福祉車両コクエー
 

お客様専用ダイヤル
050-3695-4680


ご利用方法  有償運送( 高齢者)  有償運送( 障がい者)  ケア輸送
 よくあるご質問   各種車両  料金   福祉有償運送運転者講習

安全・安心な運行と緊急時の対応Ⅰ

 移送サービスを行うに当たって最も重要なことは「輸送の安全確保」にほかなりません。「輸送の安全確保」は輸送の生命であり、実務にあたっては道路交通法等法規範を遵守し、執務は厳正になされなければなりません。ケア輸送士は、自動車に関する知識を高め、運転及び乗降介助に関する技術を熟知し、基礎となる事柄を忠実に守り、安全に疑いが生じた場合には速やかに解決の方策を考えなければなりません。やむを得ず事故が発生した場合、その状況を冷静に判断し、すみやかに安全適切な処置をとり、特に人命に危険の生じたときは全力を尽してその救助に努めなければなりません。これらのことは、各事業所、ケア輸送士が各々留意すると同時に「交通事故ゼロ」をめざした社会的な取り組みが必要であります。

1.自動車に働く自然の力、停止距離・車間距離等
①摩擦力:走行中の車は、クラッチを切っても走り続けようとする性質があるため、すぐには止まらない。ブレーキによりタイヤの回転を止め摩擦力で停止させる訳だが、濡れたアスファルト路面を走行すときは、摩擦抵抗が小さくなり、制動距離が長くなる。制動距離は速度の二乗に比例して長くなる。また、高速走行中に急ブレーキをかけると、車輪がロックし路上をスリップする場合があるので、特に注意が必要である。
②遠心力:カーブでの遠心力の大きさは、速度が速いほど、車両の重量が大きいほど大きくなる。またカーブの半径が小さいほど大きくなり、速度の二乗に比例して大きくなる。
③衝撃力:車両が衝突した場合の衝撃力や慣性力は、速度と重量に応じて大きくなる。衝撃力は衝撃の作用が短時間に行われるほど、その力は大きくなる。(時速60kmでビルの高さ14m(5F程度)から落下した衝撃)
④停止距離:空走距離(危険を感じてからブレーキが実際に効き始めるまでの距離。反射時間はおおよそ1秒程度)と制動距離(ブレーキが効き始めてから停止するまでの距離)を合わせた距離のことをいう。運転者が疲れている場合などには空走距離は長くなりやすく、タイヤが摩耗している場合などには制動距離は長くなる。

2.運転の感覚
①視力:概ね動体視力は、静止視力に比べて低くなる。速度が速くなると動体視力は低下する。運転中の疲労による影響は目に最も強く現れ、見落としや見間違いが多くなり、判断力が鈍くなる。また、加齢とともに静止視力、動体視力ともに低下していく。
②視野:視野の範囲は両眼で時速40kmで100度程度、時速70kmで65度程度、さらに100kmで40度程度となる。
③明順応と暗順応:暗いところから明るいところへ出て、目が慣れることを明順応、明るいところから暗いところへ入り、目が慣れることを暗順応という。慣れるまでの時間は、明順応の方が早い。
④夜間の運転:夜間、対向車のライトを直接目に受けると、まぶしさのために、一瞬、視力を失った状態になる。これを眩惑という。眩惑されると、元の視力に回復するまでには3~10秒かかると言われている。夜間の走行中に、自分の車と対向車の双方のライトの影響で中央付近の歩行者が見えなくなることを蒸発現象という。
④灯火等の関係:
(1)大型車等との車間距離:大型自動車は、前照灯と尾灯の取り付け位置が、普通車に比べて高い位置にあるため、夜間に前を走っている大型自動車までの距離を実際より長く判断したり、対向車の大型自動車の位置を実際より遠くに判断しがちである。同じ位置で前に止まっている車については、車体の大きさの違いからくる錯覚により、大きい車を近くに、小さい車を遠くに感じてしまう。
(2)昼間の灯火:昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50m先(高速道路で200m先)が見えない場所を通行するときは、灯火するようにする。
(3)駐停車時の灯火:昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50m先が見えないような場所に駐停車するときは、駐車灯または尾灯を点ける。
(4)灯火の範囲:前照灯の光が届く範囲は、上向きで100m、下向きで40メートルの障害物を確認できる明るさなので、この範囲内で車が停止できる速度で走行しなければ危険である。同じ道路でも、夜間は昼間より30%くらい速度を落として運転することが必要である。

3.運転の心得
①雨の日の運転:晴天時より速度を落とし、車間距離を十分にとって、慎重に運転する。急発進、急ハンドル、急ブレーキなどは、横転、横滑りなどの原因となるので気を付ける。深い水たまりを通ると、ブレーキドラムに水が入るため、ブレーキが効かなくなったり、効きが悪くなることがある。そのため、なるべく、前者の走行跡(わだち)を避けて運転するほか、ブレーキを軽く踏むなどして、ブレーキシューを乾かすようにする。ハイドロプレーニング現象が起きたときは、急激にハンドルを切ったりブレーキをかけたりすると危険。両手でハンドルをしっかり持ち、エンジンブレーキを使い速度の落ちるのを待つ。
②雪道の運転:できる限り、前車がつくった「わだち」を選んで運転するようにする。寒冷地や降雪地ではブレーキが凍りつくことがあるため、サイドブレーキは引かず、シフトレバーをMT車は1速かバックギア、AT車はPレンジに入れて車を止める。また、バッテリーが上がっても充電しやすいように、ボンネットを道路側にして駐車する。
③霧の日の運転:霧灯(フォグランプ)や前照灯を早めに下向きに点灯し、警音器を使用したりしながら速度を落として慎重な運転をする必要がある。速度を落とし、中央線やガードレール、前車の尾灯を目安に走行する。前照灯の明かりは霧に乱反射し、見通しが悪くなるので、前照灯を下向きにして運転する。
④.山間地帯や坂道での運転:長い下り坂でフットブレーキを頻繁に使いすぎると、急にブレーキが効かなくなることがあるため、下り坂では低速のギアを用い、エンジンブレーキを活用する。下り坂では加速がつき、停止距離が長くなるので、車間距離を長くとるようにする。山道では路肩が崩れやすくなっていることがあるので、行き違いのときは路肩に寄りすぎないようにする。
⑤カーブでの運転:カーブの手前で速度を落とし、カーブが終わる少し手前から徐々に加速するスローイン・ファストアウト走行を行う。目の錯覚により、右カーブでは対向車線が広く見え対向車線にはみ出しやすく、左カーブでは対向車線狭く見え速度を出しやすいので、注意が必要である。

4,空気圧、内輪差、ブレーキ操作等
①タイヤの空気圧:
(1)タイヤの空気圧が高すぎると、ショックを吸収しにくく、トレッドの中央部が早く摩耗して、スリップしやすくなる。
(2)タイヤの空気圧が低すぎると、高速走行の場合に、スタンディングウェーブ現象が起きたり、バーストしやすくなる。
(3)タイヤの空気圧が左右均等でないと、空気圧の低い方にハンドルを取られ、また、片べりの原因ともなる。
②内輪差:内輪差はカーブの半径の大きさに比例して小さくなり、カーブが急なほど、大きくなる。また、ホイール・ベースの長い車ほど大きくなる。
③ブレーキの操作と反応時間:ブレーキペダルの遊びが多いと、ブレーキが遅れたり、効きが悪くなる。ブレーキペダルの遊びが少ないとブレーキが効いたままになりやすくなる。ブレーキペダルを踏み込んだとき、踏みごたえに「ふわふわ」した弾力性があるときは、ブレーキパイプなどに空気が入っているときである。障害物や危険物を認知し、ブレーキ操作に移るため、空走距離が生まれ、ブレーキが効き始めるまでには反応時間が必要となる。反応時間はおよそ1秒と言われている。
⑤,ハンドル操作:
(1)停止中にハンドルを無理に回すことを「すえ切り」といって、連結部やタイヤを傷める原因になる。
(2)段差のある道で車輪に強い衝撃を与えると、ハンドルを取られたり、ホイールアライメントが狂ったりする。走行中にパンクした場合は、パンクした方向にハンドルを取られるので、ハンドルをしっかり握り、車の向きを立て直すようにする。
⑥シートベルトと衝撃:自動車が衝突した場合、自動車は停止しても、乗車している人は前に進もうとする。両腕で支える力はせいぜい50kg、両足で支えられるのは100kg程度で、両手両足を使っても自分の体重の2~3倍が限度と言われている。よって、安全確保のためにはシートベルトの着用は欠かせない。

5,緊急時の措置
①運転中に大地震が発生したら:急ハンドル、急ブレーキは避けて、できるだけ安全な方法により、道路の左側に停止させる。停止後は、カーラジオ等により地震情報や交通情報を聞くとともに周囲の状況に応じて行動する。車をおいて避難するときは、できるだけ道路外に停止させる。やむを得ず道路上に置いて避難するときは、道路の左側に寄せてエンジンを止める。エンジンキーはつけたままにし、窓を閉め、ドアロックはしない。
②踏切でエンストしたときは:警報器の非常ボタンを押し、または非常ボタンがない場合は、発煙筒もしくは煙の出やすいものを燃やすなどして合図する。
③交差点などでエンストしたときは:車のギアをローかセカンドに入れ、セルモーターを使って車を動かし、少しでも早く現場から脱出するようにする。(この方法はAT車では使えない)
④走行中のトラブルへの対処
(1)故障などにより走行中にエンジンの回転数が上がり、下がらなくなったときは、ギアをニュートラルにして、車輪にエンジン動力を伝えないようにする。
(2)走行中にタイヤがパンクしたときは、ハンドルをしっかりと握り、急ブレーキを避け、断続的にブレーキを踏んで車を止める。
(3)スピードの出しすぎにより、後輪が横滑りを始めたときは、ブレーキをかけず、アクセルを緩め、ハンドルで車の向きを立て直すようにする。後輪が右(左)に滑ったときは、車は左(右)に向くので、ハンドルを右(左)に切る。
(4)下り坂でブレーキが効かなくなったときは、ブレーキを数回踏みながら、シフトチェンジしながらエンジンブレーキを使い、サイドブレーキを引いて車を止める。それでも車が止まらないときは、緊急措置としてガードレールや山側の斜面に車をすり寄せて止めたりする。
(5)対向車と正面衝突のおそれが生じたときは、警音器とブレーキを同時に使い、できる限り左に車を寄せ、ブレーキとハンドルで衝突を避けるようにする。それでも衝突が避けられないときは、道路外が危険な場所でないときは、道路外に出るようにする。

6,交通事故の防止
①飲酒運転や薬物服用の影響:飲酒して運転すると、中枢神経に対する麻酔作用から規範意識が低下して交通法規等への遵守精神が希薄になるうえに、判断力の低下など心身機能へ悪影響を及ぼす。個人差はあるが、ビール大瓶2本、または日本酒3合で、体内のアルコール分が平常になるまでには8時間程度かかると言われている。覚せい剤を服用して運転すると、疲労や眠気がとれたような錯覚を起こすが、薬物の作用が消失すると、使用前よりも激しい疲労感、不安感、倦怠感、憂うつ感などに襲われる。
②ハイン・リッヒの法則(ヒヤリ・ハット):1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景に、29件の軽傷事故と300件のヒヤリとした経験があることをいう。このヒヤリ・ハットを調査することは、交通事故防止対策の検討に有効な手段となっている。
③睡眠時無呼吸症候群(SAS):睡眠中に呼吸が止まった状態が断続的に繰り返される病気で、漫然運転、居眠り運転の原因の1つと考えられているが、あまり自覚症状がなく、治療が行われていない場合が多い。SASは狭心症や心筋梗塞などの合併症を引き起こすおそれがあるので、早期の発見と治療が必要である。
④KYT(危険運転予知訓練):実際の運転業務や荷役作業の状況を描いたKYT教材シート(イラストや写真、ビデオなど)を使ってヒューマンエラーなどによる事故が起きる危険性を予測する訓練のことである。
⑤ドライブレコーダー:交通事故や急加速、急減速などにより一定の衝撃を受けた際に、その前後10秒間の映像や走行データを記録する装置。事故が生じた場合、事故当事者の記憶に頼ることなく、画像やデータを利用して客観的に判断できるほか、運転者への安全運転教育にも活用できることから、運送事業者の間で活用が広がっている。
⑥アルコール検知器:バス、トラック、タクシー、ハイヤーの運転手を対象にその事業者(バス会社、運送会社など)により行われる。国土交通省令である旅客自動車運送事業運輸規則や貨物自動車運送事業輸送安全規則が改正され、2011年5月1日より事業者はアルコール検知器による検査が義務化された。
⑦生活習慣病:糖尿病、心臓病、高血圧、脳卒中、高脂血症、肥満などがあるが、心臓病や脳卒中は運転中の突然死を招くことから、「食生活、運動、飲酒、喫煙、休養」の5つの慣習を改善していくこが必要で、運転者自らが日常的に健康管理を適切に行っていくことが大切である。

7.利用者の体調不良時の対応
 声を掛けながら、意識や呼吸の状態、脈拍などを確認する。ベルトを緩め、衣服のボタンを外すなど楽な姿勢にしておく。本人に意識がある場合には、どのような対応をとればよいか確認し、意識がない場合には、速やかに救急車を呼ぶ。救急車が到着するまでの間、必要に応じ止血、人工呼吸、心臓マッサージ等の処置を施す。周りにひとがいる場合は、大声で協力を求める。吐しゃ物がのどに詰まっていないかなどの確認を忘れないようにする。救急車が到着後には事務所等に連絡をとり、この後の対応について指示を仰ぐ。
利用者の体調不良時の対応でたいせつなことは、目の前に倒れている人を救うために「自分ができることを行う」ことである。緊急の事態に遭遇したときに適切な応急手当ができるように、日頃から応急手当を学び、身につけておく必要がある。
前へ(4.基礎的な接遇技術及び介助技術・おでかけ介助Ⅱ)
次へ(安全・安心な運行と緊急時の対応Ⅱ)