えると精神年齢は12歳以下と推定される。
①ボーダー(境界域) 知能指数は70 - 85程度。知的障害者とは認定されない。
②軽度 知能指数は50 - 69程度。理論上は知的障害者の約8割がこのカテゴリーに分類されるが、本人・周囲とも障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多いため、認定数はこれより少なくなる。生理的要因による障害が多く、若年期の頃では健康状態は良好。
③中等度(中度) 知能指数は35 - 49程度。合併症が多数と見られる。過半数の精神年齢は小学生低学年程度。
④重度 知能指数は20 - 34程度。大部分に合併症が見られる。多動や嗜好の偏りなどの行為が、問題になっている。概ね精神年齢は4歳児程度しかない。
⑤最重度 知能指数は19以下程度。大部分に合併症が見られる。寝たきりの場合も多い。しかし運動機能に問題がない場合、多動や嗜好の偏りなどの行為が問題になる場合がある。実際の精神年齢は1歳児程度。

3.知的障害とその他の発達障害の関連
①知的障害と自閉症 
知的障害は、知能面の全体的な障害であり、自閉症の本質であるコミュニケーション障害は、対人関係面を主とした障害である。昔から知られている種類の自閉症はコミュニケーション障害と知的障害が合わさったものである。
知的障害と学習障害  学習障害は、読み・書き・計算など学習面に困難があるが、会話能力・判断力などの知能の他の面では障害がない。知的障害の場合は、学習面も含めて、知能面など全般的に問題がある。

 精神障害者とは、精神疾患(精神障害)を有する個人のことである。昔から精神障害者は「きちがい」と呼ばれ、他の障害者と比べると、強い差別と偏見の対象になっている。現在では身体障害者・知的障害者と同様の障害者として扱うべきとされている。しかし、今でも根強い偏見が存在するため、当事者の中には就職などでの不利益な扱いを嫌って障害を持つことを隠す例や、精神障害者手帳そのものを失効させる例も珍しくない。中には精神という呼称が差別だという意見もある。働いていたとしても本当の診断名を隠すように医師から指導されることもある。
 厚生省保健医療局長通知の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」によると概ね下記のような能力について行うことが困難かまったくできないといった障害がある。
・適切な食事摂取
・洗面、入浴、更衣、清掃など身辺の清潔保持
・金銭管理および適切な買い物
・規則的な通院・服薬
・適切な意思伝達や協調的な対人関係の構築
・身辺の安全保持・危機対応
・社会的手続や公共施設の利用
・趣味・娯楽等への関心が低く、それらの活動への参加
 精神障害者で犯罪を起こした者を触法精神障害者と呼ぶ。特に殺人など重大な犯罪を犯した者に対して使われることが多い。日本でのこの節でいう『重大な犯罪(重大な他害行為)』とは、「殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害」である。そのうち傷害以外のものは未遂も含まれる。精神障害で善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態で重大な他害行為をした触法精神障害者向けには「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」に基づき、厚生労働大臣が指定した指定医療機関(入院の場合は指定入院医療機関、通院の場合は指定通院医療機関)にて適切な医療を提供し、社会復帰を促進されることがある

Ⅱ.障害者理解
1 .身体障害者理解

①視覚障害者  視覚障害とは、眼球、視神経及び大脳視中枢などで構成される視覚系のいずれかの部分に障害があるために、見ることが不自由または不可能になっている状態のことをいう。視覚的な情報をまったくえられない、またはほとんどえられない「盲(もう)」と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる「弱視」に大きく分かれる。この他に、色彩の弁別能力に障害がある場合もる。
ただ、「盲」「弱視」と一口に言っても、視力があるかないかの単純な状態ではなく、「盲」とは、明暗の区別のつかない状態も指すが、明暗の区別はつく状態、目の前で手を振ると動いているか止まっているか、わかる状態、目の前で出された指の数程度ならわかる状態も含む。また「弱視」には、視力が低い状態の他に、見える範囲が狭い状態、光をまぶしく感じる状態、明るいところではよく見えるのに、夜や暗いところでは見えにくくなる状態も含む。視力をほとんど活用できない盲の人は、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握する。文字の読み書きは、最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンでおこなうことが多くなっている。また、点字も視覚障害者が自由に読み書きできる大切な手段の一つである。移動時は、白杖を持ち単独で歩くケース、ガイドヘルパーや盲導犬と歩くケースがある。
 弱視の人で視力をある程度活用できる人は、補助具を使用したり、文字を拡大したり、近づいて見るなどの、さまざまな工夫をして情報を得ている。最近では、盲の人と同様に、パソコンも活用している。視力を活用できても、遠くのもの、小さいもの、動いているものが見えない、大きいものの全体像が把握できないなどの困難があり、また、読み書きに時間がかかったり、負担が大きかったりすることもある。移動時には白杖を用いない人も多く、一見して視覚障害者とわからないことが多い。
 視覚障害者と一口に言っても、見えなくなった時期、障害の状況や程度はさまざまである。また、白杖を持たずに歩いていたり、白杖は持っていても目をしっかり見開いていて、声のする方に視線が向いたりするため、一見して視覚障害者と見えない場合もある。まずは、本人に、その見え方やどのようなサポートを希望するかを確認する。
 一般的な留意点は次の点である。
(1)声をかけるとき 前から近づき、「○○さん、こんにちは。○○です」などと自分から声をかけ、自分の名前を名乗る。軽く肩や腕に触れると、話しかけられていることが一層わかりやすくなる。
(2)説明するとき 「むこうの・・・」「あそこの・・・」「このくらいの・・・」などと指差し表現や指示代名詞で表現しても、視覚障害者は相手が目で見ている先を理解できない。「あなたの右」、「煙草の箱くらいの大きさ」などと、具体的に説明する。何かに触ってもらう場合は、説明しながら視覚障害者の手をとって触れてもらう。方向や位置を説明するときは、視覚障害者がいま向いている向きを基準にして説明する。初めての場所では、部屋の様子と席の位置や向きなどを説明する。たとえば、「部屋は講義室のような部屋で、机がロの字型に並んでおり、30人くらい座れそうで、今は15人くらい座っています」、のように、具体的に説明する。
道順を説明するときは、目印となる具体的な建物などを伝える。全盲の人が、さらに誰かに、目的地の場所やそこへの道順を伝えたり、尋ねたりする際には、目印の建物についての情報があると便利である。
壁に貼ってあるポスター類、ビデオやDVDで画面だけが動いているような時、どのような場面や状況か、簡単に伝えてる。
(3)グループではなしているとき どのような人達がグループにいるのかを視覚障害者は見渡すことができない。話が始まる前に一回り自己紹介する。いなくなった相手に気づかず、話しかけることがあるが、席をはずすときや戻ってきたときは、一声かける。また、新たに話に加わるときは自己紹介する。今しゃべっているのが誰なのか、視覚障害者は見ることができない。必要に応じて名乗ってから話し始める。
(4)その他 視覚障害者は、得意・不得意はありますが、多くの人が、自分の周囲の様子を頭の中にイメージしながら生活しているので、日常的に利用している場所や、使用しているものについては見えているかのように動いたり使ったりする。これは身体が覚えているからできることである。そのため、様子のわからない不慣れな場所や、初めての場所はもちろんのこと、日常的に利用・使用している場所でも、普段と様子が変わっていると戸惑うことがある。普段から、通路(たとえば、点字ブロックの上)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用しているものの位置を変えないなど、周囲の協力が不可欠である。困っていそうなときはサポートが必要かどうか声掛けを行う。また、その人が、見えない・見えにくいことを心のどこかに留めておくことが必要である。
(視覚障害者の見え方※事例)

 通常  ぼんやりとしか見えない  見える範囲が狭い  中心だけが見えない  白くモヤがかかる

②聴覚障害 聴覚障害とは、医学的には、外部の音声情報を大脳に送るための部位(外耳、中耳、内耳、聴神経)のいずれかに障害があるために、聞こえにくい、あるいは聞こえなくなっている状態のことをいう。外耳から中耳に障害があるものを「伝音性難聴」、内耳から聴神経にかけて障害があるものを「感音性難聴」という。また、感音系、伝音系の両方に障害がある「混合性難聴」もある。
 一口に聴覚障害といっても、聞こえかたには一人ひとり、大きな差異がある。「音量が小さくなったようになり、聞き取り辛くなる」「音質が歪んだようになり、音は聞き取れるが内容が聞き分けにくくなる」「補聴器をつけても音や音声がほとんど聞き取れなくなる」など、難聴の程度はさまざまである。補聴器等の装用によってある程度音声を聞き取れる軽度・中等度難聴の人であっても、周囲に雑音がある場合やコンクリートの壁に間こまれた反響の多い場所などでは、話が通じにくくなる。マイクを通した音声、テープや映像教材の音声などは、肉声に比べて聞きにくいものである。また聴覚障害者にとっては、聞き易い話し方をする人と聞きにくい話をする人がいるが、モグモグした話し方をする相手とは話が通じにくくなってしまう。
 聴覚障害の多くを占める感音性難聴の場合はとくに、音声情報を<音>としては認識していても、<言葉>として正確に内容を聞き取ることが難しく、目の前の一人の人とは通じても、3人、5人となると、どこで誰が何を話しているのか、音声のみで把握することが非常に困難になります。何人かでの雑談、授業の際の質疑応答、ディスカッションなどがこれにあたる。
 聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難も、他の人からは気づかれにくい側面がある。また、聴覚障害はコミュニケーション障害であるともいわれ、コミュニケーションは人間関係を築く上で、非常に重要な手段である。
 聴覚障害者のコミュニケーション方法は、聴覚障害の種類や程度のみならず、聴覚障害が生じた時期や、教育歴などによって、一人ひとり異なる。そのことは本人のアイデンティティとも深く結びついている。聴覚障害者のコミュニケーション方法には、手話、筆談、口話、聴覚活用などさまざまな方法があるが、どれか一つがあれば十分ということはなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせたり使い分けたりしている。
 しかし、だれもが声を使って話したり聞いたりするのが当たり前だと思われている環境のなかでは、聴覚障害者は、周囲にあわせ、音声でのコミュニケーションを強いられることが少なくない。周りの雰囲気に合わせて、わかったふりをせざるを得ないということもしばしば生じる。大勢の人と交わることに非常な労力を伴うため、そうした場への参加回数を減らすという対処をする人もいるが、その結果、その人の性格に問題があると誤解されてしまうこともある。また、音声言語を前提とする環境では、筆談をもとめるのは、聴覚障害者の能力や努力の不足と見なされることがあるため、筆談を求めることも避けつづけてきたという人もいます。聴覚障害があることを明らかにしていない人も、少なくないのが現状である。聴覚障害者は、一人ひとり、聞こえ方も、コミュニケーションのしかたも、現在までの経験も異なっていることをふまえ、まずは聞こえない・聞こえにくい本人から、その置かれている状況を聞いて理解するようこころがける。 以下では、特に知っておいていただきたいことについてまとめてみた。
(1)補聴器 補聴器は伝音性難聴に対しては最も音響増幅の効果があるが、殆どの伝音性難聴は耳鼻科医療で治すことができるから、実際には補聴器が適応されることは稀である。感音性難聴の人が補聴器を使用する最大の難点は、騒音に囲まれた場所で効果がない、離れた人の声が聞き分けにくくなることなどあった。例えば、静かな部屋の少人数の講義では、受け答えができていたのに、昼食でにぎやかなカフェテリアに行ったら、友達の話す声が聞き取れず、急に無口になる、といったことが生じる。最近の補聴器は、単に音を増幅するだけのものではなく、デジタル信号処理機能や騒音抑制機能などが付いた高性能な機種が多様に揃っている。耳介に掛ける「耳かけ形」や耳穴に入れる「耳あな形」が多く使われている。また、騒音の中や離れた話者との聞き取りを改善するための様々な「FM補聴システム」が選択できるようになった。補聴器は一人ひとりの難聴の特性に合わせて処方された適切な機種を選択しなければ役に立たないので、初めに選択・調整された補聴器でも、その後の聴力の変化や使用場面などに応じて補聴器の音量や音質などの再調整が必要である。そのような補聴器のフィッティングに携わる専門家として補聴器相談医と認定補聴器技能者が全国に配置されている。
 高性能な補聴器でも効果が得られない最重度な聴覚障害者が聴力を回復するために「人工内耳」の手術を受けることが多くなった。しかし人工内耳は正常な聴力を取り戻してくれるものではなく、補聴器は失った聴力のほぼ半分程度を補償してくれるものだが、人工内耳装用者の聞こえ方は、中等度の難聴者が補聴器を装用したときの矯正聴力と似ていると言われ、人工内耳装用者といえども難聴者としての聞こえの困難を抱えていることを理解して対応する必要がある。
(2)手話 手話は、とくに先天性の重度聴覚障害者にとっては、重要なコミュニケーション手段の一つであるが、聴覚障害者がすべて手話を用いるわけではなく、日常的に手話を用いている人から、まったく手話がわからない人、手話を理解できるが、公の場では使いたくない人など、さまざまである。その背景には、手話が長年「単なるジェスチャー」として音声言語よりも一段「低く」見られ、ろう学校でも公的には教えなかった時代や地域があったこと、さらに近年では通常学校に通う聴覚障害児が増えていることなども影響している。聴覚障害者=手話と思い込むのではなく、その人の用いるコミュニケーション手段を理解し、尊重することが大切である。
 手話にもさまざまなバリエーションがあり、障害の生じた時期や手話を獲得した時期、教育歴によって、使用される手話も異なる。一般的に、ろう学校で学んだ人は、独自の文法を持つ日本手話を使用することが多く、音声言語を獲得後に失聴した中途失聴者や通常学校で学んだ人には、日本語の文法に基本的に沿って手話単語を表していく日本語対応手話が好まれる。
 よく「手話は世界共通ですか」という質問があるが、共通ではない。世界各地で、音声言語とは異なる独自の文法を持つ視覚的な言語としての手話が話されていることが知られている。また、手話を日常言語として用いる人を「ろう者」と呼んで、その話者からなるコミュニティに着目する捉え方もある。
(3)口話 口話は、話し手の口元や頬の動き、表情などを視覚的に捉え、さらに文脈なども総合的に判断しながら、話の内容を推測、理解しつつ、表現には音声言語を用いる方法のことをいう。聴覚障害者は、口話に加えて残存聴力を活用して聞き取る一部の音声情報を手がかりにすることもあり、その場合は「聴覚口話」という。しかし、「たばこ」「たまご」「なまこ」など口の動きが似ていることばや、同音異義語は、口の形を見ただけでは区別がつきません。初めて聞く話や突然場面が変わると、文脈がつかめず、口話がしづらくなる。暗いところでのやりとりや、離れた場所にいる相手とのやり取りにも限界がある。
 聴覚口話は、聴覚障害者にとって、常に断片的な情報から話の内容を推測しなければならない、不安と緊張を伴う方法である。「補聴器をつけているから、比較的軽い聴覚障害だから、聞こえているだろう」「口元を読み取ってすべて理解しているだろう」と思い込まず、「聞こえていたとしても聞き取れないことがよくある」「口元を読むことには限界がある」ということをふまえたうえで、話の内容が伝わっているかどうか確認しながら、「声で話す」だけではなく「文字で書いて伝える」など視覚で伝える工夫が必要である。
※注意1、ホワイトボードや紙、ペンがないときは、携帯電話の画面に入力したり、ノートパソコンに入力したりするとよい。
※注意2、確認するとき、「わかった?」と聞いても、聴覚障害者は、どの部分の何についてそれを聞かれているのかわからず、場の雰囲気を乱さないためにも「わかった」と答えがちになる。わかったかどうかを聞くよりは、聴覚障害者の顔を見て、アイコンタクトを取るようにすると、表情で、理解できているか判断できることも多い。
 スムーズなコミュニケーションと情報アクセシビリティ基本的にこころがけることは次の点である。
・音声だけで話すことは極力避け、視覚的な情報も併用する。
・複数の人がいる場では、話す前に、手をあげるなどして居場所を示して、自分の名前を必ず言うようにする
・極端に早口になりすぎないようにする。
・文節で区切りながら、はっきり、ゆっくりと話す。(ただし、あまり速度を落としすぎるとかえって分かりづらくなるので、不自然にならない程度で)
・同時に複数の人が話さないようにする。
・できるだけ向かい合った状態で、アイコンタクトをとり、相手が自分の顔を見ているか確認してから話し(書き)始める。
・資料やマイクなどで顔が隠れないようにする。
・充分な明かりのあるところで話す。
 通訳者を介してのコミュニケーションでこころがけることは、極端に早口になりすぎないようにし、適度に間をとるようにする。手話通訳や、文字通訳がつく場合でも、極端な早口で一気に話したり、複数の人が同時に話しはじめたりすると、通訳することができなくなる。話の区切りや、発言者が交代する際には適度な間をおき、伝わっているかを確認するようにする。通訳を介すると、ある程度タイムラグが生じるので、聴覚障害者に質問したり、発言を求めたりするのは、通訳者が通訳し終えるまで待つようにする。また、主体はあくまでも聴覚障害者本人ですから、通訳者に話すのではなく、本人の顔を見て話すようにする。
 筆談および文字通訳を行う場合にこころがけるこは、次の点である。
・濃く、はっきりした読みやすい文字で書く。
・まわりくどい表現、あいまいな表現は避ける。
・いくつもの従属節や逆接を含む長文は避け、要点を手短に、わかりやすく書く。
・意味が変わるような省略、要約は避けて、もとの言葉、意味内容に忠実に書く。
 放送やアナウンスがあった場合は、文字や視覚情報で聴覚障害者に伝える。聴覚障害者の多くは、アナウンスや連絡事項が音声情報だけで流されると、情報の存在自体に気づかず。放送があることがわかっても、何を言っているかはほとんど把握できないので、そのために大きな不利益をこうむることがある。たとえば構内放送などは、かならず聴覚障害者に筆記で伝えるか、紙を貼りだすなどして、文字や視覚情報で伝わるようにする。

 ③内部障害 内部障害とは、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう又は直腸の機能障害、小腸機能障害、肝臓機能障害、免疫機能障害をいう.。外見からは判断できないため、周囲に理解してもらいにくい障害である。そのため、日常生活において障害者用の駐車スペースに車を停めていると警備員に注意されたり、電車内で優先席に座ると冷ややかな目で見られるたり、職場などで、頻繁にトイレに行っていると「さぼっているのではないか」と言われると不便なことが多い。コミュニケーションや介助の仕方はその人に応じて異なるが特に次の点に配慮が必要である。心臓機能障害のある方の場合、イスに座ってもらって話すようにする。階段を避け重い荷物は持ってあげる。ペースメーカー等の使用者の場合、携帯電話の電波の影響への考慮も必要である。呼吸器能障害のある方の場合、近くではタバコは吸わないようにする。イスを勧め、楽な姿勢でゆっくりと話をしてもらい、長時間にならないよう注意する。肝機能に障害のある方の場合、過食は意識障害の誘因となり食塩はむくみを悪化させる。アルコールや症状を増悪させる食べ物を無理に勧めてはいけない。感染しやすいため、あなたが風邪をひいているときなどはできるだけ接触は避けるようにする。膀胱・直腸機能に障害がある方の場合、プライバシーには十分配慮して、原因疾患など不要なことは聞かないようにする。トイレはバリアフリーのトイレに案内する。オストメイトの方は、困っていることは次の点である。①汚れたバウチや衣類、身体を洗う設備がない②腹部を洗いたいが石鹸や温水がない③着替えのバウチを置く場所がない④正しく装着できたかを確認する鏡がない⑤車いすトイレに入りずらいなどある。一緒に外出する場合などは、事前の調査・確認を行う。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害の方の場合、プライバシーに十分配慮し個別的な対応をこころがける。HIV感染者、エイズ患者が出血した場合は、手袋をするなど直接血液に触れないないようにする。  
    オストメイトマーク
 
   ハート・プラスマーク
   (内部障害のある人)

④高次脳機能障害 脳が損傷され、精密な情報処理がうまくいかなくなることにより、記憶・注意・行動・言語・感情などの機能に障害を残す状態が高次脳機能障害といわれている。具体的には、失語症・記憶障害・注意障害・失認症(半側空間無視・身体失認)・失行症・地誌的障害・遂行機能障害・行動と情緒の障害などがある。高次脳機能障害は、身体上の障害とは異なり表面的には目立たない、本人も意識しにくいために理解されにくい、診察場面や入院生活よりも在宅での日常生活、社会生活場面(職場、学校、買い物、交通機関の利用、役所などでの手続き)で出現しやすい、という特徴を持っている。こうした高次脳機能障害を持つ方は外見からは分かりにくく、障害を知らない人から誤解を受けやすいため、人間関係のトラブルを繰り返すことも多く、社会復帰が困難な状況に置かれている。高次脳機能障害の症状は複雑で一人ひとり異なり、複雑で、場面や人などの環境により症状の現れ方が変わるといわれている。そのため、さらに周囲を困惑させることがある。しかし、本人も自分の障害に、そして自分に向けられる言葉や態度にとまどっている。高次脳機能障害は他者から理解されにくいといわれているが、それを最も感じているのは、他ならぬご本人かもしれない。周囲がこの障害を理解し、適切な対応を心がけることが大切である。
 高次脳機能障害の原因疾患としては、脳の血管が切れたり、つまったりすること(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など)、事故により傷つけられたり、圧迫されたりすること(びまん性軸索損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳内出血、脳挫傷など)、炎症を起こしたり、酸素が不足すること(ヘルペス脳炎、ウィルス脳炎、低酸素脳症など)などがある。これらの脳の病気や事故にあった人すべてが「高次脳機能障害」になるわけではないが、障害を引き起こす確率が高いといわれている。高次脳機能障害が疑われる主な症状は、下記の通りである。

 失語症 「話す」「聞く」「読む」「書く」の4つの側面すべてが障害される。
 ・言いたい言葉が出てこない
⇒時計→「あのー丸くて、針がチッチッで12とかそういうやつ」
・言いたい言葉と違う言葉が出る
⇒時計→「といけ」、「まくら」
・相手の話している言葉が理解できない
⇒「お寿司美味しいですよね?」→「そうですよね~…ところでお寿司って何ですか?」
・漢字や平仮名で書かれた言葉の意味が理解できない
⇒“時間”と“時計”を読み違える。
・誤った文字を書いたり、字そのものが浮かばない
※頭の中で言葉を組み立てる事が障害されているので、50音表の使用は向きません。
 記憶障害  比較的古い記憶は保たれているのに、新しいことを覚えるのが難しくなったり、逆に病気になる前のことを忘れてしまうことがある。(今見たことや聞いたことが覚えられない等)また、自分の記憶障害を自覚しているとは限らない。
・ついさっき言ったこと、行動を覚えていない
⇒朝起きてから何をしたか思い出せない。
・人の名前を思い出せない
⇒毎日会っている病院のスタッフの名前がわからない。
・今日の年月日や、今いる場所がわからない
・実際とは違う事を話す
⇒朝御飯を食べていないのに、「食べてきた」と話す。
⇒「お風呂」に行った後にどこへ行ったかを尋ねると「買い物」と答える。
・病気になる前のことを忘れてしまう
 注意障害  注意や集中が低下するために、活動を続けられる力や、多数の中から必要なことを選ぶ力、同時にいくつかのことに注意を向けることが難しくなります。必要なものを見落としたり、余計なものに気を取られてしまう為、ぼんやりしているように見えたり疲れやすい傾向がある。
・簡単なミスが多い
・あちこち気が散りやすく、落ち着きがない
・歩きながら会話が出来ない、または壁にぶつかる
・お湯を沸かしているときに、電話や来客に気付かない
 半側空間無視  左右どちらか一方への意識が向きにくく、人や物、起こっている事柄に気付かないことがある。ひどい症状になると、完全に見落としてしまう。
・食事の時、左(右)側にある食べ物に気付かない
・常に顔が左(右)に向いている
・移動している時に左(右)側の壁にぶつかる
・読書中、左(右)側の文字を見落としている
 失認症  見ること、物に触る感覚に問題がないにも関わらず、色、物の形、物の用途や名称が分からなくなる。また、聞くことにおいても同様に、音や言葉は聞こえているが、何の音か、何を話しているかの理解が難しくなる。
・よく知っている人の顔がわからない(相貌失認)
⇒家族の顔を見ても誰であるかわからないが、声を聞けばわかる。
・馴染みのある音や、話された言葉を聞いただけでは理解できない(聴覚失認)
⇒車のクラクションの音を聞いても、その音が車だとはわからない。
⇒相手の話し言葉がつぶやきや外国語のように聞こえる。
・見ただけで、その物体が何かわからない(物体失認)
⇒みかんを見ただけではその名前は言えないが、香りを嗅ぐとわかる。
・一つ一つの細かい部分はわかるのに、全体の状況を把握できない(同時失認)
⇒衣服(セーター)についた毛玉は取れるが、セーターということがわからない。
 身体失認  自分自身の身体像が歪んでいたり、身体の一部を自分のものではないように思います。また、麻痺があるのを認められない場合がある。
・麻痺している手足を、他人のものだと思う/動くと主張する
⇒(麻痺の手を見せて)「この手は誰の手?」と尋ねると、当たり前のような顔をして「旦那の手よ」と答える。
 地誌的障害
(場所の認識の障害)
 馴染みのある場所であっても、現在いる場所や目的地までの道順がわからなくなります。
・道に迷う
⇒トイレに行くのに迷う/自分の病室に戻る事ができない。
・自宅の場所がわからない
⇒自宅の前に来ても通り過ぎてしまう/家の周囲を歩いていても家に戻れない。
・自宅の見取り図や近所の地図が画けない
 失行症  手足は動かせるのに、意図した操作や指示された動作が行えないため、ジェスチャーや日常生活の簡単な動作を行うことが難しくなる。
・単純な動作や習慣的な動作が出来ない(観念運動失行)
⇒「敬礼」「バイバイ」等のまねが出来ない。
・一連の動作の手順を間違える(観念失行)
⇒歯磨きチューブで歯を磨こうとするなど、別の物品使ってしまう。
⇒お茶を入れる際、急須ではなく、湯飲みに直接お茶葉を入れてしまう。
・立体等の構成物の認識が上手く出来ない(構成失行)
⇒立方体や六角形等の複雑な図形が上手く書けない。
・服を着ることが出来ない(着衣失行)
⇒上着の袖口から頭を通そうとしてしまう。
 遂行機能障害  生活するうえで必要な情報を整理、計画、処理していく一連の作業(目標を決め→計画し→手順を考え→実施し→結果を確認する)が難しくなる。その結果、生活上起こるさまざまな問題を解決していくことが困難となる。
・段取りが悪い
⇒日常行っていることに通常以上に時間がかかる。
・指示されないと活動できない
⇒自分から何をやっていいのかわからない。
・計画通りに行動できない
⇒約束を守れない(スケジュール通りに行動できない)。
⇒交通手段を上手く利用して見知らぬ場所へ行けない。
・衝動的に行動してしまう
⇒目の前の物にすぐに手を出してしまう。
・自分の状態がどの程度なのかわからず、将来についても現実的ではない
⇒退院後にすぐに仕事に戻れると思っている。
・急な変更やいつもと違うことが苦手
 行動と
情緒の障害
 感情や意欲のコントロールが上手くいかず、状況に適した行動をとることが難しくなります。
・気分が変わりやすい
⇒些細な事がきっかけで突然泣いたり、怒ったりすることもあれば、日によって1日中何もせず、ぼーっとしていることもある。
・初めての人にも馴れ馴れしい
・周囲に対しての気配りができなくなる
・すぐに混乱してパニックを起こす
・ひとつの行動を繰り返したり、一つの事柄にこだわり続ける
・急な変更やいつもと違うことが苦手
 発動性/
自発性の低下
 自分からは何もしようとせず、他の人から言われてもなかなか行動ができない状態である。
・周囲のことに関心がなくなる
⇒周りで騒いでいる人がいても気にしない。髪がボサボサでも気にしない。
・いろいろな事にやる気がなくなる
⇒お腹がすいていても自分から食べようとしない。
・行動するまでに時間がかかる
⇒体を洗おうとスポンジを持っても、洗い始めるまでに時間がかかり、何度も声をかけることが必要。
・動きが遅く、すぐにやめてしまう
⇒車椅子をこぐスピードが遅く、目的地の手前で止まったまま動かない。
知的機能/思考能力の低下  言語を使う、記憶する、理解する、考える、判断する、想像する等が難しくなる。
・難しい話が理解できない
⇒新聞を読んでいても、要点をつかめない。
・その場の状況にあった判断ができない
⇒深刻な話をしている時に、一人だけニコニコしている。
・一般的な知識問題に答えられない
⇒「太陽はどちらの方角から昇りますか?」に対し→「北」と答える。
・筋道を立てて考えることが難しい
⇒車を買いたいときに、お金を貯める・ローンを返済する・駐車場を借りる等の計画を立てずに販売店に向かってしまう。

⑤肢体不自由 肢体不自由とは、四肢(上肢・下肢)、体幹(腹筋、背筋、胸筋、足の筋肉を含む胴体の部分)が病気や怪我で損なわれ、長期にわたり歩行や筆記などの日常生活動作に困難がともなう状態をいう。原因としては、先天性のもの、事故による手足の損傷、あるいは脳や脊髄等の神経に損傷を受けてなるもの、関節等の変形からなるものなどがある。
一口に肢体不自由といっても、障害の部位や程度によってかなり個人差がある。たとえば、右足に障害がある場合、左半身に障害がある場合、あるいは両足、全身の運動動作が不自由という場合もある。また障害の程度も、日常生活動作にさほど困難を感じさせない程度から、立ったり歩いたりなどの動作に支障があるため杖や車いすや義足などを必要とする程度、日常動作の多くに介助を要する程度などさまざまである。
 肢体の不自由な人の障害の部位や程度はさまざまであるため、歩行の状態や介助方法などは一人ひとり異なる。たとえば、車いすに乗っている人や杖を使って歩く人にとっては、ちょっとした段差や坂道が、移動の大きな妨げとなる。手指や手・腕がなかったりまひがある人は、文字を書いたりお金の扱いなどの細かな手先の作業は難しい面があります。また、肢体の不自由な人の中には、自分で移動できる人もたくさんいます。まずどのようなサポートが必要なのかを尋ねて、各人のニーズをよく確認したうえでサポートするようにする。
また、介助をするという直接的な対応のほかにも、「見守り」という間接的な対応もあります。手を出すだけではなく、必要に応じていつでもサポートできるよう、声やサインが読み取れる距離に待機して「見守る」ということも大切な対応である。相手に応じて、また場面に応じてぜひ活用するようにする。
(1)車いすに乗っている人について 車いすの種類には、手動車いす、電動車いす、手動兼用型切替式電動車いす、スクーター式電動車いすなどがある。最近では軽量化が進んでるが、電動車いすの重量は、約40~60キロ前後またはそれ以上のものもあり、人を乗せたまま持ち上げることは非常に困難である。事前に、かならず車いすに乗っている本人に介助方法を確認するようにする。車いすには可動部分や取り外し可能な部分があるため、車いすの構造をよく確認しておくことが必要である。

【介助のポイント】
・車いすを動かすときや進行方向を変更するときには、事前の声掛けを心掛ける。
・介助者が、車いすを動かす前に「今から動きます」「前に進みます」などの声をかけることにより、車いすに乗っている人は、これから何が行われるのか予測がつき、安心することができる。車いすを止めるとき、バックするとき、曲がるときにも、事前に声をかけを行う。
・車いすを押しているときに前輪が段差に引っかかると、勢いで利用者が前に落ちてしまうことがある。段差があるときは一時停止をしてから越えてるようにする。(写真.1)逆に、傾斜が急なスロープなどでは、車いすが後ろに転倒してしまうことがあるので、状況にあわせてバランスに注意する。
・停止するときや、介助者が少しでも車いすから離れる場合は、サイドブレーキをかける。(写真.2)
・車いすでの移動は、階段、段差だけでなく、人混み、狭い通路、急なスロープ、通路の傾斜等の通過にも困難をともなう。狭い通路やドアを通過するときは、車いすの左右に注意する。標準的な車いすであれば、おおよそ80cmの幅があれば通過することができる。急なスロープを下るときは、後ろ向きに下りるようにする(写真.3)。いずれも、事前に本人へ確認をする。

 車いすに乗っている人の中には、言語の障害をともなっている人もおり、コミュニケーションが難しいことがある。わからないことは、文字で書いたり丁寧に聞き返したりして確認する。
 (写真1)
写真2
 写真3
(2)杖をついている人について
 杖を使って歩いている人の中には、高齢の方や怪我をして一時的に杖を使っている人もいます。ま
た高齢の方はシルバーカーを押して歩いていることもある。
【介助のポイント】
 それぞれのペースでゆっくりと対応するようこころがける。急がせてしまうと、混乱したり、慌ててつま
ずいたりなどして、思わぬ事故につながる危険がある。
 松葉杖
 T杖
 
 ロフストランド杖
(3)補助犬を連れている人について
  助犬とは、身体に障害のある人を補助する「盲導犬」、「介助犬」、「聴導犬」の総称である。盲導犬は、視覚に障害のある人の移動の支援をする。視覚に障害のある人の指示に従って、安全に誘導を行う。介助犬は、肢体に障害のある人の動作を助けする。着脱衣の補助、扉の開閉、手の届かないところに落としたものを拾ったする。また聴導犬は、聴覚に障害のある人の耳の代わりとなり、赤ちゃんの鳴き声、FAXの呼び出し音、ドアのチャイムなどを、聴覚に障害のある人へ知らせる。
 「身体障害者補助犬法」により、公共の施設や交通機関、デパートやスーパー、飲食店などの不特定多数の者が利用する施設の管理者等は、身体障害者補助犬の同伴を拒んではならないことになった。この法律をきっかけに、今まで以上に補助犬を受け入れる体制作りに積極的に取り組もうとするお店や施設が増えてきている。

【介助のポイント】
・補助犬の場所の確保する。通常は、利用者の左横になる。
・車いすを押すとき、補助犬にぶつからないように気をつける。
・補助犬の集中力が途切れるような行動(触る、声をかける、見つめる、食べ物を与えるなど)はしない。
・どのような状況でも、利用者の意見を尊重することをこころがける。たとえば、補助犬を同伴している人が電車に乗ったり、補助犬に水を飲ませたりしているとき、周囲の人が利用者へ確認をせずに補助犬に手を出すことは避ける。
 

⑥知的障害 知的障害を持つ人は、年齢相応の知的な能力がなく、深く考えることが苦手というよりは、それが出来ないからこそ、社会に対応できないと言える。知的障害者が事件を起こすことを時々耳にするがそれは、「その人」が事件を起こすのであって、「知的障害」が起こすのではない。知的障害を抱える人たちは、脳に様々な原因不明の障害が生じており、耳をふさいで歩いていたり、つぶやいていたり、健常な側から見れば理解しずらい行動を目にすることもある。このような動作を目にすれば、知的障害がある人が「怖い」という先入観があるのは仕方がないことかもしれないが、彼らには助けが必要であることを忘れてはいけない。知的障害者の中には不快な行動をとる人もいるが、純粋な心をもった人がいることを忘れてはいけない。知的障害者とひとくくりで偏見の目を向けるのではなく、お互いに共存できる社会づくりを創設していかなければならない。
 知的障害の特徴の現れ方には個人差が大きく、支援のしかたは一人ひとりが異なる。自分に自信がなく誤解されやすい行動をとる人がいるが、そのような人にはできるところに目を向けた支援が必要になる。知的障害がある場合、学習に時間がかかる(時間はかかるが学習はする)。作業を覚えても翌週には忘れていたり、複数のことを指示しても1つしかできていない場合などには、一つひとつ具体的に指示しながら確認し、できたら次の指示を与えるようにする。また、大切なことは口頭だけでなくメモで渡すようにするとよい。大人であれば誰でも一人前の人間として扱ってほしいものである。悪いことは悪いと注意すのは当然であるが、支援者の意見や考えを押し付けることなく、本人が意思決定するのを手助けするのだということを忘れてはいけない。穏やかにわかりやすく話し、本人の希望が実現できるような支援が必要である。

⑦精神障害 精神に障害のある方から心配事を相談されたときは、まず、本人のペースで話に耳を傾ける。黙って聞くのも大事なコミュニケーションである。話すことで安心し、本人自身が解決策を見出すことも多い。現実離れした話には否定も肯定もせず、首をかしげ、ときどき話を現実的に戻してみるとよい。含み笑いなどは誤解を受けやすく、表情と感情は一致させるようにする。頭ごなしや命令口調ではなく、穏やかなゆっくりした口調で話しかけてみる。手短で具体的に誤解のないように要点を伝えたら、余計なことは言わないようにする。できれば伝えたことを復唱してもらう。相手の病気を理解し、時にはそっと見守り、時には後押しし、一緒に喜び、一緒に悲しみ、相手を大人として尊重した対応を心掛ける。
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